72 / 76
72話
しおりを挟む
軍隊蟻と白夜の生み出した闇のモンスターの戦いのすぐ側では、トワイライトの面々や麗華、五十鈴が仮面の能力者たちと戦っていた。
今回の戦いの相手は仮面を被った能力者。
仮面を被っている以上、当然のように顔を見るようなことは出来ない。
出来ないのだが……それでも、戦っている者として感じることはある。
(この能力は……日本の能力者では、ない?)
能力者は国によって色々と違う。
正確には、能力そのものは同じであっても、その使い方が違うというのが正しい。
もちろん、その国だけにしか存在しない能力というのもあるのだが。
ともあれ、こうして現在戦っている仮面の能力者たちは、その多くが無理矢理日本風に能力を使っているように、麗華には思えた。
それは何かの証拠があってのものではなく、今のところはあくまでも麗華がそう感じたというだけだ。
だが、仮面を被っている能力者の多くがそのようなタイプであり……何より、麗華がここに来ることになった最大の理由が外国から能力者が日本に密入国しているという情報であった以上、証拠の類はなくても、麗華の中ではすでに目の前の能力者たちが外国人だというのは確定していた。
「貴方たち、日本に不法入国した外国の能力者ですわね!」
叫ぶ麗華の言葉に、仮面の能力者たちは一瞬動きに乱れが出る。
向こうもプロらしく、動きに乱れが出たのは本当に一瞬だったが、それで麗華にとっては十分だった。
「うわ、本当にこっちに来たのね。……麗華の女の勘も大したものね」
麗華と仮面の能力者たちのやり取りを見ていた五十鈴が、感心したように呟く。
白夜を狙って能力者がやってきたというのは聞いていたが、まさかピンポイントでこのようなことになるとは思っていなかったからだ。
とはいえ、五十鈴にとっても白夜というのは大事な相手なのは間違いない。
弟の音也が慕っている相手だし、五十鈴にとっても少し気になる相手ではある。
それだけに、外国がいくら白夜を欲しても、それを認める訳にはいかない。
「貴方たちにとっては、残念な結果になるでしょうね」
光の槍の数を増やしながら、麗華は呟く。
その声が聞こえたわけでもないだろうが、仮面の能力者たちは麗華に向かって一斉に攻撃する。
……ただし、その攻撃は致命傷を与えたり、一撃で麗華の命を奪おうとしているのではなく、手足に傷を付け、動けなくするような攻撃。
麗華を捕らえるために行っている攻撃なのは、明らかだった。
仮面の能力者たちにしてみれば、白夜を捕らえるのはあくまでも次善の策でしかない。
最善なのは、当然のように麗華という人物を捕らえることだった。
だが、光皇院家の令嬢たる麗華は、当然のように周囲の護衛も厳重だ。
その麗華がこうして前線に出てきたのだから、仮面の能力者たちにとって、すでにその目標は白夜から麗華に変わっていた。
能力者としてだけではなく、光皇院家の令嬢でもある麗華だ。
その麗華を捕らえて国に連れ戻ることが出来れば、国が受ける恩恵は計り知れない。
また、非常に希少な光の能力の持つ者として、能力の研究も発展するのは間違いないだろう。
もっとも、純粋に能力の価値という点で考えれば、白夜も決して麗華に負けてはいない。
今はまだ発展途上の能力だったが、それでも一人で戦線を支えることが出来るという白夜の能力は、それこそどの国であっても欲するものだろう。
いや、むしろ国力の小さな国ほど、白夜の能力を欲すると言っても間違いではない。
「……」
仮面の能力者たちが、それぞれ無言で仲間と視線を交わし、意思確認をする。
麗華を確保するのはもちろん、可能であれば……それこそ自分たちの身が危機に瀕しても必ず白夜の身柄を確保すると。
そのためであれば、自分たちが怪我をしても、場合によっては死んでも構わない。
そんな思いで、まずは麗華を捕らえるべく相対する。
「あら、先程までは遠距離から攻撃していたのに、こうして直接目の前に出てきて構わないんですの? いえ、こちらとしては願ったり叶ったりではあるのですが」
腰の鞘からレイピアを抜き、能力を使って遠距離攻撃戦闘だけではなく、近接戦闘にでも対応するように準備をする麗華。
そんな麗華の後ろでは、五十鈴が笑みを浮かべて口を開く。
