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逆襲
144話
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空を飛ぶゼオン。
その掌の上や肩の上、頭部付近と、様々な場所に探索者たちが掴まっている。
地面までは百メートル以上の高度があり、下が砂で溢れている砂漠であっても、この高度から落ちれば間違いなく死ぬ。
それを分かっているからこそ、ゼオンの各所に掴まっている者は周囲の景色を楽しんでも、掴んでいる場所を離したりはしない。
『アラン、そっちはどう?』
ゼオンのコックピットの中にいるアランの頭に、そんな声が聞こえてくる。
正確には音として声を聞いているのではなく、頭の中に直接声が響いているといった感じなのだが。
その声の主は、ゼオンの隣を飛ぶ黄金のドラゴンだ。
正確には、心核で黄金のドラゴンに変身したレオノーラからの念話。
「取りあえず誰も落ちてないな。……落ちてないよな?」
『ええ。もし落ちたら私が助けるから、安心しなさい』
アランはゼオンという人型機動兵器に乗っているので、もしゼオンの装甲に掴まっている者が落ちたとしても、それに気が付くことは出来ない。
だが、レオノーラはアランとは違って何かに乗っているのではなく、自分が直接黄金のドラゴンに変身している。
だからこそ、もし自分の背中に乗っている者が落ちようとした場合はすぐに分かるのだ。
その辺は、アランと違うところだった。
「ああ、頼む。その代わり、案内はこっちでやるから」
そう言葉――念話だが――を交わし、アランはゼオンを黄金のドラゴンの前に出す。
(取りあえず、階段に向かえばそこでどうにかなる。……と思いたいな。速度もあまり出せないのが痛いし)
バリアのようなもので守られている訳ではない以上、十分に速度を出したりした場合、それはゼオンに掴まっている者達にとってもかなり厳しい事態となる。
雲海や黄金の薔薇の面々は、通常の者よりも高い身体能力を持ってはいるが、それでも当然のように限度というものがある。
もしゼオンが全開の速度で飛ぶようなことがあれば、間違いなく掴まっている者の多くは落ちるだろう。
そして下が砂漠であっても、この高さから落ちればよくて重傷といったところになるのは間違いない。
「あ、見えてきた」
考えながら飛んでいると、ゼオンの映像モニタに地下九階に通じる階段が表示される。
とはいえ、それはゼオンだからこそ見ることが出来るもので、ゼオンに掴まっている他の面々の目ではまだ確認することが出来ない。
それでも掴まっている面々を安心させるために、アランは外部スピーカーのスイッチを入れて口を開く。
「地下九階に続く階段が見えてきたから、もう少し我慢して下さいね」
そう告げると、ゼオンの装甲に掴まっている者たちが嬉しそうな表情を見せ……
「あ」
不意に出たアランのその言葉に、不吉な予感を抱く。
実際、その不吉な予感というのは決して間違っている訳ではない。
何故なら、ゼオンの映像モニタには、自分の方に近付いてくる巨大なコウモリの姿が映し出されていたのだから。
ちょうど地下九階に続く階段を探していたときに遭遇したコウモリと同じ種類のコウモリ。
それでもアランにとって……そしてゼオンに掴まっていたり、黄金のドラゴンの背中に乗っている面々にとって幸運だったのは、そのコウモリが結局のところ一匹でしかなかったからだろう。
前回遭遇したときと同様に一匹なのは、元々が集団行動するのではなく、一匹で行動するコウモリだからなのか、それとも偶然一匹なのか。
その辺の理由はアランにも分からなかったが、敵である以上は素早く倒す必要があった。
「少し揺れるかもしれないので、気をつけて下さいね。……フェルス!」
アランの声と共に、ゼオンの後方の空間に波紋が浮かび、三角錐の物体が姿を現す。
遠隔操作武器のフェルスだ。
……ゼオンにしてみれば奥の手の一つなのだが、それをここで使ったのはやはり現在の状況から考えてそれが最善だと判断したためだ。
