才能は流星魔法

神無月 紅

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異世界へ

0107話

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 最終的に、黎明の覇者は騎士や兵士たちと本格的な戦いにはならずにドレミナから出ることに成功した。
 ドレミナの住人は一体何があったのかと、そんなことを不思議に思いつつも、黎明の覇者が出ていくのを黙って見送る。
 傭兵の中には自分たちは力があり、その村や街を守っているので横暴に振る舞っても許されると思っているよう者もいるのだが、当然ながらそのような傭兵は住民からは好かれない。
 しかしそんな傭兵たちが多くいる中で、黎明の覇者は違う。
 高ランクの傭兵団だけあって……そして何より、ソフィアやローザを始めとする黎明の覇者のトップが人を見て傭兵団に入れるかどうか決めているのだ。
 黎明の覇者はランクA傭兵団として名高く、その傭兵団に入りたいと希望する者は多い。
 だが、いくら腕が立っても力を傘に乱暴な真似をするような者は傭兵団にはいらない。
 それなら腕はいくらか落ちても、性格に問題のない者を雇うべきという方針だったのだ。
 当然ながら自分の腕だけで世の中を渡ってきた、そして横暴な態度をとってきた者にしてみれば、黎明の覇者の判断基準は決して面白くない。
 そういう意味では、傭兵の中には黎明の覇者を敵視している者も多かったりする。
 元々傭兵という職業そのものが色々と特殊なのだ。
 そうである以上、その中から人格的に良好な者……とまではいかないが、それでもある程度はまともな者を集めている黎明の覇者は、かなり特殊な存在なのだろう。
 もっともそれだけのことが出来たのも、黎明の覇者に入りたいと希望する者が多いからというのは大きな理由になるのだが。
 もし黎明の覇者に入りたいと希望する者が少なければ、それこそここまで人を集めることは出来なかっただろう。
 それが出来たのは、やはりソフィアの持つ圧倒的な力と、その美貌を含めたカリスマ性によるものなのは明らかだった。

「厄介ね」

 馬車に乗っていた移動していたイオだったが、ローザのその言葉にどうしたのかと視線を向ける。
 なお、この馬車に乗っているのは最初と同じくイオ、レックス、ソフィア、ローザの四人だけだ。

「どうしたんです?」

 イオのその問いに、厄介だと呟いたローザではなくソフィアが口を開く。

「あの騎士たちは私たちを通したけど、後ろから追ってきているのよ」

 その言葉に馬車の窓から後ろの方を見るが、そこには黎明の覇者の馬車しか見えない。
 イオたちの乗っている馬車は黎明の覇者の中で最後尾に位置する訳ではなく中央に位置しており、周囲には黎明の覇者の馬車がいるのだから当然の話だった。
 イオの乗っている馬車は、今回の最大の争点である流星魔法の使い手のイオ、黎明の覇者を率いているソフィア、実質的に副団長的な立場にいるローザと、現在の重要人物が揃っている。
 そうである以上、そのような馬車が最後尾にいるということはまず考えられない。
 いざ戦いが始まったとき、最後尾にいればどうしても状況の把握が一歩遅れるし、指示を出すのも同様だった。
 もっとも黎明の覇者の傭兵たちは精鋭揃いだ。
 上からの指示がなくても、自分たち最善だと思う行動をする。
 そういう意味では、指示を出すのに一歩遅れるというのはそこまで気にする必要はないのだろう。
 だが、他にも最後尾にいれば背後から敵に襲撃されたとき、真っ先に狙われてしまう。
 ……こちらもソフィアやローザといった凄腕がいるのだから、本当の意味で心配する必要はないのかもしれないが。
 しかし、それでも最終的には中央付近にいるのが一番都合がよく……だからこそ、イオが背後を見ても敵の姿を確認することは出来なかったのだ。
 しかし、そうなると何故ソフィアやローザたちは後ろを見ることが出来ないのに、その辺りについて知ることが出来たのか。

(多分、気配とかそういうのなんだろうな)

 イオもその辺りについては何とか習得しようとしているものの、そう簡単に習得は出来ない。
 そもそも日本にいたとき、気配を察知するといったようなことは出来なかった……それこそ漫画やアニメ、ゲームの世界の話でしか、そのようなものは存在していなかった。
 ……いや、あるいはイオが知らないだけで日本……もしくは地球にも気配を察知したりといったようなことが出来る者がいた可能性はあるのだが。
 ただ、残念ながらイオは日本においてそのようなことが出来るというのは知らなかった。

「それで、後ろから追ってきてる連中はどうするんですか? どこまでついてくるのか分かりませんけど」
「多分、私たちがどこにいくのかを確認しにきたんでしょうね。もっとも結構な人数で来てるし、そう考えると実際には牽制的な意味合いの方が強いんでしょうけど」

 イオの問いにソフィアがそう答える。
 ローザもソフィアの意見には賛成なのか、頷いていた。

「牽制ですか? でも……その騎士や兵士がドレミナから離れてもいいんですか?」
「上からの命令なのだから、その辺は問題ないんでしょう。実際に向こうがどう考えてこのような行動をしているのかは、分からないけど」
「もう俺が流星魔法を使うというのは知られているみたいですし、ドレミナから出てある程度距離をとったら、メテオを使いますか? もちろん、命中させるじゃなくて威嚇という感じで」

