剣と魔法の世界で俺だけロボット

神無月 紅

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逃避行

249話

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「アラン、この亀の人形はどうするんだ? これだけ強かったんだし、結構な素材になるんじゃないか?」

 地下に進む階段か、それに類するもの探していたアランだったが、ロッコーモは地味な作業に飽きた……いや、正確には自分にはその手の作業は向いていないと判断したのか、自分たちが倒した亀の人形を色々と調べていた。
 アランとしては若干それに言いたいことはあったのだが、実際にロッコーモは探索者としても心核使いであるというのを抜きにしても、戦闘力に特化した存在だ。
 本来なら探索者というのは、自分の専門以外にも本職に及ばないまでも、広く浅く様々な技術を修めている者が多い。
 だが……それはあくまでも多いであって、絶対にそうでなければならないという訳でもなかった。
 その例外が、ロッコーモだ。
 とはいえ、ただの戦闘馬鹿であれば、イルゼンもロッコーモを重用したりはしない。
 戦闘に特化しているが、それは馬鹿であるという訳ではないのだから。
 ロッコーモは、イルゼンからの指示にはしっかりと従うし、自分が戦っている最中でも、仲間がピンチになればすぐにそれを助ける。
 また、考えてという訳ではないが、戦いに特化した者の本能として戦いでは勘が鋭い。
 面倒見もよく、粗雑な性格をしてはいるが、下の者に慕われている。
 実際、アランもロッコーモのことは慕っていた。
 そんな諸々の事情があるので、ロッコーモは自分の苦手な探索を行わなくても、アランとしては実際に不満を口に出したりはしない、……思うところがない訳ではなかったが。

「取りあえず、今はそのままで……いえ、ロッコーモさんは暇を持て余してそうですから、亀の解体をお願いします。くれぐれも無駄に壊さないようにして下さいね」

 これが亀の人形ではなく、生身の亀のモンスターであれば、アランもロッコーモにこんなことを頼んだりはしなかっただろう。
 だが、亀は人形である以上、ロッコーモが迂闊な真似をしない限りは、破壊されるということはないはずだった。
 また、人形である以上は、どうにかすれば壊さずに部品を外すといったことも可能になるかもしれない。
 そういう意味では、特にたやるべきことがないロッコーモに取りあえず亀の人形の解体を任せるという、アランの指示は決して間違っている訳ではないだろう。

「おう、分かった。こっちは任せておけ」

 ロッコーモもアランの指示に異論はない。
 自分が下手に何かを探すような真似をしても、地下に続く階段なりなんなりを見つけることが出来るとは到底思えない。
 だからこそ、自分は自分の出来ることでアランのためになることをしようと、そう思っての行動なのだ。
 ……もっとも、決して器用とは言えないロッコーモだけに、亀の人形の分解がどこまで出来るのかというのは、また別の話だったが。

「問題なのは、素材だよな。……この甲羅の部分は、間違いなく素材として一級品だ」

 ロッコーモの変身したオーガが振るった棍棒の一撃を受けても、ほとんど傷がつかなかったのだ。
 それを思えば、甲羅の部分がどれだけ頑丈なの分かりやすいだろう。

「他の人形はともかく、この亀の人形は今まで倒されていなかったってのも納得出来るよな」

 甲羅の部分を軽く叩き、しみじみと呟くロッコーモ。
 攻撃力はともかく、防御力という一点において亀の人形は一級品だった。
 この遺跡の上にいたような探索者……自称探索者といった連中がこの亀と戦ったも、倒せるとは思えない。
 自分たちがあれだけ苦戦したのだから、と。
 もちろん、ロッコーモも自分たちが最強だなどとは思っていない。
 だが、それでも自分たちが探索者の中でも腕利きと言われるような存在であることは、十分に理解していたし、自覚していた。
 それだけに、もしこの亀の人形を倒すとすれば、地上にいる冒険者たちでは絶対に無理だというくらいは理解出来たのだ。

「ともあれ、この人形で最大の素材となるのは甲羅の部分だろうな。……けど、問題なのはこの甲羅の部分をどうやって武器や防具に使うかだな。やっぱり無難なので盾か?」

 かなりの大きさを持っている甲羅だけに、下手をすればこのままでも盾として使えそうな気はする。
 実際、ロッコーモも亀の甲羅のような、敵の一撃を防ぐのではなく受け流すといったよう形をした盾を見たことがあった。
 とはいえ、甲羅の大きさを考えるとそのまま盾として使うにしても、普通の人間には使いこなすのは難しい……というか、無理だろう。
 巨大な甲羅だけに、相応の重量もある。
 それを自由に手に持つことが出来るような者でなければ、甲羅を盾として使うのは難しそうだった。

(となると、俺か?)

