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知らない人を自宅に招くのは危険ではないだろうか?
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さくらを訪ねてきたのは、後見人として選ばれた者と護衛の一団らしいが、後見人ですといきなり言われても彼女自身にとっては寝耳に水のことで、「はい、そうですか」とそのまま受け入れることができなかった。かと言って、大変な森の中を移動してきた彼らを明らかに危険な生物が跋扈する地帯に放置したままで何かあっては寝覚が悪い。よく見ると装備品はしっかりしたもののように見えるし、立居振る舞いに粗野な感じもないため、取り敢えず危険のない結界内に彼らを招き入れることにした。
結界内への出入りはさくらの意思によって可能になるようで、彼女が許可したことにより一団は全員が結界内に入ることができた。どのような行程でここまで辿り着いたのか、この世界のことをよく理解していない彼女には想像もつかないが、彼らの表情に疲労の色は出ているものの大きな怪我をしている人がいないことに安堵し、最初に自分に声をかけて来た大柄な男性が指揮官に準ずる人なのだろうと考えた彼女は、彼らに休むように指示を促す。さくらの予想は当たっていたようで、彼は同行者に荷を下ろして休憩を取るように指示を出す。彼は自身も荷を下ろすとさくらへと相対したかと思うと、片膝をつき話しかけて来た。
「この度は、初対面にも関わらず結界内へと招き入れてくださったことに心より感謝申し上げる。私どもが、このたび魔女殿の元を訪れたのは、先程も申し上げた通り神託によって、私、ウィントヴィル王国の公爵家三男ジークフリートが後見人として指名され、国王の勅命により魔女殿の身辺警護と、こちらの世界に慣れておられず大変な思いをされている魔女殿の生活を補助する役目を持って伺ったのだが、魔女殿は神託については何もご存知なかったのだろうか?」
体の大きな男が不安そうな表情で見上げる姿に、さくらは何となく居た堪れない。何より、最近は新しいタブレットの機能やショッピングにかまけ、メッセージには目を通していなかったからである。言い訳をさせてもらえれば、最初のメッセージに「そのうち後見人が来るよ」と書いてくれれば心構えもできていたし、速攻で逃げ出す姿を見せることはなかったのではないか。とは言え、後見人御一行様はすでにここに来ているのである。流石に来て早々に追い返すわけにもいかないが、本当に彼の言っていることが正しいかもメッセージを読んでいないから判断しようがない。さくらは、一旦自分だけ自宅に帰って出直そうと決意しジークフリートに答える。
「丁寧なご挨拶をありがとうございます。…あの、実は後見人のこととか、私は何も聞いていなくて、今の段階でジークフリート様のおっしゃっていることが事実かどうかを判断する材料がなくて…。失礼を承知でお願いしたいのですが、ジークフリート様方は、ここでもう一晩、野営することは可能でしょうか?この後、私は自宅へ帰り神託のことについて調べてみますので…。ダメですか?」
正直、ここでスマホを見れば簡単に分かるのだが、異世界で初めて会う人間にスマホの存在を知られたくない。もしかすると似たようなものがこの世界にもあるかもしれないが、何も分からない以上、隠す方がいいに決まっている。
「ダメも何も、魔女殿が警戒するのは当然のこと。神託についてお調べになりたいのであれば、ここで何日でも待とう。」
「ありがとうございます。実は、神託については一晩もあれば調べられるのですが、もし、神託が本当だった場合、色々と準備したいことも出て来るかもしれませんし、その場合、数日、皆さんをお待たせしてしまうかも…。それで…皆さんは、しばらく森の中を移動されて来たのでしょう?その…食料などは残っているのでしょうか?」
ジークフリートは破顔し、大きな声で笑うと
「実に魔女殿はお優しい。初対面の人間、それも信用できるかどうか分からない状況にも関わらず、そんな人間の食べ物の心配までしてくださる。いや、笑ってしまって申し訳ない。食料などは何があってもいい様に、道中でいくらか多めに確保してある。魔女殿は安心して帰ってもらって構わない。」
それを聞いてさくらもほっとする。食料がないまま大きな動物のいない結界内では狩りで食料を確保することなどできないし、結界内で安心し切って休んでいる人間に、再び危険地帯で狩りをしてこいなどとは言えない。幸い、食料は持っている様だし、彼らがこのあたりで野営をするのであれば、さっき設置したカメラである程度の動きを知ることは可能であろう。
「わかりました。私は一旦、自宅へ帰らせてもらいます。できれば皆さんには拠点をここから変更せずにいてもらえればと…。違うところに行かれてしまうと再び合流するのが難しくなってしまいますので…。よろしいですか?」
ジークフリートは、さくらのお願いに「勿論」と答えると、さくらに帰るように促す。彼女は、ジークフリートとその一団にまた来ると挨拶をするとその場を後にし、自宅へと急ぐ。
ジークフリートもさくらが去ると、早速、野営の準備をするよう指示を出す。
