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獣人を率いる者
354話
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ゴルナーゴは、力の限りレオノーラに向かって攻撃する。
だが、その攻撃は全てがレオノーラによって回避され、あるいはカウンターの一撃となって返ってきた。
普段、古代魔法文明の遺産を守っているモンスターと戦っているレオノーラにしてみれば、ゴルナーゴの動きは素早くはあるものの、それに対処出来ないとった程ではない。
少なくても、レオノーラにしてみればそんな相手に対処するのは難しい話ではなかった。
結果として……
『ダウン、ダウン! ゴルナーゴが気絶して、ダウン! 勝者、レオノーラ!』
わあああああああああっ!
レオノーラが鞭の柄でゴルナーゴの顎の先端を殴り、その衝撃によっててこの原理で激しく頭を揺らされたゴルナーゴは、脳震盪を起こして意識を失い、舞台に崩れ落ちた。
結局のところ、レオノーラはほとんど怪我らしい怪我をしないままに勝負は終わったのだった。
『美しい者は、戦い方もまた美しい! その見事な戦いは、我々の目を奪うのに十分でした!』
そんな様子で叫ぶ審判とは裏腹に、ゴールスは見て分かる程に不愉快な様子で歯ぎしりしていた。 当然だ。
現在三戦して、一勝二敗。
残る戦いは、二戦。
そしてもう一敗すれば、自分たちの負けは決定してしまうのだ。
そして、次の戦いは今回の公開試合における、もう一つのメインイベント……いや、ゴールスとクラリスでは、どちらが勝利するのか決まっている以上、本当の意味でこれがメインイベントだと言っても間違いではなかった。
それだけに、ゴールスの中には猛烈な怒りと苛立ちがある。
自分が戦って負けるのなら、まだ理解も出来る。
だが、自分が戦うこと出来ず、仲間……いや、部下の無能によって自分が負けるというのは納得出来ない。
「俺が出れば勝てる者を……この無能共が」
口の中だけで呟くその声だったが、それでも周囲にいる者達の耳には十分聞こえる。
当然のように、他の面々はゴールスに不満そうな視線を向けるものの、ゴールスはそんな相手など全く気にした様子もなく……だが、唐突に気分を切り替えるように大きく息を吐くとい、少し離れている部下を呼び、命令する。
その命令を受け取った部下は、その命令が一体何を意味しているのかは理解出来なかったのだろうが、ゴールスからの命令である以上、それを聞かないという選択肢はない。
そうして去っていく部下を見送ったゴールスは、最後に残ったローブの男に向かって口を開く。
「行ってこい。せめて、あの連中に一泡吹かせてくるといい。……だが、向こうの心核使いが凄腕だ。お前が勝てるかどうかは、微妙なところだぞ」
「俺が負けると決めてるところが面白くないですが……分かりましたよ。しっかりと勝利してみせますから、安心して下さい」
ローブの男はそう言いながら、レオノーラと一言二言話し、舞台の上に上がってきたアランを見て、そう告げる。
ローブの男にしてみれば、アランはとてもではないが強そうには思えない。
心核使いというのは、あくまでも何らかのモンスターに変身するというマジックアイテムだ。
そうである以上、余程特殊な例でもない限り、生身の状態での身体の動かし方を見れば、そんな相手の強さは理解出来る。
そういう意味では、ローブの男は不幸だったのだろう。
何故なら、アランはその男が考えたような、まさに特殊な存在……例外中の例外とでも呼ぶべき存在だったのだから。
『さぁ、いよいよ公開試合も後半。現在はクラリス陣営が二勝、ゴールス陣営が一勝と、ゴールス陣営には後がないぞ! 次の戦いで勝利して最終決戦に持ち込むか、それともこの戦いが最後の戦いになるのか……その答えは、もうすぐ分かる! そして、次の戦いは心核使いの戦いだ!』
審判の言葉を聞き、ローブの男はそれを脱ぎ去り、舞台に向かう。