 正確には、ロッコーモではなくロッコーモが変身したオーガ。
 オーガの身体は人間よりも明らかに巨大なだけに、亀の甲羅を盾として使うことも十分可能だ。

「けど、この甲羅……というか、亀の人形を持っていくのが、そもそも大変そうなんだよな。血とか体液の類がないのが、せめてもの救いだけど」

 これだけ巨大な亀の人形なだけに、当然重量も相応のものとなる。
 だからこそ、ロッコーモは何とかして人形を分解する必要があるのだが……

「おわっ!」

 甲羅から延びている前足を何とか外そうと頑張ったものの、メキッという音が聞こえてきた瞬間、ロッコーモは慌てて前足を掴んでいた手を離す。
 もし手を離すのが遅く、もう少し力が込められていれば前足の部分が折れていた可能性が高い。
 一応それでも分解という形にはなるのだが、それは前足を破壊するということでしかない。
 そのような真似をすれば、それ以後の分解にも間違いなく苦戦してしまう。

「難しいな。どいこかに継ぎ目とか、そういうのはないのか?」

 この亀の人形も何らかの手段で作られた以上……そして人形である以上は、メンテナンスの類もする必要がある筈だ。
 それを見つけることが出来れば、分解する方法も分かる。
 そう考えるロッコーモだったが、当然人形側……正確には人形を作った者たちもそれについては理解しており、継ぎ目の類が簡単に見つかるようにはなっていない。
 ましてや、これだけ巨大な亀のモンスターである以上、それを探すのは非常に難しい。

「あー……くそっ、どうすればいいんだよこれ」

 そうしてロッコーモが亀の人形を前に悩んでいる間。アランたちは地下に続く階段か、それに類する物を探す。

「アラン、そっちはどうだ? 何かあったか?」
「うーん……駄目ですね。壁に分かりやすく隠し階段や隠し通路なんかは、ないみたいです」

 壁を調べていたアランは、仲間の探索者の言葉にそう返す。
 遺跡の最下層たるこの部屋は、巨大な亀の人形がいたようにかなり広大な空間となっている。
 それだけに壁もかなりの面積があり、それを調べているアランもすぐに何らかの手掛かりを見つけられる様子はない。
 それでも幸運だったのは、壁を調べるとはいえ、天井の辺りまで調べる必要はないということか。
 もし隠し階段や隠し通路があるのなら、それがある場所はせいぜい高さ二メートル程度といったところなのだから。
 また、あの巨大な亀の人形のことを考えると、横幅も相応に必要となるのは明らかだ。
 だからこそ今回の一件においては、アランとしても調べやすい。

(もしこの遺跡が本当に小さな遺跡……簡易型とかそういうのなら、隠し通路とかあっても比較的分かりやすい……いや、それなら他の探索者に見つかっていてもおかしくはないか)

 そう思いながら壁を調べていくが……最下層を一時間近く調べても、何も見つからない。

「おい、アラン。そろそろ戻らないか? いつまでも遺跡に潜っていると、地上にいる連中を心配させるんじゃないか?」

 だからこそ、探索者の一人がそう言ってくるのは当然だった。
 実際、いつまでもこのような場所にいると、地上で待っている者たちが遺跡で何かがあったのではないかと、そのように思ってもおかしくはないのだから。
 この遺跡が小さいというのは当然上に残っている者たちも知っているので、ここまで時間がかかるとは思わないだろう。
 ……もっとも、アランと一緒に遺跡に潜った者たちは優秀な探索者が揃っている。
 そうである以上、少しくらい遅れても特に心配はしないだろうが……それでも、何かがあったと、そう思ってしまうのは間違いのない事実なのだ。
 だからこそ、上に残っている者たちを心配させないためにも、そろそろ地上に戻った方がいいという言葉には納得出来た。
 納得出来たのだが、アランはこの遺跡はもっと下の階層があるというのを確信している。
 だからこそ、出来れば今回の探索で地下に続く階段なりなんなりを見つけたかったところだったのだが……地上に残してきた者たちを心配させるかもしれないと言われれば、アランとしてもその言葉には従わざるをえない。

「分かりました。じゃあ、戻りましょうか」

 そう宣言するアランだったが、傍から見ると残念そうにしているのが分かりやすい。

「安心しろって。別にこの遺跡に潜るのは今日だけじゃないんだろ? これからもしばらくはこの遺跡に隠れているんだから、また明日にでもここまで来ればいいさ」
「そう……ですね」

 探索者の言葉は、アランにとっても納得出来るものだった。
 ましてや、この亀がいた階層まで来るのは、いつもアランたちが潜っている遺跡に比べると、そんなに難しいものでもない。

「分かりました。じゃあ、亀の人形の分解を始めましょう。ロッコーモさんだけに任せていると、分解する前に壊されそうですし」
「ぐっ!」

 アランの声が聞こえたのだろう。
 亀の人形を相手に四苦八苦していたロッコーモは、呻き声を上げる。
 しかし、実際に亀の人形の分解に苦戦していた以上、アランに何かを言い返すことは出来ずに、呻き声を上げることしか出来ない。
 そうしてアランたちはロッコーモのいる場所まで移動し、亀の人形の分解を始める。
 慣れている者が探すと、ロッコーモでは見つけることが出来なかった分解する場所の起点となる場所もあっさりと見つかり……そしてアラン達はそれぞれに素材を持って遺跡から脱出するのだった。
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