一振りの刃となって

なんてこった

文字の大きさ
66 / 130

63.雷刃竜

しおりを挟む

「賭けは俺の勝ちだな、これでお前は俺の配下だ!」
 声高に俺はサンダーエッジにそう告げる、だが・・・
「グゥルオオオオオオオ!」
「へっ?」
 サンダーエッジは暴れはじめ掴まれたままの俺はそのまま思いっきり投げ飛ばされ木を2本ほど倒木に変えると地面に落ちた。
「クハッ!レジストしたのかよ!できるもんなんだな”マインドハック”も完璧に決まるモノじゃないってか!」
 ファルシオンを剣の形状のままで杖として使いフラフラ立ち上がる、さてもう殺すか・・・もう一度試すか。
「グゥルオオオオオオオ!」
 唸り声と共にサンダーエッジはフラフラな俺にブレスを放とうと魔力を高める、まぁそんなのは俺に効かないんだが。
「ガァァァァ!」
 放たれたブレスは至近距離で撃たれたブレスと違い範囲が非常に広く普通ならこのまま逃げられずに消し炭になっていただろうが・・・俺はファルシオンなんだよ!
「”マジックイーター”!」
 フラフラした足に活を入れてしっかり立ち杖にしていた剣を前に構え周囲の魔力を喰らう、高密度のドラゴンのブレスも例外じゃ無く喰らい尽す。
 必殺のブレスが2度も防がれたサンダーエッジは俺に向かって突進してくる。
 体の損傷が思ったよりひどいせいか躱すのは無理そうだ・・・勿体ないが仕方ないか。
 殺意を込めて左手に握ったファルシオンを強く握るとサンダーエッジは足を慌てて止める、こいつ・・・俺の間合いもわかってるのかぎりぎり届かない。
 まずいな・・・そう思っていると、
『その力、人のものではないな?貴様は何者だ!』
 なんか大気が震える、声っぽいものが聞こえた気がする、
『貴様たちの言語に合わせたつもりだが聞き取れなかったか?』
 また聞こえた、これはあれか剣の時に魔力で空気を振動させて声を出したやつとおんなじもんか、
「ナニヲイッテルカワッカリマッセーン!」
『むう、そうか・・・いや通じて無ければ今のタイミングでその言葉は出まい』
「ばれたか、で?会話するってことは何らかの交渉でもする気なのか?」
『そうだ、貴様が我に何の術式を施したのだ!」
 この反応はなるほど、
「教えてやってもいいが俺の状態を見たらわかるようにもうフラフラなんだよ、大声あげるのも辛いからもうちょいよって来てくれる?」
『ならん、貴様の力は未知数だ!これ以上近づくのは嫌な予感しかしない』
 勘のいい奴だな、ならこうしたらどうだ?
「だったらこうしよう、俺はこの武器をここに置いて5歩下がる、そうしたらお前が歩いて来てくれ」
 と提案するとファルシオンを地面に突きたて5歩下がる、
『まて!貴様我はまだ了承しておらんぞ!』
「ここまでやってまだビビってんのか?興ざめだな、もう尻尾を丸めて帰ってもいいぞ、う・せ・な!」
 俺は低い声でもう興味が失せたとばかりにシッシッと手でジェスチャ-すると案の定サンダーエッジは、
『なめるなよ人風情が!』
 と跳びかかろうと踏みだしてきた、はいおしまい。
「”マインドハック”」
 さっき抵抗されたのは、こいつがただの魔物だと思い刻み込む魔力が少なかったからのようだ、知恵や理性を持っていると魂に刻む魔力がより多く必要になるらしい、なんでかは分かんないがそういうものらしい。

『主よ、数々の非礼容赦してもらいたい』
「やっと眷属化ができた・・・ったくこの体ボロボロじゃねーか」
 うまく(?)サンダーエッジを眷属にしたのはいいのだが体のダメージは大きく身を包んだ衣服や防具はボロボロ、全身には大小裂傷が多々あり木に打ち付けた背中はぶつかった木の形に皮がベロンとはがれ、右腕はコブシも砕け肩から骨が飛び出ていた場所に折れた木の破片が入り込んでいる。
『申し訳ない』
「とりあえずお前は明後日、俺らがシーフォートからケイベルに帰るときに合流しろ!人目がつかないように森の中で移動するようにな、それまでツーサン太郎と一緒に自由行動しといていいぞ!」
『御意!』
 指示を出したら元気よく返事をしてサン太郎の許に歩いていく・・・サン太郎はいまだにビビっているようだが。

「レッド!大丈夫なの!?」
 俺とサンダーエッジのやり取りを遠目から見て戦いに終わりを感じたのかサラとニナが俺の戦闘中に目が覚めたニナと雪鱗を引っ張ってやってきた。
「大丈夫に見えたら目を医者にでも見せるほうがいいな」
「うわ~遠目からじゃ分かりにくかったけどこの怪我は~」
「サラの魔法でも治癒しきれるかわかんにゃいよ?ここまでひどいと」
 この世界の回復魔法は魔力依存で治癒力が上下するのだが、かける側の魔力がかけられる側の魔力より強くないと対象の纏っている魔力に妨害されてうまく治療ができない、自信を回復する分には自分の魔力ってこともあり妨害はないに等しいのだが。
「問題ない自前で治癒くらいできる・・・が手が届かないから肩に刺さってる木片はとりだしてもらえるか?」
「分かったわ・・・よくこれだけの怪我をしているのに平気な顔してられるわね?」
 と不思議そうに訊きながら木片を取り出していく、結構入ってたのね。
「痛みに泣き喚いていたほうがいいかな?俺の中ではやせ我慢は「男の美学」の一つなんだけど」
 軽口で応えてみる、実際は痛覚を戦闘が終わった時に遮断したんだけどね。
 というか一人静かな気がする。
「レッド!」
 静かだと思った矢先にこれか、
「レッド!あんたすごいね!あんな強そうな竜を従えられるなんて!今度から師匠って呼んでいい?」
 俺から何をどう学んでいくつもりか知らないが弟子志願者が来たので、
「いいぞ!ただし、俺は厳しいぞ!たぶん」
 許可を出してやる、俺に今日新しく眷属と弟子ができた。
 サンダーエッジのあだ名はなんにしようかな?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

巻き込まれて異世界召喚? よくわからないけど頑張ります。  〜JKヒロインにおばさん呼ばわりされたけど、28才はお姉さんです〜

トイダノリコ
ファンタジー
会社帰りにJKと一緒に異世界へ――!? 婚活のために「料理の基本」本を買った帰り道、28歳の篠原亜子は、通りすがりの女子高生・星野美咲とともに突然まぶしい光に包まれる。 気がつけばそこは、海と神殿の国〈アズーリア王国〉。 美咲は「聖乙女」として大歓迎される一方、亜子は「予定外に混ざった人」として放置されてしまう。 けれど世界意識(※神?)からのお詫びとして特殊能力を授かった。 食材や魔物の食用可否、毒の有無、調理法までわかるスキル――〈料理眼〉! 「よし、こうなったら食堂でも開いて生きていくしかない!」 港町の小さな店〈潮風亭〉を拠点に、亜子は料理修行と新生活をスタート。 気のいい夫婦、誠実な騎士、皮肉屋の魔法使い、王子様や留学生、眼帯の怪しい男……そして、彼女を慕う男爵令嬢など個性豊かな仲間たちに囲まれて、"聖乙女イベントの裏側”で、静かに、そしてたくましく人生を切り拓く異世界スローライフ開幕。 ――はい。静かに、ひっそり生きていこうと思っていたんです。私も.....(アコ談) *AIと一緒に書いています*

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

追放された荷物持ち、【分解】と【再構築】で万物創造師になる~今更戻ってこいと言われてももう遅い~

黒崎隼人
ファンタジー
勇者パーティーから「足手まとい」と捨てられた荷物持ちのベルク。しかし、彼が持つ外れスキル【分解】と【再構築】は、万物を意のままに創り変える「神の御業」だった! 覚醒した彼は、虐げられていた聖女ルナを救い、辺境で悠々自適なスローライフを開始する。壊れた伝説の剣を直し、ゴミから最強装備を量産し、やがて彼は世界を救う英雄へ。 一方、彼を捨てた勇者たちは没落の一途を辿り……。 最強の職人が送る、痛快な大逆転&ざまぁファンタジー!

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...