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序章 ようこそ、ヘルス・フェルスの世界へ!

運営のイタズラ心

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「……い……お…い。おーい!起きろー!千春ちはるちゃん起きろー!」
「ん…んんぅ…なぁにぃ…眠…い…」
 私は如月きさらぎ 千春ちはる。学園の中等部の1年生だ。私を起こしたのは西崎にしざき 美那子みなこ。私の親友だ。
「なに…美那子。私、眠いんだけど」
「なにって…今日だよ!」
「なにが?」
 美那子が今日だよって言うけど今日ってなんかあったっけ…?
「フェルス社の新作VRMMO ヘルス・フェルスの発売日!今日でしょ!午後10時から正式にサービス開始だからやってね!千春ちゃん!」
「えー…めんどーい。やりたくなーい。分かった?」
 私はとてもめんどくさく思ってた。理由は分かるだろう。フェルス社のVRMMOは信用出来ない。ラグレスト・フェルスみたいにインフレの塊なんじゃないかと思ってしまうとやる気が…。
「分からないかな。それじゃ、今日の午後10時だから間違えないでね!」
「はいはーい」
 はぁ…めんどくさ。そう私は思ったのだった。

 私が家に帰宅すると、宅急便が来ていた。あぁ、やっぱり来てるのね…はぁ、面倒くさいなぁ…でもやらなかったら美那子怒るしなぁ…。やるしかないかぁ…はぁ…。
「あっ、あの如月さんでしょうか?」
 宅急してきた人がそう訪ねてきたので。
「はい、如月ですけど…それは…ヘルス・フェルスですか?」
「はい、そうです。それではサインかハンコをお願いします」
 やっぱりかぁ…そうだよねぇ…はぁ、嫌だなぁ…。まぁ、サインしましたけど…。
 私は箱を開けて中身を確認した。そこには1つのソフトがあった。ヘルス・フェルス。フェルス社の新作VRMMO…フルダイブ式のゲームであり、3年前に発売され、2年前にサービス終了した。ラグレスト・フェルスの次作……。どんなゲームになってるんだろう…。そう思い私は……ソフトをヘッドセットに読み込ませた。私はゲームを…起動した…。
「ゲーム…スタート!」
 目の前の空間は水色の世界。プログラム言語などがところどころ浮かんでいる。そして、そこには1人の少女が立っていた。
「……ん?…7歳ぐらいかな。珍しい」
「今すぐに貴女を3枚におろしたくなったよ。三枚おろしにしてもいいですか?」
 私は突然、失礼な事を言われた…そんな、だよね?確かに身長は低いけど…小2に間違われるほどじゃないよね…?…えっ?
「……なんか、ごめん。私が悪かった。えっと、じゃあ、貴女の名前…この世界での名前を教えて」
「えっと…ゲームキャラクター名ってことですか?」
「はい、そうですね」
 うーん…じゃあ、どうしようかなー。千春でしょ?私の名前…チハルはそのままだしなぁ…。ハチル?いや、適当過ぎるな。
「あっ、ラグレスト・フェルスのゲームデータがありますね。前作の名前を引用しますか?」
「いや、使わないし、ラグレスト・フェルスとは関係の無い世界線なんでしょ?なら使う気ない。てか前作の名前ってどんな扱いなの?」
 私はふとした疑問を少女に投げかけた。
「はい、まず。前作に使われていた名前は基本的に使うことは可能です。まったく関係ない人物でも使用可能です。しかし例外があり。前作サービス終了時トップ1000に所属した人物の名前は本人にしか使えないようにシステムを設定しました」
「なるほど。分かりました」
 まぁ、簡単な話だ。運営は前作トップ1000の人たちの名前を本人以外使用出来なくしたのは、いつ戻ってきても良いようにしたかったんだろうな。
「それとヘルスの世界線とラグレストの世界線は基本的な繋がりはありませんが、こんな人物がいたと言うラグレストのトップ1000のプレイヤー名が時々出てくる…といった感じですね」
「なぜそんな晒すようなマネを!?」
 おかしいでしょ!おかしいでしょ!流石におかしいでしょ!?なんでそんな晒すようなことをするの!えっ、なに、イジメか何か?流石に笑えないんだけど!
「あはは、それは私に聞かないでください。文句は制作陣に…ね?」
「ん?貴女は制作陣じゃないんですか?」
 その少女はまるで自分は制作陣じゃないかのように言ったのですこし疑問に思った。
「うーん。制作陣…にはなるのかな?でも私は基本的な世界観に干渉は出来ないの。私が管理するのはこの世界の自然…。世界を管理する為のAIって思ってくれればいいよ」
「……えっと、まぁ、それは分かりました。じゃあ、名前は……チヨハでお願いします」
 千春だから千春の千のち、春のはで、よはどっかから取ってきた。それを合わせてチヨハってことにした。
「それでは職業ジョブを決めましょうか。それじゃあ、この中から選択してください」
 その言葉を聞いたら目の前にパネルが出現した。
