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異世界へ
0133話
「ここで待っていて欲しい」
グラストがそう言ったのは、領主の館にある客室。
それも複数あるだろう客室の中でも最上級と思しき客室だった。
そんな客室の中で、イオはソフィアたちと共にソファに座ると周囲の様子を見る。
何かあったらすぐに対処出来るようにという思いからの行動だったのだが、ソフィアや他にも黎明の覇者の傭兵が一緒にいる以上、もしここで待ち伏せをされている……ということがあれば、それこそイオよりも先に気が付くだろう。
本来なら領主の館に入るときは武器を預けるのが普通だろう。
しかし、イオたちの立場は今回ドレミナ側よりも強い。
また、グラストもイオたちを害するつもりはないということで、全員が武器を手にしたままここにいる。
……イオが手にしている杖は、当然のようにゴブリンの軍勢から入手した杖だ。
今までの経験から考えると、ミニメテオは普通に使えるものの、メテオを使った場合はほぼ間違いなく壊れるだろう。
もっともここで使うようなことになった場合、領主の館だけではなく自分もまた隕石が落下した衝撃に巻き込まれるだろうが。
「いい部屋ね。随分と私たちに気を遣ってるみたいだけど……これはグラストの判断かしら? それとも、ドレミナの上層部の判断?」
「もちろん、上層部の判断に決まっている」
そう言うグラストだったが、一瞬動揺したのがソフィアには分かった。
この客室を用意されたことや、他にも自分を迎えたのはグラストだけだったことを考えると、恐らくグラストは嘘を吐いているのだろうと予想するのは難しい話ではない。
とはいえ、だからといってここで本当にどうなったのかといったようなことを聞くつもりもソフィアにはなかったが。
グラストが自分たちと交渉をした件について、上層部の方で納得してないというのも理解は出来るのだ。
「それで、具体的にはいつくらいになったら私たちはグラストの上司と面会出来るのかしら? それとも、ダーロット殿が来るまでここで待ってるとか?」
自分に言い寄ってくるダーロットのことは決して好んでいないソフィアだが、それでもまさかグラストの前でダーロットの名前を呼び捨てには出来ない。
本心では呼び捨てどころか、もっと酷い呼び名を口にしたいと考えているのだが。
しかし、ソフィアがその思いを表情に出すような真似はしない。
ソフィアも黎明の覇者という傭兵団を率いる人物だ。
何よりその美貌で今まで多くの者たちからちょっかいを出されてきたこともある。
だからこそ、今のこの状況で自分の素直な感情を表に出すような真似はせず、数匹の猫を被って取り澄ましたように尋ねることが出来た。
「いや、ダーロット様はともかく、私の上司の件はそう時間はかからない。恐らくもうすぐ……」
そうグラストが口にしたとき、タイミングよく扉がノックされる音が部屋の中に響く。
「どうやら来たようだな。少し待っていてくれ。話を聞いてくる」
グラストはソフィア達にその場で待つように告げると、扉を開く。
そこにいたのは、同僚の騎士の一人。
扉でソフィアたちにはその騎士の顔は見えなかったが、もし見えていればその騎士の顔に見覚えがあっただろう。
グラストと共に和平交渉に来た騎士の一人だったのだから。
和平交渉に行って、その結果としてマジックバッグを渡すことになってしまったことで、上司からはグラストと一纏めにして邪魔者的な扱いになっているのだろう。
そんな騎士と少し話すと、グラストはすぐ部屋の中に戻ってくる
「どうやら準備が出来たらしい。これからすぐ面会に向かうことになるが、構わないか?」
「ええ、問題ないわよ。私の方も面会が終われば色々とやることがあるから、こういうのは早く終わった助かるし」
「分かった。なら行こう」
そう言い、グラストはソフィアたちを目的の場所に案内するのだった。
「ようこそ、黎明の覇者の団長ソフィア殿。今回は色々と誤解が重なってお互いに不幸なことになったが、その誤解は今回の件で解けたようなので、嬉しく思うよ。私は騎士団長のサーゼス。こっちは副騎士団長のドルトンとガスタークだ」