「向こうの狙いは麗華なんじゃないの? 随分とモテるわね」
「……このような方々にモテても、嬉しくありませんわね」
空気そのものを斬り裂くかのように、素早くレイピアを振るいながら麗華がそう告げるのを、仮面の男たちは少しだけ動揺したように身体を動かす。
本当に微かな動揺だったのだが、麗華や五十鈴が……そして早乙女を始めとするトワイライトの面々が察知するには十分な動き。
(麗華を狙うのか。まぁ、俺がこいつらでも、恐らくそうするだろうな)
早乙女は仮面の男たちの様子を見ながら、そう考える。
麗華を手に入れるということは、それだけ大きな出来事なのだ。
……もちろん、それはあくまでも麗華を捕らえることが出来たらの話であって、麗華ほどの能力者を容易に捕らえられるかどうかとなれば、話は別だが。
ましてや、ここには麗華以外にも五十鈴や早乙女を始めとしたトワイライトの面々もいる。
それを考えれば、麗華を捕らえるなどという真似が容易に出来るはずがない。
(とにかく、今は出来るだけ早くこの連中を倒して、白夜の応援に行く必要がある)
仮面の男たちと向き合っているので、白夜の方に視線を向けるような余裕はない。
だが、聞こえてくる戦闘音は未だに続いており、白夜の生み出す闇のモンスターが軍隊蟻の侵攻を防いでいるのは確実だった。
とはいえ、それがいつまでも続くとは思えない。
ただでさえ、先程まで白夜は疲労困憊といった様子だったのだから。
五十鈴の能力によって多少持ち直し、麗華と五十鈴の攻撃によって軍隊蟻の数が大きく減ったとはいえ、とてもではないが万全の状態ではない。
そうである以上、やはりここは自分たちが少しでも早く仮面の男たちを倒し、その後で白夜を助けに行くというのが最善の行動のはずだった。
「日本の能力者の力を……そして、トワイライトの力を、この連中に見せつけてやれ!」
早乙女のその言葉と共に、能力者同士の戦闘が始まる。
氷の矢が、風の刃が、土の弾丸が……それ以外にも、様々な能力を使った攻撃が放たれる。
とはいえ、既に相手も林から出てきており、そこまで遠くにいる訳ではない。
遠距離や中距離の攻撃をしながら、相手との間合いを詰めていく能力者もいる。
仮面の男達は、トワイライトの面々に対しては足止めだけをして、多くの者が麗華に向かう。
麗華を捕らえるのが最優先なのだから、それは当然だろう。
「私を狙っていますの? ですが、甘く見られては困りますわ!」
鋭く叫び、麗華は自分に向かってきた仮面の男たちに向かって、鋭くレイピアを放つ。
「ぐっ!」
真っ先に突っ込んできた仮面の男の胴体に対し、レイピアはあっさりとその胴体を貫く。
貫かれた仮面の男は、そのような状況であっても何とか自分の身体でレイピアの刃を止めようとしているが、それよりも前に素早く麗華はレイピアを引き抜く。
レイピアで胴体を貫通された能力者は、そのまま地面に膝を突き、それ以上の戦闘は不可能となる。
幾ら能力者たちの士気が高くても、肉体がその思いに答えるかどうかというのは、話が別だ。
ましてや、麗華のレイピアを操る技術は、ゾディアックの名に相応しい代物だ。
続けて二度、三度と別の場所から襲いかかってきた仮面の男たちに向け、次々とレイピアを振るう麗華。
もちろん攻撃手段として使っているのはレイピアだけではなく、麗華の象徴でもある光の能力も存分に使われている。
次々に放たれる光の矢。
先程までの槍ではなく矢になっているのは、一撃の威力よりも連射性を高めたからだろう。
そのうえ、麗華の後ろからは五十鈴による音の能力によって、追撃も放たれる。
仮面の男たちにしてみれば、そのような二人の息の合った攻撃は、厄介以外のなにものでもなかった。
「もう少し、タイミングを考えて下さいまし!」
「何を言ってるのよ、麗華の攻撃のタイミングが遅いんでしょう!?」
……本人たちのやり取りを見る限りでは、とてもそのように息の合った攻撃が出来るとは思えないのだが。
そんな二人に対し、早乙女は何かを言おうとするも……結局口には出さない。
お互いに言い争いをしつつも、十分戦力として考えられると、そう思っているのだろう。
「全員、いつまで時間をかけている! とっととこいつらを倒して、白夜を助けに行くぞ!」