結界内では命の危険を感じる必要もない。野営とはいえ、久しぶりにゆっくり休めると彼らの表情も柔らかい。この先、全く不安がないかといえば嘘になる。彼女が「神託はなかった」といえば、そのまま結界の外へ弾き出されるだろう。だが、初対面の人間を気遣える優しさを持った少女が嘘をつくとは思えない。
その晩、恐ろしい魔獣が襲ってくる心配もなく、男たちは焚き火が消えたことにも気付かず眠り続けた。
結界内への出入りはさくらの意思によって可能になるようで、彼女が許可したことにより一団は全員が結界内に入ることができた。どのような行程でここまで辿り着いたのか、この世界のことをよく理解していない彼女には想像もつかないが、彼らの表情に疲労の色は出ているものの大きな怪我をしている人がいないことに安堵し、最初に自分に声をかけて来た大柄な男性が指揮官に準ずる人なのだろうと考えた彼女は、彼らに休むように指示を促す。さくらの予想は当たっていたようで、彼は同行者に荷を下ろして休憩を取るように指示を出す。彼は自身も荷を下ろすとさくらへと相対したかと思うと、片膝をつき話しかけて来た。
「この度は、初対面にも関わらず結界内へと招き入れてくださったことに心より感謝申し上げる。私どもが、このたび魔女殿の元を訪れたのは、先程も申し上げた通り神託によって、私、ウィントヴィル王国の公爵家三男ジークフリートが後見人として指名され、国王の勅命により魔女殿の身辺警護と、こちらの世界に慣れておられず大変な思いをされている魔女殿の生活を補助する役目を持って伺ったのだが、魔女殿は神託については何もご存知なかったのだろうか?」
体の大きな男が不安そうな表情で見上げる姿に、さくらは何となく居た堪れない。何より、最近は新しいタブレットの機能やショッピングにかまけ、メッセージには目を通していなかったからである。言い訳をさせてもらえれば、最初のメッセージに「そのうち後見人が来るよ」と書いてくれれば心構えもできていたし、速攻で逃げ出す姿を見せることはなかったのではないか。とは言え、後見人御一行様はすでにここに来ているのである。流石に来て早々に追い返すわけにもいかないが、本当に彼の言っていることが正しいかもメッセージを読んでいないから判断しようがない。さくらは、一旦自分だけ自宅に帰って出直そうと決意しジークフリートに答える。
「丁寧なご挨拶をありがとうございます。…あの、実は後見人のこととか、私は何も聞いていなくて、今の段階でジークフリート様のおっしゃっていることが事実かどうかを判断する材料がなくて…。失礼を承知でお願いしたいのですが、ジークフリート様方は、ここでもう一晩、野営することは可能でしょうか?この後、私は自宅へ帰り神託のことについて調べてみますので…。ダメですか?」
正直、ここでスマホを見れば簡単に分かるのだが、異世界で初めて会う人間にスマホの存在を知られたくない。もしかすると似たようなものがこの世界にもあるかもしれないが、何も分からない以上、隠す方がいいに決まっている。
「ダメも何も、魔女殿が警戒するのは当然のこと。神託についてお調べになりたいのであれば、ここで何日でも待とう。」
「ありがとうございます。実は、神託については一晩もあれば調べられるのですが、もし、神託が本当だった場合、色々と準備したいことも出て来るかもしれませんし、その場合、数日、皆さんをお待たせしてしまうかも…。それで…皆さんは、しばらく森の中を移動されて来たのでしょう?その…食料などは残っているのでしょうか?」
ジークフリートは破顔し、大きな声で笑うと
「実に魔女殿はお優しい。初対面の人間、それも信用できるかどうか分からない状況にも関わらず、そんな人間の食べ物の心配までしてくださる。いや、笑ってしまって申し訳ない。食料などは何があってもいい様に、道中でいくらか多めに確保してある。魔女殿は安心して帰ってもらって構わない。」
それを聞いてさくらもほっとする。食料がないまま大きな動物のいない結界内では狩りで食料を確保することなどできないし、結界内で安心し切って休んでいる人間に、再び危険地帯で狩りをしてこいなどとは言えない。幸い、食料は持っている様だし、彼らがこのあたりで野営をするのであれば、さっき設置したカメラである程度の動きを知ることは可能であろう。
「わかりました。私は一旦、自宅へ帰らせてもらいます。できれば皆さんには拠点をここから変更せずにいてもらえればと…。違うところに行かれてしまうと再び合流するのが難しくなってしまいますので…。よろしいですか?」
ジークフリートは、さくらのお願いに「勿論」と答えると、さくらに帰るように促す。彼女は、ジークフリートとその一団にまた来ると挨拶をするとその場を後にし、自宅へと急ぐ。
ジークフリートもさくらが去ると、早速、野営の準備をするよう指示を出す。
結界内では命の危険を感じる必要もない。野営とはいえ、久しぶりにゆっくり休めると彼らの表情も柔らかい。この先、全く不安がないかといえば嘘になる。彼女が「神託はなかった」といえば、そのまま結界の外へ弾き出されるだろう。だが、初対面の人間を気遣える優しさを持った少女が嘘をつくとは思えない。
その晩、恐ろしい魔獣が襲ってくる心配もなく、男たちは焚き火が消えたことにも気付かず眠り続けた。
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