そう言ってきたのは、見るからに鍛えられた身体をしている男。
その横にはこちらも同様に二人の男たちの姿があった。
騎士団長……サーゼスの言葉に合わせて、副騎士団長のドルトンとガスタークが頭を下げる。
「あら? ……いえ、当然かしら。もう知ってるようだけど、私は黎明の覇者を率いるソフィアよ。こっちはイオ。他は……護衛だから、気にしないでちょうだい」
部屋の中にいた三人を見て、ソフィアは少しだけ驚きつつも自己紹介をする。
……だが、むしろソフィアよりも驚いていたのはグラストの方だった。
本来なら、ここには騎士団長や副騎士団長たちだけではなく、役人もいるということになっていたのだ。
だというのに、この部屋の中にいるのは三人だけ。
一体何がどうなってこうなったのかと疑問に思ってもおかしくはないだろう。
ソフィアも当然グラストの様子に気が付いてはいたが、それを表情には出さない。
副騎士団長の一人、ドルトンがグラストに視線を向けて、それによって具体的に何がどうなってこうなったのか……視線だけでそれを示す。
ドルトンのそんな視線に、グラストも少しだけ落ち着いた様子を見せる。
そして何故このようなことになったのか……その意味を理解した。
(逃げやがったな)
表情には出さないようにしながら、忌々しげな様子でグラストが内心で呟く。
そう、ここに役人たちがいない理由は、ソフィアたちと会うのも嫌だといったような思いから、逃げ出したのだとドルトンの視線で理解したのだ。
「それで、貴方たからマジックバッグを貰えばいいのかしら?」
「いや、マジックバッグにかんしては、ダーロット様が直接持ってくる。……そちらが要求した一つだけなら騎士団の所有する物を引き渡せばそれで問題はないが、もう一つはダーロット様が個人で持ってる物だからな」
騎士団用のマジックバッグだけなら、サーゼスが言うように騎士団が持っているマジックバッグを渡せばいい。
しかしソフィアたちが欲したのは、あくまでもダーロットが個人的に入手したマジックバッグだった。
騎士団が使うのではなく、あくまでもダーロットが個人で使うために入手したマジックバッグだからこそ、コスト度外視……とまではいかないが、コストについてはそこまで考えるようなこともなく入手することが出来たのだろう。
……もっとも、そうして苦労して入手したマジックバッグをソフィアたちに引き渡すことになるとは、ダーロットも思ってもいなかっただろうが。
「そうなの? なら、この席は何のために用意されたのかしら? マジックバッグを引き渡すまでは、私たちを待たせておいた方がよかったんじゃない? それとも……ダーロット殿の前では何か話にくいようなことでもあるのかしら」
「少し違うな。マジックバッグについての話をするというのもあったが、それとは別に話しておきたいことがあった」
「それは、何かしら?」
そう尋ねるソフィアだったが、その先の言葉は大体予想出来た。
具体的にどういう内容なのかまでは分からない。
だが、街中にる兵士たちの様子や傭兵団を率いる自分にこうしてマジックバッグの件とは別で話を持ちかけてくるのだ。
その辺りについて想像するのは、そう難しい話ではない。
「うむ。グラストから聞いていると思うが、街中で黎明の覇者を襲ったのはダーロット様の命令ではない。つまり、その命令を出した者がいる。……ダーロット様ではない貴族と繋がっている者がな」
「つまり、その貴族と戦争になるから、私たち黎明の覇者を雇いたいと?」
単刀直入に、話の要点を口にするソフィア。
そんなソフィアの様子に少しだけ驚いた様子を見せるサーゼスだったが、すぐに頷く。
サーゼスとしても、話が進むのは早い方がいい。
ここでソフィアがこうして直接的に言ってくるのなら、それに乗った方がいいと思ったのだろう。
「そうなる。黎明の覇者は単純に戦力としても非常に頼りになるし、傭兵としては義理堅いと聞いている」
