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獣人を率いる者
327話
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「いらっしゃい、いらっしゃい。今日仕入れた肉は美味いよ! 今日の夕食にどうだい」
「野菜は新鮮なのが美味い! そういう意味では、うちの野菜は最高級品だよ!」
「強くなりたいのなら、うちの道場に来てくれ! 後悔はさせないぜ! 間違いなく強くなれる!」
そんな呼び込みの声を聞きながら、アランはクラリスと共に街中を見て回る。
一応念のためにジャスパーが護衛として離れた場所にいるという話だったが、残念ながらアランはジャスパーが具体的にどこにいるのかは分からない。
ただし、ジャスパーがあのように言った以上、実はついてきていないということはないだろうと、そういう安心感はある。
「それで、どういう場所に行きたいんだ?」
「まずは適当に見て回りたいです。こういう場所に来るの、初めてなので」
変装をしているクラリスは、興味深そうに周囲の様子を眺めている。
姫として育てられてきただけに、このような光景は非常に珍しいのだろう。
(とはいえ、こうしてはしゃいでいるのを見れば、ゴールスの刺客に見つかったりしそうだけどな)
あるいはこれも姫として磨かれた能力なのか、今のクラリスはとてもクラリスとは思えない。
それこそ、その辺の一般人と言われても納得出来るだろう。
なお、クラリスの中でも最大の特徴と言うべき二本の尻尾は、面に出しているのが一本で、もう一本はスカートの中に隠してあるらしい。
それで問題ないのか? と思わないでもなかったが、本人がこうして問題ない様子を見せているのだから、大丈夫なのだろうと判断する。
「なら、取りあえず屋台でも回ってみるか。そっちはこういう街中を歩くのが初めてなら、当然屋台も初めてだろ?」
「そうですね。裏の街道に入る前に街や村に寄ったりもしましたが、そのときは馬車に乗ったままでしたから」
だろうな、とアランはクラリスの言葉に納得する。
ロルフたちだけで護衛をしていたとき、その戦力は非常に心許なかった。
その辺りの手回しをしたのも、今ではゴールスだと分かっているが。
そんな訳で、ロルフたちも自分たちの戦力ではいざ何かがあったときに対処するのは難しいと考えていたのだろう。
それだけに、クラリスを馬車から降ろすといったような真似はとても出来なかったのだろう。
クラリスもそれを理解していたからこそ、その件を残念に思っても不満を口にしたりはしなかった。
しかし、今はアランを始めとして十分な実力者が護衛として一緒にいるので、その辺を心配するといったようなことは必要ない。
「アランさん、あれを食べてみたいんですけど……いいですか?」
そう言ってクラリスが示したのは、一件の屋台。
果実に溶かした水飴を絡ませた料理だ。
(リンゴ飴?)
アランは前世に日本の屋台で食べたお菓子を思い出す。
小さめのリンゴに溶かした水飴をつけて、冷やすという非常に簡単な料理。
そんな料理ではあったが、リンゴの酸味と水飴の甘さが非常に美味かったのを覚えている。
とはいえ、それは祭りの時に具の殆どがキャベツのお好み焼きだったり、たこが入っていないたこ焼きであっても、祭りの雰囲気で美味いと感じるようなものだったのかもしれないが。
もちろん、クラリスが興味を持っている屋台で使っている果物はリンゴではなく、もっと別の……この世界特有の果実だ。
いや、あるいはアランが知らないだけで、日本……もしくは地球にもあった果物かもしれないが。
別にアランの前世は、スイーツマニアだったり果物マニアといったような訳ではない。
それこそ身近で売ってるような果物だったり、TVで紹介されているような果物の類なら知っているだろうが、日本には……そして世界には、アランが知らない果物はそれこそいくらでもある。
「そうだな。じゃあ、ちょっと買ってみるか。人気もあるようだから、不味くはないだろうし」
屋台には数人の客が列を作っている。
もし屋台で売っているのが不味いのなら、そんな列は出来ないだろう。
そんな思いから、アランはクラリスと共に列に並ぶ。
クラリスが楽しみにしている間に、行列は前に進んでいく。
