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第1話
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今を生きる少年・少女なら誰もが一度は夢見ると俺が勝手に信じてるファンタジーな異世界。
特にドラゴンと魔法という言葉には飛び切り熱い想いがある。
俺はそんなファンタジーな世界や生き物に思いを馳せる平凡な、ただ少しアニメや漫画が好きな男子高校生――だった。
そう、あんなことが起きるまでは。
――――
高校に入学して二ヶ月が経過した。
高校デビューとはよく言うがそんな俺には大したイベントは起きなかった。
いや、起きるはずがなかったんだ。
この非リアの俺が、高校に入学した程度でリア充になれるわけがなかったんだ……
“モテる奴はみんな努力してるけど、お前は?”
これは高校デビューに失敗した俺に対し腐れ縁のとある友人が言った言葉だ。
そいつは所謂リア充で彼女もいる。
そうだ、男も女もみんな努力している。
男も女も例外なく。
俺はどうだ? 二次元の龍っ娘な美少女が出てきたら本気出してやると以前言ったことがあったっけか。
未だに出てこないんだよなぁ……そんな美少女。
「本気出せないなぁ」
出したいのは山々だが出て来ないんだから本気の出しようがないわな。
学校を出て、電車を乗り継いで、家に一番近い駅に降りてからは歩き。
今はその電車を降りて家に一番近い駅から歩きに変わったところだ。
もうすぐ家に着く――いや、もう見えたな。我が家が。
「んお!? ワシのソフトクリームがあ!」
「は? 何?」
せっかく家までもう少しというところで背後から悲鳴に似た声が聞こえた。
振り返って見ると不良っぽい大男が絶望しきった顔で地面に落ちているソフトクリームを見つめていた。
フルーツも乗っかっていたのかグチャグチャになっている。
これはもしや世間で言うところのスイーツ男子というやつか……可愛らしいことで。
「おんどりゃあ……何してくれとんじゃあ!」
「え? 俺?」
「他に誰がいる⁉︎」
大男は至近距離まで近付いて吠えてくる。
これはもしかして俺とぶつかった拍子にってやつか? 何とも古典的な……
そんなイベントがまだ現代日本に残っていたとは。
もしかして俺って結構、貴重な体験をしているんじゃないだろうか。
「払わんか! 弁償せんかい!」
「払う? それはちょっと……って危ない!?」
「なぬ!?」
大男に胸ぐらを掴まれて口論になりかけていると突然、大型トラックが俺たちに向かって突っ込んできた。
そのトラックの運転手が目を開けていないことに気付いた俺は反射的に油断していた大男を突き飛ばす。
「お、おい!」
そして俺はトラックに引かれた。
それはまるで俺自身がソフトクリームとなって、踏み潰されたかのような呆気ないものだった。
身体を動かすどころか目すら開けられない惨めな最期……本当だったら俺はこの後、録り溜めたアニメを消化するはずだったんだ。
あぁ……あのアニメの終わりを観ずに終わるなんて嫌だなぁ。
「しっかり! しっかりせい! すぐに救急車を――」
大男の必死に呼び掛ける声が届く。
だけどそれは徐々に遠くなる。
ああ……死神のお迎えか? 目を開けてないのに凄い眩しいな。
ああそして暖かい。
まるで身体が浮いてるかのように心地の良い最期だった……
――――
「急いで治癒を! 勇者さまが死んでしまいます!」
勇者? 誰のことだ? それにしても勇者か……死後の世界で勇者を死なないように世界に返そうとしているのだろうか。
どっちにしても俺は死んでしまったから関係のない話だ……
「まったく……最強の勇者が召喚早々、死にそうになってるなんて笑えない話ね」
大男の声はおろか、車の走る音とか毎日外に出れば必ず聞こえてくるはずのものが聞こえてこない……これは完全に俺の人生終わってる。
最強の勇者さまとやらが死にそうになっているらしい。
こんな可愛い萌えボイスの持ち主に心配してもらえるとは……軽い声オタと呼ばれる俺でも嫉妬してしまうよ。
まあいいや、その勇者さまの顔を見てやろうじゃないか!
