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54・お肉
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わたし達はこっそり会場に戻ってきた。
会場はさっきと変わらず貴族の子供達でごった返している。この中では誰がいて誰がいないのか確認する事は難しそうなので、きっとわたし達がいなかった事など誰も気に止めてはいないだろう。
「さぁて、これからどうする?」
「うーん」
セルシュにそう質問され、わたし達は少し考えこんだ。
周りを見ても人数が多すぎて、誰かに挨拶なんて言うのも探すところから挫けそうな感じ。と言ってもわたしには他に知り合いがいる訳ではないんだけどさ。本来ならここで人脈を広げるのが一番なんだろうけど、元々面倒くさがりのわたしにはここで開拓する根性なんてないんです。その辺は学園に入学してからでもいいかなーなんて横着な事を思っている。せめてもう少し相手を見極められる環境じゃないと…色々と面倒くさそう。
しかもセルシュ以外はこれ程の規模のパーティーには初参加なので、この雰囲気に圧倒されてしまっている訳で。これからと言われても何をして良いのやら全く見当も付かない。
「あ!そうだ」
急にアイラは何か閃いたのかぱあっと笑顔になって声をあげた。
「アイラ、何か思い付いたの?」
「あ、あの…お肉、食べたいな、って……」
皆がアイラを見たのが恥ずかしいのか、内容が令嬢らしくないからなのか段々俯いて小声になりながらも主張した。
さっきアイラがわたし達と別行動をした時に見せたお肉への熱い視線を思い出した。そうだ。アイラはデザートよりお肉の方が好きなんだっけ。
「アイラヴェント様、それでしたらセルシュ様がとてもお詳しいですわ。一緒におすすめを教えていただきましょう」
その提案にリーンが優しくアドバイスをすると、アイラは大きな瞳をキラキラさせてセルシュの事を見た。するとセルシュはニッと口角をあげた。得意分野に興味を持たれたのが本当に嬉しそうだ。
「おう!一番旨いの教えてやるぞ。あっちのコーナーの肉の方ががっつり食えるぞ」
「よろしくお願いいたします」
楽しそうに颯爽と歩くセルシュの後をアイラとリーンはうきうきしながらついていく。
今は何故かセルシュとアイラが楽しそうにしていても気にならなかった。
さっきのもやもやはなんだったのだろう。
「ほら、クルーディスも行くぞ!早く来い」
考え込んでいたらセルシュに急かされたので、この事は後回しにして皆の後を追う事にした。
確かにセルシュの薦める肉料理はどれも見た目からして最高のものだとわかる。もしかして全部を確認済なのかと思う程ハズレがないんだよね。
アイラは本当に幸せな顔をして取り分けられるお肉を目をキラキラさせて見つめている。アイラが幸せそうな顔をしているのを見ると、何だかこっちまで嬉しくなった。
わたしはそんなに食べられないし、セルシュの盛り付けたお皿からお薦めの中でも更に厳選して選んで食べればいいかな。どんだけ量が多くてもきっとセルシュがぺろりと平らげるだろうしね。わたしはそのおこぼれだけで多分お腹いっぱいになるんだろうし。
「お前の食事の方がよっぽど令嬢っぽいよな」
セルシュはわたしの肩に腕を回し、わたしが持たされたお皿からお肉をつまんでいた。
「何かそれ酷くない?僕は女の子じゃないんだけど」
「いや、あれを見てからだとなぁ」
その指さした先にはお上品に食事をしているリーンとアイラ……なのだが、アイラのお皿にはちょっと多目のお肉があった。セルシュに勧められたお肉をうんうんと頷きながらそのまま受け入れるものだから、お皿の上は片手で持つのが辛そうな量になっている。でもその重そうな肉山を幸せそうに抱えて食べているのは、見た目はともかく何だか微笑ましかった。
「食べ方はちゃんとお上品だし、あれはあれでいいんじゃない?」
「そこだけはレイラが頑張ったんだろ」
「うーん、惜しい!」
予想外にアイラの食べ方はその肉山にそぐわずとても綺麗で上品だった。お皿の中身がお上品な量だったら百点だったのに。残念!今度アイラの家に行ったらお上品に食事を口に運んでいた事だけレイラに教えてあげよう。
「ほらお前はもっと食えって。お嬢に負けてるぞ」
セルシュはそう言って自分のフォークのお肉をわたしの口元に持ってきた。
アイラの中身は食べ盛りであろう男の子、だけど見た目は可愛い年下の女の子だ。何だか負けるのは悔しい気がしてそのお肉を口に入れた。その肉料理は柔らかく、味付けも思った以上に素晴らしい。流石セルシュセレクトだね。
「セルシュ、これ凄く美味しい」
「だろ?これは俺の中でも一番の肉料理なんだよな」
素直に褒めるとセルシュは本当に嬉しそうに答えてくれた。よっぽどこの料理を気に入っているんだろう。
それにしてもセルシュってばやっぱり全部の味を知ってるでしょ。いつ食べたのさ?
