剣と魔法の世界で俺だけロボット

神無月 紅

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心核の入手

003話

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 馬車で移動すること数日。
 やがて、遠くに街の姿が見えてきたときには、アランもあからさまに安堵した。
 馬車が十台以上も纏まって移動しており、騎兵ではないが馬に乗って護衛している者もいる。
 ぱっと見では探索者集団なのか、冒険者の集団なのか、はたまた商隊なのかが分からず、だからこそ盗賊の類に襲われるのも珍しくはない。
 とはいえ、心核持ちが二人もいる雲海は、ただの盗賊程度にどうにか出来る集団ではない。
 むしろ、襲ってきた盗賊を逆に殲滅するなり、もしくは捕らえるなりして盗賊の拠点からそこに溜め込んだお宝を奪い、捕らえた盗賊たちを奴隷として売り払ってちょっとした小遣い稼ぎをしてもおかしくはなかった。
 もっとも、これで得られる金額は、普通なら一般人が数ヶ月から数年は食べていけるような金額になることも珍しくないのだが。
 それだけ探索者たちが使う各種道具やマジックアイテムの類が高価だということを示している。

「盗賊に襲われなくて、何よりだったな」
「何を言ってるのよ。盗賊が襲ってくれば、私たちは楽に儲けることが出来て、この辺りは安全に旅をすることが出来るようになるのよ。なら、襲われた方がいいじゃない」

 呆れたように、アランの母親のリアが告げ、一緒に乗っている他の仲間たちもそれに同意するように頷く。
 だが、アランとしては、人を殺すというのはあまり好きになれない以上、出来れば盗賊には襲ってこないでほしかった。
 もちろん、アランもこの世界に生まれ変わってから十七年だ。
 雲海という、中堅どころの探索者集団で生まれ育った以上、モンスターや盗賊、場合によっては獲物を横取りしてこようとした同業者といった相手と戦い、命を奪ったことは何度もある。
 人を殺すのは好きではないが、それを躊躇えば結果として仲間を危機に陥れるということは身をもって体験した。
 だからこそ、殺さなければならないときは容赦なく相手を殺すが、それは別に殺しを楽しんでいる訳ではなく、あくまでも必要だから殺すだけだ。
 ……もっとも、アランの場合は総合的な強さという点ではそこまで強い訳でもないのだが。
 結果として、仲間のフォローをしながらの戦いになることの方が多いのだが、戦闘中は仲間は強い相手と次々に戦っていくことが多く、直接相手の命を奪う役目は何気にアランも多かったりする。

「母さんの言うことも分かるけど、やっぱり人を殺すのは好きじゃないんだよ。……モンスターなら、不思議なことにそこまで抵抗はないんだけどな」

 そう言いながら、ふと日本にいたときにやった国民的RPGを思い出す。
 敵として出てくるのは大抵がモンスターなのだが、その中には人間がいたりもした。

(敵を倒せば経験値を入手して、それでレベルアップ……どうせファンタジーの世界なんだし、そういうシステムがあってもいいのにな)

 そう思うも、生憎とこの世界にそのような便利なシステムはない。
 盗賊を殺すことの意義と利益をリアに説教されつつも馬車は進み、やがて街に到着する。
 基本的のこの世界の街や村では、周囲を覆うように壁を作っていることが多い。
 それは盗賊やモンスター、もしくは野生の獣が入り込んできたりしないようにするためというのもあるが、同時に街や村に入った者たちをしっかりと管理するという意味もある。
 そんな訳で、アランを含めた雲海の一行は探索者ギルド――冒険者ギルドとは別のギルド――のギルドカードを見せて、街の中に入った。

「おおー、結構賑わってるな」

 馬車の窓から外を見てそう呟いたのは、アランの乗っている馬車のすぐ横を歩いていた馬に乗っている人物。
 いわゆる、騎兵だ。
 馬車で移動することが多い雲海だが、馬車では当然のように小回りが利かない。
 また、何かあったときに至急移動する必要があるときも、馬車だとどうしても遅くなる。
 そういうときに便利なのが、騎兵だった。
 ……便利な代わりに、馬の世話や餌で馬車の荷台がそれなりに圧迫されてしまうのだが。

「そりゃそうでしょ。ここからそう遠く離れていない場所に遺跡があるし、私たちにはあまり関係がないけど、ダンジョンもあるって話だもの」

 リアが口にしたダンジョンというのは、古代魔法文明の遺跡とは似て非なるものだ。
 どちらも危険で、上手く攻略出来れば大きな利益となるという点では同じだが、その成り立ちが大きく違う。
 大地や空気に満ちる魔力が影響してダンジョンと化したり、もしくは魔力異常が起きてダンジョンとなったり、あるいは迷宮創造といった能力を持つモンスターがダンジョンを作ったり……といったものが一般的にダンジョンと呼ばれており、古代魔法文明の遺跡はその名の通りの代物だ。
 とはいえ、基本的にダンジョンよりも遺跡の方が難易度は高く、危険の度合いも大きいというのが一般的な認識だった。

(俺からすれば、遺跡もダンジョンも似たようなものなんだけどな)

 日本で生きてきたときにゲームや漫画、アニメといったもので得た知識からすると、アランにとってはそんな感想だった。
 ……もっとも、それを口に出せば面倒なことになるので、そのような真似はしないのだが。

