剣と魔法の世界で俺だけロボット

神無月 紅

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ラリアント防衛戦

092話

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 夜襲をしたが、結局は敵に待ち伏せされて自分がピンチになるという結果になってしまったアラン。
 当然のようにラリアントに戻ってくると、すぐモリクに報告に行く。
 アランの行う夜襲は、現時点においてはガリンダミア帝国軍における唯一にして最大の一手だ。
 それだけに、アランがすぐにでも今回の待ち伏せの一件をモリクに知らせる必要があると判断したのは、当然のこととだろう。
 本来なら、イルゼンと一緒にここに来るべきだったのだが、そのイルゼンは与えられた部屋にいなかった。
 雲海の面々に尋ねても、誰もイルゼンがどこに行ったのかを知る者はいなかった。
 個人の戦闘力としてはそこまで高い訳ではないイルゼンだったが、それでも時々こうやっていなくなることがある。
 この辺は、イルゼンらしいと言ってもいいのだろう。
 そんな訳で、仕方がなくアランは自分一人でモリクに報告に来たのだが……

「何をやってるんですか、何を」

 モリクが働いている執務室に入った瞬間、アランは我知らずそんな声を出す。
 当然だろう。何故なら、執務室の中にはイルゼンの姿があったのだから。
 自分の探していた人物が何故こんなところにと思えば、アランの口からそんな声が出てもおかしくはなかった。
 だが、イルゼンの方はそんなアランの様子を見ても特に気にした様子もなく、笑みを浮かべて口を開く。

「ちょっと籠城のことで相談があってね」
「……また何か企んでるんですか?」

 イルゼンの様子に、アランはジト目を向けながらそう告げる。
 そんなアランの様子に、イルゼンは心外だといった様子で口を開く。

「僕がそんなことをするとでも?」
「いや、イルゼンさんだからこそ、そういうことをしてもおかしくないんじゃ?」

 実際、アランの言葉は決して大袈裟ではない。
 いつもは飄々とした雰囲気のイルゼンだったが、アランにとっては予想外の行動をすることも珍しくはない。
 ザラクニアによって嵌められたときの一件にしてもそうだ。
 捕まっていたイルゼンは、いつの間にかモリクと協力関係を築き、モリク率いる反乱軍を作り上げたのだから。
 今回もまた、何か突拍子もないことを企んでいるのではないかとアランが疑問に思い疑っても、それはおかしくなかった。

「僕の件はあとでいいとして、アラン君は一体何をしにここに?」
「え? あ、そうでした」

 イルゼンの言葉に、アランは自分がここに来た理由を思い出す。
 同時に、あとで絶対この件を問い詰めてやると思いながら、モリクに報告を開始する。
 その説明を聞き、モリクは厳しい表情を浮かべる。
 あのガリンダミア帝国軍が相手である以上、多少襲う際の条件は違っても、同じような攻撃がそう何度も通じるとは思っていなかった。
 だがそれでも、まさか二度目の攻撃で既に罠を仕掛けてくるというのは、モリクにとっても若干予想外だった。
 せめて、もう二度か三度は同じような手段で奇襲を行えるのではないかと、そう思っていたのだから。

「取りあえず、連れていけと言っていた連中を連れて行かなかったのはよかったな」

 アランからの説明を聞いたモリクの口から出たのは、そのような言葉。
 実際、もし要求通りに他の心核使いを連れて行っていれば、間違いなく他の心核使いたちは死ぬか捕らえられるかしていただろう。
 敵が用意した心核使いの数を考えれば、それを飛べるからこそゼオンは逃げ切ることが出来たのだから。
 ……いや、単純に空を飛べるモンスターに変身している心核使いもいたのを考えると、ただ空を飛べただけでは逃げ切れなかった可能性がある。
 ゼオンは高い飛行速度を持っているので、それが幸運をもたらした形だ。

「そうですね。ただ、こうなると次からの奇襲はより気をつける必要が出てきます」
「……そうなるか」

 アランの言葉に、モリクは苦々しげな様子で頷く。
 ガリンダミア帝国軍の精強さを考えれば、向こうがラリアントに到着するまでに可能な限り戦力を減らして起きたいと考えるのは、当然のことだ。
 その最良の手段が、ゼオンによる奇襲攻撃だったのだが……それが一度だけしか通用しなかったというのは、モリクにとっても計算外だった。
 ただ、そんなモリクの様子を見かねたのか、アランはふと思いついたことを口にする。

「嫌がらせ程度で、場合に寄っては敵に多少なりとも被害を与えるという方法はありますよ」
「ほう、どのような手段だ?」

 尋ねるモリクの視線には、興味の光がある。
 多少なりとも嫌がらせを出来るのなら、やらないよりはマシだろうという程度の興味ではあったが。

「ガリンダミア帝国軍の心核使いの中で、空を飛べるのは少数です。それも、こちらはまだ絶対とは言えませんが、ゼオンのいる高度まで上がってこられるかどうかも分かりません」
「つまり?」
「つまり、敵が移動してこられない位置から攻撃します。……とはいえ、攻撃の手段は多くないです。一番簡単で確実なのは、岩を持っていって上空から落とすことですが、その場合は岩が小さければほとんど意味はないですし、岩が多きければゼオンで持って行けるのは一個……頑張っても二個かそこらです」

