剣と魔法の世界で俺だけロボット

神無月 紅

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辺境にて

051話

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 アランとレオノーラの二人が依頼を受けて盗賊の討伐隊に参加するということが決まると、翌日にはすでに再度の討伐隊が派遣されることになった。
 アランにしてみれば、早すぎるのでは? という思いがないでもなかったが、盗賊たちに半ば封鎖されている現在のラリアントの状況を考えてと言われれば、納得せざるをえない。

「本当に、着の身着のままって感じだな。いや、楽でいいんだけど」
「そうね。とはいえ、油断は禁物よ。向こうにも心核使いがいる以上、どこで襲撃してくるのか分からないんだから」

 今回、アランとレオノーラはラリアント側の依頼で援軍という形で討伐隊に同行することになっている。
 普通なら移動手段の馬車や食料その他諸々の物資は自分で持っていくのが基本なのだが、イルゼンの交渉によってその類の物は全てラリアント側の持ち出しとなっていた。
 だからこそ、アランたちは着の身着のまま――当然武器の類は自前で持ってきているが――でこの討伐隊に合流することになったのだ。
 集まっている討伐隊を見ながら話しているアランとレオノーラの二人だったが、やがて討伐隊の中から数人の男が近づいてくるのに気が付く。
 その中の一人は、アランたちがラリアントに移動中に盗賊と遭遇したときに会った、モリク・ガイブス。
 モリクは騎士団の第三小隊を率いている小隊長だったという話を思い出したアランは、つまりそのモリクを引き連れて歩いているのはその上司なのだろうと判断する。

「失礼する。貴方たちが今回の依頼で私たちに協力することになった心核使いの二人か?」
「そうよ。私は黄金の薔薇のレオノーラ。そっちは雲海のアラン。それで?」

 私たちに自己紹介させておきながら、自分は自己紹介をしないのかしら?
 そんな態度で尋ねるレオノーラに、言われた人物は一瞬怯む。
 また、モリク以外の騎士たちも同様に怯み……だが、レオノーラの言ってることもおかしくはないと判断し、不満を口にすることはない。
 もっとも、もしそう言ったのがアランであれば、モリクを率いている人物はともかく、モリクの同僚だちは不満を口にしていた可能性が高かったが。
 これもまた、レオノーラがその美貌を有効活用したおかげなのだろう。

「これは失礼した。私はラリアントの騎士団を率いている騎士団長のルディ・アーバインだ。よろしく頼む」

 そう言った人物……ルディ・アーバインは、四十代ほどのがっりとした体格の男だ。
 どことなく油断のならない笑みを浮かべているその様子は、味方であれば十分に頼れる男といった印象をアランに与える。

「よろしく、ルディ団長」

 レオノーラがそう言って手を出すと、ルディはその手を握り返す。
 その後、他の面々も自己紹介を行うと、すぐに出発することとなる。
 アランとしては、もっとしっかりと情報共有とかをしなくてもいいのか? と思わないでもなかったのだが、すでに討伐隊の中では十分に情報共有は出来ているので問題ないと返された。
 アランたちには、馬車で移動中にモリクから説明をすると言われてしまえば、元々が対心核持ちの戦力として雇われたアランやレオノーラにしてみれば、その言葉にそれ以上反対出来るはずもない。
 また、盗賊たちのアジトとなっている場所までは馬車でも半日ほどの時間がかかるのだから、少しでも急ぎたいという理由は理解出来る。

(とはいえ、アジトはともかくとして、ラリアントを封鎖している盗賊たちはどうするのかってのはあると思うんだけど)

 それこそ、アジトにいる盗賊たちを倒しても、大多数のラリアント周辺の盗賊をそのままにしておくというのは、かなり不味い。
 もしアジトを失ってしまったと盗賊たちが理解すれば、現在ラリアントを封鎖している盗賊たちはこの周辺に散らばって自由に行動することになってしまう。
 そうなれば、当然のように周囲の治安が悪化する。
 また、今回の一件に隣国のガリンダミア帝国がかかわっているのだとすれば、盗賊というのは建前で、実際には兵士や傭兵、冒険者、場合によっては探索者といった者たちが混ざっている可能性もあった。
 にもかかわらず、そちらは放っておいてもいいと言い切るのは、アランには納得出来ない。
 とはいえ、今回の一件はあくまでもラリアントの騎士団が主導で片付けることであって、アランたちに詳しい説明がされている訳でもない。
 もしかしたらアランたちがいる戦力とは別に、盗賊たちを狩るための専門の戦力が用意されている可能性は十分以上にあったが。

(いや、そんな戦力があるのなら、別に俺たちに隠す必要もないか。……もしかして、俺たちが疑われている?)

