57 / 422
辺境にて
056話
しおりを挟む
野営地からかなり離れた場所……黄金のドラゴンに変身したレオノーラの翼でも十五分ほど飛んだ場所に、現在アランとレオノーラの姿があった。
空を飛んで十五分である以上、先程までいた野営地からアランたちを探そうとしても、そう簡単に到着出来る場所ではない。
(とはいえ、このままだと見つかるかもしれないけど)
ゼオンも黄金のドラゴンも、双方共に全高十八メートルほどの高さを持っている。
そうである以上、遠くからで見つけることは不可能ではないだろう。
せめてもの救いは、今が夜だったということか。
もし今が昼なら、レオノーラたちの姿は余計に見つかりやすくなっていたはずなのだから。
ゼオンの様子を気にしながら、レオノーラはドラゴンとしての感覚で周囲の様子を確認する。
周囲には木々がいくつか疎らに生えている、林。
その林の中には、小さな動物の気配はかなり存在しているが、大きな存在……それこそ、モンスターや人間といった者の姿は存在しない。
(アラン、聞いている? アラン。このままだと目立つから、取りあえず心核を解除しましょう)
黄金のドラゴンと化したレオノーラは、言葉を発することは出来ない。
唯一、アランとだけは念話で話すことが出来た。
恐らくアランの心核とレオノーラの心核が一ヶ所に置かれていたことと無関係ではないのだろうが、ともあれ今は念話が使えるというのが助かることなのは間違いなかった。
(アラン? ちょっと、アラン! 本当に大丈夫なの!?)
いつもならすぐに返事があるのに、今日はアランからの返事がない。
攻撃をしてきた騎士が薬を盛ったとは言っていたが、それの影響なのは間違いないだろう。
問題なのは、本当にその薬は致命的なものではないのかどうか、そして何より、いつくらいになればアランが自由に動けるようになるのかどうかだろう。
騎士の言葉を完全に信じることが出来ない以上、まずはどうにかしてアランの心核を解除させ、アランを休ませる必要があった。
(しょうがないわね)
このままではアランの健康上で考えても危ないだろうと判断し、レオノーラは心核を解除して黄金のドラゴンから人の姿へと変わる。
「ふぅ」
月明かりに映える髪を掻き上げ、ゼオンに向かって声をかける。
「アラン、聞こえてるんでしょう? アラン! 心核を解除しなさい。ここはもう安全だから、ゼオンに乗っていなくても平気よ!」
そうやって叫ぶこと、数分。
一切ゼオンに反応がないのを見てとったレオノーラは、もう一度ドラゴンに変身して、ゼオンを地面に寝転がらせるべきか? と考える。
ゼオンが立ったままだと、夜の今はともかくとして、日が昇れば間違いなく目立ってしまう。
少なくても、アランやレオノーラを探している者たちにしてみれば、これ以上目立つ目印はないだろう。
「出来れば、早くラリアントに戻りたいのに」
アランとレオノーラを捕らえるために――それだけが理由ではないだろうが――あのような大がかりな茶番とも言うべきことを行ったのだ。
であれば、当然のように失敗したときのことを考えているのは当然であり……そういう意味では、ラリアントに残してきた雲海と黄金の薔薇の仲間たちがどうなっているのかというのを心配するのは当然だろう。
もし失敗したときのために仲間たちが捕らえられている可能性は非常に高く、場合によってはそれに抵抗してラリアントの中で大きな戦闘となっている可能性すらあった。
(いえ、成功しても私とアランは結局捕まっていて、それを仲間たちが受け入れるはずがないんだろうから、どのみち捕まっている可能性は高いでしょうね。……イルゼン辺りなら、何らかの奥の手があってもおかしくはないけど)
レオノーラは雲海を率いる探索者の顔を……そしてイルゼンの浮かべる胡散臭い笑顔を思い出しながら、今はそれを頼もしく感じる。
ともあれ、今回の件を何とかするためには少しでも早くアランの体調を戻す必要があった。
どのような成り行きになるにしろ、最終的に戦いになるのはほぼ確実であり、そして戦いになればゼオンほどに頼れる存在はそういないからだ。
また、ゼオンとレオノーラが変身する黄金のドラゴンが合体すれば、ゼオリューンという極めて強力なロボットになる。
そのためにも、やはりレオノーラはアランと一緒に行動するのが最善なのだ。
「だから、起きなさいってば! いつまで寝てる気!」
若干の苛立ち紛れに、レオノーラはゼオンの足の装甲目掛けて鞭を振るう。
先程までのように紫電を纏っている訳でも何でもない鞭の一撃だったが、それは間違いなくゼオンに命中し……ゼオンが微かに顔を左右に動かす。
