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日常、始まる。
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「可愛い~」
にゃあにゃあと鳴くドラゴンに驚きもせず、というか猫だと思い込んだままで、魔王はドラゴンを抱き締めた。
一応自分が力を込めすぎると生物は死んでしまうことくらいは知っていたので、あくまでも優しく、押し潰してしまわないように慎重に力加減をしながら、ではあるのだが。
「みぃ、にゃあ、にゃう」
「?」
しかしドラゴンが必死に何かを訴える様子を見ると、自分から少し離し、その黒い瞳でドラゴンをじっと見つめた。
「…………あ、もしかしてご飯が欲しいのかなぁ。
えーっと子猫のごはんについての本は……そうそう、『猫ズはーとEX』だ!」
本の題名を告げた瞬間、魔王の手元に一冊の本が現れた。
表紙の真っ白の台紙にはポップなピンクの字で『猫ズはーとEX』と書いてある。魔王が告げた本の題名そのままである。
「子猫用ミルク……うーん、これって牛乳でも良いのかな。あ、大丈夫そう。
ふんふん、子猫用ミルクを牛乳で代用したい時は…………」
ドラゴンを抱えながら本を浮かして読みたい内容をしっかりと確認した魔王は、「よし!」と本を閉じ厨房へと転移しようとして、ピタリと動きを止めた。
「あ、そういえばワープは人間の大人でも酔う子がいるらしいし、子猫を連れてっていうのは良くないか。でも目を離すわけにもいかないし……ちょっと時間がかかるけど、一緒に厨房まで行こっか」
「みゃぅ?」
「お腹空いてると思うけど、ちょっと待ってね」
すとん、と本館の近くに降りた魔王は、エントランスに入った辺りで自分の伸ばしっぱなしの髪がドラゴンに少し当たっていることに気付き、魔法で所謂ポニーテール状に結い上げた。くすぐったいのは嫌だろうとドラゴンに気を遣ったのだ。
そんな魔王は到着した厨房でドラゴンを抱えて冷蔵庫を開き牛乳と卵を取り出すと、魔法を使い牛乳を一瞬で温め、卵黄と砂糖を入れてかき混ぜた。
「あとちょっとだからね、ごめんね」
出来上がったミルクを哺乳瓶に入れると、瓶に触れて人肌までまた魔法で冷まし、完成である。
調べたやり方通りにミルクをあげると、ドラゴンは物凄い勢いでミルクを飲み始めた。随分お腹が空いていたようだ。
「いっぱい飲むんだよ~」
やがてドラゴンがミルクを飲みきり、魔王はご機嫌で子猫の背中をさすった。げっぷを出させる為だ。と、直後。
「けぷっ」
げっぷ音に似合わぬゴオッ!という音をたてて、火の玉が魔王の目の前を通過した。
「あれ?猫って火を吹くんだっけ?」
「にぅ?」
「……そっか!君は火を吹ける種類の猫なんだね!えへへ、すごーい!」
__が、普通の人間なら大火傷、普通の家なら大火事のこの火球は、彼と彼の城にとってただの児戯に過ぎなかった。
魔王が再びドラゴンを抱えて少し撫でると、ドラゴンはうとうとと船を漕ぎ始める。
「あっ、おねむかぁ。今日はぽかぽかで良いお天気だからね、一緒にお昼寝しよう」
そのまま寝室へ向かった魔王は、自分のベッドの隣へ魔法で出現させた猫用ベッドにドラゴンを寝かせ、自分はドラゴンを眺めながらゆっくりと瞼を下ろすのだった。
結局、この日一日魔王はドラゴンのことを猫だと思い込んだままであった。
にゃあにゃあと鳴くドラゴンに驚きもせず、というか猫だと思い込んだままで、魔王はドラゴンを抱き締めた。
一応自分が力を込めすぎると生物は死んでしまうことくらいは知っていたので、あくまでも優しく、押し潰してしまわないように慎重に力加減をしながら、ではあるのだが。
「みぃ、にゃあ、にゃう」
「?」
しかしドラゴンが必死に何かを訴える様子を見ると、自分から少し離し、その黒い瞳でドラゴンをじっと見つめた。
「…………あ、もしかしてご飯が欲しいのかなぁ。
えーっと子猫のごはんについての本は……そうそう、『猫ズはーとEX』だ!」
本の題名を告げた瞬間、魔王の手元に一冊の本が現れた。
表紙の真っ白の台紙にはポップなピンクの字で『猫ズはーとEX』と書いてある。魔王が告げた本の題名そのままである。
「子猫用ミルク……うーん、これって牛乳でも良いのかな。あ、大丈夫そう。
ふんふん、子猫用ミルクを牛乳で代用したい時は…………」
ドラゴンを抱えながら本を浮かして読みたい内容をしっかりと確認した魔王は、「よし!」と本を閉じ厨房へと転移しようとして、ピタリと動きを止めた。
「あ、そういえばワープは人間の大人でも酔う子がいるらしいし、子猫を連れてっていうのは良くないか。でも目を離すわけにもいかないし……ちょっと時間がかかるけど、一緒に厨房まで行こっか」
「みゃぅ?」
「お腹空いてると思うけど、ちょっと待ってね」
すとん、と本館の近くに降りた魔王は、エントランスに入った辺りで自分の伸ばしっぱなしの髪がドラゴンに少し当たっていることに気付き、魔法で所謂ポニーテール状に結い上げた。くすぐったいのは嫌だろうとドラゴンに気を遣ったのだ。
そんな魔王は到着した厨房でドラゴンを抱えて冷蔵庫を開き牛乳と卵を取り出すと、魔法を使い牛乳を一瞬で温め、卵黄と砂糖を入れてかき混ぜた。
「あとちょっとだからね、ごめんね」
出来上がったミルクを哺乳瓶に入れると、瓶に触れて人肌までまた魔法で冷まし、完成である。
調べたやり方通りにミルクをあげると、ドラゴンは物凄い勢いでミルクを飲み始めた。随分お腹が空いていたようだ。
「いっぱい飲むんだよ~」
やがてドラゴンがミルクを飲みきり、魔王はご機嫌で子猫の背中をさすった。げっぷを出させる為だ。と、直後。
「けぷっ」
げっぷ音に似合わぬゴオッ!という音をたてて、火の玉が魔王の目の前を通過した。
「あれ?猫って火を吹くんだっけ?」
「にぅ?」
「……そっか!君は火を吹ける種類の猫なんだね!えへへ、すごーい!」
__が、普通の人間なら大火傷、普通の家なら大火事のこの火球は、彼と彼の城にとってただの児戯に過ぎなかった。
魔王が再びドラゴンを抱えて少し撫でると、ドラゴンはうとうとと船を漕ぎ始める。
「あっ、おねむかぁ。今日はぽかぽかで良いお天気だからね、一緒にお昼寝しよう」
そのまま寝室へ向かった魔王は、自分のベッドの隣へ魔法で出現させた猫用ベッドにドラゴンを寝かせ、自分はドラゴンを眺めながらゆっくりと瞼を下ろすのだった。
結局、この日一日魔王はドラゴンのことを猫だと思い込んだままであった。
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