「あっ! 勇者さまがお目覚めになられました!」
「え……勇、者?」
目を開けると、俺の大好きなドラゴンの耳と尻尾を持った美少女達が俺の顔を見て目を輝かせ笑顔を浮かべていた。
俺の見たところはドラゴンだけではないみたいだが、その数は優に三十は越えている。
一部は顔近いし!
「いやー、勇者が目覚めて良かったわ」
「えっ……えーと?」
「おはようございます勇者さま!」
白銀の髪、角に似たドラゴンの耳と尻尾を持った美少女が俺に満面の笑顔を向けて言った。
勇者。確かにそう聞こえた。
このヤケに気品に溢れたドラゴン娘は俺に笑顔で言ったんだ。
「えっと……誰が勇者」
「あなたさまですよ? 勇者さま」
笑顔を絶やすことなく言われてしまう。
勇者……もし、仮に俺が勇者であるとしよう。
でも最強では絶対にない。
だって学校の不良にも勝てないどころか避ける俺が最強で勇者? ないないない! これはあれだきっと勘違いされているんだ。
「俺が勇者……」
「何、惚けてんの?」
「イリス! 勇者さまに失礼ですよ!」
金髪ツインテールのドラゴン娘は俺に疑いの眼差しを向けてくる。
何か全体的に刺々しいな。
態度もそうだが、見た目も尻尾以外はハリネズミのように鋭い。
某電気鼠先輩に美少女と龍という二つの要素を追加した感じだとでも言えばいいか……
「ふん! だいたいこいつ、本当にあの最強勇者なの? 死にかけてたみたいだけど」
「それは……勇者さまはきっと死闘の末に召喚してしまったのかもしれないですし。そうですよね? 勇者さま」
最強勇者さまは死にかけることはないらしい。
それにしても死闘か……
そんな危ない橋を渡ってきた覚えはない。
どうやらこれは本当に勘違いか。
「そ、そういえば俺を助けてくれてありがとう!」
「あっ、それならあの子に。マリン?」
「は、はい……姫さま」
姫さま、マリン。
そう呼び合う銀髪のドラゴン娘と、おどおどと前に出てくる青色髪のドラゴン娘。
なんという幼女。
「この子が勇者様をお救いした青龍のマリンです」
「へ、へえー、助けてくれてありがとう」
「え? あ……あぅ」
「ちょ、ちょっとあんた!」
俺が命の恩人である青龍で幼女のマリンちゃんに礼を言うと、何やら金髪のドラゴン娘であるイリスが烈火の如く怒っている。なんだ?
「どうかした?」
「どうもこうも、何、気安く触ってるのよ!」
「あ……」
し、しまった! あまりの幼くも可愛らしい姿に頭を撫でてしまった! そうか、幼女には許可なく触れてはいけないという鉄の掟を忘れていたぜ……
「ご、ごめん!」
「い、いえ……大丈夫ですぅ!」
顔を赤くして脱兎の如く逃げ出す青龍幼女マリン。
完全にやらかしてしまった。
くっ! 俺としたことがまさかこんなイージーなミスを!
「あーあ……あとでちゃんとマリンに謝りなさいよ? 駄目勇者」
「わ、分かってるって」
何とも厳しい言葉をイリスに頂戴した俺。
それにしてもなんだか俺が勇者で確定みたいな雰囲気になっているな……まずいなこれは。
「ところで勇者さま、お名前は?」
「俺? 俺の名前は烈斗だ」
って突然聞かれたせいで普通に自己紹介してしまった。
苗字の方が良かったか? それにしてもここはどうやら死後の世界じゃないみたいだが、どこなんだろうか。
「レッド……? 変わった名前ね」
「それに最強勇者様の名前とも随分違いますね」
「う……」
早速バレたか……でも仕方ないな俺は最強勇者じゃないんだから。
しかも烈斗のイントネーションがなんか違うし!
