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グラフェス候補視察
衝撃の球技、その名はインパクトボール
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王国北部、城壁内の一角に佇む広大な屋内競技場。
その天蓋には魔法によって青空が映し出され、まるで本物の空の下にいるかのような開放感が広がっていた。
「ここがインパクトボールの練習場か」
王の後を歩きながら、ライザルドは穏やかに目を細めた。
立ち並ぶ王宮騎士たちとは違い、ここにいるのは軽装の若者たち。
身体能力と瞬発力、そして精密なテクニックが求められる競技において、彼らの装備はその動きを妨げないよう工夫されていた。
「今日はちょうど、代表候補による紅白戦があるのです」と王が嬉しそうに言う。
「ライザルド様には、ぜひともこの国が誇る競技を目にしていただきたくてな」
ライザルドは静かにうなずくだけだった。
その目の前で、選手たちがコートに散っていく。
コートの両端には、金属光沢を帯びた高さ2.5メートル・幅8メートルの巨大な壁。
ここが、ゴールとなる。
「それでは……試合、始め!」
審判役の者が魔法で音を響かせ、試合が始まった。
選手たちは、手に持った硬質の革球を素早くパスし合い、ドリブルし、壁をめがけて一気に距離を詰めていく。
バスケットボールに似たルールだが、決定的に違うのは、ゴールの仕組みとポジションの役割分担だった。
「インパクトボールでは、オフェンスの2名は自陣に戻ってディフェンスに参加することはできません」
ゼクスが小声で補足する。
「つまり常に“オフェンス5人 対 ディフェンス3人”の構図になるのです。得点が入りやすく、試合が動きやすいのが特徴ですな」
ライザルドは頷くが、やはり口を開くことはなかった。
ただその目は、わずかに鋭さを増していた。
バスケと同じく、選手たちは3歩以内に一度ボールを地面にバウンドさせる必要がある。
さらに、足によるワンタッチも許されていた。
このワンタッチは一度限りだが、味方選手にボールが触れると再び使用が可能となる。
そのため、連携次第で巧みに何度も足を使ったカットやパスが繰り出せる。
「ほら、あそこにいる二人が中心人物でしてな……」
ゼクスが指差した先には、ひとりの青年が仲間たちと声を掛け合い、必死に士気を高めている。
体格は大柄で、額に汗を浮かべながらも真剣なまなざし。
「彼が“キャプテン”のガロウ・スタイン。実直で仲間を大事にする熱血漢。今のチームの精神的支柱です」
一方、相手チームに立つもう一人の青年は、まるで舞うような動きでボールを操っていた。
鋭い目つき、挑発的な笑み。観客席の視線を一身に集めている。
「そして彼が“エース”のカイ=ヴェルグ。才能は文句なしですが、まぁ……協調性には難がありましてな」
試合が進むにつれ、ガロウは仲間たちを鼓舞しながら堅実なプレーを見せていく。
一方のカイは、味方を待たず、自分ひとりで攻め込み、シュートを放つ場面が目立っていた。
だが、その足技はまさに圧巻だった。
右足のワンタッチでボールを相手から奪い、そのまま二人を抜き去ってジャンプ。
空中で体をひねると、左足のキックでボールをゴールへと叩き込む。
壁にぶつかったボールは“ドォンッ”と重々しい音を響かせ、掲示板には【8】の数字が浮かび上がった。
「ほう、8点か……。かなりの衝撃だったようじゃな」
ライザルドが初めて声を発したが、それ以上の感想は語らなかった。
カイは得点後も胸を張って歩き、味方の視線も意に介さずベンチへと戻っていった。
「彼のような個は必要でもあるのですが……チーム競技である以上、調和が鍵になりますな」
また、コート全体には魔法結界が張られており、選手たちの魔法の使用は厳しく制限されている。
「使えるのは“攻撃力強化”と“防御力強化”のみ。属性魔法は禁止。炎や雷が飛び交えば試合になりませんし、スピード強化を許すと、観客が目で追えなくなる」
公平性と観戦性を保つため、結界によって能力の一部が封じられているのだ。
ライザルドは静かに試合を見守り続けた。
声を出すことはなく、ただ選手たちの動き、魔法の使い方、そしてチームの連携を細かく見ていた。
「……何かお気づきのことはありますか?」
王がそっと尋ねるが、ライザルドはわずかに首を横に振った。
「いや、わしはただ……見ているだけですよ」
その表情には、やはり何かを思案しているような影が差していた。
ゼクスが横で小さく笑う。
「黙して語らず……さすがは、かつて最強の魔法騎士殿ですな」
競技場に響くボールの衝突音が、練習試合の熱気を高めていく。
その音の先で、王国の未来を担う者たちが、着実にその技を磨いていた。
