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囚われの姫君?
226話
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「帝城の方は、今頃はどうなってるのかしらね」
帝都にある屋敷の一つ……そこで、レオノーラは部下からの報告を聞き終わって一段落したところで、そう呟く。
現在、レオノーラがいるのは屋敷の客室の一つ。
そこで紅茶を飲みながら、部下からの報告を聞いていたのだ。
「そうですね。潜入してからそれなりに時間も経ってますし……アランを見つけるとまではいきませんが、何らかの手掛かりくらいは見つけていて欲しいですね」
レオノーラの世話をすために部屋の中にいた女の一人がそう告げる。
その言葉はレオノーラにとっても十分に納得出来るものだったのか、紅茶の入ったカップをテーブルに置いてから、口を開く。
「そうね。ラミアスなら、そろそろ何らかの情報を見つけてもおかしくはないと思うけど。……ラミアスは、何という名前を使ってるんだったかしら? メラーナ?」
「いえ、メライナです」
「そう、そんな名前だったわね。……ともあれ、ラミアスがアランのいる場所を掴んだら、出来るだけ早く行動に移したいところなんだけど」
レオノーラたちが帝都に来てから、それなりの時間が経過している。
その間に出来たのは、結局のところ鋼の蜘蛛と接触し、ラミアスを帝城に派遣することが出来たくらいだ。
もちろん、今もそれなりに動いている。
しかし、当然の話だが、激しく動けばそれは人目に付きやすくなり……雲海や黄金の薔薇が帝都にいて、秘密裏に活動しているということが知られる可能性もあった。
そうならないためには、慎重の上に慎重を期して動く必要がある。
それはレオノーラも理解しているが、慎重に動くとなると、当然のように動きそのものはどうしても遅くなってしまう。
……それでも、ここで無理をすれば全てが台無しになってしまうというのは、分かっている。
分かっているからこそ、現在はこうして自分を落ち着ける意味も含めて紅茶の時間を楽しんでいるのだが。
「レオノーラ様、鋼の蜘蛛というのは……そこまで信用出来る相手なのですか?」
と、部屋に残っていた女の一人が、少しだけ不安そうに言う。
女にしてみれば、アランを助ける……ということよりも、仲間のラミアスが帝城の中にいるというのが心配なのだろう。
その辺りは、レオノーラも分かっていた。
それは、アランがどうでもいいと思っている訳ではなく、アランよりも自分たちの仲間のラミアスの方が心配だからこその言葉。
やはり行動を一緒にしたとはいえ、結局は別のクランの……それも、クランを率いている人物ではなく、その中の一人と、長年苦楽を共にしてきた仲間であれば、後者の方が心配になってしまうのは当然のことなのだろう。
それは別に不思議なことではない。
生死を共にした戦友というだけでも、普通よりも深い繋がりを持つのだから。
その上で、黄金の薔薇の探索者たちは故国では次男、三男といったような長男のスペア、もしくはスペアのスペアといったような形で飼い殺しにされたりする者や、女に生まれたばかりに政略結婚の駒にされそうになっていた者たちだ。
そのような繋がりがある者たちが、生死を共にしてきたのだ。
普通よりも強い絆で結ばれているのは当然だろう。
「その、レオノーラ様。アランですが、ガリンダミア帝国に帰順する……という可能性はありますか?」
「ないでしょうね。アランは雲海を強く信頼している。そんな雲海を裏切るといった真似は絶対にしないでしょうね。……もっとも、雲海ごと抱え込むといったような真似をすれば、分からないけど」
そのような真似をすれば、雲海の者たちにとっても待遇は決して悪くないはずだった。
ガリンダミア帝国としても、腕利きのクランがそのまま自分たちが抱え込めるのだから、悪い話ではない。
悪い話ではないが……問題なのは、その雲海を率いるイルゼンがそれを大人しく受け入れるかどうかということだろう。
