剣と魔法の世界で俺だけロボット

神無月 紅

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ガリンダミア帝国との決着

385話

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 地上でイルゼンと村長が話しているのは、アランにも分かっていた。
 だが、アランとしてはそちらにばかり意識を集中させることは出来ない。
 いつまた、敵が攻撃をしてくるのか分からないのだから。
 向こうが一体何を考えて単発でしか攻撃をしてこないかのか……もしくは、単発でしか攻撃出来ないのかは、アランにも分からない。
 分からないが、それでもいつまた攻撃をしてくるか分からない以上、いつ攻撃をしてきても対処する必要があった。

「とはいえ、昨日の件を考えると……やっぱり単発でしか攻撃出来ないのか? いやまぁ、こっちとしては、その方が助かるんだが」

 普通に考えた場合、標的にどこからどのように攻撃をするのかが分からない状態というのは、攻撃側にとって一方的に有利な状況だ。
 これはアランとゼオンだからこそ回避出来たことで、もし狙われたのがアラン以外であった場合、一体どうなっていたのか。

(いやまぁ、母さん辺りなら普通に長剣で攻撃を斬り裂いたりしそうだけど)

 普通なら考えられないことではあったが、リアの強さを知るアランにしてみれば、そのような真似が普通に出来てもおかしくはないと、そのように思ってしまうのだ。
 それが実際に出来るかどうかは、また別の話だろうが。
 それ以外にも、父親のニコラスも魔法で同じような真似をしても、おかしくはない。
 アランにとって両親とは、ある意味で転生者である自分より、よっぽどチートな存在に思えてしまう。

(そう考えると、俺の存在って実はそう大したものでもないのかもしれないな)

 そんな風に考え……だが、次の瞬間、再び何かを感じたアランは、ゼオンを動かす。
 ゼオンのいた場所を貫いていく何か。
 予想外……であるが、同時にこうなるような予想をしていたことも事実。
 昨日、一撃だけで未知の攻撃を終え、それ以後全く何の攻撃もなかったのは、翌日の……つまり、今日のこの一撃を狙っていたのだろう。

「やっぱりな!」

 改めて攻撃を回避し、先程の一撃と今の一撃で攻撃をしてきた場所を測定し……

「動いていない?」

 ゼオンの映像モニタに表示された計算結果を見る限り、敵は全く動かないで同じ場所から二度目の攻撃をしてきたという結論になってしまう。
 とはいえ、それはあくまでも予想でしかないのだが。

(問題なのは、射角から相手のいる位置を判明出来たものの、具体的にどのくらいの距離が離れてるのかだよな。……まぁ、いい。今はとにかく、この攻撃をした相手に対処するのが最優先だ)

 そう判断し、アランはビームライフルの銃口を敵がいると思しき方に向け、躊躇することなくトリガーを引く。
 真っ直ぐにビームが伸びて、狙った方に向かう。
 とはいえ、敵が具体的にどこにいるのか……そしてどのような大きさなのか、今の状況では分からない。
 分からない以上、ビームライフルの一撃も決して命中したと、確認は出来ない。

(これがゲームなら、撃破したら撃破したで色々とログが流れたり、点数が入ったりして分かるんだけどな)

 そんな風に考えながらも、今は敵がどう反応しているのかをしっかりと把握する必要があった。
 幸いにも、先程の一撃以降敵は攻撃してこない。
 また、ビームライフルの一撃もそれなりに効果があったのか、こちらの方でもまた反応はなかった。

「さて、どう出る? 今ので撃破されたか、それともまだ生きてるのか」

 普通に考えれば、ビームライフルの一撃が命中していれば、とてもではないが生きているとは思えない。
 だが、未知の攻撃をしてきた相手だ。
 あるいは、未知の防御手段といったようなものがあってもおかしくはない。
 アランとしては、そんな可能性がある以上はここで気を抜くといった真似は到底出来ず、今は敵がどのように反応するのかを待つだけだった。
 ……そんなアランではあったが、地上では当然ながら大きな騒動になっていた。





「ちょっ、おい、あのゴーレム、いきなり光を放ったけど、本当に大丈夫なのか!?」

 ゼオンのビームライフルは、雲海や黄金の薔薇の者達にしてみれば、見慣れた光景だ。
 しかし、それはあくまでも雲海や黄金の薔薇の面々であって、その二つのクランと現在行動を共にしているレジスタンスとなれば、話は違ってくる。
 一応、ガリンダミア帝国軍との戦いに乱入したとき、ゼオンはビーム兵器を使っているのだが、そのときは敵の後方……本隊から遠く離れた場所での出来事であり、決して実戦経験が豊富ではないレジスタンスにしてみれば、自分たちの戦いに夢中でゼオンの行動を見たことがない者もいた。
 また、ゼオンの行動を見ていた者にしても、間近でいきなり何の説明もなくビームライフルを放たれれば、それに驚くなという方が無理だった。
 もっとも、ビームライフルを撃つ以前に空を飛んでいる状態からいきなり強引に動くといったような真似をしていたのも、見ている方にしてみれば驚きだったのだが。
 アランとゼオンだからこそ、未知の敵に攻撃されたというのを理解することが出来た。
 雲海や黄金の薔薇の面々も、ゼオンの動きから何らかの攻撃をされたというのは察知出来ただろう。
 だが、地上にいる多数のレジスタンスたちにしてみれば、ゼオンが攻撃をされたということにすら気が付いてはいなかった。