「ほらまだあるぞ。もっと食えよ」
いや、次から次へと口に入れられても飲み込む暇がないってば!爽やかな笑顔で何してんだっ!
「むーっ!」
流石に口いっぱいにお肉を入れたまま話す事は出来ないので、その皿ごと身体をセルシュから反らした。セルシュこそやってる事、貴族のご子息じゃないからね!食べ物で遊んでんじゃない!
「お?どした?」
まだお肉を飲み込み切れず、口はもぐもぐしながらも目だけでセルシュに抗議する。
「ぷっ。食うか怒るかどっちかにしてくれ。面白すぎるから」
誰のせいだっ!どっちも譲れない状態だってば。
「ほら飲み物」
セルシュが飲み物を渡してくれたので流し込む様に飲んだ。はぁ、やっと喋れる。でも公の場なのでおおっぴらに怒れない。
多分セルシュはそれをわかっててからかっているのだろう。くーっ!ムカつく!
「……後で覚えてなよ」
「おーこわ」
小さい声でセルシュに文句を言ったらおどけた様に肩を竦めて逃げて行った。
ほんとにもう!人を使って遊ぶのは止めてくれないかな!いつもこういう時には上手くかわされて逃げられてしまう。
「お兄様ってばセルシュ様にからかわれてぷんぷんしていますわ」
「……そうですね」
リーンはいつもの事なので面白そうにそれを見ていたが、それをアイラが複雑な表情で見ていた事にわたしは気付かなかった。
◆ ◆ ◆
読んでいただきましてありがとうございます。
会場はさっきと変わらず貴族の子供達でごった返している。この中では誰がいて誰がいないのか確認する事は難しそうなので、きっとわたし達がいなかった事など誰も気に止めてはいないだろう。
「さぁて、これからどうする?」
「うーん」
セルシュにそう質問され、わたし達は少し考えこんだ。
周りを見ても人数が多すぎて、誰かに挨拶なんて言うのも探すところから挫けそうな感じ。と言ってもわたしには他に知り合いがいる訳ではないんだけどさ。本来ならここで人脈を広げるのが一番なんだろうけど、元々面倒くさがりのわたしにはここで開拓する根性なんてないんです。その辺は学園に入学してからでもいいかなーなんて横着な事を思っている。せめてもう少し相手を見極められる環境じゃないと…色々と面倒くさそう。
しかもセルシュ以外はこれ程の規模のパーティーには初参加なので、この雰囲気に圧倒されてしまっている訳で。これからと言われても何をして良いのやら全く見当も付かない。
「あ!そうだ」
急にアイラは何か閃いたのかぱあっと笑顔になって声をあげた。
「アイラ、何か思い付いたの?」
「あ、あの…お肉、食べたいな、って……」
皆がアイラを見たのが恥ずかしいのか、内容が令嬢らしくないからなのか段々俯いて小声になりながらも主張した。
さっきアイラがわたし達と別行動をした時に見せたお肉への熱い視線を思い出した。そうだ。アイラはデザートよりお肉の方が好きなんだっけ。
「アイラヴェント様、それでしたらセルシュ様がとてもお詳しいですわ。一緒におすすめを教えていただきましょう」
その提案にリーンが優しくアドバイスをすると、アイラは大きな瞳をキラキラさせてセルシュの事を見た。するとセルシュはニッと口角をあげた。得意分野に興味を持たれたのが本当に嬉しそうだ。
「おう!一番旨いの教えてやるぞ。あっちのコーナーの肉の方ががっつり食えるぞ」
「よろしくお願いいたします」
楽しそうに颯爽と歩くセルシュの後をアイラとリーンはうきうきしながらついていく。
今は何故かセルシュとアイラが楽しそうにしていても気にならなかった。
さっきのもやもやはなんだったのだろう。
「ほら、クルーディスも行くぞ!早く来い」
考え込んでいたらセルシュに急かされたので、この事は後回しにして皆の後を追う事にした。
確かにセルシュの薦める肉料理はどれも見た目からして最高のものだとわかる。もしかして全部を確認済なのかと思う程ハズレがないんだよね。
