剣と魔法の世界で俺だけロボット

神無月 紅

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ザッカラン防衛戦

192話

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「おい、どうする? まさか、ここがそう簡単に知られるなんて思わなかったけど」

 そう呟く兵士に、アランは猿轡をされ、手足を縛られた状態のままではあるが、ざまあみろといった視線を向ける。
 アランは一体何が起きたのかを完全に理解している訳ではない。
 だがそれでも、扉の外から聞こえてきた声や兵士の態度から、何かが起きたといのは理解出来た。
 そうこうしているうちに、アランのいる部屋に入ってきた兵士たちが再びアランが身動き出来ないように、そして大きな声を出せないようにしたのだ。
 今の状況においては、アランに騒がれるのだけは絶対に勘弁して欲しかったのだろう。
 また、何かあったときにはすぐにアランを連れて屋敷から脱出出来るように、現在アランのいる部屋に屋敷に残っていた兵士達も集まっている。
 その中にはこの一行の中核とも呼ぶべきソランタの姿さえあるのだから、この者達が現在の状況ををだけ危険視しているのかが理解出来るだろう。

(ザッカランにいるドットリオン王国軍が見回りに来た? それとも……レオノーラとかが突入してきのか?)

 ここで実際にここに来ている母親のリアではなくレオノーラの名前が出たのは、子供の頃はともかく、今のような状況でリアに助けられるのはちょっと……と、そう思ったからだろう。
 また、それ以外にもアランが連れ去られたときにレオノーラの姿があったというのも、そんな考えをアランの中に生み出していた。

(レオノーラほどの腕利きなら、どういう手段を使っては分からないけど、ここを見つけることが出来てもおかしくはない。なら……あとは、俺が何とかしてここにいると知らせる必要があるんだけど……問題は、それをどうするか、だな。それに、カロも取り戻す必要がある)

 そう思いながら、アランは一人の男に視線を向ける。
 その男がまだ持っているかどうかは分からなかったが、アランがカロを奪われたときに箱の中にカロを入れた相手だ。
 この場合に問題なのは、箱そのものがそこまで大きくはないことだろう。
 それこそ、どの兵士が箱を隠し持っていても不思議ではない。
 それは、アランにとって最悪に近いことだった。
 何しろカロを取り戻すためには、この場にいる者を全員倒す必要が出て来るのだから。
 もちろん全員を倒すというのは、あくまでも最悪の事態となった場合のことだ。
 実際には全員を倒すよりも前に、カロの入っている箱を見つけることは十分に可能だろう。
 最大の問題点としては、アランが現在の状況では兵士たちを倒すことは不可能だということか。
 縛られて自由に身動き出来ないというのもそうだが、兵士たちは一人一人が強い。
 それこそ、アランが自由に身動き出来る状態であっても、兵士を一人でも倒せるかというぼは微妙な所だった。

「取りあえず、このまま隠れていれば……侵入している連中が帰るという可能性はあると思うか?」

 そう聞いた兵士の一人だったが、聞いた兵士もその言葉の通りになるとは思っていなかった。

「今この状況でここにやって来たんだぞ? だとすれば、間違いなく連中は……」

 兵士の一人が、アランに視線を向ける。
 そんな兵士に対して、身動き出来ず、何も言えない状態のアランが睨み付ける。
 アランにしてみれば、自分を誘拐した相手だ。
 それだけに、自分に向かって視線を向けてくる相手に友好的に接するといったような真似はしない。

「ふん」

 だが、たとえアランに睨み付けられたからといって、腕利きの兵士が怯むといったようなことはない。
 それはアランも理解していたが、だからといって不満を露わにしないという選択肢も存在しない。

「とにかく、ソランタがいれば迂闊なことをしなければ見つかることはない。それだけは安心だな」
「全くだ。それにしても……いっそ倒してしまえといったようなことを言う奴がいなくて、俺は安心したよ」

 一人の兵士が、周囲にいる他の面々を落ち着かせるためか、そう告げる。
 ここにいるのがソランタを除いて全員が顔見知りだから、というのもあるのだろう。
 ここにいる者は裏の仕事を一緒にこなしてきた者で、ソランタもスラム育ちのためか非常に慎重に行動することを好む。
 結果として、ここで屋敷に侵入してきたリアだちを倒してしまえといったようなことを口にする者はいない。
 ここでリアたちと戦い、もし勝ったとしたらどうなるか。
 それこそ、今以上に大きな騒動となり、ザッカランからの脱出が難しくなる。
 相手の戦力が減るというのは、兵士たちにとって悪い話ではないのだが。
 どちらの方が楽なのか。
 それを考えれば、出て来る結論は一つだけだ。