『クラリス陣営からは、アラン。先程のレオノーラやジャスパーは黄金の薔薇というクランの探索者だったが、アランは雲海というクランの探索者にして、心核使い! 一体どんな戦いを見せてくれるのか、今から楽しみだ!』
レオノーラを見たときとはまた違う観客達の歓声が周囲に響く。
元々、心核使いというのは非常に希少な存在だ。
戦いに身を置いている者であれば、まだ心核使いを目にする機会はあるだろう。
だが、街中で普通に暮らしている一般人の場合、一生心核使いを見ないというのも珍しくない。
そんな中で、心核使い同士が公開試合を行うのだ。
観客たちにしてみれば、興味を抱くなという方が無理だろう。
『この戦いで負けると、陣営としての負けも決まってしまうゴールス陣営からは……馬の獣人、アルビンだ!』
その言葉に、アルビンは舞台の上でアランと向き合う。
心核使いではあるが、武器を手にしているのはモンスターに変身した状態でも武器を使えるからか。
「悪いけど、この戦いは勝たせて貰うぜ」
アランを前に、アルビンはそう宣言する。
アルビンにしてみれば、こうして目の前にいるアランを見ても自分が負けるとは思えない。
だからこその強気な発言だったのか、そんなアルビンに対し、アランもまた笑みを浮かべながら口を開く。
「そっちが勝つつもりだからって、はいそうですかと負ける訳にはいかないな。それに……一つ忠告しておくが、勝てないと思ったらすぐに負けを申告した方がいい。強がったりしたら、目も当てられないことになるからな」
アランの言葉に、アルビンは笑みを浮かべる。
アルビンから見れば、強がりを言ってるようにしか思えなかったのだろう。
『双方共に、自分が勝つと信じているぞ。そして……そろそろ試合を始めるので、離れてくれ!』
その言葉に、アランとアルビンは離れる。
心核使いということで、試合を開始する場所は変身の時間も考えて、今までよりもかなり離れた場所でのものとなる。
そして、二人が十分に離れたところで審判が口を開く。
『では、これで勝負が決まるのか、それとも最終戦にもつれ込むのか……一体どうなる。試合、開始!』
審判の合図と共に、アルビンは武器を舞台に突き刺してから心核を使う。
元は馬の獣人だったのその姿が、気が付けば身長四メートルはあろうかという巨大な人型に変わっていた。
身体からは白い体毛が大量に生えているその姿は、巨人、もしくは巨猿とでも呼ぶべき姿。
それは、日本……いや、正確には地球でもUMAとして伝承に残っている存在……
『イエティだ、アルビンは心核でイエティに変身したぞ! その巨体は、それだけで脅威! 人を殺すには十分な威力を持つ、凶悪なモンスターだ! 対して……え……?』
審判がアルビンの変身したイエティについて喋っている間に、アランもまた既にカロに頼んで武器の召喚を終えていた。
だが……魔法が存在するこの世界において、ビームサーベルの柄というのは一体どう見えるのか。
何よりも、本来なら心核使いというのはその者の根源とも呼ぶべき姿に変身するというマジックアイテムだ。
つまり、心核を使っているのに、アランが生身の状態でそこにいるというのは明らかにおかしなことだった。
もちろん、審判も心核使いについて詳しく知っている訳ではない。
だが、それでも世間一般に広まっているような話については、十分に理解している。
その常識から考えて、アランの様子は明らかにおかしかった。
「さて、一応忠告させて貰おうか。大人しく降伏した方がいい。じゃないと、痛い目を見ることになるぞ?」
「ふざ……けるなぁっ!」
あまりに自分を侮ったアランの言葉、そして、それ以上にアルビンにとっては全く理解出来ない状況に、苛立ちと恐怖を混ぜたような、そんな様子を見せ、アルビンは舞台に突き刺していた武器を引き抜き、アランに向かって投擲する。
身長四メートル近くと巨大になったにもかかわらず、それでも器用に武器を掴むその姿は、アルビンが心核使いとしてしっかりと訓練を積んでいることを意味していた。
