一振りの刃となって

なんてこった

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『ニコル、こいつから鎧に吸収してくれ』
「はい”納刀”」
『えっ?』
 ニコルがいきなり俺を鞘に納める、
「これは・・・竜の死骸の匂いでくらくらしますね、軽く吐き気を感じます」
 なんで鎧脱いだの?
 等と思ったが、まぁニコルなりに何か考えでもあるんだろうな。
『なんで脱いだ?』
 でも聞いてく俺、
「鎧の強化された姿を兄さんにイメージしてほしかったので、おぇ」
 なんていい子なんだニコルは、えづき始めたけど。
 ニコルが鞘に包まれた俺を拾うと鞘の先を竜の所有者の頭の上にのせ。
「”吸収強化”」
 を唱える、鞘は俺の”オールイーター”と違いストローで吸い上げるように死体を吸収していく。
 所有者を吸収し次は赤竜の死体だ。
 赤竜の死体に近づくと強烈な死臭?まぁ異臭がニコルを襲う、まだ死んで一日たってるか経ってないかなのにここまで異臭がするのっておかしいんじゃないかな?
 まぁいいかな、このままじゃニコルがダウンしかねないし、
『”アッパーウィンド”』
 名前を適当に付けて魔力で軽めの上昇気流を作る、これで匂いが吹き飛んだらいいな。
「助かります、少し楽になりました」
『ならよし、さっさと処理するぞ』
「はい、”吸収強化”」
 鞘が赤竜の死体を吸収していく。
『では・・・どうしよう』
「鎧単体の姿にはできないのですか?」
『レッドの声とニコルの声しか登録してなかったからな~、マスター権限でどうにかしてみるかな?”抜刀”』
 どうにかなったようだ、後でまたロックしとかないとね・・・ワードに気を付けてしゃべるの嫌だし。
 俺の”抜刀”に鞘が反応し俺の視界を目に見立てて鎧が組み上がっていく、俺はニコルを正面から見るように視界を置いていたのでニコルもビビったし俺もビビった。
「突然目の前で鎧が形成されてびっくりしましたよ」
『俺も突然鞘が形状変化しながら迫ってきて心臓止まるかと思った・・・心臓ないけど』
 とりあえず組み上がった鎧を見る、因みに視界を動かしても鎧はついてこないで視界のみが移動できたので俺も鎧の全体像が見れるようで何よりだ。
「これが兄さんがイメージした新たな姿ですか」
 軽く溜息を吐くニコル、見た目嫌だったのかな?
 因みに全体のベースは赤色だ。
 兜はこめかみ部分には立派な羊の角が生え、視界を大きく確保するために目の部分は露出が大きいのだがゴーグルのような透明な板が目をしっかりガードするように張られており真ん中から開閉できるファイスガードと首を守るために後頭部部分からもみ上げにかけて赤い頭髪のような細い鋼糸が胸まで伸びている。
 胴体部から手足の先までは以前同様にフルプレート仕様なのだが素材のおかげか見た目がすっきりとしてカニアーマーの頃の鈍重そうなイメージが掻き消えている。
 そして大きな変更点は背中に広がるロングソードで型造った翼である。
「兄さん、これはなんでしょうか?翼のように見えますが」
『その通り翼だ、ドラゴンの翼をモチーフに刃で再現してみた、こちら側からだと銀色だが後ろから見たら赤色になっているぞ』
「飾りに力を入れましたね・・・」
 ニコルが溜息をまた吐く、ふっ甘いなニコル!
『ちゃんと飛べるんだぞ?』
「へっ?」
 ニコルが目をパチクリさせる。
『さっき殺したやつの記憶を見たんだが、どうも両肩辺りに浮いてた剣みたいなのが奴の翼だったようでな。
 あれを参考にしてこの翼を作ってみた』
「あれって翼!・・・それで昨日空中戦ができてたんですね」
『そういう事だ、まぁ実際は鎧全体に飛行の魔術がかかってるから飾りって言われてもしょうがないけど』
「それじゃああの翼はいらないじゃないですか!」
『あの翼は着脱自由で一本一本の剣を自由自在に動かせるとしたらどうだ?』
「すごいですけど、扱いきれる気がしないですね」
『そこで、お前と俺の間に思考の共有を持とうと思う、戦闘中だけ表面的な思考を読み取る程度のものだが、それがあれば俺も剣翼を操ることも可能だ。
 お前の思考を読み取り、俺が剣翼を操ればお前一人で戦力が数倍化するだろう』
「とてつもないですね」
『問題は』
「問題は?」
 非常に大きな問題なのだが、これは今気づいた盲点になる。
『ここまでの装備をしておきながら俺たちは倒すべき敵、目標となるモノがいないってことだな』
「由々しき事態ですね」
 ニコルはあの歳で理解してるのか!
 向ける相手の無い力は錆びるか暴発する、よく熟れた果実も出荷されねば腐ってゴミになるし、種がなければ・・・腐ってゴミになる。
 抑止力無き圧倒的力を持つ者に人は恐怖し、その者が寛容だとその者に対して攻撃的になる・・・大概は。
『まぁ使いどころがあまり無さそうだし、そうだな・・・今度から”抜刀”時にタイプ名を付けるようにしてくれ。
 タイプ名はカニアーマーとシャイターンだ』
「シャイ?カニアーマーは分かるんですがシャイターンとは何ですか?」
 ふむ?説明してなかったか。
『さっきの奴デモン種かと思ってたけど受肉した悪魔らしいぞ?
 悪魔のくせに魂喰われるとかダサいよな』
「笑い事じゃない気がしますけど、僕ってかなり生命の危機にあったんじゃないですか?」
『済んだことだし問題ないだろう?』
「そうですね」
 よく思うけどニコルって淡泊だよね~、実際危なかったことは危なかった。
 実は”ソウルイーター”に若干抵抗されたことは黙っておこう、結局分解しちゃったし。
「ただ、悪魔の名前を言うのはあまりよくないことを招きそうなので」
『じゃあもう一つのタイプドランも追加しよう』
 と俺が言うとシャイターンタイプの鎧の兜と翼部分の形が変わっていく。
 兜の形状が口を開けた竜の頭のようになりこめかみで巻いていた角は天に向かって伸び、翼は蝙蝠の翼ような竜翼のそれへと形状を変える。
『これで3タイプだな、今度から”抜刀”の後にカニかドランかシャイたんって付け加えるようにな?』
 シャイたんって、我ながらいいネーミングセンスじゃないか・・・しまった!カニたんドラたんでもよかった!
「・・・”納刀”」
 ニコルが鎧を鞘に戻し、
「そろそろ帰りましょう”抜刀””ドラン”」
 ドランタイプにすると、
「飛んでタークまで戻ろうと思いますが、飛行するにはどうしたらいいでしょうか?」
 いきなり飛ぶ気か、チャレンジャーだね~。
『問題ない、ドランとシャイたんを選んだ場合自動的に俺との意識の共有化が起きるようにしてある。
 お前の意志道理に飛べるぞ・・・ドランとシャイたんでは跳び方とか全然違っちゃうけど』
「分かりました」
 ニコルは返事と共に駆け出し思いっきりジャンプする、重さとか魔力で誤魔化してるとはいえ跳躍で5メートルほど跳びあがる・・・ニコルも十分おかしい領域に至りだしているようだ。
 スピードが落ちる前に背中の竜翼が羽ばたきだすこの翼は可動式なのよ。
 さて、日が沈む前にタークに着くかね?
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