もう少しでアランとクラリスの番になるというとき……
「おっとごめんよ」
不意にそんな声が聞こえたかと思うと、二人の男がアランとクラリスの前に割り込んでくる。
「あ……」
まさか、こんな状況になるというのはクラリスにとっても予想外だったのだろう。
残念そうな声が口から出る。
「おい、割り込むな。並ぶなら後ろにいけ」
そんなクラリスの様子を見て、アランは割り込んで来た男二人……狼と猪の獣人に向かってそう告げる。
本来であれば、アランのこの行動は護衛として考えた場合、失策でしかない。
ここで男たちと揉めれば、それによってクラリスに被害が出る可能性があるのだから。
アランはそこまで頭が回っておらず、妹のように可愛がっているクラリスをこのような目に遭わせたということで、頭に血が上ってしまったのだろう。
「ああ? 何だてめえ。俺たちに文句があるのか? そんなガキを連れて、いい趣味してるな」
男たちにしてみれば、アランとクラリスの間にはかなりの年齢差がある。
大人の場合であれば、五歳や十歳程度の年齢差がある恋人や夫婦というのは珍しくはないだろうが……それがアランのような年齢であれば、問題になる。
アランが十代半ばから後半くらいの年齢であるのに対して、クラリスは十歳からそこらだ。
これが日本であれば、場合によっては通報されてもおかしくはないだろう二人。
この世界においてはそこまで問題視されるようなことはないが、割り込んで来た男たちにしてみれば、そんなクラリスのような子供を連れたアランに割り込みを注意されたのが面白くなかったのだろう。
「文句があるに決まってるだろ。皆、大人しく列に並んでるんだ。お前たちも素直に列の後ろにいけよ」
普段はそれなりに丁寧な言葉遣いをするアランだったが、目の前にいるような相手に対しては、そんなことをするつもりはない。
そうしてアランに注意された男たちは、獣人らしい気の短さを発揮して拳を握り締める。
「おい、最後に注意してやる。このまま大人しく金を置いて逃げ帰れば、怪我をしないですむぞ。それでも不満だって言うのなら、それこそどういう目に遭っても知らねえぞ? どうする?」
「どうするも何も、お前たちが素直に割り込みを止めて後ろに向かわないのなら、残念だけどこっちも相応の手段を取らせて貰うことになる」
「へぇ、こいつ……やる気だぜ? ただの人間風情が、俺たちと」
デルリアには獣人が多く住んでいることもあってか、二人の獣人の態度は大きい。
もちろん、獣人全てがこのような相手ではなく、一部の者たちだけなのだが。
そんな相手に、アランは小さく息を吐いてから軽く手招きする。
「来るならさっさと来いよ。こっちはお前たちのような相手に構っていられるような暇人じゃないんだから」
「な……何だとこらぁっ!」
アランのその言葉が、男たちの限界を超えさせたのだろう。
片方の男が、拳を握り締めてアランに向かって殴りかかってくる。
だが、アランはそんな男の拳を回避するのではなく、むしろ自分から前に向かって進んでいく。
男の拳を軽く回避し、カウンターで溝尾に拳を叩き込む。
「ぐげぇっ!」
その一撃で、地面にへたり込む獣人の男。
「な……」
もう一人の獣人の男は、目の前で起こった出来事が理解出来ずにそんな声を上げる。
この二人は、それなりに荒事には慣れている。
そんな自覚があったからこそ、まさかこうもあっさりとやられるとは思ってもいなかったのだろう。
だが、アランにしてみれば街中での荒事に慣れてる程度がどうしたといったような思いしかない。
アランは心核使いに特化している能力を持ち、生身での戦いということになれば、雲海では最弱と言ってもいい。
だが、それはあくまでも雲海の中での話だ。
アランにとって雲海が標準とされているものの、雲海というのは腕利きの探索者が集まるクランの中でも実力派として知られているクランだ。
そのような場所で最弱に近いとはいえ、それでもアランの実力は相応のものなのは当然の話だった。
それこそ、このような街中で荒事に慣れているといった程度の者たちと戦いになった場合、相手の動きをみてから反撃し、一撃で相手を気絶させる程度には。
「どうする? まだやるのなら相手になるけど」
「ぐ……はっ! こんなことでムキになって、下らねえ!」
