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Ceci n'est pas une rêve.(これは夢ではない)
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返事を待たずに。
ゆっくりドアが開く。
すき間から顔を見せたのは。
茶色の混じったサラサラの金髪。
リック君だ。
山吹色の瞳が俺を捕らえると。
早足で近づいてくる。
完璧な笑顔で。
完璧すぎて。
つくり笑いだとすぐにわかる笑顔だ。
うん。
怒ってる。
確実に怒ってる。
「トヨミ様」
わあー。
ステキなえがおデスネー。
「お早うございます。お加減はいかがですか?」
そう言って紙と万年筆をさし出してくれる。
ありがとう。
【おはようリックさん。昨日はいろいろとありがとう。よく寝れたから快調だよ】
俺の字を読んだリック君は。
器用に目だけでにらむ。
口元は。
笑みの形をたもったままだ。
「なにがよく寝れたですか!部屋へ戻って来るなり、ベッドの横でうずくまって、動かなくなって、もう、どうしようかと」
両手を捕まれてブンブン縦横無尽にふられる。
なすがままに任せていると。
リック君の声がだんだん鼻声になる。
ごめん。
まさか倒れるように寝たとは思わなかったんだ。
昨日のことを思いかえすと。
着物みたいな上着を着てからの記憶がない。
どうやってこの部屋戻ってきたんだっけ?
………。
記憶がない。
嘘だろ!?
どんなに寝不足でも。
記憶とばしたことないのに。
青ざめてリック君を見ると。
泣きそうな顔でこちらを見ていた。
あ、と、その。
泣かないで。
【心配かけてごめん。昨日はすごく疲れてたみたいで】
あわてて書きつけて。
リック君に見せながら。
右手を立てて。
ごめんのポーズをとる。
リック君はそれを見て。
頭をフルフルふって。
「起きてくださって良かったです」
リック君はうつむいて。
両手を離した。
そのまま。
目尻をぬぐって。
「アンバーランド公も気にかけておられましたので、後ほどお顔を見せに参りましょう」
アンバーランド公?
誰だっけ?
首をかしげていると。
「アンバーランド公ジェラード様です。トヨミ様をお連れになった方ですよ」
ジェラード君か!
アンバーランド公なのか。
アンバーランドってどこだ?
と考えていると。
ぐー。
という音が腹からした。
それを聞いたリック君が。
またうつむいて。
こんどは小きざみにふるえてる。
あまりの恥ずかしさに。
顔がまっ赤になる。
あ。
そうだ。
話をそらそう。
【リックさん。僕に様づけは要りませんよ。リックさんさえよければ、もう少しくだけた話し方をしてくれると、僕は嬉しいです】
急いで書いたから。
文字がちょっと汚いけど。
すぐに読めるはず。
え?
敬語で話すなってお前が言うなって?
俺は仕方ないんだよ。
敬語が習慣化しちゃったから。
普通に話すのムリなんだよ。
「トヨミさん、って呼んでもいいですか?」
心なしか嬉しそうなリック君に。
笑顔でうなずく。
敬語で話されると距離を感じるから。
ちょっと距離が近づいたようで嬉しい。
そもそも俺。
様づけされるような人物でもないし。
その方が恐縮しないですむ。
リック君は懐から懐中時計を取りだして。
時間を確認した。
「そろそろアフタヌーンティーの時間ですから。アンバーランド公のところへ参りましょう」
え?
アフタヌーンティー?
アフタヌーンってことは午後?
あまりの大寝坊に。
唖然としていると。
リック君がいたずらっぽく言った。
「もしかして、朝だと思ってました?」
うんうんと返すと。
「現在14時過ぎですね~」
と返ってきた。
めちゃくちゃ遅ようございますだった!
寝坊もいいとこじゃないか!
驚いていると。
リック君はニコニコとこちらを見ていた。
だから心配してたんですよ。
とでも言うような。
少し怒りをはらんだ笑顔だ。
はい。
すいませんでした。
人ん家で寝坊したとか。
ないわー。
ごめんケーレブさん。
俺も常識なかったわ。
「ちょうどお時間もいいですし。ジェラード様もお話されたいと仰られてましたし、お茶をしながらお話してはどうですか?」
ジェラード君ごめん。
ジェラード君が俺に話したいことあったのに。
寝坊しちゃって。
リック君にむけて。
大きく一つ。
うんとうなずく。
同意をこめて。
「では、少し整えましょうか」
とリック君が衿を整えてくれる。
ピシッと引っぱって。
シャツの襟のシワも伸ばしてくれた。
その後。
前髪を伸ばして。
後ろの髪も。
ワシャワシャしてから。
手櫛でととのえてくれる。
それから耳を丁寧になでて。
しっかりなでて。
あれ?
