53 / 55
オマケ回・王子の暗躍1
しおりを挟む
謁見の間、王座ではその主が険しい顔で拳を握っていた。
「何故、アンデッドに関する研究を発表したんだ! あれだけ隠せといったはずだ!」
「けれど、貴方、その研究のおかげで治癒空間は完成したじゃない。なにも恥ずべきものではないわ」
美貌を歪め、首を振るのは王妃だった。彼女は伴侶たる王の言い付けを破ったのだ。それは愛する子の為。その成果を、真っ当に評価してもらいたいが故だった。
しかし、王は握った拳で肘掛けを打つ。嘆くような表情を浮かべた。
「それは結果論だろう。アイツはなにも治癒空間の為に不死の怪物なんか調べていたわけじゃない。不死の怪物事態に興味があったんだ。現に、あの悍ましいものをいくつも生み出したじゃないか」
「だけど、悪いことをしているわけではないわ! アンデッドだって人間よりも有能な兵となるはずだと、あの子は確かに言っていたもの」
「お前はアイツに肩入れをし過ぎた。墓を掘り返したり、死者の肉体を集めたり、あまつさえそれを魔術で操るなどは常軌を逸している。どう考えても頭のおかしな奴がすることだ」
「貴方!」
我が子になんてことをいうの! そう王妃は声を荒げた。しかし今度は王が宥めるような声を出す。
「いいか、アイツは暫く西棟に幽閉する」
「そんな、幽閉だなんて……! まだ、あの子は八つですよ⁉︎」
「歳は関係ない。アレは十分な危険を孕んだ隔離対象だ」
「ユーリはそんな子じゃ――」
「控えろ! 全く、地下室など与えるんじゃなかった。あそこもアイツを中に入れたら、どうにかせねばならん」
怒鳴りをあげてブツブツ文句呟くと、丁度、扉前の家臣が声を上げた。
「陛下、ユーリ様がいらっしゃいました」
「通せ」
よく通る声が広い間に響き、大きな扉から小さなユーリが現れた。
「何故、アンデッドに関する研究を発表したんだ! あれだけ隠せといったはずだ!」
「けれど、貴方、その研究のおかげで治癒空間は完成したじゃない。なにも恥ずべきものではないわ」
美貌を歪め、首を振るのは王妃だった。彼女は伴侶たる王の言い付けを破ったのだ。それは愛する子の為。その成果を、真っ当に評価してもらいたいが故だった。
しかし、王は握った拳で肘掛けを打つ。嘆くような表情を浮かべた。
「それは結果論だろう。アイツはなにも治癒空間の為に不死の怪物なんか調べていたわけじゃない。不死の怪物事態に興味があったんだ。現に、あの悍ましいものをいくつも生み出したじゃないか」
「だけど、悪いことをしているわけではないわ! アンデッドだって人間よりも有能な兵となるはずだと、あの子は確かに言っていたもの」
「お前はアイツに肩入れをし過ぎた。墓を掘り返したり、死者の肉体を集めたり、あまつさえそれを魔術で操るなどは常軌を逸している。どう考えても頭のおかしな奴がすることだ」
「貴方!」
我が子になんてことをいうの! そう王妃は声を荒げた。しかし今度は王が宥めるような声を出す。
「いいか、アイツは暫く西棟に幽閉する」
「そんな、幽閉だなんて……! まだ、あの子は八つですよ⁉︎」
「歳は関係ない。アレは十分な危険を孕んだ隔離対象だ」
「ユーリはそんな子じゃ――」
「控えろ! 全く、地下室など与えるんじゃなかった。あそこもアイツを中に入れたら、どうにかせねばならん」
怒鳴りをあげてブツブツ文句呟くと、丁度、扉前の家臣が声を上げた。
「陛下、ユーリ様がいらっしゃいました」
「通せ」
よく通る声が広い間に響き、大きな扉から小さなユーリが現れた。
13
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
婚約解消されたら隣にいた男に攫われて、強請るまで抱かれたんですけど?〜暴君の暴君が暴君過ぎた話〜
紬あおい
恋愛
婚約解消された瞬間「俺が貰う」と連れ去られ、もっとしてと強請るまで抱き潰されたお話。
連れ去った強引な男は、実は一途で高貴な人だった。
義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話
よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。
「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。
抱かれたい騎士No.1と抱かれたく無い騎士No.1に溺愛されてます。どうすればいいでしょうか!?
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
ヴァンクリーフ騎士団には見目麗しい抱かれたい男No.1と、絶対零度の鋭い視線を持つ抱かれたく無い男No.1いる。
そんな騎士団の寮の厨房で働くジュリアは何故かその2人のお世話係に任命されてしまう。どうして!?
貧乏男爵令嬢ですが、家の借金返済の為に、頑張って働きますっ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる