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逸材を求めて
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セリオス王国王宮──。
晴天の午後、グラフェスに向けた戦略会議が開かれていた。長い楕円形の卓を囲むのは、国王アレクシオン・セリオス八世、騎士団長ゼクス、そして王の信頼厚き側近たち。そこに、淡く輝く半透明の姿で座すライザルドの姿もあった。
「武、知、衝撃の三試練、いずれも視察していただいたが……ライザルド殿、いかがであったか」
王が静かに問いかけると、ライザルドは目を閉じてしばし沈黙し、やがてゆっくりと口を開いた。
「……立派な候補たちじゃ。しかし──もう少し、探してみたくなりましてな。もっとどこかに、まだ眠っておる逸材がいるかもしれぬと思うたのです」
その言葉に、ゼクスが眉をひそめた。
「眠っている、だと? この国のすべての軍事、学術、競技の機関を巡ったというのに、まだ見ぬ人材がいると?」
「若者すべてが表舞台に立っておるとは限りませんよ。わしがいた世界でも、名もなき者の中に、英雄はおったもんですじゃ」
ライザルドの言葉は柔らかいが、芯の強さを感じさせた。
側近の一人が興味深そうに口を挟む。
「……では、ライザルド様。お伺いしてもよろしいでしょうか。この国の人口をご存じですか?」
「うむ。そういえば、聞いたことがなかったのう。どれほどじゃ?」
「現在、セリオス王国の人口はおよそ700万人です。大陸全体の人口がおよそ2億5000万人ですので、我が国は十二国中で最も少ない規模となります」
その報告に、ライザルドは小さく目を見開いた。
「……ふむ、700万。それは、思ったよりも多いのう。これだけおれば、どこかに眠れる才はあるやもしれん」
王が目を伏せ、静かに語り始めた。
「この国の人口が最下位である理由──それは長年、グラフェスで最下位を取り続けてきたことにある。強国に憧れ、若者たちは皆、夢を持って他国へ渡る。大国はそれを喜び、我が国の才を吸い取ってゆく」
「……」
「だからこそ、私はこのグラフェスで優勝したいのだ。弱国のままでは、未来は変わらぬ。執政権を握り、誇れる国へと育て直す。」
王のその言葉に、ライザルドはゆっくりと頷いた。
「わしが大会に出られぬ以上、できることは限られておる。しかし……人を見る目には、いささか自信がありますじゃ。わしに一年、旅をさせてくださらぬか。この国を巡り、鍛えられる芽を探したい」
王とゼクスが目を合わせる。
「国を……旅する、と?」
「人と出会わずして、才は見つかりませんからな。わしのような風変わりな存在でも、人々に驚かれぬよう、準備が必要かもしれんが……」
その瞬間、ゼクスが小さく鼻で笑った。
「……ふん、また妙なことを言い出すかと思えば、意外と理に適っているな」
王は笑みを浮かべ、力強く頷いた。
「よかろう。ライザルドよ、お前に一年を預けよう。その旅が、この国の未来に繋がると信じている。どうか思うがまま、動いてくれ」
「……感謝いたしますじゃ」
会議室の空気が、どこか明るく、希望に満ちていた。
こうして、セリオス王国の地を巡る“人材発掘の旅”が、ひそかに幕を開けようとしていた──。
晴天の午後、グラフェスに向けた戦略会議が開かれていた。長い楕円形の卓を囲むのは、国王アレクシオン・セリオス八世、騎士団長ゼクス、そして王の信頼厚き側近たち。そこに、淡く輝く半透明の姿で座すライザルドの姿もあった。
「武、知、衝撃の三試練、いずれも視察していただいたが……ライザルド殿、いかがであったか」
王が静かに問いかけると、ライザルドは目を閉じてしばし沈黙し、やがてゆっくりと口を開いた。
「……立派な候補たちじゃ。しかし──もう少し、探してみたくなりましてな。もっとどこかに、まだ眠っておる逸材がいるかもしれぬと思うたのです」
その言葉に、ゼクスが眉をひそめた。
「眠っている、だと? この国のすべての軍事、学術、競技の機関を巡ったというのに、まだ見ぬ人材がいると?」
「若者すべてが表舞台に立っておるとは限りませんよ。わしがいた世界でも、名もなき者の中に、英雄はおったもんですじゃ」
ライザルドの言葉は柔らかいが、芯の強さを感じさせた。
側近の一人が興味深そうに口を挟む。
「……では、ライザルド様。お伺いしてもよろしいでしょうか。この国の人口をご存じですか?」
「うむ。そういえば、聞いたことがなかったのう。どれほどじゃ?」
「現在、セリオス王国の人口はおよそ700万人です。大陸全体の人口がおよそ2億5000万人ですので、我が国は十二国中で最も少ない規模となります」
その報告に、ライザルドは小さく目を見開いた。
「……ふむ、700万。それは、思ったよりも多いのう。これだけおれば、どこかに眠れる才はあるやもしれん」
王が目を伏せ、静かに語り始めた。
「この国の人口が最下位である理由──それは長年、グラフェスで最下位を取り続けてきたことにある。強国に憧れ、若者たちは皆、夢を持って他国へ渡る。大国はそれを喜び、我が国の才を吸い取ってゆく」
「……」
「だからこそ、私はこのグラフェスで優勝したいのだ。弱国のままでは、未来は変わらぬ。執政権を握り、誇れる国へと育て直す。」
王のその言葉に、ライザルドはゆっくりと頷いた。
「わしが大会に出られぬ以上、できることは限られておる。しかし……人を見る目には、いささか自信がありますじゃ。わしに一年、旅をさせてくださらぬか。この国を巡り、鍛えられる芽を探したい」
王とゼクスが目を合わせる。
「国を……旅する、と?」
「人と出会わずして、才は見つかりませんからな。わしのような風変わりな存在でも、人々に驚かれぬよう、準備が必要かもしれんが……」
その瞬間、ゼクスが小さく鼻で笑った。
「……ふん、また妙なことを言い出すかと思えば、意外と理に適っているな」
王は笑みを浮かべ、力強く頷いた。
「よかろう。ライザルドよ、お前に一年を預けよう。その旅が、この国の未来に繋がると信じている。どうか思うがまま、動いてくれ」
「……感謝いたしますじゃ」
会議室の空気が、どこか明るく、希望に満ちていた。
こうして、セリオス王国の地を巡る“人材発掘の旅”が、ひそかに幕を開けようとしていた──。
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