真っ黒マントのうさぎさん

石ノ森椿

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莢菜の家の話

父さんがいなくなった日

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これは、私がまだ小さかった時の話。
私の家は、父が警察官で母が専業主婦。ちょっとだけルールが細かくて厳しかったけど、怒られても体に傷がつくような叱り方をされることは一度もなかった。

その分お説教は…保育園の先生より長かった。父さんも母さんも。
でもそれも毎日何となく当たり前の日々だった。
この毎日はずっと続くんだと子供ながらに決めつけていた。

いつも通りの朝、私は母さんと一緒に父さんを見送った。そう…いつも通りに。

「…ッ!!!???」
「~~ッ!!!!!」

それからいつも通りに返ってくるはずの3日後に父さんに会うことができた。
父さんは引き出しのようなところに入っていて、鼻や耳にガーゼを詰め込まれていて、とっても苦しそうだった。
「…。」
私は無言でそのガーゼに手を伸ばした。でも警察の格好をした男の人に止められた。
軽く触れた父さんの頬は、氷より冷たかった。

父さんの葬式は親族だけで営まれた。
…火葬されて出てきた姿は、胸の骨だけぐしゃぐしゃに崩れていた。
子供ながらに、父さんは頑張ったんだと感じていた。

すると、母さんの甲高い怒鳴り声が外から聞こえてきて、私はそっと父さんのいる部屋を抜け出た。
柱の陰から見たのは、何人もの怖そうな男の人が母さんに膝をついて謝っていて、母さんが帰れと泣きながら怒鳴っている姿だった。

母さんがあまりに辛そうに見えて、私は母さんの前に飛び出して両手を大きく広げた。
「どっかいって!!あんたたちなんて大っ嫌い!!」
驚いた様子で私に向けられた視線に私はめいいっぱいの怒った顔をして母さんの前でめいいっぱいの大声を出した。

すると、母さんは私を抱き上げて思いっきり抱きしめた。
私の体の向きは変えられて、母さんの胸に押し付けられた。
母さんの腕は震えていた。
「もう私たちにかかわらないでください。」
その言葉の意味は当時の私には分からなかったけど、母さんはとってもこの男の人たちが嫌いなのだと嫌でも分かった。
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