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120.Aランク冒険者
しおりを挟む魔王軍本陣からちょいと離れた天幕の中に所狭しとぎゅうぎゅうに座る筋骨隆々な男女がいた。
「狭すぎるな」
彼らのリーダーだろうか?一人の男が代表して自分の対面に腰を下ろす男に文句を投げかける。
「すまんなぁ、6人ならこの天幕で充分入る予定だったんだが・・・聞いてたよりも立派な体格で予定が狂っちまった。
場所を移すか?」
「そうしよう、これではまともな話し合いもできん」
そういうと彼らは天幕をでる、と文句を言ってきた一行に各種属性の魔法が飛んでくる。
「これはどういうことか訊いてもいいだろうか?」
襲撃を受けた彼らは攻撃を確認すると素早く展開しすべての属性魔法に対して各々が得意とする属性に向かい突進消滅させるという荒業をやってのける。
そう、彼らは全員がドラゴニュートで構成されているAランク冒険者パーティ”ドラゴントゥース”それぞれが地水火風雷氷のスペシャリストである。
「悪いな、今回の依頼ははっきり言って成功してもらわないと困る要件だからこちらも依頼する相手に慎重にならないといけなくてね。
気を悪くさせちまっただろうけどそれだけこっちも切羽詰まってんだ」
「確かに切羽詰まっていることは分かるがな、今までの快進撃がこのざまだからな」
軽口をたたく交渉人カノンに、”ドラゴントゥース”のリーダー地のグランが嫌味で返す。
「そうなんだよ、笑えんだろ?順調に神国を攻めてあと少しで落とせる所までいっていたのに突然文字どうりに降ってわいた化けもんにこの体たらくだ。
まぁ今回の依頼はそれに関係してるんだが」
カノンはもう一つの大き目の天幕に案内し交渉を続ける。
「まぁお前たちの”狂った思想で他種族を迫害する神聖とは名ばかりの悪しき国を亡ぼす”という思想には少しばかり共感できるものがあるが、冒険者は基本戦争に介入することは無いぞ?」
グランが言った言葉に他のメンバーも同意とばかりに頷く。
「それは知っている、だから今回はあくまで化け物退治を依頼したい」
「化け物退治?」
「そう、はっきり言ってあれはドラゴンの化身か上位の悪魔なのではとウチの上の方は当たりを付けてるところだ。
んで、そんな個体としての強さが飛びぬけた存在に兵としては優れていても常識の範囲内にいる者たちでははっきり言って死体の量が増えるだけだ。
そこであんた達にあの化け物の退治を任せたい、手段は問わない成功後の報酬は可能な限り言い値でだそう、どうだ?引き受けてくれないか?」
そういうとカノンは頭を下げる、実際にニコルさえどうにかできたらまた攻勢に出れるだけの戦力差はあるが・・・これ以上の無為な損害はもはや許されないだけの損害を先日のニコルの強襲で受けてしまったので魔王軍には跡が無くなっている。
「どれだけの情報が集まっているかにもよるな、それだけの化け物なら数日程度の準備では返り討ちに会っておしまいだろう。
最低でも弱点、苦手な物、立ち回りの癖なんかは教えてほしいな」
という返事を聞きカノンは内心ガッツポーズをとる、これでこいつらをニコルにぶつけることができると内心安心して。
「・・・聞けば聞くほど圧倒的な強さだな」
呟くグランに他のメンバーも、
「一太刀で兵士に紛れ込ませていた悪魔を全滅させたとか、突然の襲撃で軍の約二割を殺しまわったとか、それなのに手持ちの武器には一切の刃こぼれが起きてない可能性もあるとか・・・確かに化けもんだな」
そういったことを改めて聞くとカノンも溜息しか出ない、
「しかも魔法は殆どキャンセルされるんだろ?
唯一の救いは土系統の魔法は通じるかもしれないのと弓矢の攻撃は割かし効果がありそうだってことか・・・」
それを聞いてから目を閉じていたグランが目を開けてパーティメンバーに語り掛ける。
「とりあえずこの依頼は受けるぞ、それから今貰った情報からある程度の作戦を考えてみた。
実行前にあと一回は情報を引き出したいところなんだが、カノンさん、あんたらにあと一回情報収集を頼めるかい?」
との質問にカノンは二つ返事で了承し契約を交わす。
「では、さっそく行動を開始しよう・・・時間がなさすぎるからな」
そういって”ドラゴントゥース”は飛び立っていった。
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