 イオが街中でメテオを……そしてミニメテオを使わなかったのは、周辺の被害が大きくなるというのと、それ以上にドレミナの住人を混乱させないためというのが大きい。
 街中であっても、対個人用のミニメテオ程度であれば使おうと思えば普通に使えた。
 そのような真似をしなかったのは、あくまでも住人が混乱することによってパニックにならないようにという思いかだ。
 だが、狙うべき対象が自分からドレミナから離れてくれるというのなら、脅しとしてメテオを使うくらいは普通に出来る。
 そして脅しのメテオを使っても逃げ出さないようなら、それこそ最終手段として本当の意味で放ったメテオをぶつければいいだろう。
 イオとしては、正直なところそこまでやりたくはない。

(出来れば、俺たちがドレミナからきちんと離れたと判断してそのまま戻ってくれないかな。そうすれば、こっちとしても色々と楽なんだけど)

 ソフィアの言うように、ドレミナから出た自分たちがどこに行くのかを確認と牽制なら、前者だけに専念して欲しいと思う。
 実際に追ってきているという者たちがどこまでその辺りについて考えているのかは、生憎とイオにも分からない。
 しかし、ソフィアの力を見て……そしてイオの流星魔法についての情報を知っていれば、自分たちのやっているのが自殺行為であるというのは十分に理解出来るだろう。
 現在こうして追ってきている者たちがそれを理解出来ているのかどうかは、どうなのか。
 ソフィアと戦った……あるいは一方的に蹂躙された騎士は、自分たちがやられてもそれを受け入れるといったつもりがあるのは間違いなかった。
 しかし、それ以外の者たちまでもが同じ思いを抱いているのかは分からない。
 分からないからこそ、イオは提案する。

「やっぱりドレミナからある程度離れたところで敵が攻撃してきたら、メテオを使って脅しの一撃を使ってみた方がよくないですか?」
「そうね。……お願いするわ」

 イオの提案に少し考えつつ、やがてソフィアはそう頷く。
 ソフィアにしても、今回のような一件には色々と思うところがあるのだろう。
 しかし、色々と思うところはあれれども、それに対応しない訳にはいかない。
 追ってくる騎士たちには思うところはないものの、その上司……恐らく命令を下しているのだろう領主に対しては、思うところがあるのだから。
 それもちょっとやそっとではなく、かなり。

「そう言えば、私はメテオを間近で見るのは初めてね」

 馬車の中の雰囲気を変えようと思ったのか、ローザがそう呟く。
 それは馬車の中の雰囲気を変えようと思ってのものだったのは間違いないが、間違いなく本心でもあった。
 もちろん、ゴブリンの軍勢の件も、ベヒモスの件も……そのあとで起こった各勢力との戦いでも、ドレミナからなら振ってくる隕石を見ることが出来たのは間違いない。
 しかし、それはあくまでも現場……実際に隕石が落ちた間近で見たのではなく、ドレミナから見たのだ。
 そういう意味では、まだローザが間近で天から振ってくる隕石を見たことがないのは間違いない。
 ……普通に生活していれば、そもそも降ってくる隕石を見るといったようなことは一生に一度あるかないかなのだが。
 しかし、そこに流星魔法の使い手がいれば話は別だった。
 それこそ流星魔法を使えば、いつでも隕石を見ることが出来るのだから。

「そう言えば……」

 ローザの様子から、ソフィアもまた話題を変えて口を開く。

「イオが使うメテオだと、隕石が大きすぎて鍛冶師に隕石を売ることが出来ないというのがあったけど、ミニメテオなら隕石も小さいし、鍛冶師に売るようなことも出来るんじゃない?」
「それは……そうですね。ただ、実際に流星魔法を使っている俺が言うのも何ですが、ミニメテオで降ってくる隕石というのはどこか未熟な感じがするんですよ」
「隕石が未熟?」

 その表現は理解出来ないといった様子のソフィア。
 いや、ソフィアだけではない。ローザやレックスもまた、イオが何を言ってるのか分からないといった表情を浮かべている。
 当然だろう隕石の大小といった表現であれば、まだ何を言ってるのかも分かる。
 だが、隕石が未熟というのは一体どういう表現なのか。
 しかしイオにしてみれば、やはり隕石が未熟という表現の方が相応しいと思えるのだ。
 ミニメテオで降ってくる隕石は、小さいというよりは未熟と……まだ熟していない果実といったような、そんな印象。
 とはいえ、それはあくまでもイオがそのように感じているというだけでしかない。
 実際に隕石をどのように感じるのかは、それこそ個人によって違う。

「うーん……取りあえずイオが何を言いたいのかはちょっと分からないけど、ミニメテオで降ってくる隕石は未熟だから鍛冶には使えないということでいいのかしら?」
「どうでしょう? その辺は実際に鍛冶師に試して貰った方がいいかと」

 背後から追ってくる騎士や兵士たちを警戒しながらも、そんな風に会話を続けるのだった。
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