「読めたわ。あんた最強勇者じゃないでしょ!」
「そうなんですか!?」
「ま、まあ……そうだね」
謎が解けたと言わんばかりに人差し指を差して言うイリスと、言われて気付いたのか両目を見開いてこちらを見る姫さまこと、銀髪のドラゴン娘。
周囲からの視線で頭に浮かぶアウェー感という言葉。
勇者と言え! と圧力を掛けられているような気になってくる。
これが数の暴力というやつか。
緊張してきたぞ……
「じゃあ、あんたはいったい何者よ!」
「何者ですか!?」
「え、えっと……末裔、かな」
何言ってんだ俺は! 勇者じゃないなら何か、勇者の末裔……
そういう遊びを小さな頃にやったことを思い出したせいか、言葉に出してしまった。
「末裔……?」
「末裔って何の末裔よ……ほら言いなさい!」
「その、最強勇者の末裔、みたいな」
イリスに急かされ、半ば冗談のつもりで言って、自分で笑う俺。
もうこうなったら笑って許してもらおう。
それしかない。
「最強勇者の末裔……なるほど」
「末裔! 確か最強勇者は人間……人間は寿命が極端に短いから有り得る話ね!」
「あ、あれ?」
しかし俺の考えの斜め上を行き、この二人は愚か、周囲の者達まで俺が最強勇者の末裔だと信じてしまっている!
「最強勇者の末裔なら最強勇者に違いありませんわ!」
「そうね……ごめんね? あんたのこと、疑って」
「いや、分かってもらえたなら俺はそれで」
俺が最強勇者だと確信し、信じて疑わないといった様子で沸き上がる歓声。
そして煌びやかなドレス姿の姫さまとさっき呼ばれていた銀髪のドラゴン娘は俺に期待の眼差しを送り、金色の雷の模様が描かれた服装をしている金髪ツインテールのドラゴン娘であるイリスは俺に頭を下げた。
これは言えない……今更、実は末裔なんかじゃないなんてとてもじゃないけど言えない。
「よーし、それじゃあ聖龍王さまのところに行きましょ」
「ええ、行きましょう勇者さま!」
「聖龍王? 誰だそれ」
「誰ってあんたを召喚したこの子……聖龍姫のお父上よ」
「はい!」
どうやらこの姫さま、聖龍姫と呼ばれているらしく、俺を召喚した人物。
なるほど、俺はこの聖龍姫とさっきの幼女な青髪のドラゴン娘のマリンに助けられたのか。
恩は感じるが、俺は最強勇者でも、その末裔でもないのに。
そんな人、もといドラゴンに会っても大丈夫なんだろうか……
特にドラゴンと魔法という言葉には飛び切り熱い想いがある。
俺はそんなファンタジーな世界や生き物に思いを馳せる平凡な、ただ少しアニメや漫画が好きな男子高校生――だった。
そう、あんなことが起きるまでは。
――――
高校に入学して二ヶ月が経過した。
高校デビューとはよく言うがそんな俺には大したイベントは起きなかった。
いや、起きるはずがなかったんだ。
この非リアの俺が、高校に入学した程度でリア充になれるわけがなかったんだ……
“モテる奴はみんな努力してるけど、お前は?”
これは高校デビューに失敗した俺に対し腐れ縁のとある友人が言った言葉だ。
そいつは所謂リア充で彼女もいる。
そうだ、男も女もみんな努力している。
男も女も例外なく。
俺はどうだ? 二次元の龍っ娘な美少女が出てきたら本気出してやると以前言ったことがあったっけか。
未だに出てこないんだよなぁ……そんな美少女。
「本気出せないなぁ」
出したいのは山々だが出て来ないんだから本気の出しようがないわな。
学校を出て、電車を乗り継いで、家に一番近い駅に降りてからは歩き。
今はその電車を降りて家に一番近い駅から歩きに変わったところだ。
もうすぐ家に着く――いや、もう見えたな。我が家が。
「んお!? ワシのソフトクリームがあ!」
「は? 何?」
せっかく家までもう少しというところで背後から悲鳴に似た声が聞こえた。
振り返って見ると不良っぽい大男が絶望しきった顔で地面に落ちているソフトクリームを見つめていた。
フルーツも乗っかっていたのかグチャグチャになっている。
これはもしや世間で言うところのスイーツ男子というやつか……可愛らしいことで。
「おんどりゃあ……何してくれとんじゃあ!」
「え? 俺?」
「他に誰がいる⁉︎」
大男は至近距離まで近付いて吠えてくる。
これはもしかして俺とぶつかった拍子にってやつか? 何とも古典的な……