他のクランはどうか分からないが、少なくてもレオノーラが知っているイルゼンという人物は、一時的に雇われるだけならともかく、本当の意味で仕えるといったような真似をするような人物には思えない。
そもそも、雲海ほどのクランであれば今まで仕官しないかという誘いがない方がおかしいのだ。
だからこそ、もしガリンダミア帝国が雲海を雇おうとしても……余程の特例措置、それこそイルゼンが、そして雲海の面々全員が納得するような条件でなければ、まず仕官するということはないだろう。
「とにかく、今は……」
そうレオノーラが言おうとしたとき、部屋の扉をノックする音が周囲に響く。
レオノーラが入るように言うと、黄金の薔薇ではなく雲海の冒険者……ただし、女が姿を現す。
雲海の男の冒険者も、当然のように美人とはお近づきになりたいという思いはある。
だが、レオノーラは雲海の冒険者にとっても、高嶺の花と言うべき存在なのだ。
その上、レオノーラだけではなく他にも女の冒険者がいる部屋に、男が一人で行くのはなかなかに勇気がいる。
そういう意味では、やはり同じ女の冒険者に行って貰った方が楽なのは、間違いのない事実だった。
「どうしたのかしら?」
「鋼の蜘蛛が行動を起こすそうよ」
「……アランの件では、まだそこまで話が進んでないんじゃなかった? それとも、何か急に事態が動くような情報でも入手出来たの?」
レオノーラの口から出た言葉には、驚きの色が強い。
それは演技でも何でもなく、本当の意味で驚いていたのだ。
「いえ、帝城じゃなくて、別の場所を襲撃するらしいわ」
「……そう」
正直に言えば、レオノーラとしては今の時期にそのような真似を鋼の蜘蛛には行って欲しくはない。
だが、それはあくまでもレオノーラの感情であって、鋼の蜘蛛として動かなければならないときあるのなら、結局のところ手を組んでいるだけのレオノーラにそれを止めることは出来なかった。
いや、これが手を組んでいるという状況であっても、雲海と黄金の薔薇の方が有利な立場で手を組んでいるのなら、多少は口出しすることは出来るだろう。
しかし、今の状況ではあくまでも鋼の蜘蛛の方が有利な立場にいるのは、間違いないのだ。
……戦闘力という点では、雲海や黄金の薔薇の方が上なのだが。
実際、鋼の蜘蛛が帝城に対して何らかの行動に出るときには、雲海や黄金の薔薇が協力するということになっている。
今回の一件は、帝城ではなく別の場所に対しての行動らしいので、レオノーラたちが協力するような必要はないようだったが。
「それで、具体的にはどこに対しての行動なのかは分かるの? こっちに協力の要請は?」
「来ていないわ。今回の一件も最終的には帝城に対する襲撃に繋がるみたいだけど、それでも自分たちだけでやるみたいね」
「そう。……これは意地かしら?」
「意地、ですか?」
レオノーラに報告を持ってきた女ではなく、この部屋に元からいた女の一人が、不思議そうにそう尋ねる。
何故ここで意地という言葉が出て来るのか、本当に分からなかったのだろう。
「鋼の蜘蛛にしてみれば、ここで私たちに自分たちも相応の実力があると、そう示しておく必要があるのよ。私たちの戦力があるからこそ、帝城に対する行動を起こした……と言われないようにね」
「それは……でも、それだと、鋼の蜘蛛も無駄に戦力を消耗するだけでは? ここは素直にこちらに頼った方が、将来的にいいと思いますけど」
「そうでしょうね。けど、レジスタンスとして行動している以上、私たち以外の協力者にも、自分たちの力を見せつける必要があるのでしょうね」
レジスタンスの中では有力で、しかも率いているのはポーションを始めとする魔法薬を売っている店の店主たるダズナードだ。
だが、ダズナード以外の協力者も鋼の蜘蛛には当然おり、そのような者にしてみれば、部外者である雲海や黄金の薔薇に頼り切りだというのは、面白くないのだろう。
レオノーラとしては、そんなダズナードの行動を愚かだと判断すると同時に、理解出来るものでもある。