傭兵の中には、それこそ雇われている方が危なくなった場合はすぐその場から逃げ出すといった者もいる。
そんな中で、黎明の覇者は……というか、ランクの高い傭兵団はそのような真似はしない。
そもそも戦闘中に逃げたり、あるいは裏切って敵に味方をしたりといったようなことをする者は、ギルドの方でランクが上げて貰えない。
そのような義理堅さもまた、傭兵として活動していく上で必須のものなのだ。
「評価してくれて嬉しいわ。けど……もしかして、その戦いの報酬としてマジックバッグを渡すなんてことは言わないわよね?」
笑みを浮かべつつ、その視線だけは鋭くソフィアが言う。
ソフィアの視線の鋭さは、騎士団長として多くの経験をしてきたサーゼスにとっても息を呑むほどだった。
副騎士団長の二人もまた、騎士団長以上にその視線の鋭さに驚く。
もっとも、驚いた理由のいくつかはソフィアの視線の鋭さもそうだが、当初役人が考えていた考えを見抜いたからというのもある。
ソフィアにしてみれば、黎明の覇者として今まで多くの依頼を受けて戦場を駆けてきた。
その中にはいざ報酬を支払うといったときに、それを勿体なく思って色々と企んだ者も少なくない。
単純に黎明の覇者を殺してしまえばいいと、自分の持つ戦力でどうにかしようとした者。
パーティに誘い、酒や料理の中に毒を入れて殺そうとした者。
黎明の覇者に恨みを持っている相手に情報を流し、その者たちに殺させようとした者。
それ以外にも多数の企みを回避し、あるいは食い破ってきたのがソフィアだ。
ドレミナの役人が考えるようなことを予想するのは難しい話ではなかった。
そうしたソフィアの言葉を聞いたグラストは、安堵する。
もし役人の思い通りになっていたら、間違いなく不味いことになっていたと。
そう理解したからだ。
「もちろん、そのようなことは考えていない。マジックバッグは今日支払う。グルタス伯爵の一件は、別に報酬を支払うことになるだろう」
サーゼスのその言葉に、ソフィアは視線の力を緩めるのだった。
グラストがそう言ったのは、領主の館にある客室。
それも複数あるだろう客室の中でも最上級と思しき客室だった。
そんな客室の中で、イオはソフィアたちと共にソファに座ると周囲の様子を見る。
何かあったらすぐに対処出来るようにという思いからの行動だったのだが、ソフィアや他にも黎明の覇者の傭兵が一緒にいる以上、もしここで待ち伏せをされている……ということがあれば、それこそイオよりも先に気が付くだろう。
本来なら領主の館に入るときは武器を預けるのが普通だろう。
しかし、イオたちの立場は今回ドレミナ側よりも強い。
また、グラストもイオたちを害するつもりはないということで、全員が武器を手にしたままここにいる。
……イオが手にしている杖は、当然のようにゴブリンの軍勢から入手した杖だ。
今までの経験から考えると、ミニメテオは普通に使えるものの、メテオを使った場合はほぼ間違いなく壊れるだろう。
もっともここで使うようなことになった場合、領主の館だけではなく自分もまた隕石が落下した衝撃に巻き込まれるだろうが。
「いい部屋ね。随分と私たちに気を遣ってるみたいだけど……これはグラストの判断かしら? それとも、ドレミナの上層部の判断?」
「もちろん、上層部の判断に決まっている」
そう言うグラストだったが、一瞬動揺したのがソフィアには分かった。
この客室を用意されたことや、他にも自分を迎えたのはグラストだけだったことを考えると、恐らくグラストは嘘を吐いているのだろうと予想するのは難しい話ではない。
とはいえ、だからといってここで本当にどうなったのかといったようなことを聞くつもりもソフィアにはなかったが。
グラストが自分たちと交渉をした件について、上層部の方で納得してないというのも理解は出来るのだ。
「それで、具体的にはいつくらいになったら私たちはグラストの上司と面会出来るのかしら? それとも、ダーロット殿が来るまでここで待ってるとか?」
自分に言い寄ってくるダーロットのことは決して好んでいないソフィアだが、それでもまさかグラストの前でダーロットの名前を呼び捨てには出来ない。