「ダンジョンかぁ。遺跡とかがなければ、ちょっと行ってみても面白いかもな。……なぁ、アランもそう思わないか?」

 リアと話していた騎兵が、アランに向かってそう尋ねてくる。
 だが、アランは嫌そうな表情で首を横に振ってその意見を否定した。

「嫌だよ。前にダンジョンに行ったとき、オークの群れに追われて殺されかけたんだ。あのときの二の舞はごめんだよ」
「あー……そう言えばそういうこともあったな。アランのおかげで、しばらく肉には困らなくなったんだったか」

 オークはそれほど強力なモンスターではないが、それはある程度の強さを持つ者に限っての話だ。
 その肉の美味さから冒険者や探索者には喜ばれるモンスターではあるが、生憎とアランの強さではオークを一匹相手にするのも難しい。
 だというのに、アランが仲間たちと一緒に行ったダンジョンでは仲間とはぐれ、アランは一人で大量のオークと遭遇してしまったのだ。
 一匹のオークを相手にしても勝つのは難しいというのに、大量のオークを相手にして勝てるはずもなく、アランは必死に逃げ続け……そして仲間たちと合流することに成功する。
 結果として、それらのオークは合流した仲間たちがあっさりと倒し、騎兵の男が口にしたようにしばらくの間は肉に困るということはなかった。
 ……いや、むしろ肉の量が多すぎて、干し肉に加工したり、もしくは店に肉を売ったりといった真似すらした。
 五十人以上の人間が所属する雲海のメンバーですら、そのような有様だったのだから、どれだけオークが多かったのかは容易に想像出来るだろう。
 そんな話をしながらも、雲海は探索者ギルドに向かう。
 街中ではアランたちに向かって、何人もが色々な視線を向ける。
 嫉妬、羨望、憧れ。……中にはリアに向けて好色な視線を向ける者もいたが、アランはそのような視線を向けている者たちが、実際に母親に手出しをしないことを祈るのみだ。
 下手にそのような連中が言い寄ってきたり、場合によっては絡んできたりといったことがあった場合、間違いなく面倒なことになるのだから。
 これは予想という訳ではなく、実際に今まで経験してきたことでもあるので、ほぼ確実と言ってもよかった。

「お、見ろよあれ。俺たちと同じくらいか、それよりも大きいクランだぞ」

 クランというのは、言わば冒険者で言うパーティのようなものだ。
 正確には、パーティは五人前後というのが一般的なのに対して、クランは雲海のように数十人と大規模なものだが。
 アランは一緒の馬車に乗っていた仲間の言葉に、その窓の外に視線を向ける。
 すると、ちょうど別の方向からギルドに向かう集団がおり、それが仲間の言っていたクランだというのは間違いなかった。

「どこの連中か分かるか?」

 探索者のクランというのは、少人数で行動している冒険者よりは少ないが、それでも数は相当に多い。
 当然のように雲海と友好的なクランもあれば、敵対的なクランもいる。
 これから遺跡に潜るというのに、もし敵対的なクランが近くにいるとすれば……最悪の場合、遺跡の中や外にもかかわらず、殺し合いにもなりかねない。
 それが嫌だからこそ、相手の情報を欲して尋ねたのだが……一緒に馬車に乗っていた男は、首を横に振る。

「いや、あの連中は見たことがねえな。リアはどうだ?」
「うーん……見たことがない連中ね。以前にかかわったことがある相手なら、一人か二人は見覚えのある相手がいてもおかしくないんだから、多分初めて遭遇するクランね」
「……嫌な予感しかしないんだけど」

 ちょうど自分たちと同じタイミングでこの街……カリナンにやってきたクラン。
 そしてこのカリナンの近くにはダンジョンの数は多いが、遺跡の数は多くない。
 いや、正確には小さな遺跡ならそれなりに数はあるのだが、雲海やアランが見ているようなクランが潜るような価値のある遺跡となれば……

「多分、私たちと同じ遺跡を目当てにしてるんでしょうね」

 アランの嫌な予感を、リアはあっさりとそう告げる。

「止めてくれよ、母さん。もし本当にそんなことになったら、間違いなく競争になるだろ」

 これで、どちらかのクランが極端に大きいか、もしくは小さいかであれば、お互いに協力して遺跡に潜るといったことをしてもおかしくはないのだが、生憎と二つのクランは同じくらいの大きさだ。
 そうなると、恐らく雲海と向こうのクランで協力して遺跡に挑むというのは、難しくなる。
 もちろん、絶対にそうなるとは限らない。
 雲海を率いているイルゼンと向こうのクランを率いている人物の馬が合えば、もしかしたら……本当にもしかしたらだが、協力して遺跡に挑むという可能性もあった。

「無理だろうな」

 アランの顔を見て、何を考えているのか理解したのか、仲間の一人がそう告げる。
 それに対し、アランは反発しようとするも……イルゼンの飄々とした性格を考えると、よっぽどのことがない限りは仲間の言葉通り協力して遺跡に挑むといった真似はしないだろうということに賛成せざるをえない。
 何より、二つのクランが協力して遺跡に挑むということは、得られた報酬にかんしても二つのクランで分けなければならないということになってしまう。
 そのようなことを許容出来るかどうか……それは、難しいところだった。
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