アランと戦っても勝ち目がないと判断したためだろう。
気絶していない獣人の男は、そう言いながらその場から逃げ去ろうとし……
「待て!」
そんなアランの言葉に、ビクリと動きを止める。
ギギギ、という音がしそうなくらいに鈍い動きで振り向く獣人の男。
自分も仲間と同じように殴られるのではないかと、そう思ったのだろう。
荒事に慣れているとはいえ、それはあくまでも素人での話だ。
しっかりと鍛えているアランに、勝ち目などあるはずもない。
それでも後ろから声をかけられたときに逃げ出さなかったのは、そうした場合はもっと酷い目に遭うというのを本能的に理解していたためだろう。
「逃げるのなら、こいつも連れていけ。こういう奴が店の前に倒れたままだと迷惑だろ」
「はっ、はいいぃ!」
アランの言葉に、呼び止められた獣人の男はそんな声と共に急いで戻ってきて、気絶した仲間を担ぎ上げると、その馬を走り去る。
仲間を担いでいるにもかかわらず、その走る速度は明らかに速い。
(獣人って、やっぱり身体能力は高いんだよな)
羨ましく思うアランだったが、そんなアランに列に並んでいた者、もしくは通りがかりの者たちから拍手が送られる。
あの二人は、この辺りでもかなりの悪名を持つ獣人たちで、アランたちが寄ろうとしていた屋台も含め、かなり困っていたのだ。
そんな相手をあそこまで鮮やかに倒したのだから、感謝の意味を込めて拍手されるくらいは当然だったのだろう。
「ほら、兄ちゃん。嬢ちゃんも、これは俺の奢りだ。気持ちいいくらいの動きだったぜ!」
屋台の店主は満面の笑みでそう言い、リンゴ飴――リンゴではないが――をアランとクラリスに渡すのだった。
「野菜は新鮮なのが美味い! そういう意味では、うちの野菜は最高級品だよ!」
「強くなりたいのなら、うちの道場に来てくれ! 後悔はさせないぜ! 間違いなく強くなれる!」
そんな呼び込みの声を聞きながら、アランはクラリスと共に街中を見て回る。
一応念のためにジャスパーが護衛として離れた場所にいるという話だったが、残念ながらアランはジャスパーが具体的にどこにいるのかは分からない。
ただし、ジャスパーがあのように言った以上、実はついてきていないということはないだろうと、そういう安心感はある。
「それで、どういう場所に行きたいんだ?」
「まずは適当に見て回りたいです。こういう場所に来るの、初めてなので」
変装をしているクラリスは、興味深そうに周囲の様子を眺めている。
姫として育てられてきただけに、このような光景は非常に珍しいのだろう。
(とはいえ、こうしてはしゃいでいるのを見れば、ゴールスの刺客に見つかったりしそうだけどな)
あるいはこれも姫として磨かれた能力なのか、今のクラリスはとてもクラリスとは思えない。
それこそ、その辺の一般人と言われても納得出来るだろう。
なお、クラリスの中でも最大の特徴と言うべき二本の尻尾は、面に出しているのが一本で、もう一本はスカートの中に隠してあるらしい。
それで問題ないのか? と思わないでもなかったが、本人がこうして問題ない様子を見せているのだから、大丈夫なのだろうと判断する。
「なら、取りあえず屋台でも回ってみるか。そっちはこういう街中を歩くのが初めてなら、当然屋台も初めてだろ?」
「そうですね。裏の街道に入る前に街や村に寄ったりもしましたが、そのときは馬車に乗ったままでしたから」
だろうな、とアランはクラリスの言葉に納得する。
ロルフたちだけで護衛をしていたとき、その戦力は非常に心許なかった。
その辺りの手回しをしたのも、今ではゴールスだと分かっているが。
そんな訳で、ロルフたちも自分たちの戦力ではいざ何かがあったときに対処するのは難しいと考えていたのだろう。
それだけに、クラリスを馬車から降ろすといったような真似はとても出来なかったのだろう。
クラリスもそれを理解していたからこそ、その件を残念に思っても不満を口にしたりはしなかった。
しかし、今はアランを始めとして十分な実力者が護衛として一緒にいるので、その辺を心配するといったようなことは必要ない。
「アランさん、あれを食べてみたいんですけど……いいですか?」
そう言ってクラリスが示したのは、一件の屋台。
果実に溶かした水飴を絡ませた料理だ。
(リンゴ飴?)