アイラは本当に幸せな顔をして取り分けられるお肉を目をキラキラさせて見つめている。アイラが幸せそうな顔をしているのを見ると、何だかこっちまで嬉しくなった。
わたしはそんなに食べられないし、セルシュの盛り付けたお皿からお薦めの中でも更に厳選して選んで食べればいいかな。どんだけ量が多くてもきっとセルシュがぺろりと平らげるだろうしね。わたしはそのおこぼれだけで多分お腹いっぱいになるんだろうし。
「お前の食事の方がよっぽど令嬢っぽいよな」
セルシュはわたしの肩に腕を回し、わたしが持たされたお皿からお肉をつまんでいた。
「何かそれ酷くない?僕は女の子じゃないんだけど」
「いや、あれを見てからだとなぁ」
その指さした先にはお上品に食事をしているリーンとアイラ……なのだが、アイラのお皿にはちょっと多目のお肉があった。セルシュに勧められたお肉をうんうんと頷きながらそのまま受け入れるものだから、お皿の上は片手で持つのが辛そうな量になっている。でもその重そうな肉山を幸せそうに抱えて食べているのは、見た目はともかく何だか微笑ましかった。
「食べ方はちゃんとお上品だし、あれはあれでいいんじゃない?」
「そこだけはレイラが頑張ったんだろ」
「うーん、惜しい!」
予想外にアイラの食べ方はその肉山にそぐわずとても綺麗で上品だった。お皿の中身がお上品な量だったら百点だったのに。残念!今度アイラの家に行ったらお上品に食事を口に運んでいた事だけレイラに教えてあげよう。
「ほらお前はもっと食えって。お嬢に負けてるぞ」
セルシュはそう言って自分のフォークのお肉をわたしの口元に持ってきた。
アイラの中身は食べ盛りであろう男の子、だけど見た目は可愛い年下の女の子だ。何だか負けるのは悔しい気がしてそのお肉を口に入れた。その肉料理は柔らかく、味付けも思った以上に素晴らしい。流石セルシュセレクトだね。
「セルシュ、これ凄く美味しい」
「だろ?これは俺の中でも一番の肉料理なんだよな」
素直に褒めるとセルシュは本当に嬉しそうに答えてくれた。よっぽどこの料理を気に入っているんだろう。
それにしてもセルシュってばやっぱり全部の味を知ってるでしょ。いつ食べたのさ?
「ほらまだあるぞ。もっと食えよ」
いや、次から次へと口に入れられても飲み込む暇がないってば!爽やかな笑顔で何してんだっ!
「むーっ!」
流石に口いっぱいにお肉を入れたまま話す事は出来ないので、その皿ごと身体をセルシュから反らした。セルシュこそやってる事、貴族のご子息じゃないからね!食べ物で遊んでんじゃない!
「お?どした?」
まだお肉を飲み込み切れず、口はもぐもぐしながらも目だけでセルシュに抗議する。
「ぷっ。食うか怒るかどっちかにしてくれ。面白すぎるから」
誰のせいだっ!どっちも譲れない状態だってば。
「ほら飲み物」
セルシュが飲み物を渡してくれたので流し込む様に飲んだ。はぁ、やっと喋れる。でも公の場なのでおおっぴらに怒れない。
多分セルシュはそれをわかっててからかっているのだろう。くーっ!ムカつく!
「……後で覚えてなよ」
「おーこわ」
小さい声でセルシュに文句を言ったらおどけた様に肩を竦めて逃げて行った。
ほんとにもう!人を使って遊ぶのは止めてくれないかな!いつもこういう時には上手くかわされて逃げられてしまう。
「お兄様ってばセルシュ様にからかわれてぷんぷんしていますわ」
「……そうですね」
リーンはいつもの事なので面白そうにそれを見ていたが、それをアイラが複雑な表情で見ていた事にわたしは気付かなかった。
◆ ◆ ◆
読んでいただきましてありがとうございます。
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