そんなイベントがまだ現代日本に残っていたとは。
もしかして俺って結構、貴重な体験をしているんじゃないだろうか。
「払わんか! 弁償せんかい!」
「払う? それはちょっと……って危ない!?」
「なぬ!?」
大男に胸ぐらを掴まれて口論になりかけていると突然、大型トラックが俺たちに向かって突っ込んできた。
そのトラックの運転手が目を開けていないことに気付いた俺は反射的に油断していた大男を突き飛ばす。
「お、おい!」
そして俺はトラックに引かれた。
それはまるで俺自身がソフトクリームとなって、踏み潰されたかのような呆気ないものだった。
身体を動かすどころか目すら開けられない惨めな最期……本当だったら俺はこの後、録り溜めたアニメを消化するはずだったんだ。
あぁ……あのアニメの終わりを観ずに終わるなんて嫌だなぁ。
「しっかり! しっかりせい! すぐに救急車を――」
大男の必死に呼び掛ける声が届く。
だけどそれは徐々に遠くなる。
ああ……死神のお迎えか? 目を開けてないのに凄い眩しいな。
ああそして暖かい。
まるで身体が浮いてるかのように心地の良い最期だった……
――――
「急いで治癒を! 勇者さまが死んでしまいます!」
勇者? 誰のことだ? それにしても勇者か……死後の世界で勇者を死なないように世界に返そうとしているのだろうか。
どっちにしても俺は死んでしまったから関係のない話だ……
「まったく……最強の勇者が召喚早々、死にそうになってるなんて笑えない話ね」
大男の声はおろか、車の走る音とか毎日外に出れば必ず聞こえてくるはずのものが聞こえてこない……これは完全に俺の人生終わってる。
最強の勇者さまとやらが死にそうになっているらしい。
こんな可愛い萌えボイスの持ち主に心配してもらえるとは……軽い声オタと呼ばれる俺でも嫉妬してしまうよ。
まあいいや、その勇者さまの顔を見てやろうじゃないか!
「あっ! 勇者さまがお目覚めになられました!」
「え……勇、者?」
目を開けると、俺の大好きなドラゴンの耳と尻尾を持った美少女達が俺の顔を見て目を輝かせ笑顔を浮かべていた。
俺の見たところはドラゴンだけではないみたいだが、その数は優に三十は越えている。
一部は顔近いし!
「いやー、勇者が目覚めて良かったわ」
「えっ……えーと?」
「おはようございます勇者さま!」
白銀の髪、角に似たドラゴンの耳と尻尾を持った美少女が俺に満面の笑顔を向けて言った。
勇者。確かにそう聞こえた。
このヤケに気品に溢れたドラゴン娘は俺に笑顔で言ったんだ。
「えっと……誰が勇者」
「あなたさまですよ? 勇者さま」
笑顔を絶やすことなく言われてしまう。
勇者……もし、仮に俺が勇者であるとしよう。
でも最強では絶対にない。
だって学校の不良にも勝てないどころか避ける俺が最強で勇者? ないないない! これはあれだきっと勘違いされているんだ。
「俺が勇者……」
「何、惚けてんの?」
「イリス! 勇者さまに失礼ですよ!」
金髪ツインテールのドラゴン娘は俺に疑いの眼差しを向けてくる。
何か全体的に刺々しいな。
態度もそうだが、見た目も尻尾以外はハリネズミのように鋭い。
某電気鼠先輩に美少女と龍という二つの要素を追加した感じだとでも言えばいいか……
「ふん! だいたいこいつ、本当にあの最強勇者なの? 死にかけてたみたいだけど」
「それは……勇者さまはきっと死闘の末に召喚してしまったのかもしれないですし。そうですよね? 勇者さま」
最強勇者さまは死にかけることはないらしい。
それにしても死闘か……
そんな危ない橋を渡ってきた覚えはない。
どうやらこれは本当に勘違いか。
「そ、そういえば俺を助けてくれてありがとう!」
「あっ、それならあの子に。マリン?」
「は、はい……姫さま」
姫さま、マリン。
そう呼び合う銀髪のドラゴン娘と、おどおどと前に出てくる青色髪のドラゴン娘。
なんという幼女。
「この子が勇者様をお救いした青龍のマリンです」
「へ、へえー、助けてくれてありがとう」
「え? あ……あぅ」
「ちょ、ちょっとあんた!」
俺が命の恩人である青龍で幼女のマリンちゃんに礼を言うと、何やら金髪のドラゴン娘であるイリスが烈火の如く怒っている。なんだ?