そのような動きを見せたゼオンに、レオノーラは少しだけほっとする。
何故なら、こうしてゼオンが動きを見せたということは、間違いなくゼオンのコックピットにいるアランが気が付いたということなのだから。
そんなレオノーラの予想を証明するように、やがてゼオンの姿は消え……地面には蹲っているアランの姿だけが残された。……カロもアランの手の中にあったが。
「アラン!」
地面に蹲っているアランに駆け寄るレオノーラ。
本人は全く気が付いていなかったが、その顔には深い心配の色がある。
そうしてアランに近づいたレオノーラは、そっとアランに手を伸ばす。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」
アランの口から漏れるのは、苦しげな息のみ。
レオノーラの手がアランの額に触れると、そこは明らかに熱かった。
元々風邪に近い症状だったアランだが、ゼオンを使ったことで、より一層その症状が悪化しているのは明らかだった。
「どうすれば……この近くに街や村の類はなかったし、荷物の類も持ってきていない」
今回の盗賊にいる心核使いに対抗する依頼……という名目でアランとレオノーラの二人を誘き出したとき、荷物の類は討伐隊の方で用意するということになっていた。
今の状態を考えると、もしかしたらこうなったときのために、荷物は向こうで用意するということになったのではないかとすら、思ってしまう。
(かといって、ラリアントに戻るのは……無理ね)
ラリアントの領主がアランと心核のゼオンを欲した以上、今の状況でラリアントに行けば、間違いなく捕まってしまう。
かといって、この近くに村や街がない以上、そこで毛布の一枚も用意することは出来ない。
……もっとも、ここまで周到にアランを捕らえようとしてきた以上、ザラクニアからの指示で近隣の村や街にアランやレオノーラが現れたら捕らえるようにと連絡がいっていてもおかしくはないのだが。
そうなると、ラリアントからもっと離れた……それこそ、他の貴族の領地まで移動してアランの治療をするか。
一瞬そう考えたものの、すぐにレオノーラは首を横に振る。
ザラクニアは、辺境伯としてドットリオン王国においても高い名声を得ていた。
隣国のガリンダミア帝国の侵略を何度も防いできた一族であり、さらには本人も戦争で何度も手柄を立てている。
そんなザラクニアが、アランたちを捕らえるために周辺にいる貴族たちに手を回していないとも限らない。
探索者は評価も高いが、それでも貴族と比べれば、どうしても身分としては劣る。
ましてや、捕らえたあとで何らかの報酬を約束すれば、信頼度や報酬の関係でザラクニアの味方をするのは確実だった。
(そうなると、いっそガリンダミア帝国に? ……いえ、それは危険ね)
色々と考えるも、結局現状ではどこに行くのも危険だという結論になってしまう。
だが、アランをこのまま放っておくという訳にもいかず……
「ふぅ。……しょうがないわね」
自分に言い聞かせるように、レオノーラが呟く、
その頬は、月明かりの下でも、少し夜目が利く者であれば分かるほどに赤く染まっていた。
だが、今はとにかく少しでも早くアランの体調を回復させる必要がある以上、ここで躊躇う訳にもいかない。
騎士の話によれば、いずれ薬の効果は抜けると言われてはいたが、馬鹿正直に敵の言葉を信じられるようなお目出度い性格はしていない。
「よい……しょ」
アランを半ば強引に立たせると、肩を貸して歩き出す。
まずは、風を遮れるような場所を見つける必要があった。
「ぴ! ぴぴ!」
アランの手の中から落ちたカロを拾い、そのまま林の中を進む。
幸いにして、三十分も経たないうちに小さな洞窟……それも、モンスターや野生動物が使っていない洞窟を見つけることが出来た。
洞窟の中に風が入ってこないように、そして何よりも追っ手がいた場合は見つからないようにと近くに生えている茂みや木の枝を折って洞窟を隠す。
当然隠れているのだから、見つかる目印となりかねない焚き火をする訳にはいかない。
ましてや、洞窟の中にいるという今の状況を考えると、健康面から考えても危険だった。
「ふぅ……」
自分を落ち着かせるように息を吐きつつ、アランの身体を抱きしめる。
それこそ、もしアランが目覚めていれば、顔を真っ赤に染めたレオノーラこそが病気ではないのかと、そう思ってしまうくらいには。
(せめてもの救いは、服が濡れたりとかしていなかったことかしら)
もしそうなっていれば、それこそ裸でアランに抱きつくといった真似をしなければならなかった。
王女としての自分は捨てたとはいえ、その美貌からレオノーラは今まで何人にもから好意を寄せられていたり、口説かれたりもした。