アランは前世に日本の屋台で食べたお菓子を思い出す。
小さめのリンゴに溶かした水飴をつけて、冷やすという非常に簡単な料理。
そんな料理ではあったが、リンゴの酸味と水飴の甘さが非常に美味かったのを覚えている。
とはいえ、それは祭りの時に具の殆どがキャベツのお好み焼きだったり、たこが入っていないたこ焼きであっても、祭りの雰囲気で美味いと感じるようなものだったのかもしれないが。
もちろん、クラリスが興味を持っている屋台で使っている果物はリンゴではなく、もっと別の……この世界特有の果実だ。
いや、あるいはアランが知らないだけで、日本……もしくは地球にもあった果物かもしれないが。
別にアランの前世は、スイーツマニアだったり果物マニアといったような訳ではない。
それこそ身近で売ってるような果物だったり、TVで紹介されているような果物の類なら知っているだろうが、日本には……そして世界には、アランが知らない果物はそれこそいくらでもある。
「そうだな。じゃあ、ちょっと買ってみるか。人気もあるようだから、不味くはないだろうし」
屋台には数人の客が列を作っている。
もし屋台で売っているのが不味いのなら、そんな列は出来ないだろう。
そんな思いから、アランはクラリスと共に列に並ぶ。
クラリスが楽しみにしている間に、行列は前に進んでいく。
もう少しでアランとクラリスの番になるというとき……
「おっとごめんよ」
不意にそんな声が聞こえたかと思うと、二人の男がアランとクラリスの前に割り込んでくる。
「あ……」
まさか、こんな状況になるというのはクラリスにとっても予想外だったのだろう。
残念そうな声が口から出る。
「おい、割り込むな。並ぶなら後ろにいけ」
そんなクラリスの様子を見て、アランは割り込んで来た男二人……狼と猪の獣人に向かってそう告げる。
本来であれば、アランのこの行動は護衛として考えた場合、失策でしかない。
ここで男たちと揉めれば、それによってクラリスに被害が出る可能性があるのだから。
アランはそこまで頭が回っておらず、妹のように可愛がっているクラリスをこのような目に遭わせたということで、頭に血が上ってしまったのだろう。
「ああ? 何だてめえ。俺たちに文句があるのか? そんなガキを連れて、いい趣味してるな」
男たちにしてみれば、アランとクラリスの間にはかなりの年齢差がある。
大人の場合であれば、五歳や十歳程度の年齢差がある恋人や夫婦というのは珍しくはないだろうが……それがアランのような年齢であれば、問題になる。
アランが十代半ばから後半くらいの年齢であるのに対して、クラリスは十歳からそこらだ。
これが日本であれば、場合によっては通報されてもおかしくはないだろう二人。
この世界においてはそこまで問題視されるようなことはないが、割り込んで来た男たちにしてみれば、そんなクラリスのような子供を連れたアランに割り込みを注意されたのが面白くなかったのだろう。
「文句があるに決まってるだろ。皆、大人しく列に並んでるんだ。お前たちも素直に列の後ろにいけよ」
普段はそれなりに丁寧な言葉遣いをするアランだったが、目の前にいるような相手に対しては、そんなことをするつもりはない。
そうしてアランに注意された男たちは、獣人らしい気の短さを発揮して拳を握り締める。
「おい、最後に注意してやる。このまま大人しく金を置いて逃げ帰れば、怪我をしないですむぞ。それでも不満だって言うのなら、それこそどういう目に遭っても知らねえぞ? どうする?」
「どうするも何も、お前たちが素直に割り込みを止めて後ろに向かわないのなら、残念だけどこっちも相応の手段を取らせて貰うことになる」
