テレットは愛したがり屋

ゆた

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第二章 昔

精霊と学校5

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ば、罰ゲーム!?
はぁあ!?

テレットの怒りは刻々と燃え上がっている。
そんなところにダッシュで女の子が走ってきた。

「テレット!何で来たの?」
軽く深呼吸して気持ちを落ち着かせた。
「別に、カナデが心配だったから来ただけ。やっぱり最初から来ない方が良かったでしょ」
若造はカナデに告白するし、それはまさかの罰ゲームみたいだし、それなのにカナデはそいつと友達になろうとか言い出すし。
あー、また怒りが湧いてきた。

「テレット、怒ってる?
ごめんね。多分、テレットの気持ちにそぐわない事した」
カナデには、一応悪気もあるみたい。
そうだよ、カナデの友達も家族も僕がなってあげられるのに…
「カナデの世界が広がるのは、とってもいい事なんだと思う。でも、カナデが僕に構ってくれなくなるのは嫌だ」

これは僕のただの我儘だ。
最初はカナデが幸せならそれで良いと思っていた。もちろん今も根っこの部分は変わらない。
ただ、どんどん欲張りになっていく。カナデとずっと一緒に居たいくて、カナデを独り占めしたい、なんて子供じみた事が頭をよぎる。

「テレット!今も変わらないよ。私にとって一番大事なのはテレット。それ以外は二の次なんだよ。でもね、私はテレットに甘えすぎているって思うの。だから、少しでも成長したい」

ーーっ、そんな風に思っていたの?

「カナデ…ごめんね。カナデのやりたい事を取り上げて。僕がしていたのは見守る事じゃなくて、ただの妨害だったんだね」
趣旨を…履き違えていたんだ。
カナデの願いは僕の願いだ。

カナデは自分で殻を破ろうとしてるんだ。だから邪魔しちゃいけない。
「テレットは悪くない。無力な私を守ってくれた。私はまだ何も事情を話していないのに信じてくれた。すごく嬉しかったんだよ」

「…うん」
なんだか今までの行いが無駄じゃなかったんだって伝わってくる。
ふふっ、嬉しいな。少し照れくさいけれども。

「ありがとう、守ろうとしてくれて。愛してくれて。良いよ、妨害しても」

妨害しても…良い?
どうしてそんな事言うのだろう。

「本当にいいの?カナデが学校で友達作るの、邪魔しちゃうかもよ」

「それでも良いよ」

良いのか…。

ふふっ、そっか良いのかぁ。

この日は、二人が大きな一歩を踏み出した日でもあった。
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