叫び、自分の足止めをしている仮面の能力者に向かって一気に接近する。
その際に進路を麗華たちのいる方に向けたのは、仮面の能力者が自分の攻撃を回避しないようにするためだろう。
もしここで仮面の男が回避しようものなら、そのまま早乙女は麗華たちと合流出来る。
それをさせずに早乙女たちを足止めするためには、どうしても仮面の男たちは回避したりといった真似をせず、ここで迎撃する必要があった。
「させんっ!」
日本語で叫んだ仮面の男だったが、その言葉にはどこか違和感がある。
早乙女はそう気が付いたが、今はそのような細かいことを考えるよりも、麗華たちと合流して仮面の男たちを倒すのが最優先だ。
すぐに仮面の男たちに向かって攻撃する。
当然のように、攻撃するのは早乙女たちだけではなく、他のトワイライトの隊員たちも同様だ。
次から次に放たれる攻撃に、足止めをするための仮面の男たちも防戦一方となり……
「おらぁっ!」
「ぐがっ!」
敵の一瞬の隙を突き、放たれた早乙女の肘が仮面の男の一人に命中する。
それこそ、胴体そのものを破壊されてもおかしくないと思わせる、強力な一撃。
男にとって幸いなことに、どうたいそのものを破壊されるといったことはなかったが、それでも肋骨を折るには十分すぎるだけの一撃。
その上で、折れた肋骨が肺を含めた内臓を傷つけ……仮面の男の一人は、瀕死の重傷と言ってもいい重傷となる。
仲間があっさりと倒され……だが、仮面の男たちが動揺する様子は一切ない。
それこそ、仲間が倒されたという事実がなかったと思わせるような動きで、麗華とい五十鈴に攻撃を集中させる。
……麗華に攻撃していた者の何人かは、早乙女たちを麗華の下に辿り着かせないようにと、足止めに回ったが。
ただ、それは麗華に攻撃を集中している者の数が減ったということを意味する。
「五十鈴、少し大きいのをいきますわよ!」
「やって!」
短い言葉だけでお互いに意思確認し、次の瞬間に仮面の男たちの攻撃が緩んだ隙を突き、麗華が意識を集中させた。
それを見すごすような仮面の男たちではなかったが、今の麗華には五十鈴という仲間がいる。
また、麗華の声が聞こえたトワイライトの面々が、仮面の男たちの隙を作るべく、素早く能力を使った遠距離攻撃を行う。
仮面の男たちも、こうして日本に不法入国して麗華や白夜を連れ去るという任務を受けるような者たちなのだから、当然のように腕は立つ。
だが……数秒にも満たないタイムロスは、この場合大きな意味を持つ。
麗華が集中し、能力を発動させるには十分な時間だった。
「くらいなさい!」
その叫びと共に、周囲一帯が光に襲われ……それこそ、その場にいた者の多くの目が、光によって塗り潰される。
そして数秒後、周囲から光が消えたとき、立っているのは麗華と五十鈴、そして早乙女を始めとするトワイライトの面々のみ。
それ以外の、仮面の男たちは全員が地面に倒れていた。
『うわぁ……』
あまりと言えばあまりの一撃に、トワイライトの何人かが……ついでに五十鈴までもが、呆れたように声を出す。
だが、それを聞いた麗華は、何か? と視線を向ける。
その視線を向けられた者たちが出来るのは、ただそっと視線を逸らすだけだ。
五十鈴のみは、特に気にした様子もなく麗華の視線を真っ正面から受け止めていたが。
「取りあえず、この者たちは片付きましたわね。そうなると、次は……」
五十鈴からの視線を無視することに決めたのか、麗華が次に視線を向けたのは、軍隊蟻と戦っている白夜の方。
そこでは現在、白夜によって生み出された闇のモンスターと軍隊蟻が真っ正面から戦っていた。
ただし、軍隊蟻は死ねば白夜の闇に吸収され、闇のモンスターとして蘇る。
結果として、時間が経てば経つほどに白夜が有利となる。
……あくまでも、白夜の消耗を考えなければ、の話だが。
「五十鈴、行きますわよ。……貴方たちはどうしますか?」
そう尋ねる麗華に、早乙女たちは当然のように助けに行くと、そう断言するのだった。
今回の戦いの相手は仮面を被った能力者。
仮面を被っている以上、当然のように顔を見るようなことは出来ない。
出来ないのだが……それでも、戦っている者として感じることはある。
(この能力は……日本の能力者では、ない?)