装甲に多数の者たちが掴まっている以上、多少なりとも機体に反動のある武器は使わない方がいい。
アランも仲間たちを信じてはいるが、それでも万が一ということはある。
何しろ、皆がゼオンに乗って長距離を移動するのは、これが初めてなのだから。
だからこそ、機体に全く衝撃が存在せずに制御出来るフェルスを呼び出したのだ。
とはいえ、相手のコウモリは一匹である以上、アランが呼び出したフェルスも1基だけだ。
先端にビームソードを展開し、真っ直ぐコウモリに突っ込んでいくフェルス。
コウモリも当然のように自分に向かって突っ込んでくる相手に気が付き、その攻撃を回避しようとする。
右に大きく移動したコウモリだったが、アランの意思に従って飛ぶフェルスは当然のように回避したコウモリを追う。
コウモリは、まさか自分を追ってくるとは思っていなかったのか、慌てたように距離を取りつつ超音波を集束させて放つ。
鋭い切断力を持つ、超音波メスとでも呼ぶべき攻撃方法。
だが、フェルスはそんな攻撃を受けても特に気にした様子もなく真っ直ぐに突っ込んでいき……次の瞬間、攻撃を諦めて何とか回避しようとするコウモリの胴体を、ビームソードが貫くのだった。
「ふぅ」
ビームソードで貫かれたコウモリを見て、アランは安堵する。
超音波メスの攻撃をされたとき、フェルスに被害が出るのではないかと、そう思ったのだ。
だが、フェルスは一見すれば三角錐でそこまで頑丈にはみえないものの、実際にはゼオンの一部と言ってもいい存在だ。
当然のように、ゼオンを傷つけることが出来ないような攻撃では、フェルスを傷つけることも出来ない。
『アラン、あのコウモリの素材はいいのか?』
ゼオンに掴まっていた探索者の一人がそうアランに尋ねるが、アランはフェルスを消してから問題ないと言葉を返す。
「気にしなくてもいいですよ。この状況で砂漠に降りてコウモリの死体を探すのって、大変ですし。それに、そこまで強力なモンスターといった様子でもないので、魔石とかも特に必要とは……あ」
最後まで言い切らなかったのは、砂漠に落ちたコウモリの死体が、砂の中から姿を現した巨大な蛇によって一呑みにされたからだ。
(うわぁ。……ああいうのもいるのか。やっぱり、空を飛んで移動するのは正解だったな)
砂漠を歩いているとき、いきなり真下から襲われて丸呑みにされてしまえば、対処するのは難しい。
……不可能ではなく難しいという辺り、アランも一応探索者だということなのだろう。
『どうした?』
コウモリが蛇に呑まれた状況はすでに通りすぎたので分からなかったのか、探索者の一人がそうアランに尋ねてくる。
いくらアランより実力が高くても、高速で移動している中で通りすぎてしまった砂漠の状況を認識しろという方が無理だろう。
「いや、何でもないです。ただ、さっきのコウモリが落ちた場所で、砂の中から出て来た蛇に食われてだけで」
『そうか。なら結局素材の剥ぎ取りとかは無理だった訳だな』
アランの言葉に、あっさりとそう告げる男。
探索者として活動している男にしてみれば、倒したモンスターが他のモンスターに食われることは特におかしなことでも何でもないのだろう。
そんなやり取りをしつつ砂漠の空をゼオンと黄金のドラゴンが飛び続け……
「見えた」
地下九階に続く階段を見て、アランが呟く。
そんなアランの呟きに反応するかのように、レオノーラが念話で話しかける。
『アラン、階段というのは、あれ?』
「そうだ。……あとの問題は、どうやって皆が集まるまであそこで守っていられるかといったところだけど」
一応今回の第一陣でやって来た者の中には、オーガに変身出来る心核使いのロッコーモもいる。
言動は若干乱暴だが、その実力は十分な人物。
それこそ、ロッコーモでも対処出来ないようなモンスターが襲ってくるとは、そう考えられないだけの信頼をアランは抱いていた。
『分かったわ。じゃあ……どうするの? 二人一緒に降りる? それとも、どちらか片方が降りる?』
「そうだな。まずは俺から降りるから、レオノーラは周囲の様子を探索しててくれ。多分大丈夫だと思うけど、一応、念のためにな」
