剣と魔法の世界で俺だけロボット

神無月 紅

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逃避行

243話

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「うーん……やっぱり狭いですね」

 遺跡の近くに拠点となる場所を作ると、アランは早速遺跡の中に入った。
 これは別にアランが勝手に行ったことという訳ではなく、アランには出来る限り遺跡の中にいて、外には出ないようにと言われているためだ。
 実際、ガリンダミア帝国が追っているはアランであるし、何よりそれなりに長い時間、帝城の仲にいたのだ。
 そうである以上、当然のようにアランとかかわった者たちにしてみれば、アランの似顔絵を作るのは、そう難しい話ではない。

「それは前もって分かっていたことだろ? ……取りあえず、ゼオンを使うのは無理だろうな」

 ロッコーモが遺跡の中を見ながら、そう呟く。
 狭いとアランが表現したが、それはあくまでもゼオンを使う上で話だ。
 ゼオンは無理でも、ロッコーモが心核で変身するオーガであれば、そこまで動くのに不自由はないだろう広さはあった。
 だからこそ、ロッコーモは気軽な様子で告げているのだろう。
 なお、ロッコーモがアランと一緒にいるのは、アランの護衛という一面もある。
 心核使いとしては高い能力を持つアランだったが、生身での戦いでは何とか平均的な程度の力しか持っていない。
 それに比べると、ロッコーモは心核使いとしても相応の実力を持っているが、生身での戦いにおいてもかなりの力を発揮する。
 ……ザッカランにおいて、アランが捕まったのは生身では弱いという点を突かれたためだ。
 だからこそ、それを繰り返さないためにも、ロッコーモが護衛をしていた。
 当然ロッコーモだけではなく、他にも何人かの探索者がアランと一緒に行動している。
 その中には黄金の薔薇の探索者も含まれており、もしまたガリンダミア帝国軍の者たちがアランを連れ去ろうとしても、よほどの戦力でなければどうにもならないのは間違いなかった。

「それで、どうする? 取りあえず今回はアランが仕切るんだろ?」
「それ……本気なんですか? 仕切るなら、それこそロッコーモさん……はともかくとして、他にも何人もそれに相応しい人がいると思うんですけど」
「おいこら、ちょっと待て。俺はともかくってどういうことだ?」

 アランの言葉に不満があったのか、ロッコーモが面白くなさそうに言う。
 だが、雲海の探索者どころか、黄金の薔薇の探索者までもが、そんなアランの言葉に頷いている。
 それは、皆がロッコーモがリーダーに相応しくないと、そう思っているからだろう。
 とはいえ、これは別にロッコーモが嫌われているという訳でもない。
 ロッコーモは言動こそ粗野だが、面倒見がいいということもあり、下の者からは兄貴分として慕われている。
 そんなロッコーモがリーダーとして相応しくない理由……それは、やはりロッコーモの性格が理由だった。
 ロッコーモも、その気になれば慎重に行動したりといったことは出来る。
 だが、それでもロッコーモにしてみれば、自分からどんどんと前に進むということを好むのだ。
 そうである以上、この状況においてはロッコーモにリーダーを任せたいと思う者がいないのは当然だった。

(もっとも、それを言うなら俺だって似たようなものだと思うんだけど)

 アランはロッコーモほどに猪突猛進という訳ではないが、それでもリーダーに向いているかと言われると、指名された本人ですら……いや、本人だからこそか、首を傾げざるをえない。

「けっ」

 不満そうな様子を見せるロッコーモだが、本人も自分の性格を考えれば、リーダーに向いていないというのは理解しているのだろう。
 それ以上は特に不満を口にすることもなく、大人しくアランの指示に従う。
 ……もちろんそれはアランの指示に絶対服従するというわけではなく、何かおかしなところがあれば、すぐにでもアランに対して注意をするといったようなものだが。

「しゃーねえか。じゃあ、アラン。指示をくれ。取りあえず隊列はどうする? このままでいいのか?」
「え? あ、えっと……ロッコーモさんは最後尾でお願いします。背後からモンスターとかに襲撃されるのは、絶対に避けたいですしね」

 実際、遺跡を探索する中で背後から奇襲されるというのは、非常に危険なことだ。
 そうである以上、アランとしては最後尾に信頼出来る相手を置いておきたいと思うのは当然だった。

「俺がか? まぁ、いいけどよ」

 言葉では渋々といった様子を見せているロッコーモだったが、自分が頼られているのが嬉しいのだろう。言葉ほどに、表情に不満そうな色は見えない。
 すでに先程の、ロッコーモは指揮官に向いてないということを完全に忘れたかのような様子だった。
 良くも悪くも、ロッコーモはこの単純さが特徴的なのだ。
 そうして遺跡の通路を進む順番を決めると、アランたちは進み始める。
 なお、アランがいる場所は中央付近となる。
 一応今回はアランが指揮を執っている以上、これは当然のことだった。
 ……もっとも、アランはこの一行の中では生身での戦いだと一番実力が低いのだから、この状況で先頭に出ても味方の足を引っ張るだけなのだが。