だが、黄金の薔薇を率いる探索者としての行動を最優先にしていた為に、結果としてそのような機会に恵まれることはなかった。
しかし……今、レオノーラは、これまでにないほどに男と密着していた。
外見からもアランが相応に鍛えているのは分かっていたが、それでも腕の中にある男の身体が、レオノーラにどうしても異性というものを感じさせてしまう。
不幸中の幸いだったのは、アランの意識が完全になくなっていたことだろう。
もしこれでアランが起きていれば、それこそレオノーラは今のような真似が出来たとは思えない。
(全く。……馬鹿)
そんな風に思いつつ、レオノーラはアランの体温を少しも逃がさずに暖めるべく、しっかりとその身体を抱きしめるのだった。
空を飛んで十五分である以上、先程までいた野営地からアランたちを探そうとしても、そう簡単に到着出来る場所ではない。
(とはいえ、このままだと見つかるかもしれないけど)
ゼオンも黄金のドラゴンも、双方共に全高十八メートルほどの高さを持っている。
そうである以上、遠くからで見つけることは不可能ではないだろう。
せめてもの救いは、今が夜だったということか。
もし今が昼なら、レオノーラたちの姿は余計に見つかりやすくなっていたはずなのだから。
ゼオンの様子を気にしながら、レオノーラはドラゴンとしての感覚で周囲の様子を確認する。
周囲には木々がいくつか疎らに生えている、林。
その林の中には、小さな動物の気配はかなり存在しているが、大きな存在……それこそ、モンスターや人間といった者の姿は存在しない。
(アラン、聞いている? アラン。このままだと目立つから、取りあえず心核を解除しましょう)
黄金のドラゴンと化したレオノーラは、言葉を発することは出来ない。
唯一、アランとだけは念話で話すことが出来た。
恐らくアランの心核とレオノーラの心核が一ヶ所に置かれていたことと無関係ではないのだろうが、ともあれ今は念話が使えるというのが助かることなのは間違いなかった。
(アラン? ちょっと、アラン! 本当に大丈夫なの!?)
いつもならすぐに返事があるのに、今日はアランからの返事がない。
攻撃をしてきた騎士が薬を盛ったとは言っていたが、それの影響なのは間違いないだろう。
問題なのは、本当にその薬は致命的なものではないのかどうか、そして何より、いつくらいになればアランが自由に動けるようになるのかどうかだろう。
騎士の言葉を完全に信じることが出来ない以上、まずはどうにかしてアランの心核を解除させ、アランを休ませる必要があった。
(しょうがないわね)
このままではアランの健康上で考えても危ないだろうと判断し、レオノーラは心核を解除して黄金のドラゴンから人の姿へと変わる。
「ふぅ」
月明かりに映える髪を掻き上げ、ゼオンに向かって声をかける。
「アラン、聞こえてるんでしょう? アラン! 心核を解除しなさい。ここはもう安全だから、ゼオンに乗っていなくても平気よ!」
そうやって叫ぶこと、数分。
一切ゼオンに反応がないのを見てとったレオノーラは、もう一度ドラゴンに変身して、ゼオンを地面に寝転がらせるべきか? と考える。
ゼオンが立ったままだと、夜の今はともかくとして、日が昇れば間違いなく目立ってしまう。
少なくても、アランやレオノーラを探している者たちにしてみれば、これ以上目立つ目印はないだろう。
「出来れば、早くラリアントに戻りたいのに」
アランとレオノーラを捕らえるために――それだけが理由ではないだろうが――あのような大がかりな茶番とも言うべきことを行ったのだ。
であれば、当然のように失敗したときのことを考えているのは当然であり……そういう意味では、ラリアントに残してきた雲海と黄金の薔薇の仲間たちがどうなっているのかというのを心配するのは当然だろう。
もし失敗したときのために仲間たちが捕らえられている可能性は非常に高く、場合によってはそれに抵抗してラリアントの中で大きな戦闘となっている可能性すらあった。
(いえ、成功しても私とアランは結局捕まっていて、それを仲間たちが受け入れるはずがないんだろうから、どのみち捕まっている可能性は高いでしょうね。……イルゼン辺りなら、何らかの奥の手があってもおかしくはないけど)
レオノーラは雲海を率いる探索者の顔を……そしてイルゼンの浮かべる胡散臭い笑顔を思い出しながら、今はそれを頼もしく感じる。
ともあれ、今回の件を何とかするためには少しでも早くアランの体調を戻す必要があった。
どのような成り行きになるにしろ、最終的に戦いになるのはほぼ確実であり、そして戦いになればゼオンほどに頼れる存在はそういないからだ。