本心では呼び捨てどころか、もっと酷い呼び名を口にしたいと考えているのだが。
しかし、ソフィアがその思いを表情に出すような真似はしない。
ソフィアも黎明の覇者という傭兵団を率いる人物だ。
何よりその美貌で今まで多くの者たちからちょっかいを出されてきたこともある。
だからこそ、今のこの状況で自分の素直な感情を表に出すような真似はせず、数匹の猫を被って取り澄ましたように尋ねることが出来た。
「いや、ダーロット様はともかく、私の上司の件はそう時間はかからない。恐らくもうすぐ……」
そうグラストが口にしたとき、タイミングよく扉がノックされる音が部屋の中に響く。
「どうやら来たようだな。少し待っていてくれ。話を聞いてくる」
グラストはソフィア達にその場で待つように告げると、扉を開く。
そこにいたのは、同僚の騎士の一人。
扉でソフィアたちにはその騎士の顔は見えなかったが、もし見えていればその騎士の顔に見覚えがあっただろう。
グラストと共に和平交渉に来た騎士の一人だったのだから。
和平交渉に行って、その結果としてマジックバッグを渡すことになってしまったことで、上司からはグラストと一纏めにして邪魔者的な扱いになっているのだろう。
そんな騎士と少し話すと、グラストはすぐ部屋の中に戻ってくる
「どうやら準備が出来たらしい。これからすぐ面会に向かうことになるが、構わないか?」
「ええ、問題ないわよ。私の方も面会が終われば色々とやることがあるから、こういうのは早く終わった助かるし」
「分かった。なら行こう」
そう言い、グラストはソフィアたちを目的の場所に案内するのだった。
「ようこそ、黎明の覇者の団長ソフィア殿。今回は色々と誤解が重なってお互いに不幸なことになったが、その誤解は今回の件で解けたようなので、嬉しく思うよ。私は騎士団長のサーゼス。こっちは副騎士団長のドルトンとガスタークだ」
そう言ってきたのは、見るからに鍛えられた身体をしている男。
その横にはこちらも同様に二人の男たちの姿があった。
騎士団長……サーゼスの言葉に合わせて、副騎士団長のドルトンとガスタークが頭を下げる。
「あら? ……いえ、当然かしら。もう知ってるようだけど、私は黎明の覇者を率いるソフィアよ。こっちはイオ。他は……護衛だから、気にしないでちょうだい」
部屋の中にいた三人を見て、ソフィアは少しだけ驚きつつも自己紹介をする。
……だが、むしろソフィアよりも驚いていたのはグラストの方だった。
本来なら、ここには騎士団長や副騎士団長たちだけではなく、役人もいるということになっていたのだ。
だというのに、この部屋の中にいるのは三人だけ。
一体何がどうなってこうなったのかと疑問に思ってもおかしくはないだろう。
ソフィアも当然グラストの様子に気が付いてはいたが、それを表情には出さない。
副騎士団長の一人、ドルトンがグラストに視線を向けて、それによって具体的に何がどうなってこうなったのか……視線だけでそれを示す。
ドルトンのそんな視線に、グラストも少しだけ落ち着いた様子を見せる。
そして何故このようなことになったのか……その意味を理解した。
(逃げやがったな)
表情には出さないようにしながら、忌々しげな様子でグラストが内心で呟く。
そう、ここに役人たちがいない理由は、ソフィアたちと会うのも嫌だといったような思いから、逃げ出したのだとドルトンの視線で理解したのだ。
「それで、貴方たからマジックバッグを貰えばいいのかしら?」
「いや、マジックバッグにかんしては、ダーロット様が直接持ってくる。……そちらが要求した一つだけなら騎士団の所有する物を引き渡せばそれで問題はないが、もう一つはダーロット様が個人で持ってる物だからな」
騎士団用のマジックバッグだけなら、サーゼスが言うように騎士団が持っているマジックバッグを渡せばいい。
しかしソフィアたちが欲したのは、あくまでもダーロットが個人的に入手したマジックバッグだった。