(とはいえ、俺の武器が長剣である以上、ここにいると援護も出来ないんだよな。せめて弓でも使えれば、援護は出来るんだろうけど)

 そう思うも、弓の訓練は何度かやった程度で、すぐにリアから才能がないと言われてしまった実力だ。
 リアは普段長剣を使っているが、ハーフエルフだというのも関係しているのか、弓の実力はかなり高い。
 それこそ、普通に弓を使っている者たちと比べても、遜色がない……どころか、勝っているくらいに。
 にもかかわらず長剣を使っているのは、そんな弓を使うよりも長剣を使う方が得意だからだろう。

「前方にある右側の道からモンスター! 人形型、数は四匹!」

 戦闘を進む、偵察を得意とする探索者の一人が鋭く叫ぶ。
 古代魔法文明の遺跡において、人形やゴーレムといったモンスターが現れるのは、そう珍しい話ではない。
 中にはどこから入ってきたようなモンスターもいたりするが、幸いにしてこの遺跡は小さな遺跡のためか、そのような存在は今のところ確認されていない。
 敵が姿を現したのを見たアランは、一瞬どう指示するべきかを考え……やがて口を開く。

「全員攻撃を開始! 後方には注意をして下さい!」

 アランは指示を出しつつ、自分がどう動けばいいのかに迷う。
 自分が直接戦いに行けば、間違いなく足手纏いになる。
 だが、だからといって指揮官の自分がここで黙って見ているだけでいいのかと。
 それこそ、真っ先に敵に向かって突っ込んでいった方がいいと思えるのだが、今の状況でそのような真似をすれば、仲間に迷惑をかけるだけだというのも理解していた。
 そもそも、前方にいる者たち……いや、後方にいる者たちも含めて、全員が自分よりも格上の存在なのだ。
 そうである以上、やはりここで自分が何か妙な真似をするのは色々と不味いと、そう判断し……

(敵の援軍が新たに来ないかどうか、警戒していた方がいい)

 結局、そのような結論となる。
 人間と同じくらいの大きさの人形が姿を現したのは、アランたちが進む通路の先にある十字路のうち、右側の通路からだ。
 十字路である以上、正面の道から敵の援軍が来れば分かりやすいが、左の通路から敵が来た場合は、それに対処する必要があるのは間違いなかった。
 ……実際には、現在人形と戦っている者達も当然のようにそちらを警戒はしているので、もしこの状況で左の通路から新たな敵が現れたとしても、すぐに対処出来るのだろうが。

(にしても、この遺跡はもう攻略されているってのに、何でまだ人形がいるんだ?)

 これがモンスター……たとえばゴブリンのよう生き物であれば、何匹かが殺されても、繁殖して数を増やすといったようなことは出来るだろう。
 だが、人形は無機物だ。
 つまり、一度破壊されればそれまでで、ゴブリンのように自分たちで繁殖して増えるといったようなことも出来ない。
 だとすれば、まだこの遺跡には人形を修理し、生み出す機構がまだ残っているということを意味している。
 ……まさか、この状況で実はまだこの遺跡を攻略した者たちが人形を破壊していなかった……とは、少し思えない。
 それとも小さい遺跡だからこそ、一度攻略したら、もう誰も手出し……とそう考え、アランはすぐに首を横に振る。
 自分たちがこの遺跡にやって来たとき、数は少なかったが、それでも何人か探索者の姿があったことを思い出したのだ。

(そうなると、やっぱり偶然生き残っていたというのは考えにくいな。……侵入者の姿を見つけると、すぐに襲いかかってきたし、もしかして、俺たちが弱そうに見えたから勝てると思って出て来たとか、そういうことはないよな?)

 周囲の様子を確認しながらそんな風に考えたアランだったが、すぐに自分の考えを否定する。
 もし遺跡に入ったのが自分だけなら、そのようなことになってもおかしくはない。
 自分が生身では決して強くないというのは、本人が一番よく理解しているのだから。
 だが……今アランと一緒にいるのは、いずれも腕利きの者たちだ。
 自分だけならともかく、一緒にいる者たちがそのように思われるという可能性は、まずないだろうというのがアランの予想だった。
 そんなことをアランが考えているうちに、人形と探索者たちの戦闘は始まっていた。
 とはいえ、このような小さな遺跡に存在する人形だけに、その性能はそこまで高くはない。
 探索者になったばかりの者や、アランのように生身での戦いの実力が低い者であれば苦戦するかもしれないが、幸いにして戦っているのは雲海や黄金の薔薇の探索者だ。
 それこそ、あっという間に人形を倒す……もしくは破壊することに成功する。

「アラン、素材はどうする?」
「放っておきます。まだ遺跡に入ったばかりですし。それに、こんな場所で出て来る相手ですから、素材としても有用なものはないでしょうしね」

 アランの言葉に、皆異論はないのか不満を口にする者はいない。
 ポーターの類でもいれば、いくらか素材を入手してもよかったのだが……アランたちの中にはそんな存在はおらず、結局そのまま通路を進むのだった。
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