また、ゼオンとレオノーラが変身する黄金のドラゴンが合体すれば、ゼオリューンという極めて強力なロボットになる。
そのためにも、やはりレオノーラはアランと一緒に行動するのが最善なのだ。
「だから、起きなさいってば! いつまで寝てる気!」
若干の苛立ち紛れに、レオノーラはゼオンの足の装甲目掛けて鞭を振るう。
先程までのように紫電を纏っている訳でも何でもない鞭の一撃だったが、それは間違いなくゼオンに命中し……ゼオンが微かに顔を左右に動かす。
そのような動きを見せたゼオンに、レオノーラは少しだけほっとする。
何故なら、こうしてゼオンが動きを見せたということは、間違いなくゼオンのコックピットにいるアランが気が付いたということなのだから。
そんなレオノーラの予想を証明するように、やがてゼオンの姿は消え……地面には蹲っているアランの姿だけが残された。……カロもアランの手の中にあったが。
「アラン!」
地面に蹲っているアランに駆け寄るレオノーラ。
本人は全く気が付いていなかったが、その顔には深い心配の色がある。
そうしてアランに近づいたレオノーラは、そっとアランに手を伸ばす。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」
アランの口から漏れるのは、苦しげな息のみ。
レオノーラの手がアランの額に触れると、そこは明らかに熱かった。
元々風邪に近い症状だったアランだが、ゼオンを使ったことで、より一層その症状が悪化しているのは明らかだった。
「どうすれば……この近くに街や村の類はなかったし、荷物の類も持ってきていない」
今回の盗賊にいる心核使いに対抗する依頼……という名目でアランとレオノーラの二人を誘き出したとき、荷物の類は討伐隊の方で用意するということになっていた。
今の状態を考えると、もしかしたらこうなったときのために、荷物は向こうで用意するということになったのではないかとすら、思ってしまう。
(かといって、ラリアントに戻るのは……無理ね)
ラリアントの領主がアランと心核のゼオンを欲した以上、今の状況でラリアントに行けば、間違いなく捕まってしまう。
かといって、この近くに村や街がない以上、そこで毛布の一枚も用意することは出来ない。
……もっとも、ここまで周到にアランを捕らえようとしてきた以上、ザラクニアからの指示で近隣の村や街にアランやレオノーラが現れたら捕らえるようにと連絡がいっていてもおかしくはないのだが。
そうなると、ラリアントからもっと離れた……それこそ、他の貴族の領地まで移動してアランの治療をするか。
一瞬そう考えたものの、すぐにレオノーラは首を横に振る。
ザラクニアは、辺境伯としてドットリオン王国においても高い名声を得ていた。
隣国のガリンダミア帝国の侵略を何度も防いできた一族であり、さらには本人も戦争で何度も手柄を立てている。
そんなザラクニアが、アランたちを捕らえるために周辺にいる貴族たちに手を回していないとも限らない。
探索者は評価も高いが、それでも貴族と比べれば、どうしても身分としては劣る。
ましてや、捕らえたあとで何らかの報酬を約束すれば、信頼度や報酬の関係でザラクニアの味方をするのは確実だった。
(そうなると、いっそガリンダミア帝国に? ……いえ、それは危険ね)
色々と考えるも、結局現状ではどこに行くのも危険だという結論になってしまう。
だが、アランをこのまま放っておくという訳にもいかず……
「ふぅ。……しょうがないわね」
自分に言い聞かせるように、レオノーラが呟く、
その頬は、月明かりの下でも、少し夜目が利く者であれば分かるほどに赤く染まっていた。
だが、今はとにかく少しでも早くアランの体調を回復させる必要がある以上、ここで躊躇う訳にもいかない。
騎士の話によれば、いずれ薬の効果は抜けると言われてはいたが、馬鹿正直に敵の言葉を信じられるようなお目出度い性格はしていない。
「よい……しょ」
アランを半ば強引に立たせると、肩を貸して歩き出す。
まずは、風を遮れるような場所を見つける必要があった。
「ぴ! ぴぴ!」
アランの手の中から落ちたカロを拾い、そのまま林の中を進む。
幸いにして、三十分も経たないうちに小さな洞窟……それも、モンスターや野生動物が使っていない洞窟を見つけることが出来た。
洞窟の中に風が入ってこないように、そして何よりも追っ手がいた場合は見つからないようにと近くに生えている茂みや木の枝を折って洞窟を隠す。
当然隠れているのだから、見つかる目印となりかねない焚き火をする訳にはいかない。
