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異世界からの帰還者
帰還者
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朝、目がさめるとお腹に何か違和感があった。そう、まるで人が猫のように丸まって乗っているような感覚だ。布団を剥いで見るとそこには自分の愛すべき白銀の髪の彼女が俺の体を布団のようにしながら愛らしい寝顔で眠っていた。あまりに可愛いので頭を撫でると、気持ちよさそうにそれを受け入れる。その姿が余計に愛らしい。
「・・・んむ。悠二。おはようなのじゃ。」
しばらくこのひと時を満喫しようとしたのだが、残念ながら彼女が起きてしまった。
「おはよう。ミクロ。」
そしておはようのキスを交わす。すると、ドタドタという足音共に部屋のドアが勢い良く開いた。
「あー!ミクロさんずるい!抜け駆け!」
「ミクロ。ずるい。私も。」
「ご主人、一夫多妻をするのならちゃんと他の娘の面倒も見なさい。それが王の器と言うものよ。でも、私は一時の関係でも側にいさせてさえくれればいいわ。」
3人の女性が勢いよく俺の方に飛び込んでくる。静かだった朝が一瞬にして騒がしいものへと変わる。これが、今の俺の日常だった。
この世界の時間軸で今から3ヶ月前、俺こと月乃悠二は突如として異世界に飛ばされた。
学校からのからの帰り道、いつもの様に一人でブラブラと歩きながら今日発売の漫画についていろいろ考えいた時、突然目の前が真っ暗になったと思ったらいつの間にか別の世界に転移させられた。そのあと王様が出てきたり、俺だけ神という存在に与えられたチート能力がおかしかったり、連れてこられ他の奴らともめたりして、結果的に何も知らない世界に一人で放り出された。
そこからはもう生きるために必死で戦った。平和な国に生まれて育った戦闘経験のない俺には始めの方はまさに地獄であった。
だが、嫌なことばかりということでもなかった。目の前にいる俺の恋人達や他の仲間達と出会う事が出来たし、元の世界じゃ体験できなかった様々な事ができた。それは今まで色の付いていなかった俺の世界にたくさんの色を与えてくれた。今だからこそ言えることだが、俺はあの世界に行ったことを後悔はしていない。
それに今はこちらとあちらの世界を自由に行き来できる。だから、俺は今がとても幸せだ。
「そういうば今日、転校生が来るそうですよ。」
男子の嫉妬の視線を浴びながらいつもの様に登校していると、俺の仲間兼恋人のカインがウキウキした様子で話す。こいつは俺らのムードメーカー的な役割だ。どんな時でも振りまく彼女の笑顔はいつも俺たちを明るくさせてくれた。旅をしていた時は後方支援担当だったので、ここにいる俺を含めたメンバーはまさしく彼女に心身共に救われている。ちなみに少し抜けている。
「おお、お前にしてはよくそんな情報を得られたな。」
「えっへん、情報収集は大事なんですよ。常に周りの変化に気をつけていなければいざというときに」
「わたしが。教えた。カインに」
「あー!なんでいっちゃうんですか!せっかく知的キャラでいこうと思っていたのに!昨日ちゃんと夜中までゲームしてあげたじゃないですか!」
「悠二の前なら。話しは別。知的キャラは。譲らない。」
このちょっとしゃべり方が変な少女の名前はシーナ。身長が140cmほどしかなく子供の様に見えるが、実はこの中で一番年上だったりする。それはかつて彼女があまりの強大な力の為に封印されていたのが原因だ。その時に肉体年齢が止まってしまったらしい。確か、実際の年齢に換算すると102「20歳」だったはずだ。あれ?今何かに改変されたような。多分気のせいだろう。
シーナも俺の仲間兼恋人だ。旅をしていた時は前衛職でバリバリの戦闘狂だった。そして、この中で一番多くの知識を有しており、情報収集に関しては群を抜いている。
「まあ、そんなことだろうとは思っていたわ。あのカインが私たちより知識が上回っている事なんてありえないもの。」
「ロイさん!私にだって皆さんの知らないようなことの一つや二つ、あると思います!」
「あなたでも知っているような事を知らないとか、一生の恥でしかないわよ。人生の汚点ね。」
「ロイさん、ヒドイっ」
