うとうと、すやぁ。

湊賀藁友

文字の大きさ
3 / 4

目覚め、捜索。

しおりを挟む
 空が白み始めた早朝、魔王は体内時計に従いぱちりと目を覚ます。

「ふあぁ……ん~、今日も良い朝だ」

 窓の外を見てからぐぐ、と伸びをした魔王は、ベッドの隣に置いてある猫用ベッドの上で寝息をたてるドラゴンを見て、昨日のことを一気に思い出した。

 そうだ、猫を拾ったんだっけ。

「……朝ごはん作ってあげないと」

 魔王はそう呟くと、ベッドから立ち上がり厨房へと向かうのだった。


 さて。魔王のいなくなった寝室では、近くにいた相手の気配がなくなったことに気付いたドラゴンがゆっくりとその目蓋を開いた。赤子とは言えドラゴン。人の気配には敏感なのだ。

「にゃぅ……?」

 きょろきょろと寝惚け眼で辺りを見回して、昨日ご飯をくれた人__魔王が昨日いた筈の場所にいないことに気付いたドラコンは何だか急に不安感がこみ上げてきた。
 本能からばさばさと翼を動かしながら四つん這いで何とか猫用ベッドから降りると、あの人はどこだろう、とばかりに部屋中を歩き回る。

 よたよた歩きながらベッドの下やカーテンの裏、そして寝室と繋がっているバルコニーまでも隅から隅まで隈無く探したが、ご飯をくれた人は見つからない。

 そうなればと閉まっている扉に近付いて外に出ようとしたドラゴンは、そこではた、と動きを止めてしまった。


 __そう。
 ドアノブに、手が届かないのである。


 何とか手を届かせるため脚と翼を動かしなんとか飛ぼうとしてみるが、まだ碌に筋肉のついていない脚と未発達の翼ではただ脚を曲げ伸ばしすることしか出来なかった。

 万事休す。いよいよどうしようもなくなったドラゴンが、扉の前でみぃみぃと鳴きだしたその時。

「あ、起きちゃってたんだね。ただいまぁ」

 どれだけ頑張っても開かなかった扉がゆっくりと開き、そこから魔王がひょっこりと顔を出した。

「みぃ、みゃぁ……!」

 扉が開いたことにも魔王がいたことにも安心したのだろう。
 魔王の顔を見た直後、ドラゴンはひしりと魔王の脚に抱きついた。

「わわ、どうしたの?」

 抱きつきながら頭をぐりぐりと脚に擦り付けてくるドラゴンを見た魔王は、片手に持っていた哺乳瓶を浮かし視線を合わせるようにドラゴンを両手で抱えあげようとする。が、ドラゴンは中々離れようとしないどころか、より一層強く脚にしがみついてくる。

「にぁ……にぅ……」
「__もしかして、寂しかったの?」

 そう勘づいた魔王は少しの間目を丸くしていたが、すぐにドラゴンの頭を優しく撫でた。

「ね、もう一人にしないから、おててを離してくれるかな。どこかに行ったりしないから」

 言葉が通じたのか、それとも優しい撫で方に離れる気がないと分かったのか。分からないが、とにかく魔王の働きかけにドラゴンは漸く腕の力を緩めてくれた。

「ありがとう」

 魔王はそう言いながらドラゴンを改めて両手で抱えあげて抱き締めると、今度は子どもを慰めるように優しく背中をさする。その行動にクルクルと喉を鳴らして甘えるドラゴンに、魔王はゆったりと微笑んだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

私は逃げ出すことにした

頭フェアリータイプ
ファンタジー
天涯孤独の身の上の少女は嫌いな男から逃げ出した。

処理中です...