騎士団が使うのではなく、あくまでもダーロットが個人で使うために入手したマジックバッグだからこそ、コスト度外視……とまではいかないが、コストについてはそこまで考えるようなこともなく入手することが出来たのだろう。
……もっとも、そうして苦労して入手したマジックバッグをソフィアたちに引き渡すことになるとは、ダーロットも思ってもいなかっただろうが。
「そうなの? なら、この席は何のために用意されたのかしら? マジックバッグを引き渡すまでは、私たちを待たせておいた方がよかったんじゃない? それとも……ダーロット殿の前では何か話にくいようなことでもあるのかしら」
「少し違うな。マジックバッグについての話をするというのもあったが、それとは別に話しておきたいことがあった」
「それは、何かしら?」
そう尋ねるソフィアだったが、その先の言葉は大体予想出来た。
具体的にどういう内容なのかまでは分からない。
だが、街中にる兵士たちの様子や傭兵団を率いる自分にこうしてマジックバッグの件とは別で話を持ちかけてくるのだ。
その辺りについて想像するのは、そう難しい話ではない。
「うむ。グラストから聞いていると思うが、街中で黎明の覇者を襲ったのはダーロット様の命令ではない。つまり、その命令を出した者がいる。……ダーロット様ではない貴族と繋がっている者がな」
「つまり、その貴族と戦争になるから、私たち黎明の覇者を雇いたいと?」
単刀直入に、話の要点を口にするソフィア。
そんなソフィアの様子に少しだけ驚いた様子を見せるサーゼスだったが、すぐに頷く。
サーゼスとしても、話が進むのは早い方がいい。
ここでソフィアがこうして直接的に言ってくるのなら、それに乗った方がいいと思ったのだろう。
「そうなる。黎明の覇者は単純に戦力としても非常に頼りになるし、傭兵としては義理堅いと聞いている」
傭兵の中には、それこそ雇われている方が危なくなった場合はすぐその場から逃げ出すといった者もいる。
そんな中で、黎明の覇者は……というか、ランクの高い傭兵団はそのような真似はしない。
そもそも戦闘中に逃げたり、あるいは裏切って敵に味方をしたりといったようなことをする者は、ギルドの方でランクが上げて貰えない。
そのような義理堅さもまた、傭兵として活動していく上で必須のものなのだ。
「評価してくれて嬉しいわ。けど……もしかして、その戦いの報酬としてマジックバッグを渡すなんてことは言わないわよね?」
笑みを浮かべつつ、その視線だけは鋭くソフィアが言う。
ソフィアの視線の鋭さは、騎士団長として多くの経験をしてきたサーゼスにとっても息を呑むほどだった。
副騎士団長の二人もまた、騎士団長以上にその視線の鋭さに驚く。
もっとも、驚いた理由のいくつかはソフィアの視線の鋭さもそうだが、当初役人が考えていた考えを見抜いたからというのもある。
ソフィアにしてみれば、黎明の覇者として今まで多くの依頼を受けて戦場を駆けてきた。
その中にはいざ報酬を支払うといったときに、それを勿体なく思って色々と企んだ者も少なくない。
単純に黎明の覇者を殺してしまえばいいと、自分の持つ戦力でどうにかしようとした者。
パーティに誘い、酒や料理の中に毒を入れて殺そうとした者。
黎明の覇者に恨みを持っている相手に情報を流し、その者たちに殺させようとした者。
それ以外にも多数の企みを回避し、あるいは食い破ってきたのがソフィアだ。
ドレミナの役人が考えるようなことを予想するのは難しい話ではなかった。
そうしたソフィアの言葉を聞いたグラストは、安堵する。
もし役人の思い通りになっていたら、間違いなく不味いことになっていたと。
そう理解したからだ。
「もちろん、そのようなことは考えていない。マジックバッグは今日支払う。グルタス伯爵の一件は、別に報酬を支払うことになるだろう」
サーゼスのその言葉に、ソフィアは視線の力を緩めるのだった。
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※この小説はカクヨム様でも連載しています。アルファポリス様とカクヨム様以外の場所では公開しておりません。