彼女の名前はロイ。聞いてのとおりの毒舌家だ。元々は帝国の姫だったんだが、末姫だった為にその時の帝国の皇位継承権争いに巻き込まれ殺されそうになっていたのを俺が助けた。色々あって彼女の復讐を手伝うこととなり、その対価とてして俺の下僕となった。もちろん恋人でもある。本人は愛人の方が良いと言うけど。
旅の時はカインと一緒で後衛だったが、彼女の場合は支援ではなく攻撃をする後方魔術師タイプだ。
「ま、俺らには別に関係から興味ないな。」
「えー。悠二さんはドライですね。私がこの世界で読んだ”ハンガー”では転校生というのは必ずと言っていいほど問題をおこすんですよ。」
「ハンガー?どんな読み物だそれ?」
「カイン、ハンガーは服をかける道具のことよ。ご主人、カインが言っているのは”マンガ”ことよ。本当にこの娘は何度言ったらわかるの?貴方の頭はゴブリンなの?」
「なっ!?ちょっと間違えたくらいじゃないですか!」
「へー。じゃあ、ついこの間、貴方が薬と間違えて買ってきたコンドーふがっ」
「ひゃああああっ!?それはだめです!内緒にしといてくださいって言ったじゃないですか!」
カインが慌ててロイの口を塞ぐが、あそこまで言えばカインが何を買ったのかわかってしまった。どうやれば薬とあれを間違えるんだ。
「お前ら本当に仲が良いな。」
「二人が仲良いの。いつもの事。」
「ご主人、カイン。それは心外だな。私は仲良くしてやっているのだ。そこは間違えないでほしい。犬猫と同じようなものだ。」
「「それは確かに」」
「皆さんの中で私って犬猫レベル!?皆さんひどいです!」
涙目になりながらショックを受けるカインの姿はいつ見ても可愛いものがある。やはりカインにはいじられ属性がある。
「というか!いつまでミクロさんは悠二さんと腕を組んでるんですか!」
カインが今まで会話に入らず黙って俺の腕を組んでいるアルテミスに文句を言うと、他の3人もそれに同調するように頷く。
しかし、ミクロはまるで気にせずに不敵に笑うと、こう言った。
「だったら、お主達もやればよかろう。反対の腕が開いておるぞ。ま、あと一人じゃがな。」
「「「はっ!」」」
「ちょっ、ミクロ!そんなこと言ったらこいつらが」
そのあと3人の女性に襲いかかられた俺の腕が取れかけたのは言うまでもない。
「うー、朝からひどい目にあった。」
やっと学校に着いた俺はいつものように腕を枕にして机で寝ていると、これもまたいつものようにミクロが俺の背中に乗ってくる。そして周りから舌打ちの音が大量に吐き出される。うん、俺の日常だ。問題ない。
いや、もしかしたらいつもと違うかもという希望にかけて少し目を開けてみたら、俺の前の席にいる複数人の男子が「拷問」という本を目を凝視して読んでいたように見えたので、忘れることにした。
「くっ、あの男。私たちのミクロ様を。」
「しかも、ミクロ様だけで飽き足らず隣のクラスのロイ姉様やカインちゃん、シーナたんまで囲い込ませてるのよ。」
「どんな催眠術にかけたのかしら。」
「危険ね、あの男は。もうこうなったら、人類のために割礼をしてあれを使えなくさせるしか・・・」
「それなら任せて。家にあるから。」
女子の方から何か聞こえたが気のせいだろう。
ついでに言うとミクロ、カイン、ロイ、シーナは転校初日からこの学校で男子だけではなく、実は女子からの人気も高い。つまりそれはその分だけ俺に嫉妬が来るという意味だ。
「ミクロ、どうして俺の背中に乗るんだ?」
「それはもちろん、お主と片時も離れたくないからじゃ。別に良いじゃろう。何だかんだ言いつつも、お主もワシの胸を楽しんでおるのだから。」
部屋の殺気密度が数倍に跳ね上がった。もうこうなっては俺の学園生活ではこれ以上友達は出来ないだろう。俺はそう諦めてミクロの胸を堪能する事に勤しむとした。
いつ周りの連中が襲いかかってきてもおかしくないほどの状況だが、ガラガラと教室の入り口が開き担任の先生が入ってきたため、一応皆は席に着いた。
あ、でもミクロだけは未だに俺の背中にくっついている。別に俺も降ろすつもりはない。いくら周りから殺意を向けられていようともな。この感触は堪らん。
「はーい!今日は皆さんに新しいお友達を紹介しまーす。どうぞ入ってきて。」
突然、この部屋の殺気が消えた。そう、まるで膨らんだ風船が針で穴を開けられて飛び散るように一瞬にしてだ。