能力者は国によって色々と違う。
正確には、能力そのものは同じであっても、その使い方が違うというのが正しい。
もちろん、その国だけにしか存在しない能力というのもあるのだが。
ともあれ、こうして現在戦っている仮面の能力者たちは、その多くが無理矢理日本風に能力を使っているように、麗華には思えた。
それは何かの証拠があってのものではなく、今のところはあくまでも麗華がそう感じたというだけだ。
だが、仮面を被っている能力者の多くがそのようなタイプであり……何より、麗華がここに来ることになった最大の理由が外国から能力者が日本に密入国しているという情報であった以上、証拠の類はなくても、麗華の中ではすでに目の前の能力者たちが外国人だというのは確定していた。
「貴方たち、日本に不法入国した外国の能力者ですわね!」
叫ぶ麗華の言葉に、仮面の能力者たちは一瞬動きに乱れが出る。
向こうもプロらしく、動きに乱れが出たのは本当に一瞬だったが、それで麗華にとっては十分だった。
「うわ、本当にこっちに来たのね。……麗華の女の勘も大したものね」
麗華と仮面の能力者たちのやり取りを見ていた五十鈴が、感心したように呟く。
白夜を狙って能力者がやってきたというのは聞いていたが、まさかピンポイントでこのようなことになるとは思っていなかったからだ。
とはいえ、五十鈴にとっても白夜というのは大事な相手なのは間違いない。
弟の音也が慕っている相手だし、五十鈴にとっても少し気になる相手ではある。
それだけに、外国がいくら白夜を欲しても、それを認める訳にはいかない。
「貴方たちにとっては、残念な結果になるでしょうね」
光の槍の数を増やしながら、麗華は呟く。
その声が聞こえたわけでもないだろうが、仮面の能力者たちは麗華に向かって一斉に攻撃する。
……ただし、その攻撃は致命傷を与えたり、一撃で麗華の命を奪おうとしているのではなく、手足に傷を付け、動けなくするような攻撃。
麗華を捕らえるために行っている攻撃なのは、明らかだった。
仮面の能力者たちにしてみれば、白夜を捕らえるのはあくまでも次善の策でしかない。
最善なのは、当然のように麗華という人物を捕らえることだった。
だが、光皇院家の令嬢たる麗華は、当然のように周囲の護衛も厳重だ。
その麗華がこうして前線に出てきたのだから、仮面の能力者たちにとって、すでにその目標は白夜から麗華に変わっていた。
能力者としてだけではなく、光皇院家の令嬢でもある麗華だ。
その麗華を捕らえて国に連れ戻ることが出来れば、国が受ける恩恵は計り知れない。
また、非常に希少な光の能力の持つ者として、能力の研究も発展するのは間違いないだろう。
もっとも、純粋に能力の価値という点で考えれば、白夜も決して麗華に負けてはいない。
今はまだ発展途上の能力だったが、それでも一人で戦線を支えることが出来るという白夜の能力は、それこそどの国であっても欲するものだろう。
いや、むしろ国力の小さな国ほど、白夜の能力を欲すると言っても間違いではない。
「……」
仮面の能力者たちが、それぞれ無言で仲間と視線を交わし、意思確認をする。
麗華を確保するのはもちろん、可能であれば……それこそ自分たちの身が危機に瀕しても必ず白夜の身柄を確保すると。
そのためであれば、自分たちが怪我をしても、場合によっては死んでも構わない。
そんな思いで、まずは麗華を捕らえるべく相対する。
「あら、先程までは遠距離から攻撃していたのに、こうして直接目の前に出てきて構わないんですの? いえ、こちらとしては願ったり叶ったりではあるのですが」
腰の鞘からレイピアを抜き、能力を使って遠距離攻撃戦闘だけではなく、近接戦闘にでも対応するように準備をする麗華。
そんな麗華の後ろでは、五十鈴が笑みを浮かべて口を開く。
「向こうの狙いは麗華なんじゃないの? 随分とモテるわね」
「……このような方々にモテても、嬉しくありませんわね」
空気そのものを斬り裂くかのように、素早くレイピアを振るいながら麗華がそう告げるのを、仮面の男たちは少しだけ動揺したように身体を動かす。
本当に微かな動揺だったのだが、麗華や五十鈴が……そして早乙女を始めとするトワイライトの面々が察知するには十分な動き。
(麗華を狙うのか。まぁ、俺がこいつらでも、恐らくそうするだろうな)
早乙女は仮面の男たちの様子を見ながら、そう考える。
麗華を手に入れるということは、それだけ大きな出来事なのだ。
……もちろん、それはあくまでも麗華を捕らえることが出来たらの話であって、麗華ほどの能力者を容易に捕らえられるかどうかとなれば、話は別だが。
ましてや、ここには麗華以外にも五十鈴や早乙女を始めとしたトワイライトの面々もいる。
それを考えれば、麗華を捕らえるなどという真似が容易に出来るはずがない。
(とにかく、今は出来るだけ早くこの連中を倒して、白夜の応援に行く必要がある)
仮面の男たちと向き合っているので、白夜の方に視線を向けるような余裕はない。
だが、聞こえてくる戦闘音は未だに続いており、白夜の生み出す闇のモンスターが軍隊蟻の侵攻を防いでいるのは確実だった。
とはいえ、それがいつまでも続くとは思えない。
ただでさえ、先程まで白夜は疲労困憊といった様子だったのだから。
五十鈴の能力によって多少持ち直し、麗華と五十鈴の攻撃によって軍隊蟻の数が大きく減ったとはいえ、とてもではないが万全の状態ではない。
そうである以上、やはりここは自分たちが少しでも早く仮面の男たちを倒し、その後で白夜を助けに行くというのが最善の行動のはずだった。