 モリクからの説明を聞きつつ、アランはそんな風に考える。
 もっとも、騎士団にしてみれば探索者はあくまでも外部の者だ。
 であれば、完全に信頼出来ないというのは、そこまでおかしな話でもなかった。
 この場合は、疑うのではなく信頼していないという表現の方が正しいのだろうが。

「それで、モリクさん。盗賊にいる心核使いってどんな奴なのかの情報はありますか?」
「岩で身体が構成された巨大な山羊のモンスターと、サラマンダー、カマキリのモンスター……私が聞いてるのはそのようなところですね」

 モリクの言葉に、アランはレオノーラに視線を向ける。
 モリクの口から説明されたモンスターの中で、言われてすぐにどのようなモンスターなのか想像出来るのはサラマンダーだけだったからだ。
 そしてサラマンダーは火を吐くトカゲで、場所によってはドラゴンと同一視しているような所もある。
 だからこそ、アランは心核で黄金のドラゴンに変身するレオノーラに視線を向けたのだが、その視線を向けられた本人はその視線を面白くないと言いたげに、視線を逸らす。

「岩の山羊というのは、防御力が高そうですね。そしてカマキリのモンスターは攻撃力特化といったところでしょうか?」
「聞いた話によると、そうらしいです。とはいえ、あくまでも私が聞いた話ではその通りだといういうだけで、本当にその情報が正しいのかは分かりませんが。……何しろ、逃げてきた者の中には恐怖で混乱している者もいましたし」

 普通であれば、混乱するといったことがあっても、ある程度の時間が経過すれば落ち着いて冷静に考えることが出来るようになるはずだった。
 だが、モリクの言葉から考えると、混乱した者は時間が経っても落ち着きを取り戻していないということを意味している。

「精神系の攻撃をされたとか、ですか?」

 魔法の中には精神に影響する攻撃をするようなものもあるし、心核使いが変身するモンスターによっては、そのような能力を持っていてもおかしくはない。
 だが、アランの言葉にモリクは首を横に振る。

「いえ、残念ですがその辺りのことはまだわかりません。あるいはその可能性もありますが……どう思いますか?」

 モリクの視線がレオノーラに向けられる。
 サラマンダーと同一視されたことでまだ怒っていた様子ではあったが、それでも今は大事なことを話していると理解しているのか、レオノーラは口を開く。

「そうなると厄介でしょうね」

 精神系の攻撃というのは、炎を吐く、岩を投げ飛ばす、竜巻を起こす、津波を起こすといったような、見て分かるような強力な攻撃ではない。
 だからこそ、そのような攻撃は非常に厄介であるのは間違いないのだ。
 本人が分からないうちに、いつの間にか攻撃をされているといのは、戦っている者にしてみれば難敵と呼ぶに相応しい。
 とはいえ、そのような能力を持つ存在がいるのは知られているが、実際にそのような能力を持っている者となれば少ないのは事実だ。
 心核というのは、使用者の本質や根源といったものを現した存在。
 その中で精神攻撃を持つにいたるという者の数は、どうしても稀少な存在となってしまう。

「取りあえず、攻撃をするときは敵の攻撃範囲に入らないように後方から攻撃した方がいいだろうな。幸い、俺もレオノーラも遠距離攻撃は得意だし。……まぁ、威力が強すぎて若干困る可能性はあるけど」

 アランが操縦するゼオンは、ビームライフル、拡散ビーム砲、そして切り札だる遠隔操作武器のフェルスがある。
 だが、ビームライフルは一撃の威力が強力で……いや、強力すぎて、敵味方が入り乱れているような状況では使えない。
 腹部に装備されている拡散ビーム砲は、拡散というくらいなのだから広範囲に攻撃をする武器であり、それこそビームライフル以上に乱戦の中では使えない。
 そうなると、残っているのはフェルスだろう。
 ……実際には、他にもバルカンやビームサーベルといった武器があるのだが、バルカンの射程距離はそこまで長くはないし、ビームサーベルはそもそも近接戦用の武器だ。

「そうね」

 アランの言葉に、レオノーラが憂鬱そうに呟く。
 モリクが何故急に? とレオノーラに視線を剥けるが、アランはその理由を知っている。
 レオノーラが心核で変身するのは、巨大な黄金のドラゴンだ。
 その黄金のドラゴンが使える攻撃手段の中で遠距離攻撃が出来るのは、レーザーブレスのみ。
 レーザーブレスの威力は強力だが、一定範囲内に纏めて攻撃をするという手段であり、それだけにゼオンのビームライフルや拡散ビーム砲のように、混戦状態で使うのは非常に難しい。

「アランもだけど、私も心核で変身すると、一人だけを狙って攻撃といった真似は苦手なのよ。相手が心核使いでモンスターに変身してるなら、こちらでもある程度対処は可能なんだけど」

 ふう、と憂鬱そうな表情を浮かべて息を吐くレオノーラ。

「取りあえず、俺とレオノーラは敵に心核使いがいて、最初から出て来た場合とかなら有効的な攻撃が出来ると思っておいて貰えればいいかと」
「なるほど、分かりました。とはいえ、今回の討伐隊の中にも心核使いは何人もいます。そう考えれば、お二人の手を煩わせるような真似は、もしかしたらないかもしれませんよ?」

 少し冗談っぽく告げながら、モリクはコップに水筒から水を注ぎ、アランとレオノーラの二人に渡す。

「盗賊のアジトに到着するまでは、まだ時間があります。なので、今から緊張しないようにゆっくりしましょう」

 そう、告げるのだった。
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