「取りあえず……イルゼンと会いましょうか。この一件については、私もそのままにしておく訳にはいかないわ。場合によっては、こちらから戦力を出す必要もあるし、その辺を相談しておいた方がいいでしょうね」
そう告げ、レオノーラはカップに入っていた紅茶を飲み干すと立ち上がる。
今の言葉からレオノーラがどこに行くのかは容易に想像出来たのだろう。
部屋の中にいた女たちは、レオノーラに向かって行ってらっしゃいませと、頭を下げる。
そんな仲間たちに見送られ、レオノーラは鋼の蜘蛛が動いたという報告を持ってきた女の探索者と、イルゼンのいる部屋に向かう。
イルゼンが借りている屋敷はそれなりの広さを持ち、その上で雲海と黄金の薔薇がそれぞれ暮らしている場所は、しっかりと分けられている。
現在は一緒に行動している二つのクランだが、それでも別のクランであることに違いはないのだ。
当然だが、クランの外に公開出来ない情報や技術といったものは、それぞれに存在している。
そんな中で、レオノーラがやって来たのはイルゼンが常駐している部屋だった。
「イルゼン、少しいい? 鋼の蜘蛛の件で少し相談があるんだけど」
ノックをしてそう扉の外から尋ねると、イルゼンもレオノーラが来るというのは予想していたのだろう。すぐに中に入るように告げてくる。
部屋の中に入ると、書類に何かを書いては他の書類を見比べ、さらに別の書類に何かを書いて……といったようなことをしているイルゼンの姿があった。
「どうしました? ……などということは聞きませんよ。鋼の蜘蛛の作戦についてですよね?」
「ええ。正直なところ、今の状況で鋼の蜘蛛の戦力が減るのは、避けて欲しいんだけど。どうにかならない?」
「そう言われましてもね。鋼の蜘蛛にしてみれば、私たちに頼り切りにならなくても、対処出来るということを示したかったのでしょうし。もしここで私たちが手を貸すといったようなことを言っても、恐らく承知しませんよ?」
「……そうなると、やはり残ってる方法は、いざというときに助けに入る準備をしておく、ということくらいかしら」
自分の言葉を先回りするようにそう告げてきたレオノーラの言葉に、イルゼンは笑みを浮かべて頷くのだった。
帝都にある屋敷の一つ……そこで、レオノーラは部下からの報告を聞き終わって一段落したところで、そう呟く。
現在、レオノーラがいるのは屋敷の客室の一つ。
そこで紅茶を飲みながら、部下からの報告を聞いていたのだ。
「そうですね。潜入してからそれなりに時間も経ってますし……アランを見つけるとまではいきませんが、何らかの手掛かりくらいは見つけていて欲しいですね」
レオノーラの世話をすために部屋の中にいた女の一人がそう告げる。
その言葉はレオノーラにとっても十分に納得出来るものだったのか、紅茶の入ったカップをテーブルに置いてから、口を開く。
「そうね。ラミアスなら、そろそろ何らかの情報を見つけてもおかしくはないと思うけど。……ラミアスは、何という名前を使ってるんだったかしら? メラーナ?」
「いえ、メライナです」
「そう、そんな名前だったわね。……ともあれ、ラミアスがアランのいる場所を掴んだら、出来るだけ早く行動に移したいところなんだけど」
レオノーラたちが帝都に来てから、それなりの時間が経過している。
その間に出来たのは、結局のところ鋼の蜘蛛と接触し、ラミアスを帝城に派遣することが出来たくらいだ。
もちろん、今もそれなりに動いている。
しかし、当然の話だが、激しく動けばそれは人目に付きやすくなり……雲海や黄金の薔薇が帝都にいて、秘密裏に活動しているということが知られる可能性もあった。
そうならないためには、慎重の上に慎重を期して動く必要がある。
それはレオノーラも理解しているが、慎重に動くとなると、当然のように動きそのものはどうしても遅くなってしまう。
……それでも、ここで無理をすれば全てが台無しになってしまうというのは、分かっている。
分かっているからこそ、現在はこうして自分を落ち着ける意味も含めて紅茶の時間を楽しんでいるのだが。
「レオノーラ様、鋼の蜘蛛というのは……そこまで信用出来る相手なのですか?」