なぜなら、今入ってきたその転校生というのが
「みなさん、はじめまして。天野照子といいます。これからよろしくお願いいたします。」
黒髪ロングの絵に描いたような超絶美少女だったからだ。
「・・・んむ。悠二。おはようなのじゃ。」
しばらくこのひと時を満喫しようとしたのだが、残念ながら彼女が起きてしまった。
「おはよう。ミクロ。」
そしておはようのキスを交わす。すると、ドタドタという足音共に部屋のドアが勢い良く開いた。
「あー!ミクロさんずるい!抜け駆け!」
「ミクロ。ずるい。私も。」
「ご主人、一夫多妻をするのならちゃんと他の娘の面倒も見なさい。それが王の器と言うものよ。でも、私は一時の関係でも側にいさせてさえくれればいいわ。」
3人の女性が勢いよく俺の方に飛び込んでくる。静かだった朝が一瞬にして騒がしいものへと変わる。これが、今の俺の日常だった。
この世界の時間軸で今から3ヶ月前、俺こと月乃悠二は突如として異世界に飛ばされた。
学校からのからの帰り道、いつもの様に一人でブラブラと歩きながら今日発売の漫画についていろいろ考えいた時、突然目の前が真っ暗になったと思ったらいつの間にか別の世界に転移させられた。そのあと王様が出てきたり、俺だけ神という存在に与えられたチート能力がおかしかったり、連れてこられ他の奴らともめたりして、結果的に何も知らない世界に一人で放り出された。
そこからはもう生きるために必死で戦った。平和な国に生まれて育った戦闘経験のない俺には始めの方はまさに地獄であった。
だが、嫌なことばかりということでもなかった。目の前にいる俺の恋人達や他の仲間達と出会う事が出来たし、元の世界じゃ体験できなかった様々な事ができた。それは今まで色の付いていなかった俺の世界にたくさんの色を与えてくれた。今だからこそ言えることだが、俺はあの世界に行ったことを後悔はしていない。
それに今はこちらとあちらの世界を自由に行き来できる。だから、俺は今がとても幸せだ。
「そういうば今日、転校生が来るそうですよ。」
男子の嫉妬の視線を浴びながらいつもの様に登校していると、俺の仲間兼恋人のカインがウキウキした様子で話す。こいつは俺らのムードメーカー的な役割だ。どんな時でも振りまく彼女の笑顔はいつも俺たちを明るくさせてくれた。旅をしていた時は後方支援担当だったので、ここにいる俺を含めたメンバーはまさしく彼女に心身共に救われている。ちなみに少し抜けている。
「おお、お前にしてはよくそんな情報を得られたな。」
「えっへん、情報収集は大事なんですよ。常に周りの変化に気をつけていなければいざというときに」
「わたしが。教えた。カインに」
「あー!なんでいっちゃうんですか!せっかく知的キャラでいこうと思っていたのに!昨日ちゃんと夜中までゲームしてあげたじゃないですか!」
「悠二の前なら。話しは別。知的キャラは。譲らない。」
このちょっとしゃべり方が変な少女の名前はシーナ。身長が140cmほどしかなく子供の様に見えるが、実はこの中で一番年上だったりする。それはかつて彼女があまりの強大な力の為に封印されていたのが原因だ。その時に肉体年齢が止まってしまったらしい。確か、実際の年齢に換算すると102「20歳」だったはずだ。あれ?今何かに改変されたような。多分気のせいだろう。
シーナも俺の仲間兼恋人だ。旅をしていた時は前衛職でバリバリの戦闘狂だった。そして、この中で一番多くの知識を有しており、情報収集に関しては群を抜いている。
「まあ、そんなことだろうとは思っていたわ。あのカインが私たちより知識が上回っている事なんてありえないもの。」
「ロイさん!私にだって皆さんの知らないようなことの一つや二つ、あると思います!」
「あなたでも知っているような事を知らないとか、一生の恥でしかないわよ。人生の汚点ね。」
「ロイさん、ヒドイっ」
彼女の名前はロイ。聞いてのとおりの毒舌家だ。元々は帝国の姫だったんだが、末姫だった為にその時の帝国の皇位継承権争いに巻き込まれ殺されそうになっていたのを俺が助けた。色々あって彼女の復讐を手伝うこととなり、その対価とてして俺の下僕となった。もちろん恋人でもある。本人は愛人の方が良いと言うけど。
