うとうと、すやぁ。

湊賀藁友

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日常、壊れる。

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 どこの王国にも属さないとある地に、一つの大きな城が建っていた。
 全面黒塗り。周囲にはマグマ。堅牢な城壁の外には強力な魔物が大量に生息する森が広がり、並大抵の者では辿り着くことすら出来ない城__魔王城。

 そんな魔王城の監視塔で、日の光をいっぱいに浴びながら寝転がる男が一人。
 伸ばしっぱなしながら邪魔にならないようにする為か前髪のみぱっつんと乱雑に切られた髪は、瞳と同じように真っ黒だ。尖った耳は、彼が少なくとも人間ではないことをはっきりと表している。
「暇だなぁ~」
 くぁ、とあくびを溢しながらごろごろとするパッと見二十代半ばのこの男がもし見張り係だったならば、恐らく今頃雇い主から雷を落とされていることだろう。しかしその心配はない。
 何故なら彼はこの城の主、魔王その人なのだから。
「こんなに暇だと太っちゃうよ~」
 ……いや、まったくそうは見えないのだが、たしかに魔王なのである。

 そんなぽわぽわ系魔王が眠気と戦いながら目を擦っていると、空から何かが物凄い勢いで落ちてきた。このままでは魔王城に衝突するだろうそれを見て流石のぽわぽわも起き上がる。

 あれなんだろう、隕石?

 そう考えた魔王は、途端に目をキラキラと輝かせた。焦るでも驚くでも恐怖するでもなく、未知の存在に心を躍らせたのだ。

 というのも、生まれた頃から魔王城でのんびりと暮らしてきた彼は、非常に、非っっっ常に世間のことに疎かったのである。
 純粋培養100%、子どもはどうやって生まれるのか質問すれば満面の笑みを浮かべて「コウノトリが運んでくるんだよ」と答えてくれるだろう。ショタか。

 さてさて、そんな彼は昔聞いた『隕石』という存在に胸を高鳴らせながら空へと浮かび、落下してくるソレを空中で受け止めた。
 …………ここまで無垢でもなんとかなってしまうのは、このでたらめな強さも原因の一つなのかもしれない。

 わくわくを隠さないままで腕の中のソレを確認した魔王は、しかしそのまま首を傾げた。

「んーと……たまご?」

 そう。受け止めたソレは隕石ではなく、城で飼っている鶏が産むような(と言ってもそれよりも大分大きいが)卵だったのだ。
 なんでたまごが空から?とハテナを浮かべる魔王の腕の中で、突如たまごがぱきぱきと音をたててひびをいれ始めた。

「わわっ!えっ!?僕そんなに力いれてないよね!?!?」

 あたふたと、しかしどうすることも出来ない男の腕の中のたまごは徐々に徐々に割れ__

 ぱきん!

 __やがて、たまごの中から漆黒の角と鱗と羽根を持つ、小さなドラゴンが顔を出した。

「にゃあ」

 ……あれ?

「わぁ!猫だぁ!!」

 んんん??????


 …………何はともあれ、斯くして魔王と猫(?)の日常が幕を開けたのである。
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