と、部屋に残っていた女の一人が、少しだけ不安そうに言う。
女にしてみれば、アランを助ける……ということよりも、仲間のラミアスが帝城の中にいるというのが心配なのだろう。
その辺りは、レオノーラも分かっていた。
それは、アランがどうでもいいと思っている訳ではなく、アランよりも自分たちの仲間のラミアスの方が心配だからこその言葉。
やはり行動を一緒にしたとはいえ、結局は別のクランの……それも、クランを率いている人物ではなく、その中の一人と、長年苦楽を共にしてきた仲間であれば、後者の方が心配になってしまうのは当然のことなのだろう。
それは別に不思議なことではない。
生死を共にした戦友というだけでも、普通よりも深い繋がりを持つのだから。
その上で、黄金の薔薇の探索者たちは故国では次男、三男といったような長男のスペア、もしくはスペアのスペアといったような形で飼い殺しにされたりする者や、女に生まれたばかりに政略結婚の駒にされそうになっていた者たちだ。
そのような繋がりがある者たちが、生死を共にしてきたのだ。
普通よりも強い絆で結ばれているのは当然だろう。
「その、レオノーラ様。アランですが、ガリンダミア帝国に帰順する……という可能性はありますか?」
「ないでしょうね。アランは雲海を強く信頼している。そんな雲海を裏切るといった真似は絶対にしないでしょうね。……もっとも、雲海ごと抱え込むといったような真似をすれば、分からないけど」
そのような真似をすれば、雲海の者たちにとっても待遇は決して悪くないはずだった。
ガリンダミア帝国としても、腕利きのクランがそのまま自分たちが抱え込めるのだから、悪い話ではない。
悪い話ではないが……問題なのは、その雲海を率いるイルゼンがそれを大人しく受け入れるかどうかということだろう。
他のクランはどうか分からないが、少なくてもレオノーラが知っているイルゼンという人物は、一時的に雇われるだけならともかく、本当の意味で仕えるといったような真似をするような人物には思えない。
そもそも、雲海ほどのクランであれば今まで仕官しないかという誘いがない方がおかしいのだ。
だからこそ、もしガリンダミア帝国が雲海を雇おうとしても……余程の特例措置、それこそイルゼンが、そして雲海の面々全員が納得するような条件でなければ、まず仕官するということはないだろう。
「とにかく、今は……」
そうレオノーラが言おうとしたとき、部屋の扉をノックする音が周囲に響く。
レオノーラが入るように言うと、黄金の薔薇ではなく雲海の冒険者……ただし、女が姿を現す。
雲海の男の冒険者も、当然のように美人とはお近づきになりたいという思いはある。
だが、レオノーラは雲海の冒険者にとっても、高嶺の花と言うべき存在なのだ。
その上、レオノーラだけではなく他にも女の冒険者がいる部屋に、男が一人で行くのはなかなかに勇気がいる。
そういう意味では、やはり同じ女の冒険者に行って貰った方が楽なのは、間違いのない事実だった。
「どうしたのかしら?」
「鋼の蜘蛛が行動を起こすそうよ」
「……アランの件では、まだそこまで話が進んでないんじゃなかった? それとも、何か急に事態が動くような情報でも入手出来たの?」
レオノーラの口から出た言葉には、驚きの色が強い。
それは演技でも何でもなく、本当の意味で驚いていたのだ。
「いえ、帝城じゃなくて、別の場所を襲撃するらしいわ」
「……そう」
正直に言えば、レオノーラとしては今の時期にそのような真似を鋼の蜘蛛には行って欲しくはない。
だが、それはあくまでもレオノーラの感情であって、鋼の蜘蛛として動かなければならないときあるのなら、結局のところ手を組んでいるだけのレオノーラにそれを止めることは出来なかった。
いや、これが手を組んでいるという状況であっても、雲海と黄金の薔薇の方が有利な立場で手を組んでいるのなら、多少は口出しすることは出来るだろう。
しかし、今の状況ではあくまでも鋼の蜘蛛の方が有利な立場にいるのは、間違いないのだ。
……戦闘力という点では、雲海や黄金の薔薇の方が上なのだが。