「なら、どうする? アランを連れてさっさとここを脱出するか? それとも、ここに残って侵入者をやりすごすか」

 この場合、双方にメリットとデメリットがあった。
 脱出する場合は、一度別の場所に移動してしまえば簡単に見つかるようなことはない。
 だが、リアを始めとして面々が屋敷の中を見て回っている以上、どうやって脱出するのかという問題が出て来る。
 下手に脱出に失敗した場合、間違いなく戦いになってしまい、最悪アランを奪い返されるという危険すらあった。
 まさに、ハイリスクハイリターンといったところか。
 それに対して、ソランタのスキルを使って敵をやりすごすという選択肢の場合、逃げ出すときのように見つかりそうになる可能性は少ない。
 ただし、その結果はこの屋敷に留まり続けることになるので、今回以外にもまた敵がこの屋敷に来た場合、隠れる必要がある。

「ここを出た場合、どこに行く? ザッカランから出ることが出来れば、周囲にいるガリンダミア帝国軍と合流出来るんだが。今の状況でそれは無理だろ」
「まあな。今はまだ無理だろ。俺達に協力してる連中と約束した時間はまだ数日あるし」

 ザッカランに残っていた、ガリンダミア帝国軍と繋がっている者たち。
 そのような者たちの手によって、ザッカランから脱出する手筈となっていたが、その準備はまだ十分に整ってはいない。
 そうである以上、どうにかして今回の一件をやりすごす必要があった。

「……よし、危険は大きいが、一旦ここを出よう」

 兵士の一人が、そう告げる。
 それを聞いた他の兵士たちは、本気か? といった視線を向ける。
 ソランタがいれば、その能力によってまず見つかることはないのだ。
 であれば、わざわざ危険な真似をしなくてもここに残っていた方がいいと思うし……何より、もしどうしてもこの屋敷を出なければならないとすれば、現在屋敷を調べている者たちがいなくなってから屋敷を出るといった方がいいのではないかと、どうしてもそう思えてしまう。
 だが、兵士はそんな意見対し、首を横に振る。

「雲海の連中がここを嗅ぎつけた以上、今は人数が少ないだろうが、時間が経てば経つほどに人が増える可能性がある。そうなると、ただでさえ雲海の探索者達は腕利きで厄介なのに、黄金の薔薇もここの探索に参加数する可能性がある」
「それは……」

 黄金の薔薇の参加というのは、当然皆が懸念していたことだ。
 だが同時に、今回の一件に参加してくるかどうかというのは、必ずしも決定事項ではないというのも理解していた。
 だが……実際にアランを連れ去るときに乱入してきたレオノーラのことを思えば、乱入してくる可能性が非常に高くなったというのも、また理解している。
 どうする?
 そんな風に、兵士たちは声に出さずとお互いに目と目で意思疎通をし……

「そうだな。ここにいるのは危険だ。そうである以上、一旦この屋敷を出た方がいい。……けど、そうなると次は一体どこに潜むんだ? 今の状況で隠れられる場所というのは、そう多くはないぞ」
「俺達と繋がってる連中の屋敷……は、無理か」

 この無理というのは、二重の意味で無理だということを示していた。
 この屋敷に捜査の手が及んだということは、どこから情報を集めたのか。それはつまり、自分たちと繋がっている相手以外にいないだろう。
 そうである以上、自分たちと繋がっている者たちがまだ無事でいるとは思えなかった。
 また、もう一つの意味としては、現在のように危なくなっている現状では、まだ捜査の手が及んでいない者でも、そう簡単に自分たちを迎え入れたりはしないだろうと。
 もし自分たちを迎え入れているのを現在ザッカランを治めているドットリオン王国軍に知られれば、問答無用で捕らえられることになる。
 いくら自分たちに協力しているとはいえ、そこまで覚悟が決まってるとは到底思えなかった。

「なら、どうするんだよ? 結局この屋敷を出ても、どこにも行く場所がなければどうしようもないぞ? ……いっそ強硬突破……無理だな」

 ガリンダミア帝国軍がザッカランのすぐ近くに存在している以上、当然のように門の警備は重要になっているだろうことは明白だ。
 ドットリオン王国も、ザッカランの現状から内部に敵と通じている者がいるのは当然予想しているのだから。
 ガリンダミア帝国軍が本気でザッカランを攻略しているのなら、その混乱に紛れて内部から扉を開けるような真似は出来たかもしれないが、今は無理だ。

「なら……っ!? 全員ソランタの周囲に集まれ! ソランタ!」
「分かりました!」

 不意に兵士の一人が鋭く、それでいて小声で指示を出す。
 皆が 即座にその言葉に従い、兵士の何人かがアランを連れてソランタの近くまで移動する。
 当然のように運ばれているアランは、何故兵士たちがそのような行動に出たのか分かったので、何とか暴れて少しでも音を立てようとする。
 だが……当然ながら、兵士たちもそんなアランの行動は予想していた。
 二人の兵士はアランを完全に押さえつけ、猿轡もしっかりと噛ませており、声を出すことも出来ない。
 それでも唸り声の類を上げたりといった真似は出来るのだが、兵士の一人がアランの鳩尾……具体的には横隔膜の辺りに手を触れ力を入れると、アランは小さな呼吸をするのが精一杯となる。
 ヒュー、ヒューという、それこそまるで病院なのではないかと思えるような呼吸しか出来なくなり、唸り声を上げるといったことも出来なくなってしまう。
 そして……三十秒ほどが経過すると部屋の扉が開くのだった。
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