剣と魔法の世界で俺だけロボット

神無月 紅

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ガリンダミア帝国との決着

390話

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「ギャアアアアアア!」

 ワイバーンの身体にビームソードを展開したフェルスが複数突き刺さる。
 その痛みに、ワイバーンは悲鳴を上げつつ……

「マジかっ!?」

 身体を複数のフェルスに突き刺さった以上、そのまま地上に向かって落下していく。
 そう思っていたアランだったが、ワイバーンは何本ものフェルスに身体を貫かれつつも、それでも地上に落下することはなく、羽根を羽ばたかせながらゼオンの方に向かってくる。
 フェルスの威力を考えると、アランにとっては信じられない光景だった。
 だが、ワイバーンにとっても、今ここで自分の故国であるガリンダミア帝国を守る必要がある以上、ダメージが大きくてもここで自分が落ちる訳にはいかない。
 ゼオンをこのまま放っておけば、間違いなくガリンダミア帝国に大きな被害をもたらす。
 いや、ガリンダミア帝国ではなく、現在地上で戦っているガリンダミア帝国軍に大きな……それこそ破滅的な被害を受ける可能性は十分に否定出来ない。
 そうである以上、ここで自分が負ける訳には決していけなかった。

「ガアアアアアアアアア!」

 先程の悲鳴と同じような、それでいて全く意味の違う雄叫びを上げる。
 それは衰えそうになる自分の心を鼓舞するかのような、そんな声。
 ゼオンのコックピットの中でそんな声を聞いたアランは、一瞬怯む。
 雄叫び……ただの雄叫びにすぎない。
 それは分かっているのだが、それでも何かをワイバーンから感じたのだ。
 とはいえ、それで怯んだのは一瞬。
 すぐ映像モニタに表示されているワイバーンを睨み、頭部バルカンのトリガーを引く。
 本来であらば、ワイバーンはそんな頭部バルカンの弾丸ですら回避出来るだけの機動力を持っていた。
 しかし、それはあくまでも本来なら……ワイバーンが通常の状態ならの話だ。
 身体中にビームソードを展開したフェルスが突き刺さっている現状では、とてもではないがワイバーンもいつも通りの動きをするような真似は出来ない。
 それでも必死になって回避しようとし……しかし次の瞬間、ワイバーンの右肩の辺りが肉片となった砕け散る。
 当然だが、フェルスは頭部バルカンを発射する直前にアランによってワイバーンから離れていた。
 フェルスの先端に展開しているのが物理的な刃であった場合は、ワイバーンの身体から引き抜くのに時間がかかり、場合によってはフェルスに頭部バルカンの弾丸が命中するといった可能性もあっただろう。
 だが、ビームソードである以上、フェルスは展開しているビームソードを消去すれば、そのまま普通にワイバーンから離れることが出来た。
 ワイバーンも当然それに気が付き、フェルスが消えたことで動こうとしたのだが……それでもフェルスの一撃によって受けたダメージは大きく、痛みによって完全に身体を動かすようなことは出来ず、結果としてワイバーンの右肩は肉片となったのだ。
 地上に向かって降り注ぐ。血と肉と骨と鱗の雨。
 現在ゼオンとワイバーンが戦っていたのは、地上で戦っている者たちから少し離れた場所だ。
 そのおかげで、味方の兵士にそのようなゲテモノの雨を体験させるといったような真似はしなくてすんだのだが、アランはそんなことは関係なくフェルスを自分の後方に戻しつつ、腹部拡散ビーム砲のトリガーを引く。

「食らえ!」

 以前は腹部拡散ビーム砲のビームであっても、容易に回避していたワイバーンだったが、身体中をフェルスのビームソードによって傷つけられ、更には右肩が消滅してしまった今の状態では回避出来ず……それでも地上に降下していなかったのは、ワイバーンの飛行が羽根を使ったものだけではなく、魔力か何かを使ったものだからだろう。
 それでもかろうじて空に浮かんでいるといった様子のワイバーンの身体に、多数のビームが命中する。
 頭部バルカンの弾丸が数発命中しただけで、ワイバーンの右肩は肉片と化した。
 本来ならワイバーンの鱗はその辺の武器で攻撃しても、傷をつけるのはかなり難しいといったくらいの硬さを持っている。
 ……もちろん、達人の一撃であればワイバーンの身体であってもあっさりと斬り裂いたり出来るのだが。
 強靱な防御力を持つワイバーンだったが、それでも頭部バルカンの弾丸を防ぐことは出来なかった。
 であれば、頭部バルカンよりも攻撃力の高いビームを食らえばどうなるか。
 その答えは、身体の半分以上をビームによって消滅させられ、そのまま飛んでいるような真似も出来ず地上に向かって降下していくワイバーンを見れば明らかだった。

「ふぅ……取りあえず、ワイバーンはこれで片付いたな。あとは……うげ」

 うげ、と。アランが思わずそんな声を出してしまった理由は、戦場がかなり複雑になっていたためだ。
 本来なら前線で戦っているガリンダミア帝国軍の後方に向かって攻撃をするつもりだった。
 しかし、ゼオンが空中で戦っている間に一体どのように戦いが進んだか、戦場は完全に敵味方が入り乱れている。

