そして二人は妊娠した...............

鏡恭二

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最終話の前の前の前の前の話

 夕食を終えたまどか💛は、母をベッドに寝かせていた。

「……ごめんね、まどか💛……」

弱々しい声で母がつぶやく。

「ううん。いいの。だって、私は娘でしょ……」

二人で、少しだけ笑った。
でもその笑顔には、日々の疲れと切なさがにじんでいた。

 

その後、まどか💛は台所で食器を片付けていた。
そこへ、父が帰ってくる。

「ただいまー」

「おかえり……ご飯、用意してあるよ」

父は自分で電子レンジを操作しながら言った。

「……あれ、手……大丈夫か?」

「ううん、大丈夫。ありがとう」

水に触れた指先が少し赤くなっていた。
小さなあかぎれが、日々の繰り返しを物語っている。

(明日は……通院の日か……)
そう思いながら、再びまどか💛は黙々と食器を洗い続けた。

 

*** 

 

学校では、好美が渉に甘えるように話しかけていた。

「ここ、わかんなーい!」

猫なで声でノートを差し出す好美。
渉は少し笑いながら、丁寧に説明する。

クラス公認のカップルだった。

(相変わらず……仲がいいのね)

まどか💛は、窓の外を見つめながら、
ぽつりとそう思った。

 

「今日も一緒に帰ろっ!サイゼ行こう? そのあとカラオケも!」

「うん、いいね。行こうか」

そんな会話も、もう日常だった。

まどか💛は頬杖をつきながら、
興味がないふりをして、その言葉を聞き流していた。

 

*** 

 

週末。
まどか💛は母を連れて外出していた。

家にこもってばかりではよくない。
天気のいい日は、車椅子で街へ出るようにしている。

「今日は、どこに行こうか?」

「そうねぇ……久しぶりにお寿司が食べたいわ。スシローの……」

「じゃあ、行こう」

まどか💛は車を運転できない。
だから、母を連れて電車で移動することになる。

改札を通り、エレベーターに乗る。
ホームへ向かおうとしたそのとき――

扉が、勢いよく閉まりかけた。

(……きゃっ)

とっさに身を引いたまどか💛。
その瞬間、外からボタンを押してくれた人がいた。

「危ないっ!」

 

扉が再び開いた。
そして、目の前にいたのは――

「……ありがとう」

彼の顔を見た瞬間、胸が跳ねた。

渉だった。
その横には、好美の姿も。

「香月さん……」

「香月さんだー!」

母が尋ねてくる。

「知り合い?」

「……うん。同じクラスの」

「吉川です」
「西田です」

互いに挨拶を交わす。

 

「じゃあ……また学校でね」

そう言って、まどか💛は小さく手を振った。

 

その直後だった。
頬が熱くなる。

(な、なにこれ……)

胸の奥が、ふわりと温かくなる。
でも同時に、なぜか少しだけ切なかった。

「大丈夫かい?」

隣の母が優しく声をかけてくる。

「……うん、大丈夫」

そう答えながら、まどか💛は初めて、
“恋”という言葉の輪郭に触れた。

それが、
まどか💛の恋のはじまりだった。

 

そんな、やさしくて、静かなお話。
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