先程、砂の中から飛び出してコウモリを一呑みにした蛇を見ていたために、アランは用心深く答える。
……もっとも、アランですら何とか咄嗟に対応――あくまでも回避するだけだが――出来るような相手である以上、アランよりも腕の立つ面々であれば、蛇が出て来ても何の問題もなく対処出来ると思えたのだが。
むしろ、アランが次に他の者たちを運んで戻ってきたときには、砂から出て来た蛇は倒され、暇潰しにでも素材として解体されていてもおかしくはない。
それでも、用心深いに越したことはないのだ。
『……分かったわ。じゃあ、それで』
アランの言葉にレオノーラがそう返すのに数秒の沈黙があったのは、アランが自分から危険な目に遭おうとしていると理解したからだろう。
もっとも、アランとしてはそんなことは特に考えていなかったのだが。
単純に、空中にいる状況でもし砂漠から飛び出してきた敵に攻撃する場合、どちらの方が対処しやすいのかと、そんなことを考えてのことだ。
普通に考えれば、遠距離攻撃の手段としてはドラゴンブレスしかない黄金のドラゴンに上空を任せるよりは、それこそ頭部バルカンや腹部拡散ビーム砲、フェルスといった武器を持つゼオンの方が、上空からの攻撃には向いている。
なお、ビームライフルやビームサーベルが入ってないのには、腕を動かして攻撃する必要がある武器だからだ。
背中どころか、それ以外の場所にも仲間を乗せている以上、身体を動かして攻撃するようなことをした場合、落下してしまう……どころか、最悪攻撃に巻き込んでしまう可能性があった。
結局のところ、ゼオンと黄金のドラゴンではどちらがより背中に乗せている者達の安定度が上かというのを考え、その結果としてゼオンを先に降りた方がいいとアランは判断したのだ。
そこには、例えばレオノーラが女だから男の自分が先に砂漠に降りて調べて見るといったような考えはない。
そもそもの話、心核使いとしてはともかく、探索者という点で考えれば明らかにアランよりもレオノーラの方が上なのだから。
アランんはレオノーラからの返事を貰うと、ゼオンに乗っている面々に砂漠に降りると告げ、高度を下げていくのだった。
その掌の上や肩の上、頭部付近と、様々な場所に探索者たちが掴まっている。
地面までは百メートル以上の高度があり、下が砂で溢れている砂漠であっても、この高度から落ちれば間違いなく死ぬ。
それを分かっているからこそ、ゼオンの各所に掴まっている者は周囲の景色を楽しんでも、掴んでいる場所を離したりはしない。
『アラン、そっちはどう?』
ゼオンのコックピットの中にいるアランの頭に、そんな声が聞こえてくる。
正確には音として声を聞いているのではなく、頭の中に直接声が響いているといった感じなのだが。
その声の主は、ゼオンの隣を飛ぶ黄金のドラゴンだ。
正確には、心核で黄金のドラゴンに変身したレオノーラからの念話。
「取りあえず誰も落ちてないな。……落ちてないよな?」
『ええ。もし落ちたら私が助けるから、安心しなさい』
アランはゼオンという人型機動兵器に乗っているので、もしゼオンの装甲に掴まっている者が落ちたとしても、それに気が付くことは出来ない。
だが、レオノーラはアランとは違って何かに乗っているのではなく、自分が直接黄金のドラゴンに変身している。
だからこそ、もし自分の背中に乗っている者が落ちようとした場合はすぐに分かるのだ。
その辺は、アランと違うところだった。
「ああ、頼む。その代わり、案内はこっちでやるから」
そう言葉――念話だが――を交わし、アランはゼオンを黄金のドラゴンの前に出す。
(取りあえず、階段に向かえばそこでどうにかなる。……と思いたいな。速度もあまり出せないのが痛いし)
バリアのようなもので守られている訳ではない以上、十分に速度を出したりした場合、それはゼオンに掴まっている者達にとってもかなり厳しい事態となる。
雲海や黄金の薔薇の面々は、通常の者よりも高い身体能力を持ってはいるが、それでも当然のように限度というものがある。
もしゼオンが全開の速度で飛ぶようなことがあれば、間違いなく掴まっている者の多くは落ちるだろう。
