弱国コンサルタント

ひがしの くも

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新たなる出会い

静けさの町

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修行と練習を続けながら旅を続けるライザルド一行。
ディーノは宿に残ってインパクトボールの自主練に励み、それ以外の仲間は武術の修行を日々こなしていた。

ライザルドの目に叶うような逸材はなかなかおらず、ディーノが加入して、もう4ヶ月が経った。

アルネは基礎がしっかりと体に染み付き、頼もしくなってきた。

リィナは相変わらず毎日型をこなし、時折、アルネやゼクス、イリスと手合わせしている。

イリスは本能の剣に目覚めたのは、あの日1日だけで、ずっと虐められていた記憶からか、気が弱く、本能を解放できないままに修練に励んでいる。

ディーノはかなりボールの扱いに慣れてきた。
日課で毎日数時間ダンスを踊るが、これは基礎体力、体幹を鍛えるのに役にたっているとライザルドは考えていた。

ゼクスは日に日に垢抜けていく。
今まで騎士団で重責を担っており、固くなっていた頭が柔らかくなっていっているのか、初めて会った時とだいぶキャラが変わってきているように思う。
それでも国を想う気持ちは少しも薄れていない。

そんな修練の日々を重ねながら、いくつかの町を巡った末に、一行が辿り着いたのは、山岳地帯の奥深く──霧深い峠を越えた先に現れる、まるで別世界のような小さな町だった。

町の名は「月影(つきかげ)」

木造の建物が静かに並び、赤い瓦屋根と白い漆喰の壁が整然と統一されている。
石畳の道、寺院風の門、竹林を背景にした茶屋、風に揺れる暖簾。まるで東洋の武家文化が色濃く残る侍の国のような様相。

しかし──

リィナ「……でも、なんか変わったところね。町並みはこんななのに、町の人たち、見た目も話し方も、他のセリオス国民と変わらない。」

アルネ「服も普通だし、言葉も標準語だね。建物だけ浮いてる感じ」

ゼクス「私も初めて来たが……こんな辺境に、この様な町があったとは。しかもなんで観光客まで?」

確かに町は思った以上ににぎわっていた。
お土産屋や焼き団子の屋台が並び、道行く人々は楽しげに土産を選び、食べ歩きをしている。

「よう、兄ちゃんたち旅の人かい? ここの竹笛、音色が綺麗だよ~」
「峠越えたご褒美には“影団子”がおすすめさね!」

町の人々は明るく、親しみやすい雰囲気。

しかしライザルドは町を散策しながらも妙な違和感を覚えていた。

一行は町を散策しながら、茶屋に立ち寄ったり、橋の上から渓谷の景色を楽しんだりしながら過ごす。
途中、刀のような装飾品を売る骨董屋や、修行者向けの温泉施設も見かけた。

リィナが和菓子に目を輝かせている傍ら、イリスは茶屋でおっかなびっくり熱い抹茶をすする。
ディーノは町民に得意のダンスを披露している。

そんな中、ライザルドだけは何かを感じ取り、周囲を何度も見渡していた。


3時間ほど町を歩き回ったあと、ライザルドは静かに口を開く。

ライザルド「ゼクス、この町の町長と話がしてみたい。少し、気になることがある」

ゼクス「ライザルド殿。どうされましたか……?」

多少戸惑いつつも、ライザルドのことだから、何か考えがあるはずと、ゼクスは王国騎士団長の身分を使って町長との面会を取り付けた。



町長の屋敷にて

町長「──ようこそ、旅の皆さま。こんな辺境までお越しいただき、恐縮です」

ライザルドは一礼しつつ、静かに切り出す。

ライザルド「率直に申し上げよう。この町……何らかの“諜報活動”に関わっているのではないか?」

町長と側近が、ぴくりと眉を動かした。

ゼクス「ライザルド殿!? 何言ってるんですかいきなり!」

ライザルド「確証があったわけではない。しかし、この町の人々……足音が異様に静かだ。呼吸も浅く、目の動きも読みづらい。気配を消す訓練を受けているとしか思えない」

ライザルドがこの町に来てからずっと感じていた違和感はこれだった。
これだけ活気に溢れた町なのに、人の気配が少なく感じていたのだ。

町長「……驚きました。まさか、旅人の身でここまで見抜かれるとは……」

町長は観念したように口を開いた。

この町「月影」は、セリオス王国の影に存在する秘密の諜報拠点である。
150年前、王ではなく「宰相」の一存で密かに創設された宰相直属の“影の眼”。その存在は、歴代宰相のみに継承され、王ですら存在を知らぬ。

町民の多くはスパイや偵察兵、諜報員として育てられ、極秘任務のために全国へ散っている。町の賑わいも、そのカムフラージュの一環にすぎなかった。

ライザルド「なるほど……すべてが納得できた。だが、この機能を完全に外部に知られぬまま保ち続けていたとは、恐れ入った」

町長「それが“影”の役目でございます。我々は見られても気づかれず、語られても残らぬ者であるべきなのです」

ゼクス「……そんな場所が、セリオスの中に……」

ライザルド「この月影の力、どうか私たちに貸していただけないだろうか?」

ライザルドは自分たちの旅の経緯を説明する。

町長「皆様の使命、そして国を想う気持ちは伝わってきました。
しかし何度も言うように私達は影の存在。
しかも王すら存在を知りません。
私達は宰相の許可なく表舞台に立つことはできませぬ。」

ライザルド「150年も経つというのに、素晴らしき忠義じゃな。」


町長「王国の光である、騎士団長様に知られてしまいましたが、国王にはどうか御内密にしていただきたく存じます」

町長は深くお辞儀をした。

そんな町長を横目にライザルドは考え事をしていた。
(この“月影”……うまくすれば、私たちの助けにもなるかもしれん。宰相の許可…か。)
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