そうしてイエティが持つにしては随分と小さい武器をアランに向かって投擲する。
投擲技術は決して優れている訳ではなかったが、イエティの身体能力で投擲されたその威力は極めて強力だ。
空気を斬り裂き……そして、命中すればアランの身体は間違いなく砕かれるだろう、そんな威力の一撃ではあったが、次の瞬間にはその武器は消滅する。
それどころか、武器を投擲したイエティの右手もまた、綺麗に消失していた。
光が伸びたかと思えば、それで一瞬にして全てが終わってしまったのだ。
「が……え……?」
攻撃されたイエティも、自分が何をされたのか全く分からないまま、地面に崩れ落ちる。
しん、と。
観客たちは、一体何が起きたのかが全く理解出来なかった。
光が素早く瞬き、アランの側にある何かから伸びたかと思ったら、次の瞬間には光が消えており、そしてもう今のような状況だったのだから。
『こ……これは……これは……』
審判も、今までとは全く違う異質な光景に、何と言っていいのか迷う。
アランにしてみれば、魔法が存在するこの世界で科学技術について理解しろという方が無理だろうと、そう思うが。
もっとも、その科学技術というのも、本当の意味での科学技術ではない。
ある意味、アランが前世で経験したゲームの中に出てきた人型機動兵器の持つ科学技術というのが、正確なところなのだが。
それでも、審判はそれが本職だけあって、目の前に広がっている光景から現在の状況を口にする。
『勝負あり! 勝負ありだ! 一体、何が起きたのか! 光が伸びたと思ったら、その時点でもう勝負はついていた! 雲海のアランが一体何をしたのか! そもそも、本当に心核使いと呼んでもいいような相手なのか、それが全く分からない。だが、明らかなのは現在舞台の上に立っているのはアランだけで、イエティに変身したアルビンは舞台に倒れているということだ!』
静寂に包まれた中に、審判の声が響く。
それを聞き、観客たちもようやく今の一瞬で勝負がついたと理解したのだろう。
驚きを露わにしながらも歓声を上げ……そして、観客達の歓声を聞きながら、ゴールスは立ち去るのだった。
だが、その攻撃は全てがレオノーラによって回避され、あるいはカウンターの一撃となって返ってきた。
普段、古代魔法文明の遺産を守っているモンスターと戦っているレオノーラにしてみれば、ゴルナーゴの動きは素早くはあるものの、それに対処出来ないとった程ではない。
少なくても、レオノーラにしてみればそんな相手に対処するのは難しい話ではなかった。
結果として……
『ダウン、ダウン! ゴルナーゴが気絶して、ダウン! 勝者、レオノーラ!』
わあああああああああっ!
レオノーラが鞭の柄でゴルナーゴの顎の先端を殴り、その衝撃によっててこの原理で激しく頭を揺らされたゴルナーゴは、脳震盪を起こして意識を失い、舞台に崩れ落ちた。
結局のところ、レオノーラはほとんど怪我らしい怪我をしないままに勝負は終わったのだった。
『美しい者は、戦い方もまた美しい! その見事な戦いは、我々の目を奪うのに十分でした!』
そんな様子で叫ぶ審判とは裏腹に、ゴールスは見て分かる程に不愉快な様子で歯ぎしりしていた。 当然だ。
現在三戦して、一勝二敗。
残る戦いは、二戦。
そしてもう一敗すれば、自分たちの負けは決定してしまうのだ。
そして、次の戦いは今回の公開試合における、もう一つのメインイベント……いや、ゴールスとクラリスでは、どちらが勝利するのか決まっている以上、本当の意味でこれがメインイベントだと言っても間違いではなかった。
それだけに、ゴールスの中には猛烈な怒りと苛立ちがある。
自分が戦って負けるのなら、まだ理解も出来る。
だが、自分が戦うこと出来ず、仲間……いや、部下の無能によって自分が負けるというのは納得出来ない。
「俺が出れば勝てる者を……この無能共が」
口の中だけで呟くその声だったが、それでも周囲にいる者達の耳には十分聞こえる。
