弱国コンサルタント

ひがしの くも

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プロローグ

最強の魔法騎士、眠りにつく

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 王都エルディナの中央、白銀の城――グランゼル王城。その最上階、陽光がやわらかく差し込む寝室には、静寂が支配していた。

 かつて《千年の剣》と呼ばれ、魔法と剣の両方を極めた伝説の騎士、ライザルド・ヴェルシュタイン。その身体は今、老いに蝕まれ、重く呼吸を繰り返していた。

 枕元には、彼を慕う者たちが集まっている。王、将軍、かつての戦友、聖女、そして弟子たち――。誰もが目を赤く腫らし、沈痛な面持ちでライザルドを見守っていた。

「……お師匠様……」

 最年少の弟子、クリスが小さく嗚咽を漏らした。

 かつて彼の一太刀は敵軍をまとめて切り裂き、魔法は山をも削ったと言われる。だが今、その最強と称された男は、骨ばった手をわずかに動かすのがやっとだった。

 それでも、ライザルドは微笑んでいた。

「……泣くな、クリス……。男なら、最後まで見届けてやれ……」

 掠れる声だったが、その言葉には不思議な力があった。

 王は一歩、ライザルドの枕元に膝をついた。

「この大陸を統一できたのは、すべてあなたのおかげです、ライザルド殿。あなたこそ、真の英雄……」

「……いや、私は……ただ、守りたかっただけだ……この世界を、そして……未来をな……」

 窓の外で風が吹き、白いカーテンがふわりと揺れた。

 その瞬間、ライザルドの身体からふっと力が抜ける。

「ライザルド様……!?」「……まさか……」

 誰もがその時が来たことを悟った。老いた英雄は、静かに瞳を閉じ、微笑みを浮かべたまま、永い旅路の終わりを迎えようとしていた。

 しかし――。

 光が差した。

 眩い黄金の光が、突如としてライザルドの身体を包み込んだ。

 まるで天からの啓示のように、静謐で、それでいて抗いようのない力を持った光だった。

「なっ……!?」「これは……魔力ではない……!?」

 弟子たちが戸惑いの声を上げる。神官たちが慌てて祝詞を唱えようとするが、間に合わない。

 ライザルドの身体は、その光の中で、まるで煙のように――いや、純粋な魔素となって、空へと消えていった。

 静寂。

 誰一人、言葉を発することができなかった。

 ただ、そこにいた全員が理解していた。

 ――ライザルド・ヴェルシュタインは、この世界から「いなくなった」のだと。

「……まさか、神々が彼を……?」

 王の呟きは、誰にも否定されなかった。

 魔法騎士ライザルド。
 その死は、この世界の常識をも超えていた。
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