 この世界に、日本にいるときに見た漫画やゲームのように、アイテムボックス的な何かがあれば、その辺は解決するのかもしれないけど、と。
 そうアランは考えるが、ないものを欲しても仕方がないと思い直す。
 それでもかなりの高度から巨大な岩を落とされるといった真似をすれば、ガリンダミア帝国軍は気が気ではないだろう。
 単純な被害という点ではそこまで大きくはないかもしれないが、上空から巨大な岩がいつ降ってくるかもしれないという精神的な消耗は激しい。

(実行するのなら、今回のように夜に野営をしているときじゃなくて、日中に移動しているときだろうな)

 野営の途中であれば、それこそ今回のように待ち伏せされている可能性が高い。
 だが、進軍途中であればそのような真似は出来ない。

「ふーむ。……イルゼンとしてはどう思う?」
「やらないよりは、やった方がいいんじゃ? 少しでもガリンダミア帝国軍を警戒させることが出来れば、それだけこっちに有利になるし」
「……分かった。王都からの援軍が来るまでは、何としても持ち堪える必要がある。それを考えれば、採れる手段があるのにそれをやらないのは悪手でしかない。……アラン、頼んだ」

 その言葉に、アランは頷く。
 モリクの言う通り、やるべきことがあるのならそれをやらないといいう手段は存在しない。
 ここで自分が頑張ることによって、ラリアントでの籠城戦が楽になるのだ。
 この状況で自分が頑張らない理由はない。
 そもそも、ガリンダミア帝国軍と戦うのは別にラリアントにいる人々を守るためという義侠心の類からではなく、あくまでもゼオンを欲して自分に手を出すのが割に合わないといったことをガリンダミア帝国軍に思い知らせるためだ。
 つまり、自分のためにモリクやラリアント軍を利用していると言ってもいい。
 とはいえ、モリクも当然それは分かっているので、アランや雲海が一方的にモリクやラリアント軍を利用しているのではなく、お互いがお互いを利用しているというのが正しいのだが。
 ラリアントにとっても、アランのゼオンやロッコーモ、カオグルといった心核使い、それに探索者として名高い雲海の面々の戦力を使えるというのは、大きいのだから。
 そうして話し合いが終わると、アランは部屋を出る。
 結局イルゼンがここにいた理由は分からなかったが、恐らくまた何かろくでもないことを企んでいるのだろうというのは、容易に予想出来た。
 
(イルゼンさんを敵に回したという時点で、ガリンダミア帝国軍は運が悪いとかしか思えないな)

 そんな風に考えながら通路を進んでいると、不意に自分の進む先に数人の男が立っているのが分かる。
 自分に用事でもあるのか? そう考えていたアランが男たちの前で足を止めると、口を開く。

「俺に何か用事でも?」
「……ふんっ、いい気になるなよ」

 アランの言葉に、男たちのうちの一人がそう言い、不愉快そうに鼻を鳴らすと、そのまま去っていく。

「えーっと……何だ、あれ」

 呆然とその後ろ姿を見送るアラン。
 もちろん、アランも自分が他人に妬まれているというのは理解している。
 現状ではアランだけがガリンダミア帝国軍に被害を与えて手柄を立てることが出来ているのだから。
 だが、今の状況を思えばそれは当然のことだろう。
 今の状況でガリンダミア帝国軍に攻撃を出来るのは、高度数キロの位置を飛ぶことが出来るゼオンを有するアランしかいないにだから。
 ……もし敢えてそれに誰かを付け加えるとすれば、黄金のドラゴンに変身出来るレオノーラだけだろう。
 上空からのレーザーブレスは、ガリンダミア帝国軍に対してかなりのダメージを与えることが出来るはずだった。
 もしくは、まだ一度しか成功していないが黄金のドラゴンとゼオンが合体……いや、融合したゼオリューンで攻撃をするといった手段もあるが、双方共にレオノーラがいない現状では実行は不可能だ。
 結局のところ、現状では自分だけでやるしかないのは間違いなかった。
 ゼオン以外にも、空を飛ぶことが出来る心核使いがいれば、その能力によっては一緒に連れていくことが出来たかもしれないのだが。
 この場合の問題は、やはり心核使いが変身するモンスターは自分の意志で決められる訳ではないということか。
 たとえば、本人がオーガになりたいと強く願っていても、変身出来るのは使用者の根源とも呼ぶべき存在であり、ゴブリンやコボルト、オークといったモンスターになる可能性もあった。
 だからこそ、自由に空を飛ぶことが出来るゼオンを使えるアランに嫉妬する者が出てくるというのは当然だった。
 元々心核使いとうだけで特別扱いを受けることも珍しくない以上、そのような者たちにとってアランの存在は酷く邪魔な存在なのは間違いなかった。
 それが、先程男たちのだろう。

「ぴ!」

 分かっていてもあまり面白くない事態に落ち込んだ様子を見せたアランに、懐の中のカロは元気を出せ! と鳴き声を上げるのだった。
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