くすぐったくて。
耳が勝手にふるえる。
オオカミが耳をパタパタパタってする。
あの感じ。
最後に耳のうしろをかいてくれて。
リック君は頭から手を離してくれた。
「よし」
リック君は。
満足そうに一つうなずき。
満面の笑みで一言。
「参りましょう」
ゆっくりドアが開く。
すき間から顔を見せたのは。
茶色の混じったサラサラの金髪。
リック君だ。
山吹色の瞳が俺を捕らえると。
早足で近づいてくる。
完璧な笑顔で。
完璧すぎて。
つくり笑いだとすぐにわかる笑顔だ。
うん。
怒ってる。
確実に怒ってる。
「トヨミ様」
わあー。
ステキなえがおデスネー。
「お早うございます。お加減はいかがですか?」
そう言って紙と万年筆をさし出してくれる。
ありがとう。
【おはようリックさん。昨日はいろいろとありがとう。よく寝れたから快調だよ】
俺の字を読んだリック君は。
器用に目だけでにらむ。
口元は。
笑みの形をたもったままだ。
「なにがよく寝れたですか!部屋へ戻って来るなり、ベッドの横でうずくまって、動かなくなって、もう、どうしようかと」
両手を捕まれてブンブン縦横無尽にふられる。
なすがままに任せていると。
リック君の声がだんだん鼻声になる。
ごめん。
まさか倒れるように寝たとは思わなかったんだ。
昨日のことを思いかえすと。
着物みたいな上着を着てからの記憶がない。
どうやってこの部屋戻ってきたんだっけ?
………。
記憶がない。
嘘だろ!?
どんなに寝不足でも。
記憶とばしたことないのに。
青ざめてリック君を見ると。
泣きそうな顔でこちらを見ていた。
あ、と、その。
泣かないで。
【心配かけてごめん。昨日はすごく疲れてたみたいで】
あわてて書きつけて。
リック君に見せながら。
右手を立てて。
ごめんのポーズをとる。
リック君はそれを見て。
頭をフルフルふって。
「起きてくださって良かったです」
リック君はうつむいて。
両手を離した。
そのまま。
目尻をぬぐって。
「アンバーランド公も気にかけておられましたので、後ほどお顔を見せに参りましょう」
アンバーランド公?
誰だっけ?
首をかしげていると。
「アンバーランド公ジェラード様です。トヨミ様をお連れになった方ですよ」
ジェラード君か!
アンバーランド公なのか。
アンバーランドってどこだ?
と考えていると。
ぐー。
という音が腹からした。
それを聞いたリック君が。
またうつむいて。
こんどは小きざみにふるえてる。
あまりの恥ずかしさに。
顔がまっ赤になる。
あ。
そうだ。
話をそらそう。
【リックさん。僕に様づけは要りませんよ。リックさんさえよければ、もう少しくだけた話し方をしてくれると、僕は嬉しいです】
急いで書いたから。
文字がちょっと汚いけど。
すぐに読めるはず。
え?
敬語で話すなってお前が言うなって?
俺は仕方ないんだよ。
敬語が習慣化しちゃったから。
普通に話すのムリなんだよ。
「トヨミさん、って呼んでもいいですか?」
心なしか嬉しそうなリック君に。
笑顔でうなずく。
敬語で話されると距離を感じるから。
ちょっと距離が近づいたようで嬉しい。
そもそも俺。
様づけされるような人物でもないし。
その方が恐縮しないですむ。
リック君は懐から懐中時計を取りだして。
時間を確認した。
「そろそろアフタヌーンティーの時間ですから。アンバーランド公のところへ参りましょう」
え?
アフタヌーンティー?
アフタヌーンってことは午後?
あまりの大寝坊に。
唖然としていると。
リック君がいたずらっぽく言った。
「もしかして、朝だと思ってました?」
うんうんと返すと。
「現在14時過ぎですね~」
と返ってきた。
めちゃくちゃ遅ようございますだった!
寝坊もいいとこじゃないか!
驚いていると。
リック君はニコニコとこちらを見ていた。
だから心配してたんですよ。
とでも言うような。
少し怒りをはらんだ笑顔だ。
はい。
すいませんでした。
人ん家で寝坊したとか。
ないわー。
ごめんケーレブさん。
俺も常識なかったわ。
「ちょうどお時間もいいですし。ジェラード様もお話されたいと仰られてましたし、お茶をしながらお話してはどうですか?」
ジェラード君ごめん。
ジェラード君が俺に話したいことあったのに。
寝坊しちゃって。
リック君にむけて。
大きく一つ。
うんとうなずく。
同意をこめて。
「では、少し整えましょうか」
とリック君が衿を整えてくれる。
ピシッと引っぱって。
シャツの襟のシワも伸ばしてくれた。
その後。
前髪を伸ばして。
後ろの髪も。
ワシャワシャしてから。
手櫛でととのえてくれる。
それから耳を丁寧になでて。
しっかりなでて。
あれ?
くすぐったくて。
耳が勝手にふるえる。
オオカミが耳をパタパタパタってする。
あの感じ。
最後に耳のうしろをかいてくれて。
リック君は頭から手を離してくれた。
「よし」
リック君は。
満足そうに一つうなずき。
満面の笑みで一言。
「参りましょう」
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