剣と魔法の世界で俺だけロボット

神無月 紅

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ガリンダミア帝国との決着

371話

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 ガリンダミア帝国軍の将軍マリピエロは、現在の状況に眉を顰める。
 ビッシュの命令によるものだとはいえ、今回の一件でガリンダミア帝国の受ける被害がかなり大きくなるのは確実だった。
 それを理解出来てしまうがゆえに、この状況をどうにかしたいと……そう思うのだが、ビッシュからの命令に逆らうという選択肢はなく、つまり今のマリピエロに出来るのは自分が出来る範囲で何とかガリンダミア帝国の受ける被害を少なくするということだ。

「戦線の縮小はどうなっている?」
「難しいですね。こちらが戦線を縮小しようとするのを見計らったかのように、向こうが出て来ています。恐らく何らかの方法で情報を共有してるのでしょうが……」
「厄介だな」

 普通なら、伝令を出すなりなんなりして情報を伝達しようにも相応の時間が必要となる。
 しかし、現在の周辺諸国の動きを見る限りでは、とてもではないがそのようなことをしているのではなく、リアルタイムで情報のやり取りをしているように思えるのだ。

(そういう能力を持った心核使いがいるのか? いや、だがそれにしては、連合軍と足並みを揃えているらしいレジスタンスの方はそうでもない。となると……どうなっている?)

 疑問を感じるマリピエロだったが、結局のところ今はやるべきことをやるしかない。
 この状況で下手に動くといったような真似をした場合、間違いなくガリンダミア帝国軍に無駄な被害を与えてしまうからだ。

「ビッシュ様からの指示がなければ、俺が直接前に出て指揮してもいんだが……今の状況では、そんな真似が出来ない」

 呟くその声を拾ったのだろう。
 近くにいた軍人の一人が、鋭い視線をマリピエロに向け、口を開く。

「将軍、あまり迂闊なことを言わないで下さい。その一件が下手な相手に耳に入ったら、間違いなく面倒なことになりますよ。そうなると将軍もこれまで以上に忙しくなりますけど」
「……気をつけるよ」

 マリピエロにしてみれば、今でさえかなりの忙しさなのだ。
 幸いにも他の将軍たちも今回の一件にかんしてはマリピエロに協力してくれているので何とかなっているのだが、今回の一件は普通に考えた場合、ほとんど意味がない作戦だ。
 いや、ガリンダミア帝国の勢力圏に存在するレジスタンスを一掃することが出来るという意味では大きな意味を持つのだが、言ってみればそれだけでしかない。
 レジスタンスを一掃するというのは大きな意味を持つものの、問題なのはここでレジスタンスを一掃しても、この手の者たちは雨後の竹の子のように、次々と出てくる。
 それはつまり、ここでレジスタンスを一掃しても、多少の時間は安全になるかもしれないが、いずれは再びレジスタンスが出て来るということを意味していた。
 だとすれば、ここまで労力をかける必要があるのかといったように思えるのだが、それでもビッシュからの命令となればどうしようもない。

「ともあれ、可能な限りレジスタンスたちを潰して、アランだったか? そいつを捕らえて、少しでも早くこの作戦を終わらせる必要がある。こっちの心核使いはどうなっている?」
「レジスタンスを撃破しているという報告もありますが……」

 言いにくそうにしている様子を見れば、ガリンダミア帝国軍にとって悪い報告であるというのは明らかだ。
 それはつまり、ガリンダミア帝国軍の心核使いが撃破されているということを意味している。
 そしてガリンダミア帝国軍の心核使いは、訓練されている者も多いし、実戦経験も豊富だ。
 そのような状況である以上、そう簡単に倒されるといったことはない。
 ……ただし、相手が心核使いであれば話は別だが。
 それもただの心核使いではなく、相応に腕の立つ心核使いの場合だ。

「ゴーレムとドラゴン、どちらの被害が大きい?」
「どちらもですね。今もまだ、双方共に行動しているようです」
「ふん、ゴーレムを守るためか。厄介な護衛をつける。護衛対象そのものが面倒なくらいの強さを持ってるってのに」

 うんざりとした様子で、大きく息が吐かれる。
 実際、ゴーレムだけでもちょっとやそっとの強さでないのは分かっていた。
 それこそ、今までに判明しているだけでもかなりの数の心核使いが倒されているのだ。
 そうである以上、今はどうにかしてゴーレムとドラゴンを別行動にさせる必要がある。
 しかし、それが出来ない以上はどうしようもない。

(面倒な。いっそ、こっちの心核使いを纏めて投入出来れば楽なんだが……そんな訳にもいかないしな)

 いくらゴーレムやドラゴンが強いとはいえ、それでもガリンダミア帝国軍に所属する心核使いを全て投入出来れば、間違いなく勝てるとは思う。
 思うのだが、問題なのはどうやればそのような真似が出来るかということだ。
 ゴーレム……いや、アランも当然の話だが、敵の戦力が集中しているというのを知れば、まさかそこにわざわざ近付いたりはしない。
 それどころか、場合によってはこれ幸いと心核使いの集まっている場所を避けて、帝都に攻撃をしにいく……などといった可能性もある。
 もちろん、帝都には護衛が出来るだけの心核使いを残すつもりではあるが、それでも少数ではゴーレムやドラゴンに対抗するのは難しいはずだ。

