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2.僕が私で私は僕で
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そしてこの目の前にいるサラは私のメイドであり、この部屋、つまり私の部屋に入る際、昨日の失態を叱りつけていたところだったわね。さっき後ろから私に謝っていたのはそういうことね、思い出したわ。ところで…
「サラ、今私がこけそうになったとき…笑ったわね…?」
私の目は誤魔化せない。冷たい声で言うと、サラが青ざめ、背筋を伸ばす。
「ひっ…い、いえそんな…」
「サラ!」
「は、はひっ!」
自分でもびっくりするくらいに鋭い声だった。わたくしは…い、いや…僕は…そんな…怖がらるようなことするつもりはない!
いつの間にかその人格に持っていかれそうになるところを何とか僕に引き寄せる。
「…え、えーと…その…こ、怖がらせてしまったかしら…なんというか…助けられてるって、思ってるから…」
物凄く口が重く感じる。それに当たり前のことを言っているはずなのに、なにやら顔がカァアっと熱くなってくる。多分今真っ赤々かもしれない。何がそんなに恥ずかしがらせるのか本人なのに見当がつかない。
「リ、リザリア様…!」
怖がって握っていたであろう自身の前掛けをさらにぎゅうと強く握りしめているサラ。え、え、なんだろう。だめなことしちゃった?
「い、いいんです私…トロいし、なにやってもダメだし…でも、リザリア様のお傍にいれることが…一番の幸せですから!」
…ど ど どういうことなの。どうして感謝されてるんだ?普通のことをしただけなんだが?
もう一人の僕、というか私によると、本当はそのドジで間抜けなこの娘をいじめたいからメイドとしているらしい。
そんな理由かい!ひどいなっ。無意識でいると勝手に意識が狂暴化していくような感覚がある。ここは自分を保たなくては。
「…そっ…さ、さあ、最終確認するわよっ!あなたがトロいから、立ちぼうけだわ!」
そう言いドレッサーにつかつか、と向かって席についた。鏡に映る自分に驚愕して真顔になる。
うお美人!!女優さん!…とかいうレベルじゃないぞ!いや本物に会ったことないから分かんないけど!
白く滑らかな雪のような肌に左右にはらりとかかるカール、後頭部あたりに結われる編み込みカチューシャ、流れるようなさらさらなゴールドブロンドの髪、サファイアブルーの瞳はまるで宝石のようでどこまでも深く蒼く見たものを強く惹きつける。
たとえそれらの要素がなくともやや吊り気味だが魅惑的な目元、艶やかにカールするまつ毛、筆を一本引いたように意思を感じさせる眉、筋は通っているが主張の少ないするりと高い鼻孔、思わず甘さを感じさせる桜色の唇、そしてそれらが均整を保ち存在している。もしお風呂に入り何も飾らなくともそれがまた魅力となってしまうのではと感じさせる。
僕:誰よこれ!誰!僕なのに僕が映ってない!鏡が壊れた!
まじまじと見るために鏡に近づくと同時に鏡の人物が近づいてくる。ぎょっとして椅子ごと後ろに下がった。
ううう動くぅぅううっ!!?
「あ、あのう…リザリア様?」
「はいぃ!?」
呼ばれたような気がして後ろを振り返ると苦笑いしているメイドの姿。しまった!今僕は僕じゃなかった!
「ごほんごほん。はぁー、あなたの仕事が遅すぎるから、座興でもしたくなってしまったわ。早くしてくださる?」
「し、失礼しました!」
さっと私の後ろへ立つメイドのサラ。全部僕のせいだけど、私はとてもイライラしている。
「今日はノルヴァ・ナヴィシェ殿下とお会いしなきゃいけないんだから、ちゃんとして」
全部人のせいにしてとりあえず服装やら髪やらを不備がないか整えつつ調整する。
今日会う人…本来の名はレギナノルヴァルフレド・ナヴィシェヴン。というらしい。長い。名前の主もそれを自覚しているみたいで、公的な場以外ではみんなにもノルヴァと呼ぶよう言っているみたいだ。別に私が婚約者だから…というわけではない。
「これから会う方は、リザリア様の婚約者様でございますから、失礼のないように致しませんとね」
…ん。…ん?今なんと…?こんやくしゃ…?ま、まあいいか…もういいやめんどくさい考えるの。そりゃこんな美人なら婚約者くらいいるよね。
不思議と顔も思い出せる。王族のみ継承するサラサラの銀髪、憂いのない青の瞳、中世的な容姿。男性だけれど整った女性のようにも見える姿…はっきり思い出せる。その姿を思い出すだけでこの乙女の心はときめいている。どうやら僕はその人に相当ぞっこんらしい。
てなにぃぃいいい!!ときめいているのは私だが、僕は男なのだ!いくら綺麗な男だからって、僕は男に恋なんて出来ないぞ!
しかし反する声、いや声というより感覚があり、こんな風にも感じる。
そう、よね…。王太子は私が好きだから結婚するんじゃない…英雄サールの血を引く私を正妻として迎えることで、より盤石な権力、立場、国内や周辺諸国に違和感を与えないようにしたいだけ。分かってる。でも、そんな声に答えたいの。だからそれは…
ほの暗い感情がそこでふつふつと芽生え始める。
…そう、だからこれは彼の為でもある。私しかいないの。英雄サールの血を引く女は私しかいない。だったら何を躊躇う必要がある?寧ろ合理的。彼に相応しいのは私よ。おかしなことになる前に私が強引に籍を入れて国を守ることの何がおかしいの?その義務いいえ責務があるといっても過言じゃないわ。誰にも邪魔なんてさせない!私が、私が…!
ハッとして鏡を見る。金髪の美しい、まるで丹念に作られた人形のような非の打ちどころのない女性が鏡に映っているが、今その顔は、何か企む様に歪んでいた。
「サラ、今私がこけそうになったとき…笑ったわね…?」
私の目は誤魔化せない。冷たい声で言うと、サラが青ざめ、背筋を伸ばす。
「ひっ…い、いえそんな…」
「サラ!」
「は、はひっ!」
自分でもびっくりするくらいに鋭い声だった。わたくしは…い、いや…僕は…そんな…怖がらるようなことするつもりはない!
いつの間にかその人格に持っていかれそうになるところを何とか僕に引き寄せる。
「…え、えーと…その…こ、怖がらせてしまったかしら…なんというか…助けられてるって、思ってるから…」
物凄く口が重く感じる。それに当たり前のことを言っているはずなのに、なにやら顔がカァアっと熱くなってくる。多分今真っ赤々かもしれない。何がそんなに恥ずかしがらせるのか本人なのに見当がつかない。
「リ、リザリア様…!」
怖がって握っていたであろう自身の前掛けをさらにぎゅうと強く握りしめているサラ。え、え、なんだろう。だめなことしちゃった?
「い、いいんです私…トロいし、なにやってもダメだし…でも、リザリア様のお傍にいれることが…一番の幸せですから!」
…ど ど どういうことなの。どうして感謝されてるんだ?普通のことをしただけなんだが?
もう一人の僕、というか私によると、本当はそのドジで間抜けなこの娘をいじめたいからメイドとしているらしい。
そんな理由かい!ひどいなっ。無意識でいると勝手に意識が狂暴化していくような感覚がある。ここは自分を保たなくては。
「…そっ…さ、さあ、最終確認するわよっ!あなたがトロいから、立ちぼうけだわ!」
そう言いドレッサーにつかつか、と向かって席についた。鏡に映る自分に驚愕して真顔になる。
うお美人!!女優さん!…とかいうレベルじゃないぞ!いや本物に会ったことないから分かんないけど!
白く滑らかな雪のような肌に左右にはらりとかかるカール、後頭部あたりに結われる編み込みカチューシャ、流れるようなさらさらなゴールドブロンドの髪、サファイアブルーの瞳はまるで宝石のようでどこまでも深く蒼く見たものを強く惹きつける。
たとえそれらの要素がなくともやや吊り気味だが魅惑的な目元、艶やかにカールするまつ毛、筆を一本引いたように意思を感じさせる眉、筋は通っているが主張の少ないするりと高い鼻孔、思わず甘さを感じさせる桜色の唇、そしてそれらが均整を保ち存在している。もしお風呂に入り何も飾らなくともそれがまた魅力となってしまうのではと感じさせる。
僕:誰よこれ!誰!僕なのに僕が映ってない!鏡が壊れた!
まじまじと見るために鏡に近づくと同時に鏡の人物が近づいてくる。ぎょっとして椅子ごと後ろに下がった。
ううう動くぅぅううっ!!?
「あ、あのう…リザリア様?」
「はいぃ!?」
呼ばれたような気がして後ろを振り返ると苦笑いしているメイドの姿。しまった!今僕は僕じゃなかった!
「ごほんごほん。はぁー、あなたの仕事が遅すぎるから、座興でもしたくなってしまったわ。早くしてくださる?」
「し、失礼しました!」
さっと私の後ろへ立つメイドのサラ。全部僕のせいだけど、私はとてもイライラしている。
「今日はノルヴァ・ナヴィシェ殿下とお会いしなきゃいけないんだから、ちゃんとして」
全部人のせいにしてとりあえず服装やら髪やらを不備がないか整えつつ調整する。
今日会う人…本来の名はレギナノルヴァルフレド・ナヴィシェヴン。というらしい。長い。名前の主もそれを自覚しているみたいで、公的な場以外ではみんなにもノルヴァと呼ぶよう言っているみたいだ。別に私が婚約者だから…というわけではない。
「これから会う方は、リザリア様の婚約者様でございますから、失礼のないように致しませんとね」
…ん。…ん?今なんと…?こんやくしゃ…?ま、まあいいか…もういいやめんどくさい考えるの。そりゃこんな美人なら婚約者くらいいるよね。
不思議と顔も思い出せる。王族のみ継承するサラサラの銀髪、憂いのない青の瞳、中世的な容姿。男性だけれど整った女性のようにも見える姿…はっきり思い出せる。その姿を思い出すだけでこの乙女の心はときめいている。どうやら僕はその人に相当ぞっこんらしい。
てなにぃぃいいい!!ときめいているのは私だが、僕は男なのだ!いくら綺麗な男だからって、僕は男に恋なんて出来ないぞ!
しかし反する声、いや声というより感覚があり、こんな風にも感じる。
そう、よね…。王太子は私が好きだから結婚するんじゃない…英雄サールの血を引く私を正妻として迎えることで、より盤石な権力、立場、国内や周辺諸国に違和感を与えないようにしたいだけ。分かってる。でも、そんな声に答えたいの。だからそれは…
ほの暗い感情がそこでふつふつと芽生え始める。
…そう、だからこれは彼の為でもある。私しかいないの。英雄サールの血を引く女は私しかいない。だったら何を躊躇う必要がある?寧ろ合理的。彼に相応しいのは私よ。おかしなことになる前に私が強引に籍を入れて国を守ることの何がおかしいの?その義務いいえ責務があるといっても過言じゃないわ。誰にも邪魔なんてさせない!私が、私が…!
ハッとして鏡を見る。金髪の美しい、まるで丹念に作られた人形のような非の打ちどころのない女性が鏡に映っているが、今その顔は、何か企む様に歪んでいた。
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