ライザルドの視線は、その全てを逃さず、静かに見つめ続けていた――。
その天蓋には魔法によって青空が映し出され、まるで本物の空の下にいるかのような開放感が広がっていた。
「ここがインパクトボールの練習場か」
王の後を歩きながら、ライザルドは穏やかに目を細めた。
立ち並ぶ王宮騎士たちとは違い、ここにいるのは軽装の若者たち。
身体能力と瞬発力、そして精密なテクニックが求められる競技において、彼らの装備はその動きを妨げないよう工夫されていた。
「今日はちょうど、代表候補による紅白戦があるのです」と王が嬉しそうに言う。
「ライザルド様には、ぜひともこの国が誇る競技を目にしていただきたくてな」
ライザルドは静かにうなずくだけだった。
その目の前で、選手たちがコートに散っていく。
コートの両端には、金属光沢を帯びた高さ2.5メートル・幅8メートルの巨大な壁。
ここが、ゴールとなる。
「それでは……試合、始め!」
審判役の者が魔法で音を響かせ、試合が始まった。
選手たちは、手に持った硬質の革球を素早くパスし合い、ドリブルし、壁をめがけて一気に距離を詰めていく。
バスケットボールに似たルールだが、決定的に違うのは、ゴールの仕組みとポジションの役割分担だった。
「インパクトボールでは、オフェンスの2名は自陣に戻ってディフェンスに参加することはできません」
ゼクスが小声で補足する。
「つまり常に“オフェンス5人 対 ディフェンス3人”の構図になるのです。得点が入りやすく、試合が動きやすいのが特徴ですな」
ライザルドは頷くが、やはり口を開くことはなかった。
ただその目は、わずかに鋭さを増していた。
バスケと同じく、選手たちは3歩以内に一度ボールを地面にバウンドさせる必要がある。
さらに、足によるワンタッチも許されていた。
このワンタッチは一度限りだが、味方選手にボールが触れると再び使用が可能となる。
そのため、連携次第で巧みに何度も足を使ったカットやパスが繰り出せる。
「ほら、あそこにいる二人が中心人物でしてな……」
ゼクスが指差した先には、ひとりの青年が仲間たちと声を掛け合い、必死に士気を高めている。
体格は大柄で、額に汗を浮かべながらも真剣なまなざし。
「彼が“キャプテン”のガロウ・スタイン。実直で仲間を大事にする熱血漢。今のチームの精神的支柱です」
一方、相手チームに立つもう一人の青年は、まるで舞うような動きでボールを操っていた。
鋭い目つき、挑発的な笑み。観客席の視線を一身に集めている。
「そして彼が“エース”のカイ=ヴェルグ。才能は文句なしですが、まぁ……協調性には難がありましてな」
試合が進むにつれ、ガロウは仲間たちを鼓舞しながら堅実なプレーを見せていく。
一方のカイは、味方を待たず、自分ひとりで攻め込み、シュートを放つ場面が目立っていた。
だが、その足技はまさに圧巻だった。
右足のワンタッチでボールを相手から奪い、そのまま二人を抜き去ってジャンプ。
空中で体をひねると、左足のキックでボールをゴールへと叩き込む。
壁にぶつかったボールは“ドォンッ”と重々しい音を響かせ、掲示板には【8】の数字が浮かび上がった。
「ほう、8点か……。かなりの衝撃だったようじゃな」
ライザルドが初めて声を発したが、それ以上の感想は語らなかった。
カイは得点後も胸を張って歩き、味方の視線も意に介さずベンチへと戻っていった。
「彼のような個は必要でもあるのですが……チーム競技である以上、調和が鍵になりますな」
また、コート全体には魔法結界が張られており、選手たちの魔法の使用は厳しく制限されている。
「使えるのは“攻撃力強化”と“防御力強化”のみ。属性魔法は禁止。炎や雷が飛び交えば試合になりませんし、スピード強化を許すと、観客が目で追えなくなる」
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ライザルドは静かに試合を見守り続けた。
声を出すことはなく、ただ選手たちの動き、魔法の使い方、そしてチームの連携を細かく見ていた。
「……何かお気づきのことはありますか?」
王がそっと尋ねるが、ライザルドはわずかに首を横に振った。
「いや、わしはただ……見ているだけですよ」
その表情には、やはり何かを思案しているような影が差していた。
ゼクスが横で小さく笑う。
「黙して語らず……さすがは、かつて最強の魔法騎士殿ですな」
競技場に響くボールの衝突音が、練習試合の熱気を高めていく。
その音の先で、王国の未来を担う者たちが、着実にその技を磨いていた。
ライザルドの視線は、その全てを逃さず、静かに見つめ続けていた――。
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