ましてや、洞窟の中にいるという今の状況を考えると、健康面から考えても危険だった。
「ふぅ……」
自分を落ち着かせるように息を吐きつつ、アランの身体を抱きしめる。
それこそ、もしアランが目覚めていれば、顔を真っ赤に染めたレオノーラこそが病気ではないのかと、そう思ってしまうくらいには。
(せめてもの救いは、服が濡れたりとかしていなかったことかしら)
もしそうなっていれば、それこそ裸でアランに抱きつくといった真似をしなければならなかった。
王女としての自分は捨てたとはいえ、その美貌からレオノーラは今まで何人にもから好意を寄せられていたり、口説かれたりもした。
だが、黄金の薔薇を率いる探索者としての行動を最優先にしていた為に、結果としてそのような機会に恵まれることはなかった。
しかし……今、レオノーラは、これまでにないほどに男と密着していた。
外見からもアランが相応に鍛えているのは分かっていたが、それでも腕の中にある男の身体が、レオノーラにどうしても異性というものを感じさせてしまう。
不幸中の幸いだったのは、アランの意識が完全になくなっていたことだろう。
もしこれでアランが起きていれば、それこそレオノーラは今のような真似が出来たとは思えない。
(全く。……馬鹿)
そんな風に思いつつ、レオノーラはアランの体温を少しも逃がさずに暖めるべく、しっかりとその身体を抱きしめるのだった。
0
あなたにおすすめの小説
残念ながら主人公はゲスでした。~異世界転移したら空気を操る魔法を得て世界最強に。好き放題に無双する俺を誰も止められない!~
日和崎よしな
ファンタジー
―あらすじ―
異世界に転移したゲス・エストは精霊と契約して空気操作の魔法を獲得する。
強力な魔法を得たが、彼の真の強さは的確な洞察力や魔法の応用力といった優れた頭脳にあった。
ゲス・エストは最強の存在を目指し、しがらみのない異世界で容赦なく暴れまくる!
―作品について―
完結しました。
全302話(プロローグ、エピローグ含む),約100万字。
氷弾の魔術師
カタナヅキ
ファンタジー
――上級魔法なんか必要ない、下級魔法一つだけで魔導士を目指す少年の物語――
平民でありながら魔法が扱う才能がある事が判明した少年「コオリ」は魔法学園に入学する事が決まった。彼の国では魔法の適性がある人間は魔法学園に入学する決まりがあり、急遽コオリは魔法学園が存在する王都へ向かう事になった。しかし、王都に辿り着く前に彼は自分と同世代の魔術師と比べて圧倒的に魔力量が少ない事が発覚した。
しかし、魔力が少ないからこそ利点がある事を知ったコオリは決意した。他の者は一日でも早く上級魔法の習得に励む中、コオリは自分が扱える下級魔法だけを極め、一流の魔術師の証である「魔導士」の称号を得る事を誓う。そして他の魔術師は少年が強くなる事で気づかされていく。魔力が少ないというのは欠点とは限らず、むしろ優れた才能になり得る事を――
※旧作「下級魔導士と呼ばれた少年」のリメイクとなりますが、設定と物語の内容が大きく変わります。
クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした
コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。
クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。
召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。
理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。
ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。
これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
異世界へ行って帰って来た
バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。
そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる
国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。
持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。
これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる