テレットは愛したがり屋

ゆた

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第二章 昔

精霊と学校4

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カナデが告白された!!
あんな若造に。
許し難い事だ。今日会ったばかりの学園の生徒にはカナデのことなんてこれっぽちもわかっていない。
カナデがどれだけ苦しんできた事か、一年近く共に暮らしてきた僕も詳細は知らないのだ。
でもどうしよう。
カナデがあの告白にYESと答えたら。
そしたら、もう僕の出る幕はない。
もっと永くいられると思っていたのに、ここでお役御免になったらどうしよう。…僕は捨てられるのかな。
いやだよ。
絶対に嫌だ!
どうか、断って。
カナデの幸せを一番に願っていないといけない僕が、自分の都合でこんな風に揺さぶられてもいいのかな。
僕は誓った。
どんな状況下でもカナデの味方でいるって。


ーーーーーー

「好きって何ですか?どういう意味なんでしょう。私と貴方は見ず知らずの他人なのに」

私はそう応えた。
好きって何だろう?
付き合うって何だろ?
洞窟の中にも書斎があるんだけど、そこで恋については学んだ。
恋って一緒に時間を過ごして、少しずつ好きになっていくものじゃないのか。
この人の言う『好き』は一目惚れという類なのか。
でもこの人の言葉からは気持ちが伝わってこないな。

「えっと、ごめん。これは罰ゲームなんだ。本当にごめん。気分悪くしたよね。僕なんかに告白されてもキモいだけだよね。君は虐められないように気をつけてね。それじゃあ、さようなら」

男の子は早口で物事を語り逃げるように走り去ろうとしていた。

「待って!誰に虐められているの?それと貴方の名前を教えて」

「僕は、ニイロ。それで僕は確かにいじめられっ子だけど、いじめっ子の名前は言えない…です」

黒の前髪で片方の目が隠れていて、全身でオドオドさを表現している男の子にちょっとでも自信を持ってもらいたいな。
そのために私は何ができるんだろう。
何をしたら、この子のためになるんだろう。

「そうだ!お友達になろう。今日から私たちは友達」

「友達?僕なんかと友達になってもいい事ないよ。むしろ、貴方も標的にされて悪いこと尽くめです」

「友達ができることって、良いことだと思うよ。だから友達になろ?」
少し圧を加えながら言ってみた。

「えっと、その…わかりました。なりましょう」

「ありがとう!その、私は今から少し用事があるからまた明日会おう」

そして、サッとその場を抜けてきた。

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