学校で一番の嫌われ者なのになぜか幼馴染が近付いて来る

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【前編】嫌われ者の1日

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俺は嫌われ者だ。


俺の学校での評価は『最悪』と言っても良い。



―――――――――


決まった時間に目を覚まし、着替えを済ませる。


そして自分の部屋は2階なので1階まで降りるとお母さんとお父さんが慌ただしく動いていた。うちは共働きなので家事を含めて大概が分担。でも、朝食だけは二人で一緒に作るようでこの慌ただしさは毎日だ。


うちの両親の仲は良い方なので邪魔しないようにソファーに腰を掛ける。スマホを取り出して連絡を確認する。

『朝、一緒に登校したいです!』というメッセージが和籐わとうから来てた。


和藤とは同じクラスの和藤わとう新大あらただ。学内で嫌われている俺をなぜか慕っている少し頭のネジが抜け落ちているんじゃないかと思うような奴。最初の頃は鬱陶しいからどんどん突き放していたんだけど、それでも離れることなく付いて来るのでもう突き放すのを諦めて最近はよく話すようにしているのだ。勝手に付きまとわれるよりはいいだろうという結果。



どう返事するかと悩んでいると誰かが急に俺の頭を撫でてきた。

視線を上げるとそこには妹こと詩織しおりが笑みを浮かべていた。詩織は俺よりも三つ下で今は中学二年だ。眉目秀麗、文武両道という所謂、高嶺の花だ。その人気は尋常ないらしく、前に妹の友人と会った時に聞いた話によると、すごい時は一日に三回も告白されたことがあるという。
そんな嘘みたいな話だが、うちの妹は身内贔屓なしで美少女だ。綺麗な茶髪に目元もくりっとしていて、目鼻立ちもしっかりとしているため人気が出ないはずがない。それに加えて、コミュ強だ。どんな人間に対しても話し掛け、大概の人とはすぐに仲良くなれてしまうという特技を持っているのだ。

それが俺の妹、奈須野なすの詩織しおりだ。



「なぜ兄の頭を撫でる?」


「兄さんの頭を撫でたかったので」


「なぜ何も言わずにそういうことをする?」


「兄さんに触るには許可が必要なんでしょうか。私たちは兄妹であり、お互いに長い時間を共にしてきたと思うのですが」


「別に許可が必要とまでは言わないが、急に触られるとびっくりするから止めて欲しいな」


「なるべく善処することにします」


「そこは素直にわかりましたと言って欲しいところなのだが」

そんな話をしていると朝食が出来たらしく、僕と詩織はそれぞれの椅子に座る。そして全員で「いただきます」と言い、食事が始まるのだった。

朝食の間は近況のことを話しながら食べているとあっという間で、俺が食事を終えて冷やかしていると母さんが心配そうな目で見てきた。


「どうしたの、母さん?」


「今日は行く日でしょ」

そう言われたことで今日の曜日を改めて再確認することが出来た。


「ああ、そうだね」


「一人で大丈夫?」


「大丈夫だよ。俺も高校二年だ。さすがに一人で行けないと問題だと思うけど」


「それはそうだけど、やっぱり心配なのよ」

そこで母さんの視線が俺から妹に移る。


「今日って早く帰って来れる?」


「うん、兄さんの付き添いだったら母さんから言われなくてもするつもりでした」

高校生にもなって中学生の妹に付き添いをしてもらうなんて恥ずかし過ぎる。


詩織しおりも学校があるんだから無理に来なくていい」


「私は行きますよ。兄さんを一人にはさせられないですから」

今度は妹が俺を鋭い視線で見て来る。まるで肉食動物に睨まれた草食動物のように俺の方が委縮してしまうのはなぜなんだろうか。


「俺は高校生だぞ」


「それが何か関係してるんですか。私は中学生ですが、兄さんよりしっかりしていますよ」


確かにそれを言われると否定できない。僕は中学生である妹よりもしっかりしていない自信というものがある。


「兄さんがいくら来て欲しくないと言っても私は付いて行きますから」


「わかってるよ」

前に一度だけ面倒くさいから妹のことを追いていったことがある。結局、目的の場所に行ったら先回りされていたのだ。本当にこの妹はどんな風に移動していたのかと疑ったほどだ。

「連れて行けばいいんだよね」


「はい、ちゃんと私と一緒に行きましょうね」

妹は笑顔で言っているが、俺としては妹と一緒ってどんな拷問だよと思ってしまう。




学校に登校するといつもの冷たい視線が俺を突き刺す。でも、この視線にも慣れてしまえば何も感じなくなるし、なんか有名人になった気分で逆に良い気分になってしまったりする。これはちょっと壊れていると言っても良いかも。