実際、鋼の蜘蛛が帝城に対して何らかの行動に出るときには、雲海や黄金の薔薇が協力するということになっている。
今回の一件は、帝城ではなく別の場所に対しての行動らしいので、レオノーラたちが協力するような必要はないようだったが。
「それで、具体的にはどこに対しての行動なのかは分かるの? こっちに協力の要請は?」
「来ていないわ。今回の一件も最終的には帝城に対する襲撃に繋がるみたいだけど、それでも自分たちだけでやるみたいね」
「そう。……これは意地かしら?」
「意地、ですか?」
レオノーラに報告を持ってきた女ではなく、この部屋に元からいた女の一人が、不思議そうにそう尋ねる。
何故ここで意地という言葉が出て来るのか、本当に分からなかったのだろう。
「鋼の蜘蛛にしてみれば、ここで私たちに自分たちも相応の実力があると、そう示しておく必要があるのよ。私たちの戦力があるからこそ、帝城に対する行動を起こした……と言われないようにね」
「それは……でも、それだと、鋼の蜘蛛も無駄に戦力を消耗するだけでは? ここは素直にこちらに頼った方が、将来的にいいと思いますけど」
「そうでしょうね。けど、レジスタンスとして行動している以上、私たち以外の協力者にも、自分たちの力を見せつける必要があるのでしょうね」
レジスタンスの中では有力で、しかも率いているのはポーションを始めとする魔法薬を売っている店の店主たるダズナードだ。
だが、ダズナード以外の協力者も鋼の蜘蛛には当然おり、そのような者にしてみれば、部外者である雲海や黄金の薔薇に頼り切りだというのは、面白くないのだろう。
レオノーラとしては、そんなダズナードの行動を愚かだと判断すると同時に、理解出来るものでもある。
「取りあえず……イルゼンと会いましょうか。この一件については、私もそのままにしておく訳にはいかないわ。場合によっては、こちらから戦力を出す必要もあるし、その辺を相談しておいた方がいいでしょうね」
そう告げ、レオノーラはカップに入っていた紅茶を飲み干すと立ち上がる。
今の言葉からレオノーラがどこに行くのかは容易に想像出来たのだろう。
部屋の中にいた女たちは、レオノーラに向かって行ってらっしゃいませと、頭を下げる。
そんな仲間たちに見送られ、レオノーラは鋼の蜘蛛が動いたという報告を持ってきた女の探索者と、イルゼンのいる部屋に向かう。
イルゼンが借りている屋敷はそれなりの広さを持ち、その上で雲海と黄金の薔薇がそれぞれ暮らしている場所は、しっかりと分けられている。
現在は一緒に行動している二つのクランだが、それでも別のクランであることに違いはないのだ。
当然だが、クランの外に公開出来ない情報や技術といったものは、それぞれに存在している。
そんな中で、レオノーラがやって来たのはイルゼンが常駐している部屋だった。
「イルゼン、少しいい? 鋼の蜘蛛の件で少し相談があるんだけど」
ノックをしてそう扉の外から尋ねると、イルゼンもレオノーラが来るというのは予想していたのだろう。すぐに中に入るように告げてくる。
部屋の中に入ると、書類に何かを書いては他の書類を見比べ、さらに別の書類に何かを書いて……といったようなことをしているイルゼンの姿があった。
「どうしました? ……などということは聞きませんよ。鋼の蜘蛛の作戦についてですよね?」
「ええ。正直なところ、今の状況で鋼の蜘蛛の戦力が減るのは、避けて欲しいんだけど。どうにかならない?」
「そう言われましてもね。鋼の蜘蛛にしてみれば、私たちに頼り切りにならなくても、対処出来るということを示したかったのでしょうし。もしここで私たちが手を貸すといったようなことを言っても、恐らく承知しませんよ?」
「……そうなると、やはり残ってる方法は、いざというときに助けに入る準備をしておく、ということくらいかしら」
自分の言葉を先回りするようにそう告げてきたレオノーラの言葉に、イルゼンは笑みを浮かべて頷くのだった。
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