「日本の能力者の力を……そして、トワイライトの力を、この連中に見せつけてやれ!」
早乙女のその言葉と共に、能力者同士の戦闘が始まる。
氷の矢が、風の刃が、土の弾丸が……それ以外にも、様々な能力を使った攻撃が放たれる。
とはいえ、既に相手も林から出てきており、そこまで遠くにいる訳ではない。
遠距離や中距離の攻撃をしながら、相手との間合いを詰めていく能力者もいる。
仮面の男達は、トワイライトの面々に対しては足止めだけをして、多くの者が麗華に向かう。
麗華を捕らえるのが最優先なのだから、それは当然だろう。
「私を狙っていますの? ですが、甘く見られては困りますわ!」
鋭く叫び、麗華は自分に向かってきた仮面の男たちに向かって、鋭くレイピアを放つ。
「ぐっ!」
真っ先に突っ込んできた仮面の男の胴体に対し、レイピアはあっさりとその胴体を貫く。
貫かれた仮面の男は、そのような状況であっても何とか自分の身体でレイピアの刃を止めようとしているが、それよりも前に素早く麗華はレイピアを引き抜く。
レイピアで胴体を貫通された能力者は、そのまま地面に膝を突き、それ以上の戦闘は不可能となる。
幾ら能力者たちの士気が高くても、肉体がその思いに答えるかどうかというのは、話が別だ。
ましてや、麗華のレイピアを操る技術は、ゾディアックの名に相応しい代物だ。
続けて二度、三度と別の場所から襲いかかってきた仮面の男たちに向け、次々とレイピアを振るう麗華。
もちろん攻撃手段として使っているのはレイピアだけではなく、麗華の象徴でもある光の能力も存分に使われている。
次々に放たれる光の矢。
先程までの槍ではなく矢になっているのは、一撃の威力よりも連射性を高めたからだろう。
そのうえ、麗華の後ろからは五十鈴による音の能力によって、追撃も放たれる。
仮面の男たちにしてみれば、そのような二人の息の合った攻撃は、厄介以外のなにものでもなかった。
「もう少し、タイミングを考えて下さいまし!」
「何を言ってるのよ、麗華の攻撃のタイミングが遅いんでしょう!?」
……本人たちのやり取りを見る限りでは、とてもそのように息の合った攻撃が出来るとは思えないのだが。
そんな二人に対し、早乙女は何かを言おうとするも……結局口には出さない。
お互いに言い争いをしつつも、十分戦力として考えられると、そう思っているのだろう。
「全員、いつまで時間をかけている! とっととこいつらを倒して、白夜を助けに行くぞ!」
叫び、自分の足止めをしている仮面の能力者に向かって一気に接近する。
その際に進路を麗華たちのいる方に向けたのは、仮面の能力者が自分の攻撃を回避しないようにするためだろう。
もしここで仮面の男が回避しようものなら、そのまま早乙女は麗華たちと合流出来る。
それをさせずに早乙女たちを足止めするためには、どうしても仮面の男たちは回避したりといった真似をせず、ここで迎撃する必要があった。
「させんっ!」
日本語で叫んだ仮面の男だったが、その言葉にはどこか違和感がある。
早乙女はそう気が付いたが、今はそのような細かいことを考えるよりも、麗華たちと合流して仮面の男たちを倒すのが最優先だ。
すぐに仮面の男たちに向かって攻撃する。
当然のように、攻撃するのは早乙女たちだけではなく、他のトワイライトの隊員たちも同様だ。
次から次に放たれる攻撃に、足止めをするための仮面の男たちも防戦一方となり……
「おらぁっ!」
「ぐがっ!」
敵の一瞬の隙を突き、放たれた早乙女の肘が仮面の男の一人に命中する。
それこそ、胴体そのものを破壊されてもおかしくないと思わせる、強力な一撃。
男にとって幸いなことに、どうたいそのものを破壊されるといったことはなかったが、それでも肋骨を折るには十分すぎるだけの一撃。
その上で、折れた肋骨が肺を含めた内臓を傷つけ……仮面の男の一人は、瀕死の重傷と言ってもいい重傷となる。
仲間があっさりと倒され……だが、仮面の男たちが動揺する様子は一切ない。
それこそ、仲間が倒されたという事実がなかったと思わせるような動きで、麗華とい五十鈴に攻撃を集中させる。
……麗華に攻撃していた者の何人かは、早乙女たちを麗華の下に辿り着かせないようにと、足止めに回ったが。
ただ、それは麗華に攻撃を集中している者の数が減ったということを意味する。
「五十鈴、少し大きいのをいきますわよ!」
「やって!」
短い言葉だけでお互いに意思確認し、次の瞬間に仮面の男たちの攻撃が緩んだ隙を突き、麗華が意識を集中させた。
それを見すごすような仮面の男たちではなかったが、今の麗華には五十鈴という仲間がいる。
また、麗華の声が聞こえたトワイライトの面々が、仮面の男たちの隙を作るべく、素早く能力を使った遠距離攻撃を行う。
仮面の男たちも、こうして日本に不法入国して麗華や白夜を連れ去るという任務を受けるような者たちなのだから、当然のように腕は立つ。
だが……数秒にも満たないタイムロスは、この場合大きな意味を持つ。
麗華が集中し、能力を発動させるには十分な時間だった。
「くらいなさい!」
その叫びと共に、周囲一帯が光に襲われ……それこそ、その場にいた者の多くの目が、光によって塗り潰される。
そして数秒後、周囲から光が消えたとき、立っているのは麗華と五十鈴、そして早乙女を始めとするトワイライトの面々のみ。
それ以外の、仮面の男たちは全員が地面に倒れていた。
『うわぁ……』
