勇者の幼馴染はついてけない

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彼が勇者になった理由

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 暗く湿り気のある地下神殿で黄金の台座の前に黒いローブを羽織った老人が立ち、そこへ道を敷くように同じ出で立ちの老人たちがたいまつを手に軽装鎧の少年を囲んでいる。

 少年が台座前の老人に歩み寄ると、跪いた。

「傑出した勇ましきしんを持つルシス・ドーキンよ、そなたを勇敢なる唯一無二の者、勇者となることをここに認める。魔王グライスマ・ジーアを討ち果たし、必ずや世界に平和を取り戻すのだ」

「これ以上ない栄誉。神に誓いましても、
          身命を賭して課せられた責務を果たします」

「うむ。貴殿に世界の、人類の命運を託す」

 魔族…それは突如として現れ世界を混沌に陥れた存在。死をもたらす妖精ハーピィや混成の獣キマイラ、見る者に死を与えるバジリスク、三つ首の巨蛇ハイドラ、疾き知者ケンタウロス、人間を遥かに超える怪力サイクロプス…まだまだ他にも控えているだろう…しかし──



 任命の儀を終えて 私の部屋にいるルシスとパーティーでもあり幼馴染でもあるレナリこと私は正直荷が重すぎるのではないかという心配を抱いていた。

「大丈夫なの?」

 しかし彼は覚悟を感じさせるように呟く。

「俺はやりとげるよレナリ。どんな困難、どんな苦難が待ち構えていようとだ」

「ルシス…」

 彼は一度やると言ったら絶対にやり遂げる。それはずっと近くで見ていてよく知っている。だが世界の命運を背負うなんていうのは、あまりに柄ではない。さすがに度を超していた。

「どうしてそこまで…」

「君になら分かるだろ?」

 小さく首を振る。

「いいえ…確かに今まで馬鹿みたいなこと沢山してきたなとは思うけど今回は…」

「そうか…じゃあこいつを見てくれ」

 取り出したのは一枚の念写、こちらでいう写真だ。

「これって…」

 そこには人間でいうところの女性のような姿が映っている。

「そう、魔王の姿だ。どうだい、


                  美 し い だろう」


 ・ ・ ・ 。 私はこの距離感となりから衝撃波で吹き飛ばされたような感覚を覚えて何とか寄せようと思っているところでさらに彼が口を開く。


「魅惑的な褐色の肌にこの露出の高い衣装、シルバーアイリスの髪色、輝く瞳、殺人的なまでの躍動感…素晴らしいと思わないか」

 私の距離感はまるで宇宙の彼方までひゅーっと吹き飛ばされたような感じでこれは帰還は不可能だろう。

「まぁ正直世界がどうこうってのは実は俺にはどうでもよくって、でも他の男にさ…こう…ダメだろ!やらせるわけにはいかないじゃないか。だからまあ…仕方ないから他の雑事もやるしかないなーって」

「ちょっとその写真貸して」

「え?いいけど」

 ビリィッッ!と無心でド真ん中を引き裂く私。

「うあああああぁぁッ!何てことをッ!俺の秘蔵のブロマイドがっ」

 そう言って目にも止まらぬ早業で私の手から破れた写真を奪い取る変態勇者ルシス。

「うわー真っ二つじゃん、えぇーこれ継ぎ目ちゃんと直るかなぁ…」

 写真の破れ目に心配気に目を這わせている。あかんこれじゃ気が収まらん。

「くそッ!燃やしてやるッ」

「させるか、マジック・バインドッ」

 魔法を発動しようとした瞬間に高位魔法で防ぎ止められてしまった。さすがに勇者と認められるだけあって素早く正確だ。だが何かすごく認めたくない。
「あぶねー。燃えカスになるところだったぜ…」

「むうううぅぅっ」

 ふくれっ面で悔しがるレナリをしりめにルシスは魔法で写真の修復を試みるのであった。
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