「へぇ、こいつ……やる気だぜ? ただの人間風情が、俺たちと」
デルリアには獣人が多く住んでいることもあってか、二人の獣人の態度は大きい。
もちろん、獣人全てがこのような相手ではなく、一部の者たちだけなのだが。
そんな相手に、アランは小さく息を吐いてから軽く手招きする。
「来るならさっさと来いよ。こっちはお前たちのような相手に構っていられるような暇人じゃないんだから」
「な……何だとこらぁっ!」
アランのその言葉が、男たちの限界を超えさせたのだろう。
片方の男が、拳を握り締めてアランに向かって殴りかかってくる。
だが、アランはそんな男の拳を回避するのではなく、むしろ自分から前に向かって進んでいく。
男の拳を軽く回避し、カウンターで溝尾に拳を叩き込む。
「ぐげぇっ!」
その一撃で、地面にへたり込む獣人の男。
「な……」
もう一人の獣人の男は、目の前で起こった出来事が理解出来ずにそんな声を上げる。
この二人は、それなりに荒事には慣れている。
そんな自覚があったからこそ、まさかこうもあっさりとやられるとは思ってもいなかったのだろう。
だが、アランにしてみれば街中での荒事に慣れてる程度がどうしたといったような思いしかない。
アランは心核使いに特化している能力を持ち、生身での戦いということになれば、雲海では最弱と言ってもいい。
だが、それはあくまでも雲海の中での話だ。
アランにとって雲海が標準とされているものの、雲海というのは腕利きの探索者が集まるクランの中でも実力派として知られているクランだ。
そのような場所で最弱に近いとはいえ、それでもアランの実力は相応のものなのは当然の話だった。
それこそ、このような街中で荒事に慣れているといった程度の者たちと戦いになった場合、相手の動きをみてから反撃し、一撃で相手を気絶させる程度には。
「どうする? まだやるのなら相手になるけど」
「ぐ……はっ! こんなことでムキになって、下らねえ!」
アランと戦っても勝ち目がないと判断したためだろう。
気絶していない獣人の男は、そう言いながらその場から逃げ去ろうとし……
「待て!」
そんなアランの言葉に、ビクリと動きを止める。
ギギギ、という音がしそうなくらいに鈍い動きで振り向く獣人の男。
自分も仲間と同じように殴られるのではないかと、そう思ったのだろう。
荒事に慣れているとはいえ、それはあくまでも素人での話だ。
しっかりと鍛えているアランに、勝ち目などあるはずもない。
それでも後ろから声をかけられたときに逃げ出さなかったのは、そうした場合はもっと酷い目に遭うというのを本能的に理解していたためだろう。
「逃げるのなら、こいつも連れていけ。こういう奴が店の前に倒れたままだと迷惑だろ」
「はっ、はいいぃ!」
アランの言葉に、呼び止められた獣人の男はそんな声と共に急いで戻ってきて、気絶した仲間を担ぎ上げると、その馬を走り去る。
仲間を担いでいるにもかかわらず、その走る速度は明らかに速い。
(獣人って、やっぱり身体能力は高いんだよな)
羨ましく思うアランだったが、そんなアランに列に並んでいた者、もしくは通りがかりの者たちから拍手が送られる。
あの二人は、この辺りでもかなりの悪名を持つ獣人たちで、アランたちが寄ろうとしていた屋台も含め、かなり困っていたのだ。
そんな相手をあそこまで鮮やかに倒したのだから、感謝の意味を込めて拍手されるくらいは当然だったのだろう。
「ほら、兄ちゃん。嬢ちゃんも、これは俺の奢りだ。気持ちいいくらいの動きだったぜ!」
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