「落ち着け。ゼオンは現在敵と交戦中だ。俺たちが動揺して、アランの集中を乱すような真似をするな」

 特に動揺の激しいレジスタンスの一人に対し、雲海の探索者がそう声をかける。
 とはいえ、そう声をかけた者も現在どのような状況になっているのか、その全てを完全に理解している訳ではなかったのだが。

「攻撃って……じゃあ、俺達はここにいてもいいのか? 戦闘に巻き込まれるんじゃないか?」

 このままだと危険だ。
 そう思って告げるレジスタンスの男に、雲海の男は首を横に振る。

「あの攻撃はゼオンだけを狙っている。アランもそれが分かっているからこそ、俺たちから離れて行動しているんだしな。それに……あの光を放った以上、敵はすでに撃破されている可能性が高い」

 雲海の探索者は、今まで何度もゼオンの活躍をその目で見ている。
 ゼオンの放つビームライフルは、まさに一撃必殺といった言葉が相応しい実力を持っていた。
 それを思えば、ビームライフルが発射された以上、もう敵が殺されていると言われても納得出来てしまう。

「それは……本当にか?」
「俺が今まで見てきた中で、あの光の攻撃を受けて生きている者はいないな」

 そう断言する探索者に、話していた男も……そして周囲で話を聞いていた者たちも、安堵する。
 そんなやり取りをしている場所から少し離れた場所、イルゼンと村長の会話もまた、終わろうとしていた
 とはいえ、イルゼンとしてはその会話の内容はそこまで利益になるものではない。
 何しろここは田舎の村だ。
 ガリンダミア帝国軍が撤退するときに食料の類を奪ったりといったようなことがなかったので、特に騒動らしい騒動はなかったものの、そんな戦場があまり離れていない場所にあったにもかかわらず、村の住人たちが逃げ出すといったようなことはなかった。
 それは故郷に対する愛情があるというのもあるし、この村を出てどこに行けばいいのかといったことが分からないというのもある。
 実際には、村の住人の中でも他に頼るべき相手がいる者たちはすでに出ていっていたのだが。

「では、こちらはこれで失礼します」

 そうイルゼンは言い、村長に頭を下げる。
 村長にしてみれば、今回の一件はいい迷惑だったのは間違いないだろう。
 とはいえ、イルゼンたちがいなくなってくれるのだから、そういう意味では決して悪い結果という訳ではない。
 去っていくイルゼンの後ろ姿を見送りながら、村長は村人たちに問題は解決したと、そう告げ……村は元の生活に戻るのだった。





「それで、アラン君からは何と?」
「攻撃をしてきた相手のいる場所に攻撃をしたけど、倒したかどうかは分からないということらしいわ」

 リアのその言葉に、イルゼンはそうですかと頷く。

(恐らく敵は透明の射手。だとすれば、ゼオンの攻撃でも倒せているかどうかは微妙なところでしょうね)

 イルゼンはそう考え、先程のゼオンのビームライフルの一撃で敵を倒したのかどうかは微妙なところだろうと判断する。
 透明の射手は、ガリンダミア帝国の中でもそれほど名前を知られていない心核使いだ。
 だが、それは実力がないから名前を知られていないのではなく、正真正銘の切り札だたからこそ、名前を知られていないというのが正しい。
 遠距離からの射撃による奇襲。
 普通ならそのような攻撃に対処するのは難しい。
 そういう意味では、ゼオンが透明の射手に対応出来たのは、イルゼンとしては非常に嬉しい誤算でもあった。

(とにかく、先程の一撃で倒すことは出来ていなくても、ダメージを与えることは出来たと信じましょう。幸いにもアラン君だけを狙っているようなので、あまりこちらに被害がある心配もないでしょうし)

 そう判断したイルゼンは、村から離れて進軍することを皆に説明する。
 レジスタンスの中には、今日はもうこの村で一泊するのでは? と思っていた者もおり、そのような者たちからは不満の声も上がっていたが……まだ夕方までそれなりに時間がある以上、ここでゆっくりするといった選択肢は、イルゼンにはない。
 そもそも、この村はそこまで大きくはない村だ。
 もしこの村に泊まるとしても、宿の類があるかどうかは微妙だし、あってもそこまで大きくない宿だけだろう。
 村の住人の家を借りる、もしくは奪うといったような真似をしなければ、全員が建物の中で眠るといったような真似は出来ない。
 ……いや、それでもレジスタンスの人数を考えると、建物は足りないだろう。
 レジスタンスがガリンダミア帝国の従属国に対して、略奪と言ってもいいようなことをする訳にはいかない。
 そう考えるイルゼンは、すぐにでもこの村から出発することを決め、そんなイルゼンの思惑を理解した者たちもイルゼンの言葉に異を唱えるような真似はせず、イルゼンたちは移動を開始するのだった。
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