ぎゃっぷ！びーすと！！

借金と獣街(ビーストスラム)

3人の主人

「フフフ、いやいや言葉がいつも足りないね私は。ほら、私たちは商いを海外にも展開しているからね……。いつもドルしか持ち歩かなかったものだからね……よっこらせっと。」
すると、徐に手に持っていた黒い鞄をおじさん臭く持ち上げたかと思えば、かぱっとカバンの口を開けた。

「なぁあああああああ！？！？！？！？！？」
「3億ドルになってしまっていてね……。換金してもらえるかな？何せ老眼が進んでしまって計算ができなくてね。」

いや、老眼と計算は関係無いんじゃ……。
って突っ込んでるよりも、ドルって今日本円でだいたい110円だったよね……、ってことは！！

「330億！？！？」
私は思わず声を上げてしまった。
その声に4人の獣人の目が光り、私は慌てて下を向いた。

直後、一人のサンダルをはいた男が吹き出した。
「ぎゃははは！！！！！お前、相変わらずだな！！」
相変わらず……？
私は言葉の意図が分からず、恐る恐る顔を上げた。するとそこには、幼少期の面影が残る男が立っていた。

「……ロー？」
「質問系かよ！！お久！ゆーちん！」
そのキャラクターは全くもって変わっていて、あの気弱で泣き虫なボサ髪の男の子から快活でガチマッチョをアピールするようなファスナー前回のど派手なつなぎを着た男に変わっていた。

「おや、感動の再会と言ったところかな。気持ちはわかるけど……ここからは屋敷についてからゆっくりディナーでも楽しみながらとしよう。」
ディナーという言葉を聞いて、私は獣街の奥地の状態を思い出して思わず体が震えあがった。
それを見て、おじさんはハットを深く被りなおし部屋を出た。

「おいで、お嬢ちゃん。」
そして私の手を取ると、私の歩幅に合わせてゆっくりと会場の入り口にまで進んでくれた。

「ありがとうございます。」
「なに、エスコートは紳士の務めだからね。」
本当のジェントルマンという感じの振る舞いに、私はほぉと吐息を漏らした。

「若い女を触りたいだけだろ、スケベ爺。」
「おやおや、負け犬の遠吠えかな？」
「……チッ……女をよりによって無神経なもの買うだなんて。」

「いいじゃないか、ほら足元に気を付けて。」

おじさんは穏やかな顔で私を馬車に乗せると、その横を陣取り、ローともう一人のフードをかぶった男もドスンと腰を下ろし、馬車はゆっくり進み始めた。

「なんであんたが……家族なの？」
「んあ？別にぃ…、一緒に暮らしてるってだけだし。」
「ルームシェア…か。」

私がぼんやりつぶやくと、フードの男はわざとらしく舌打ちを鳴らした。

「そんな大層なものなわけなかろう、これだから人間は愚かだ。」
「」

一瞬で馬車内が険悪な雰囲気に変わって、私は余計な事を言わないように唇を噛んだ。