そして下が砂漠であっても、この高さから落ちればよくて重傷といったところになるのは間違いない。
「あ、見えてきた」
考えながら飛んでいると、ゼオンの映像モニタに地下九階に通じる階段が表示される。
とはいえ、それはゼオンだからこそ見ることが出来るもので、ゼオンに掴まっている他の面々の目ではまだ確認することが出来ない。
それでも掴まっている面々を安心させるために、アランは外部スピーカーのスイッチを入れて口を開く。
「地下九階に続く階段が見えてきたから、もう少し我慢して下さいね」
そう告げると、ゼオンの装甲に掴まっている者たちが嬉しそうな表情を見せ……
「あ」
不意に出たアランのその言葉に、不吉な予感を抱く。
実際、その不吉な予感というのは決して間違っている訳ではない。
何故なら、ゼオンの映像モニタには、自分の方に近付いてくる巨大なコウモリの姿が映し出されていたのだから。
ちょうど地下九階に続く階段を探していたときに遭遇したコウモリと同じ種類のコウモリ。
それでもアランにとって……そしてゼオンに掴まっていたり、黄金のドラゴンの背中に乗っている面々にとって幸運だったのは、そのコウモリが結局のところ一匹でしかなかったからだろう。
前回遭遇したときと同様に一匹なのは、元々が集団行動するのではなく、一匹で行動するコウモリだからなのか、それとも偶然一匹なのか。
その辺の理由はアランにも分からなかったが、敵である以上は素早く倒す必要があった。
「少し揺れるかもしれないので、気をつけて下さいね。……フェルス!」
アランの声と共に、ゼオンの後方の空間に波紋が浮かび、三角錐の物体が姿を現す。
遠隔操作武器のフェルスだ。
……ゼオンにしてみれば奥の手の一つなのだが、それをここで使ったのはやはり現在の状況から考えてそれが最善だと判断したためだ。
装甲に多数の者たちが掴まっている以上、多少なりとも機体に反動のある武器は使わない方がいい。
アランも仲間たちを信じてはいるが、それでも万が一ということはある。
何しろ、皆がゼオンに乗って長距離を移動するのは、これが初めてなのだから。
だからこそ、機体に全く衝撃が存在せずに制御出来るフェルスを呼び出したのだ。
とはいえ、相手のコウモリは一匹である以上、アランが呼び出したフェルスも1基だけだ。
先端にビームソードを展開し、真っ直ぐコウモリに突っ込んでいくフェルス。
コウモリも当然のように自分に向かって突っ込んでくる相手に気が付き、その攻撃を回避しようとする。
右に大きく移動したコウモリだったが、アランの意思に従って飛ぶフェルスは当然のように回避したコウモリを追う。
コウモリは、まさか自分を追ってくるとは思っていなかったのか、慌てたように距離を取りつつ超音波を集束させて放つ。
鋭い切断力を持つ、超音波メスとでも呼ぶべき攻撃方法。
だが、フェルスはそんな攻撃を受けても特に気にした様子もなく真っ直ぐに突っ込んでいき……次の瞬間、攻撃を諦めて何とか回避しようとするコウモリの胴体を、ビームソードが貫くのだった。
「ふぅ」
ビームソードで貫かれたコウモリを見て、アランは安堵する。
超音波メスの攻撃をされたとき、フェルスに被害が出るのではないかと、そう思ったのだ。
だが、フェルスは一見すれば三角錐でそこまで頑丈にはみえないものの、実際にはゼオンの一部と言ってもいい存在だ。
当然のように、ゼオンを傷つけることが出来ないような攻撃では、フェルスを傷つけることも出来ない。
『アラン、あのコウモリの素材はいいのか?』
ゼオンに掴まっていた探索者の一人がそうアランに尋ねるが、アランはフェルスを消してから問題ないと言葉を返す。
「気にしなくてもいいですよ。この状況で砂漠に降りてコウモリの死体を探すのって、大変ですし。それに、そこまで強力なモンスターといった様子でもないので、魔石とかも特に必要とは……あ」
最後まで言い切らなかったのは、砂漠に落ちたコウモリの死体が、砂の中から姿を現した巨大な蛇によって一呑みにされたからだ。
(うわぁ。……ああいうのもいるのか。やっぱり、空を飛んで移動するのは正解だったな)