「うわ…多いな。剣士、戦士、槍術士、アーチャー、クロスセイバー、神官、妖精使いフェアリーテイマー、精霊使い、大盾使い、盗賊、魔法士、魔術士、罠使い、鑑定士、錬金術士、調合士、鍛冶職人…あっ、ガンナーや召使い、料理人なんてやつもある。結構あるんですね」
 見ていこうかな。えっと、アーチャーは弓使いでしょ?使ってみたかったんだよねー。えっと…弓矢を使う職業、弓は一つ買うだけでいいが矢は数を揃える必要がある。しかし、ガンナーの弾丸とは違い確率で再使用が可能である。確率はDEXの数値に依存する。…か、なるほど、面白いね。
「じゃあ、アーチャーでお願いします」
副職業サブジョブはどうしますか?」
 んー?選択肢は変わらずだから、この中から選択する…のかな?……一応、接近されたら対処できるように…クロスセイバーにしとこうかな。
「じゃあ、クロスセイバーで。お願い」
「分かりました。それではこちらを」
 突然、少女から箱…かな?それを渡された。
「これは?」
「それは今、ここで開けてください。完全な運によりアイテムや武器、防具が10個、手に入ります。さぁ!さぁさぁ!開けてください!」
 突然と元気になるじゃん。びっくりだよ。もっとクールな子だと思ってたなぁー…すごく元気だ。
「まぁ、はい。分かりました…でも、これって運次第で弱いやつも出るんですよね?そんなん、ゴミでた人可愛そうでは?」
「ご安心を、そんなことにならぬように最高レアリティのアイテム5つ確定で出ますので相当運が悪くない限り大丈夫なはずですよ!」
 確率ってどうなってんだろう…じゃあ。
「確率は最高レアリティが90%になってますよ!」
「高ッ!?」
 高すぎでしょ、序盤から飛ばしすぎじゃない!?
「だから大丈夫です。さぁ、どうぞ!オープンしてください!」
「まぁ…はい、分かりました。それじゃあ、開けますね」
 そう言って私は箱を開けた…。中身は…あっ、弓ある。ありがたい。名前は…白き弓。……確かに白いがそのままだな。効果は…えっと、矢の再使用確率2倍とアンデット特攻か。まぁ、使えそうだね。次は黒き弓、白き弓と似た名前だな。おい、ネタ切れアイテムぽいの手に入ったぞ。
「…ネタ切れ?流石に名前似すぎてない?」
「気にしないでください。気にしたら負けですよ」
「えぇ…?」
 えっと、効果は、命中時、対象に【暗闇】【盲目】の状態異常を付与する。そして装備時、装備しているプレイヤーは【暗視】の効果を受ける。あっ、案外使える。これは便利だね。装備しとくかな。ほかの装備見たらだけど。
 次は…ん?なんかどっかで見たことあるような剣だね。名前は……。
「あの…この…剣……ねぇ、ねぇ、運営よ。どんだけ晒し者にしたいの!?ねぇ!流石に、この剣は駄目だってぇぇぇぇ!」
 私は叫ぶ。それもそうだ。だって…この剣は…。
「あっ、運が良いですね!流石ですね。ラグレスト最強は引くアイテムも違う。前作の自分の武器を引くなんてすごいです!」
 そう…ラグレストで使っていた。武器なのだ。反魂蝶はんごんちょうつるぎ。私がラグレストでオーダーメイドしてもらった武器だ。晒し者にしたかったの…?運営ぇぇ…許さんからな。てか引いたのが私で良かった。これこの世界に一つしかないみたいだから…。私が隠し持てば問題無し!よし、OK。効果は…攻撃した対象に時々【即死】させる。ユニークスキル【神速】の習得。スキル【劔の舞】【蝶化】【心眼】【幻影】を習得する。……いや、チート。なんでこんなチート武器作ったし、運営。あっ、でも【即死】の効果はプレイヤーには発生しないのね。なるほど。まぁ、ボスにも発生はしないよね。あはは…流石に私の武器もう一本あるけど大丈夫だよね。流石に追加されてないと…思いたいなぁ…。
 次は…あっ、駄目ですか?逃げるなってことかな?
「……だからさぁ…なんで…あるんだよ。なんでなんだよぉぉぉぉ!」
 もはやただの叫びである。またかよ。またかよ!どんだけ晒し者にしたいのよ!次は透明幻想の剣、また私の武器だ。えっ?なに、またこの双剣でプレイしろと?イジメか何かな?
「おや、運が良いですね!」
「嬉しくない…嬉しくないよぉ…」
 効果は…あぁ、うん。知ってた。ユニークスキル【透明化】の習得。そしてスキルは【蜃気楼】【幻想化】【幽体化】【霊気チャージ】の習得…かぁ…またチートかぁ…。本当に使わないと思うなぁ…。ガチる時だけ使お…もう装備だけはしとこ。二本とも。
 次は…月光弓か。月が出ている時に能力が変化する弓。満月の時はユニークスキル【万華鏡】が使用可能になり、新月の時はユニークスキル【幻想庭園】が使用可能となる。そして夜の間は常に【暗視】【幻視】の効果を受けることが出来る(装備者のみ)……おい、運営。流石におかしくありませんか?こんなん大丈夫なのだろうか…。ついでにほかのアイテムだけど、なんか最低レアリティアイテムだった。万年筆、メモ帳、カンペ、低級HPポーション✕2であった。まぁ、アイテムがあんなんだったしなぁ…。
「それでは、ステータスを決めましょうか!」

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