「イルゼンさんや母さんたちがいるのに、なんでこんなことになってるんだ? ……レジスタンスか」

 雲海や黄金の薔薇とそれなりに一緒の時間をすごしたレジスタンスなら、ある程度訓練もされている。
 しかし、そうでないレジスタンス……ガリンダミア帝国の本国に攻め入る頃に合流してきたレジスタンスは、当然ながら訓練不足となるだろうし、連携にかんしても上手くはいかないだろう。
 ましてや、アランも体験したように遅くに合流してきたレジスタンスの中には我の強い者も多く、他人からの指示に従うのを嫌う者が多い。
 そのような理由を考えれば、このようなことになってもおかしくはない。
 おかしくはないが、アランとしては出来れば今この状況でそれが露呈して欲しくなかったと思うのは当然だろう。

「なら、あっちだ!」

 アランが敵の兵力ではなく、敵の兵器に向ける。
 そこでは投石機がすでに何度使われており、現在もまた投石機の発射準備を行っているのが見えた。
 当然ながら投石機で石を飛ばした場合、その着地点にガリンダミア帝国軍の兵士がいれば、潰されてしまう。
 だが、ガリンダミア帝国軍が狙っているのは、ある意味でアランと同じように敵の後方だった。
 ただし、アランほどに正確性は求めておらず、敵の後方を狙いはするが、最悪味方に多少の被害が出ても構わないといった、そんな攻撃。

「これ以上はさせない」

 アランはそう呟き、ビームライフルのトリガーをそちらに向ける。
 先程と同じような状況になっているが、先程と違うのは、ワイバーンがゼオンの攻撃を邪魔するような真似は出来ないということだろう。
 すでにワイバーンは戦力として数えられない。
 いや、それ以前にまだ生きているのかどうかすら微妙なところだった。
 だからこそ、アランは誰に止められるでもなくビームライフルのトリガーを引く。
 銃口から放たれたビームは、一発、二発、三発と連続して射出され、投石機に命中して破壊する。
 当然ながら、投石機がビームライフルの一撃に耐えられるはずもなく、周囲で投石機を操作していた者たち諸共、その生涯を終える。
 そうして連射されたビームライフルによって、全ての投石機が破壊されたのを確認すると、アランは次に狙いを定め……

「は?」

 映像モニタに映された光景に、思わずといったように呟く。
 何故なら、敵の本陣がいきなり逃げ出したからだ。
 それも整然と逃げ出すのではなく、それぞれが好き勝手な動きで。

「いや、それはないだろ? いくら逃げるにしても……」

 そう呟くアランだったが、そうして四散して逃げ出したゆえに、司令官がどこにいるのか分からないし、攻撃をするにも逃げた範囲が広すぎた。
 ある意味、司令官や幹部の類を逃がすという意味では、最善の方法なのかもしれない。
 そんな風に思いつつも、アランはビームヒライフル……ではなく、移動しながら腹部拡散ビーム砲を地上に向けて発射する。
 一撃の威力という点では、ビームライフルが勝る。
 しかし、広範囲に攻撃をするとなると、腹部拡散ビーム砲の方が便利だった。
 とはいえ、それでも四方八方に……それも自分の足で走るのではなく、馬に乗って逃げ出したとなれば、どうしても移動速度は速い。
 攻撃範囲から微妙に外れるようにして逃げている辺り、向こうもゼオンについての情報はもっているのだろう。

「仕方がない。なら、フェルス!」

 腹部拡散ビーム砲を使い、一撃で纏めて倒すのは不可能だと判断したアランは、ゼオンの背後で待機していたフェルスを使う。
 三十基しかない以上、殺せる人数も限られてしまう。
 だが、それでも腹部拡散ビーム砲やビームライフルで攻撃をするよりは、多くを殺せるはずだった。
 それだけではなく、アランはフェルスを操縦しながら逃げているガリンダミア帝国軍の上を飛び、下に向けて頭部バルカンを発射する。
 フェルスよりも威力は低いが、それでも生身の人間であれば一撃で殺すことが出来るような威力を持つ攻撃だ。
 結果として、逃げていくガリンダミア帝国軍の上をアランが通ると、その下では頭部バルカンの弾丸によって、逃げている者たちが肉片となって砕ける。
 そうした後方での出来事は、当然ながら前線で戦っているガリンダミア帝国軍にも影響してくる。
 自分たちの後方で司令官や参謀、騎兵……そんな、軍隊の中でも最重要なはずの者たちがそれぞれ自分勝手に逃げ出しており、その上でゼオンの攻撃によって殺され続けているのだ。
 それを思えば、前線で戦っている者たちも動揺しないはずがない。
 ガリンダミア帝国軍は精鋭ではあるが、だからといって戦っている中で自分たちの後方が攻撃されている状況でも動揺しない訳ではない。
 ……いや、精鋭のガリンダミア帝国軍だからこそ、このような状況であっても前線が崩壊することなく、曲がりなりにも戦い続けることが出来ているのだろう。
 しかし、当然ながらそのような状況でいつもの実力が出せるはずもなく……結果として、勝利の天秤は急速にレジスタンス連合に傾いていくのだった。
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