「な、奈須野くん!!」

背中の方から呼ぶ声が聞こえて振り返るとそこには和藤がなぜか小走りでこちらに近付いてきた。


「どうした、和藤」


「いや、朝連絡したよ。既読無視をするなんてひどいって」


「あ、そうだったな。すっかり忘れていたわ」

返信しようと思ったところで朝食が始まって、そのまま忘れていた。


「ひどいよ!奈須野くんの中で僕はそんなに優先順位が低いの…」

そろそろ和藤新太について説明しようかな。和藤を一言で言い合わすんであれば『気弱な男』だ。そんな男が俺に付きまとってきているんだから世の中はおかしい。

なんか高校1年生の夏ごろから付きまとうようになり、今でも関係は続いている。そして容姿としては童顔で身長が150に満たないぐらいということもあって、女と勘違いする奴もいるようだがれっきとした男だ。


気弱な男と言ったように、性格は良いが押しに弱いのだ。よく人に押し付けられたりするような性格のため、色々と苦労しているのも知っている。



まぁ…俺が説明できるのはこの程度。

「優先順位など気にしたことはない。ただ俺が忘れていただけ」


「じ、じゃあ、これからは一緒に登校してもいい?」


「よくない」


「な、なんで!?」

こいつが俺と近くに居たがる理由は未だに分からない。近くに居ても碌なことにならないし、下手したら巻き込まれる可能性も全然あるんだが。


「お前は他の奴と登校するか、一人で登校しろ」

別に俺は俺以外が嫌われる必要はないと思っている。俺は好きで嫌われているが、こいつは別に人に嫌われたいわけじゃない。であれば俺と一緒にいるべきではないのは考えれば誰でも分かるはずだ。

そう思っているんだが、なぜか和藤は納得していないようだった。


「いやだ。僕は奈須野くんと一緒に登校するって決めてるもん!」

気弱な癖にこういう少し頑固なところもあるんだった。





和藤とはクラスが違うため別れた。


別れ際も「僕は奈須野くんと一緒に登校するんだ!」と謎の宣言をしていた。教室に移動して俺は自分の席である、窓側の一番後ろに行く。俺がクラスに入ると同時にうるさかった部屋が一瞬で静かになる。

そして俺が席に座ると、遠慮しながらもクラスメイトはまた話し始める。



SHRが始まるまで暇なので外の景色でも眺めることにした。外では部活の朝練を行っているようで走っている。それを見ているとクラスの女子たちの会話が耳に入って来る。

「梅崎くん、今日もカッコよかったよね」

「うん!朝から拝めたし、今日はもう十分!」

「でも、宮本くんもカッコいいよね!梅崎くんと宮本くんの二大美男が居てくれて本当に良かったわ」

「それだけでもこの学校に入学した意味があるよね~」

女子の話がひと段落したかと思えば、今度は大きな声でクラスの男子連中が話し始めたので嫌でも耳に届いてしまう。


「串宮さんってまじで可愛いよな。天使…いや、神みたいな…」

「それ分かるわ。なんだろう後光が指している感じがするんだよな」

「俺は阿久根さん派かな。あの綺麗な赤髪の美少女からとんでくる罵倒がとってもいいんだよな」

「なんかMに目覚めそうだもん」

「え~僕は星野さんかな。あの丸眼鏡も小動物みたいにあたふたしているところもすっごく可愛いし、守ってあげたいと思うんだよ」

「あ、それも分かるなぁ~」

男子も女子もやっぱり話の的は彼らのようだ。この高校に通って彼らを知らないことは絶対にあり得ない。


俺は彼らと仲良くない。

小学校時代は今じゃ考えられないが、俺を含めて六人は仲が良かった。本当に今考えればこんな個性の集団が仲良かったのが信じられないくらいに。今でも俺を除いた五人は仲が良く、食事などもよく一緒にしているらしい。


俺は関わらないし、昼食は屋上で和藤と食事をしていた。

最初は一人だったのだが、和藤に見つけられてしまったのだ。それからはいくら拒否を示しても和藤は来てしまうので諦めた。

もうあいつらと2年ぐらいは話していないか。話す必要もないし、これは俺が望んだこと。その選択に後悔もない。



だが、本当になんで仲が良かったのか不思議な六人組だったよな。そんなことを思いながら俺は朝練で走っている奴のことを眺めていた。
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