旅の時はカインと一緒で後衛だったが、彼女の場合は支援ではなく攻撃をする後方魔術師タイプだ。
「ま、俺らには別に関係から興味ないな。」
「えー。悠二さんはドライですね。私がこの世界で読んだ”ハンガー”では転校生というのは必ずと言っていいほど問題をおこすんですよ。」
「ハンガー?どんな読み物だそれ?」
「カイン、ハンガーは服をかける道具のことよ。ご主人、カインが言っているのは”マンガ”ことよ。本当にこの娘は何度言ったらわかるの?貴方の頭はゴブリンなの?」
「なっ!?ちょっと間違えたくらいじゃないですか!」
「へー。じゃあ、ついこの間、貴方が薬と間違えて買ってきたコンドーふがっ」
「ひゃああああっ!?それはだめです!内緒にしといてくださいって言ったじゃないですか!」
カインが慌ててロイの口を塞ぐが、あそこまで言えばカインが何を買ったのかわかってしまった。どうやれば薬とあれを間違えるんだ。
「お前ら本当に仲が良いな。」
「二人が仲良いの。いつもの事。」
「ご主人、カイン。それは心外だな。私は仲良くしてやっているのだ。そこは間違えないでほしい。犬猫と同じようなものだ。」
「「それは確かに」」
「皆さんの中で私って犬猫レベル!?皆さんひどいです!」
涙目になりながらショックを受けるカインの姿はいつ見ても可愛いものがある。やはりカインにはいじられ属性がある。
「というか!いつまでミクロさんは悠二さんと腕を組んでるんですか!」
カインが今まで会話に入らず黙って俺の腕を組んでいるアルテミスに文句を言うと、他の3人もそれに同調するように頷く。
しかし、ミクロはまるで気にせずに不敵に笑うと、こう言った。
「だったら、お主達もやればよかろう。反対の腕が開いておるぞ。ま、あと一人じゃがな。」
「「「はっ!」」」
「ちょっ、ミクロ!そんなこと言ったらこいつらが」
そのあと3人の女性に襲いかかられた俺の腕が取れかけたのは言うまでもない。
「うー、朝からひどい目にあった。」
やっと学校に着いた俺はいつものように腕を枕にして机で寝ていると、これもまたいつものようにミクロが俺の背中に乗ってくる。そして周りから舌打ちの音が大量に吐き出される。うん、俺の日常だ。問題ない。
いや、もしかしたらいつもと違うかもという希望にかけて少し目を開けてみたら、俺の前の席にいる複数人の男子が「拷問」という本を目を凝視して読んでいたように見えたので、忘れることにした。
「くっ、あの男。私たちのミクロ様を。」
「しかも、ミクロ様だけで飽き足らず隣のクラスのロイ姉様やカインちゃん、シーナたんまで囲い込ませてるのよ。」
「どんな催眠術にかけたのかしら。」
「危険ね、あの男は。もうこうなったら、人類のために割礼をしてあれを使えなくさせるしか・・・」
「それなら任せて。家にあるから。」
女子の方から何か聞こえたが気のせいだろう。
ついでに言うとミクロ、カイン、ロイ、シーナは転校初日からこの学校で男子だけではなく、実は女子からの人気も高い。つまりそれはその分だけ俺に嫉妬が来るという意味だ。
「ミクロ、どうして俺の背中に乗るんだ?」
「それはもちろん、お主と片時も離れたくないからじゃ。別に良いじゃろう。何だかんだ言いつつも、お主もワシの胸を楽しんでおるのだから。」
部屋の殺気密度が数倍に跳ね上がった。もうこうなっては俺の学園生活ではこれ以上友達は出来ないだろう。俺はそう諦めてミクロの胸を堪能する事に勤しむとした。
いつ周りの連中が襲いかかってきてもおかしくないほどの状況だが、ガラガラと教室の入り口が開き担任の先生が入ってきたため、一応皆は席に着いた。
あ、でもミクロだけは未だに俺の背中にくっついている。別に俺も降ろすつもりはない。いくら周りから殺意を向けられていようともな。この感触は堪らん。
「はーい!今日は皆さんに新しいお友達を紹介しまーす。どうぞ入ってきて。」
突然、この部屋の殺気が消えた。そう、まるで膨らんだ風船が針で穴を開けられて飛び散るように一瞬にしてだ。
なぜなら、今入ってきたその転校生というのが
「みなさん、はじめまして。天野照子といいます。これからよろしくお願いいたします。」
黒髪ロングの絵に描いたような超絶美少女だったからだ。
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