砂漠を歩いているとき、いきなり真下から襲われて丸呑みにされてしまえば、対処するのは難しい。
……不可能ではなく難しいという辺り、アランも一応探索者だということなのだろう。
『どうした?』
コウモリが蛇に呑まれた状況はすでに通りすぎたので分からなかったのか、探索者の一人がそうアランに尋ねてくる。
いくらアランより実力が高くても、高速で移動している中で通りすぎてしまった砂漠の状況を認識しろという方が無理だろう。
「いや、何でもないです。ただ、さっきのコウモリが落ちた場所で、砂の中から出て来た蛇に食われてだけで」
『そうか。なら結局素材の剥ぎ取りとかは無理だった訳だな』
アランの言葉に、あっさりとそう告げる男。
探索者として活動している男にしてみれば、倒したモンスターが他のモンスターに食われることは特におかしなことでも何でもないのだろう。
そんなやり取りをしつつ砂漠の空をゼオンと黄金のドラゴンが飛び続け……
「見えた」
地下九階に続く階段を見て、アランが呟く。
そんなアランの呟きに反応するかのように、レオノーラが念話で話しかける。
『アラン、階段というのは、あれ?』
「そうだ。……あとの問題は、どうやって皆が集まるまであそこで守っていられるかといったところだけど」
一応今回の第一陣でやって来た者の中には、オーガに変身出来る心核使いのロッコーモもいる。
言動は若干乱暴だが、その実力は十分な人物。
それこそ、ロッコーモでも対処出来ないようなモンスターが襲ってくるとは、そう考えられないだけの信頼をアランは抱いていた。
『分かったわ。じゃあ……どうするの? 二人一緒に降りる? それとも、どちらか片方が降りる?』
「そうだな。まずは俺から降りるから、レオノーラは周囲の様子を探索しててくれ。多分大丈夫だと思うけど、一応、念のためにな」
先程、砂の中から飛び出してコウモリを一呑みにした蛇を見ていたために、アランは用心深く答える。
……もっとも、アランですら何とか咄嗟に対応――あくまでも回避するだけだが――出来るような相手である以上、アランよりも腕の立つ面々であれば、蛇が出て来ても何の問題もなく対処出来ると思えたのだが。
むしろ、アランが次に他の者たちを運んで戻ってきたときには、砂から出て来た蛇は倒され、暇潰しにでも素材として解体されていてもおかしくはない。
それでも、用心深いに越したことはないのだ。
『……分かったわ。じゃあ、それで』
アランの言葉にレオノーラがそう返すのに数秒の沈黙があったのは、アランが自分から危険な目に遭おうとしていると理解したからだろう。
もっとも、アランとしてはそんなことは特に考えていなかったのだが。
単純に、空中にいる状況でもし砂漠から飛び出してきた敵に攻撃する場合、どちらの方が対処しやすいのかと、そんなことを考えてのことだ。
普通に考えれば、遠距離攻撃の手段としてはドラゴンブレスしかない黄金のドラゴンに上空を任せるよりは、それこそ頭部バルカンや腹部拡散ビーム砲、フェルスといった武器を持つゼオンの方が、上空からの攻撃には向いている。
なお、ビームライフルやビームサーベルが入ってないのには、腕を動かして攻撃する必要がある武器だからだ。
背中どころか、それ以外の場所にも仲間を乗せている以上、身体を動かして攻撃するようなことをした場合、落下してしまう……どころか、最悪攻撃に巻き込んでしまう可能性があった。
結局のところ、ゼオンと黄金のドラゴンではどちらがより背中に乗せている者達の安定度が上かというのを考え、その結果としてゼオンを先に降りた方がいいとアランは判断したのだ。
そこには、例えばレオノーラが女だから男の自分が先に砂漠に降りて調べて見るといったような考えはない。
そもそもの話、心核使いとしてはともかく、探索者という点で考えれば明らかにアランよりもレオノーラの方が上なのだから。
アランんはレオノーラからの返事を貰うと、ゼオンに乗っている面々に砂漠に降りると告げ、高度を下げていくのだった。
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