「どうかした?」
「どうもこうも、何、気安く触ってるのよ!」
「あ……」
し、しまった! あまりの幼くも可愛らしい姿に頭を撫でてしまった! そうか、幼女には許可なく触れてはいけないという鉄の掟を忘れていたぜ……
「ご、ごめん!」
「い、いえ……大丈夫ですぅ!」
顔を赤くして脱兎の如く逃げ出す青龍幼女マリン。
完全にやらかしてしまった。
くっ! 俺としたことがまさかこんなイージーなミスを!
「あーあ……あとでちゃんとマリンに謝りなさいよ? 駄目勇者」
「わ、分かってるって」
何とも厳しい言葉をイリスに頂戴した俺。
それにしてもなんだか俺が勇者で確定みたいな雰囲気になっているな……まずいなこれは。
「ところで勇者さま、お名前は?」
「俺? 俺の名前は烈斗だ」
って突然聞かれたせいで普通に自己紹介してしまった。
苗字の方が良かったか? それにしてもここはどうやら死後の世界じゃないみたいだが、どこなんだろうか。
「レッド……? 変わった名前ね」
「それに最強勇者様の名前とも随分違いますね」
「う……」
早速バレたか……でも仕方ないな俺は最強勇者じゃないんだから。
しかも烈斗のイントネーションがなんか違うし!
「読めたわ。あんた最強勇者じゃないでしょ!」
「そうなんですか!?」
「ま、まあ……そうだね」
謎が解けたと言わんばかりに人差し指を差して言うイリスと、言われて気付いたのか両目を見開いてこちらを見る姫さまこと、銀髪のドラゴン娘。
周囲からの視線で頭に浮かぶアウェー感という言葉。
勇者と言え! と圧力を掛けられているような気になってくる。
これが数の暴力というやつか。
緊張してきたぞ……
「じゃあ、あんたはいったい何者よ!」
「何者ですか!?」
「え、えっと……末裔、かな」
何言ってんだ俺は! 勇者じゃないなら何か、勇者の末裔……
そういう遊びを小さな頃にやったことを思い出したせいか、言葉に出してしまった。
「末裔……?」
「末裔って何の末裔よ……ほら言いなさい!」
「その、最強勇者の末裔、みたいな」
イリスに急かされ、半ば冗談のつもりで言って、自分で笑う俺。
もうこうなったら笑って許してもらおう。
それしかない。
「最強勇者の末裔……なるほど」
「末裔! 確か最強勇者は人間……人間は寿命が極端に短いから有り得る話ね!」
「あ、あれ?」
しかし俺の考えの斜め上を行き、この二人は愚か、周囲の者達まで俺が最強勇者の末裔だと信じてしまっている!
「最強勇者の末裔なら最強勇者に違いありませんわ!」
「そうね……ごめんね? あんたのこと、疑って」
「いや、分かってもらえたなら俺はそれで」
俺が最強勇者だと確信し、信じて疑わないといった様子で沸き上がる歓声。
そして煌びやかなドレス姿の姫さまとさっき呼ばれていた銀髪のドラゴン娘は俺に期待の眼差しを送り、金色の雷の模様が描かれた服装をしている金髪ツインテールのドラゴン娘であるイリスは俺に頭を下げた。
これは言えない……今更、実は末裔なんかじゃないなんてとてもじゃないけど言えない。
「よーし、それじゃあ聖龍王さまのところに行きましょ」
「ええ、行きましょう勇者さま!」
「聖龍王? 誰だそれ」
「誰ってあんたを召喚したこの子……聖龍姫のお父上よ」
「はい!」
どうやらこの姫さま、聖龍姫と呼ばれているらしく、俺を召喚した人物。
なるほど、俺はこの聖龍姫とさっきの幼女な青髪のドラゴン娘のマリンに助けられたのか。
恩は感じるが、俺は最強勇者でも、その末裔でもないのに。
そんな人、もといドラゴンに会っても大丈夫なんだろうか……
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