当然のように、他の面々はゴールスに不満そうな視線を向けるものの、ゴールスはそんな相手など全く気にした様子もなく……だが、唐突に気分を切り替えるように大きく息を吐くとい、少し離れている部下を呼び、命令する。
その命令を受け取った部下は、その命令が一体何を意味しているのかは理解出来なかったのだろうが、ゴールスからの命令である以上、それを聞かないという選択肢はない。
そうして去っていく部下を見送ったゴールスは、最後に残ったローブの男に向かって口を開く。
「行ってこい。せめて、あの連中に一泡吹かせてくるといい。……だが、向こうの心核使いが凄腕だ。お前が勝てるかどうかは、微妙なところだぞ」
「俺が負けると決めてるところが面白くないですが……分かりましたよ。しっかりと勝利してみせますから、安心して下さい」
ローブの男はそう言いながら、レオノーラと一言二言話し、舞台の上に上がってきたアランを見て、そう告げる。
ローブの男にしてみれば、アランはとてもではないが強そうには思えない。
心核使いというのは、あくまでも何らかのモンスターに変身するというマジックアイテムだ。
そうである以上、余程特殊な例でもない限り、生身の状態での身体の動かし方を見れば、そんな相手の強さは理解出来る。
そういう意味では、ローブの男は不幸だったのだろう。
何故なら、アランはその男が考えたような、まさに特殊な存在……例外中の例外とでも呼ぶべき存在だったのだから。
『さぁ、いよいよ公開試合も後半。現在はクラリス陣営が二勝、ゴールス陣営が一勝と、ゴールス陣営には後がないぞ! 次の戦いで勝利して最終決戦に持ち込むか、それともこの戦いが最後の戦いになるのか……その答えは、もうすぐ分かる! そして、次の戦いは心核使いの戦いだ!』
審判の言葉を聞き、ローブの男はそれを脱ぎ去り、舞台に向かう。
『クラリス陣営からは、アラン。先程のレオノーラやジャスパーは黄金の薔薇というクランの探索者だったが、アランは雲海というクランの探索者にして、心核使い! 一体どんな戦いを見せてくれるのか、今から楽しみだ!』
レオノーラを見たときとはまた違う観客達の歓声が周囲に響く。
元々、心核使いというのは非常に希少な存在だ。
戦いに身を置いている者であれば、まだ心核使いを目にする機会はあるだろう。
だが、街中で普通に暮らしている一般人の場合、一生心核使いを見ないというのも珍しくない。
そんな中で、心核使い同士が公開試合を行うのだ。
観客たちにしてみれば、興味を抱くなという方が無理だろう。
『この戦いで負けると、陣営としての負けも決まってしまうゴールス陣営からは……馬の獣人、アルビンだ!』
その言葉に、アルビンは舞台の上でアランと向き合う。
心核使いではあるが、武器を手にしているのはモンスターに変身した状態でも武器を使えるからか。
「悪いけど、この戦いは勝たせて貰うぜ」
アランを前に、アルビンはそう宣言する。
アルビンにしてみれば、こうして目の前にいるアランを見ても自分が負けるとは思えない。
だからこその強気な発言だったのか、そんなアルビンに対し、アランもまた笑みを浮かべながら口を開く。
「そっちが勝つつもりだからって、はいそうですかと負ける訳にはいかないな。それに……一つ忠告しておくが、勝てないと思ったらすぐに負けを申告した方がいい。強がったりしたら、目も当てられないことになるからな」
アランの言葉に、アルビンは笑みを浮かべる。
アルビンから見れば、強がりを言ってるようにしか思えなかったのだろう。
『双方共に、自分が勝つと信じているぞ。そして……そろそろ試合を始めるので、離れてくれ!』
その言葉に、アランとアルビンは離れる。
心核使いということで、試合を開始する場所は変身の時間も考えて、今までよりもかなり離れた場所でのものとなる。
そして、二人が十分に離れたところで審判が口を開く。
『では、これで勝負が決まるのか、それとも最終戦にもつれ込むのか……一体どうなる。試合、開始!』
審判の合図と共に、アルビンは武器を舞台に突き刺してから心核を使う。
元は馬の獣人だったのその姿が、気が付けば身長四メートルはあろうかという巨大な人型に変わっていた。
身体からは白い体毛が大量に生えているその姿は、巨人、もしくは巨猿とでも呼ぶべき姿。
それは、日本……いや、正確には地球でもUMAとして伝承に残っている存在……
『イエティだ、アルビンは心核でイエティに変身したぞ! その巨体は、それだけで脅威! 人を殺すには十分な威力を持つ、凶悪なモンスターだ! 対して……え……?』
審判がアルビンの変身したイエティについて喋っている間に、アランもまた既にカロに頼んで武器の召喚を終えていた。
だが……魔法が存在するこの世界において、ビームサーベルの柄というのは一体どう見えるのか。
何よりも、本来なら心核使いというのはその者の根源とも呼ぶべき姿に変身するというマジックアイテムだ。
つまり、心核を使っているのに、アランが生身の状態でそこにいるというのは明らかにおかしなことだった。
もちろん、審判も心核使いについて詳しく知っている訳ではない。
だが、それでも世間一般に広まっているような話については、十分に理解している。
その常識から考えて、アランの様子は明らかにおかしかった。
「さて、一応忠告させて貰おうか。大人しく降伏した方がいい。じゃないと、痛い目を見ることになるぞ?」
「ふざ……けるなぁっ!」
あまりに自分を侮ったアランの言葉、そして、それ以上にアルビンにとっては全く理解出来ない状況に、苛立ちと恐怖を混ぜたような、そんな様子を見せ、アルビンは舞台に突き刺していた武器を引き抜き、アランに向かって投擲する。
身長四メートル近くと巨大になったにもかかわらず、それでも器用に武器を掴むその姿は、アルビンが心核使いとしてしっかりと訓練を積んでいることを意味していた。
そうしてイエティが持つにしては随分と小さい武器をアランに向かって投擲する。
投擲技術は決して優れている訳ではなかったが、イエティの身体能力で投擲されたその威力は極めて強力だ。
空気を斬り裂き……そして、命中すればアランの身体は間違いなく砕かれるだろう、そんな威力の一撃ではあったが、次の瞬間にはその武器は消滅する。
それどころか、武器を投擲したイエティの右手もまた、綺麗に消失していた。
光が伸びたかと思えば、それで一瞬にして全てが終わってしまったのだ。
「が……え……?」
攻撃されたイエティも、自分が何をされたのか全く分からないまま、地面に崩れ落ちる。
しん、と。
観客たちは、一体何が起きたのかが全く理解出来なかった。
光が素早く瞬き、アランの側にある何かから伸びたかと思ったら、次の瞬間には光が消えており、そしてもう今のような状況だったのだから。
『こ……これは……これは……』
審判も、今までとは全く違う異質な光景に、何と言っていいのか迷う。
アランにしてみれば、魔法が存在するこの世界で科学技術について理解しろという方が無理だろうと、そう思うが。
もっとも、その科学技術というのも、本当の意味での科学技術ではない。
ある意味、アランが前世で経験したゲームの中に出てきた人型機動兵器の持つ科学技術というのが、正確なところなのだが。
それでも、審判はそれが本職だけあって、目の前に広がっている光景から現在の状況を口にする。
『勝負あり! 勝負ありだ! 一体、何が起きたのか! 光が伸びたと思ったら、その時点でもう勝負はついていた! 雲海のアランが一体何をしたのか! そもそも、本当に心核使いと呼んでもいいような相手なのか、それが全く分からない。だが、明らかなのは現在舞台の上に立っているのはアランだけで、イエティに変身したアルビンは舞台に倒れているということだ!』
静寂に包まれた中に、審判の声が響く。
それを聞き、観客たちもようやく今の一瞬で勝負がついたと理解したのだろう。
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