あまりと言えばあまりの一撃に、トワイライトの何人かが……ついでに五十鈴までもが、呆れたように声を出す。
だが、それを聞いた麗華は、何か? と視線を向ける。
その視線を向けられた者たちが出来るのは、ただそっと視線を逸らすだけだ。
五十鈴のみは、特に気にした様子もなく麗華の視線を真っ正面から受け止めていたが。
「取りあえず、この者たちは片付きましたわね。そうなると、次は……」
五十鈴からの視線を無視することに決めたのか、麗華が次に視線を向けたのは、軍隊蟻と戦っている白夜の方。
そこでは現在、白夜によって生み出された闇のモンスターと軍隊蟻が真っ正面から戦っていた。
ただし、軍隊蟻は死ねば白夜の闇に吸収され、闇のモンスターとして蘇る。
結果として、時間が経てば経つほどに白夜が有利となる。
……あくまでも、白夜の消耗を考えなければ、の話だが。
「五十鈴、行きますわよ。……貴方たちはどうしますか?」
そう尋ねる麗華に、早乙女たちは当然のように助けに行くと、そう断言するのだった。
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~
ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。
食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。
最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。
それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。
※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。
カクヨムで先行投稿中!
まずはお嫁さんからお願いします。
桜庭かなめ
恋愛
高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。
4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。
総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。
いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。
デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!
※特別編6が完結しました!(2025.11.25)
※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録、感想をお待ちしております。
罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語
ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。
だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。
それで終わるはずだった――なのに。
ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。
さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。
そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。
由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。
一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。
そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。
罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。
ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。
そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。
これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
強制ハーレムな世界で元囚人の彼は今日もマイペースです。
きゅりおす
SF
ハーレム主人公は元囚人?!ハーレム風SFアクション開幕!
突如として男性の殆どが消滅する事件が発生。
そんな人口ピラミッド崩壊な世界で女子生徒が待ち望んでいる中、現れる男子生徒、ハーレムの予感(?)
異色すぎる主人公が周りを巻き込みこの世界を駆ける!
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…
美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。
※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。
※イラストはAI生成です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる