異世界人にバレたらヤバい⁉︎魔女はタブレットを愛用する(タイトル変更しました)

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プロローグ

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 淡く光る道を黙々と進む女性が1人。

 突然、異常な状況に投げ出されたことに不安を感じながらも目の前にある道を黙々と進む。

 7センチヒールのパンプスとパンツスーツ、肩まで伸びた髪はヘアアイロンで真っ直ぐに整え、シンプルなピンクゴールドとダイヤのネックレスが華奢な首元を飾る。
 左肩には仕事用の皮のトートバッグ、右手には少し大きめのスーツケースを引いているのは、彼女が一週間の出張から戻る途中だったからである。

 彼女の勤める会社は、女性にも活躍機会を与えるべきだと、積極的に管理職への女性登用を推進しており、彼女も同期の中ではダントツの早さで課長へ昇進したが、仕事に忙殺される日々と同期からの嫉妬や僻みによる嫌がらせは、確実に彼女の精神と感情をすり減らしていった。

 この一週間の出張も本来なら彼女が担当する案件ではなく、ただ嫉妬に駆られ、彼女をよく思わない先輩に都合良く押し付けられたものだった。とは言え、元来から負けず嫌いな彼女は、この急遽押し付けられた仕事を完璧にこなした。もちろん完璧な仕事の達成に私生活を多分に犠牲にしたことは言うまでもない。そして今日は、その結果を持って就業前までには会社へ戻る予定となっていた。

 久しぶりに十分な睡眠をとった彼女は、軽くなった体をグッと伸ばした後、身支度を整えるとブッフェ形式の朝食へと向かった。普段、睡眠不足のせいか朝食をまともにすることもないため、あまり量を食べることは出来なかったが、それでもいつもと違う朝は、気持ちをほんの少しだけ癒してくれた。部屋に戻り荷物を整理するとホテルをチェックアウトすべくエレベーターに向かった。

 彼女の記憶はそこで途絶えた。

 数秒か数分なのか分からない。少しの空白の時間を感じた気はするが、それさえも定かではない。

 意識がはっきりとした彼女の目に写る景色は、ホテルのエレベーターホールでもなければ、会社でも自宅でもなかった。

 あるのは人が1人通れるだけの淡く光る道。

 想定外の状況に心臓が早鐘を打つ。冷静にならなければと深く呼吸を繰り返すことで、どうにか思考が回復したが、この状況を理解するまでには至らなかった。

 ただ分かっていることは、この目の前に伸びる道を前に進むしかないことだけだった。

 この道がどこまで続くのか、先に何があるのか皆目検討もつかないが、彼女は足を踏み出した。

 どれくらい歩いただろうか。あまりにも終わりが見えないことに不安を覚え、引き返せないかと振り返って見たものの、ほんの少し前まて確かに淡い光を放っていたはずの道は、元から何も無かったかのように深い闇に閉ざされており、引き返すことはできないのだと諦めた。どうもこの道は、彼女が一歩前に踏み出せば、その分、闇も伸びてくるようだった。

 ひたすら真っ直ぐに歩き続けると、急に目の前が開けた。そこは五角形の小さな部屋で、中央には何やらタブレット式の案内板があった。流石に歩き疲れた彼女は荷物を床に下ろし、凝り固まった腕を回しながらあたりを見回すが、ここが何処かを示す様なものはなく、やはりこの案内板を頼るしかないようだった。何かヒントを得ようと案内板に手を触れると、案内板の画面に文字の様なものが浮かび上がるが、それは日本語でも英語でもなく、初めて見る言語のようだった。彼女は思わず溜め息を溢す。

 「一体、何がどうなってんのよ。」

 小さく呟くと、その場に力無く座り込んだ。長年に亘り蓄積された疲労に加え、想像もしなかった状況に突然置かれてしまった不安に、もう何もする気が起きなかった。

 どれくらいそうしていただろうか、このままでは埒があかないと、もう一度立ち上がると再び案内板に手を触れると明らかにさっきとは違う反応を示した。画面には多数の言語らしきものが入り乱れ、覆い尽くしている。数分後、ぴたっと画面がフリーズしたかと思うと彼女の愛用するタブレットが意思を持ったようにバックから飛び出し、案内板の1メートルほど上で停止したのである。彼女が想定外の事態に唖然としていると、なんと案内板の中からキラキラとした結晶が溢れ出し、タブレットの中に吸い込まれていくではないか。そして結晶の全てが吸い込まれた瞬間、辺りが真っ白に染まり、彼女は完全に気を失った。

 藤島さくら
 34歳

 よく分からないまま、日本を離れ異世界へ転移したようです。

 
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