(夢物語、だな。……向こうがどうしても来なければならない場所に戦力を集めるのならともかくとして)

 マリピエロは、一瞬頭の中で思ったことをすぐに消す。
 今の状況を考えれば、とてもではないがそのようなことは出来ないと理解したからだろう。

「どちらも空を飛ぶというのが面倒だな。一応、空を飛べる心核使いの中でも腕利きの連中は出しているが……」
「将軍、ダラットがやられたと報告が!」

 マリピエロに近づいてきた兵士の一人が、そう告げる。
 その言葉に、話を聞いていた者達はざわめく。
 ダラットというのは、たった今マリピエロが口にした、空を飛ぶモンスターに変身出来る、腕利き心核使いの一人。
 それも腕利きと言われる中でも上位に位置するだろう強さを持つ心核使いの名前だった。
 空を飛ぶケルベロスという意味で、非常に強力な個体。
 そんなダラットがやられたというのだから、マリピエロにしてみれば勘弁して欲しいというのが正直なところだ。

「ダラットのいた方向に連中が出たということは……どうなっている? 少し前まで判明していた方角とは少し違うぞ。これは、やっぱり何らかの意図を持って進行方向を決めてる訳ではなく、適当に、もしくはそれ以外に何らかの理由によって行く進行方向を決めているということか?」
「それは……厄介ですね」

 マリピエロの呟きを聞いた者の一人が、心の底から嫌そうに言う。
 何らかの規則性を持って移動しているのなら、行動する方向を先読みするといった真似も出来る。
 だが、規則性がなく適当に移動する方向を決めている場合は、それこそ気紛れによって移動する方向が変わりかねなかった。
 あるいは、これがアランたちが地面の上を馬車なりなんなりで移動しているのなら、ガリンダミア帝国軍側でも対処するようなことは出来るだろう。
 だが、アランたちは空を飛んで移動しているのだ。
 それも、空を飛ぶ速度はかなりのもので、普通に追ってもとてもではないが追いつかないような、そんな速度で。
 つまり、今のガリンダミア帝国軍に出来ることはアランたちの進行方向に網を張り、そこで待ち受けるといったことになる。
 ……実のところ、マリピエロは当然ながらアランたちの狙いについては理解していた。
 レジスタンスたちに出来るだけ目が向かないように、自分たちにガリンダミア帝国軍の注目を集めるといったような行為を。
 だが、それが分かったからといって、対処するしかない以上はどうしようもない。
 せめてビッシュからの命令さえなければ、ある程度は対処出来たのだろうが。

「国境線沿いの撤退戦はどうなっている? 既に撤退は完了したか?」
「七割程は。ただし、撤退したのに合わせて追撃をしてくる者たちが多く、そちらの対処に手間取っています。すでに撤退に成功したかなりの戦線で追撃されており、戦線はガリンダミア帝国の内側にて行われています」

 そう報告する軍人の言葉に、悔しさがある。
 本来なら、ガリンダミア帝国軍の戦力は極めて強力だ。
 ましてや、いざとなれば心核使いもいるのだから、どの戦線でも優位に戦えるはずだった。
 しかし……そのような状況にもかかわらず、心核使いは引き抜かれ、戦線を縮小するように命じられ……それは、とてもではないがガリンダミア帝国の者として受け入れることは出来ない。
 しかし、上からの命令とあればその屈辱を受け入れるしかなかった。
 これが上は上でも、自分たちのすぐ上の者の命令であれば、より上位の存在に話を通すといったような真似も出来るだろう。
 だが……この命令は、ある意味で皇帝と同規模、場合によってはその皇帝よりも強い権力を持っているビッシュからの命令なのだ。
 今までのガリンダミア帝国の繁栄の多くがビッシュによる功績である以上、その意向を無視するといったような真似は出来ない。
 その結果が、今の状況なのだ。

(とはいえ、ビッシュ様が今までガリンダミア帝国にもたらしてきた繁栄を思えば、ここまでして捕らえる必要があるアランとかいう心核使いは、一体……)

 マリピエロが現状に不満を持っていても、大人しくビッシュからの指示に従い、ガリンダミア帝国軍に大きな被害を出しつつもアランを捕らえようとしているのは、結局のところビッシュの今までの実績を信じてのものだ。
 もしこうしてビッシュの言葉を信じて仕事をして、それが結局ガリンダミア帝国の利益にならない……どころか、大きな被害を受けるだけということになった場合は、マリピエロもビッシュの存在を許容出来ないだろう。
 もちろん、ビッシュという存在は非常に強力なのは間違いない。
 それこそ、現在の自分がどうにか出来るかどうかは分からないが、それでも現時点でガリンダミア帝国が受けた被害を思えば、本当にアランという存在を捕らえただけで、そこまで利益となるのか……疑問に思うのは当然だった。
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