大嫌いなやつと結婚しました!!

石ノ森椿

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過去

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あんなことがあってから…3ヵ月か経った。

卒業式の5日前…。
今日はなぜか朝から体がダルい…。

リビングにはご飯とお味噌汁が並んでいた。

「お母さん…今日はご飯要らないや。」
「こら。まだ時間あるんだし…少しは食べなさいよ!!じゃないと体持たないわよ!!」

「…はーい…。」
私は、何事もなくご飯を口に運んだんだけど…。

「うっ…。」
急に今まで経験したことのないほどの吐き気が襲ってきた。

急いでトイレに駆け込んだ。

「夏海?大丈夫なの?」
…とても大丈夫ではなくて、返事ができなかった。

どれくらい時間が経ったのかわからなかったけど…やっとのことで吐き気が止んだ。

「夏海!!よかった生きてた~!!」
…勝手に殺さないでほしい。
結局何度試みても何も口にできなくて、仕方なく病院へ行くことにした。

「…吐き気がひどくて…、風邪でしょうか?」
私の『吐き気』のワードに驚いたような顔をしたあと、1つだけ質問を受けた。

「生理は、毎月来てる?」
「…いえ…、3ヶ月ほど来てません…。」
私にとっては、いじめにあうようになってから、よくあることだった。
でも、私の返答に医者だけじゃなくて、お母さんまで驚いた顔をした。

それから、尿検査やら血液検査やら…色々な検査をされた。
私、そんなに重い病気なのかな…。

「片瀬夏海さん…落ち着いて聞いてくださいね。」
淡々とした話し方の医者に私の心は落ち着いていた。

「3ヶ月です…。妊娠してますよ!!」
は?
「な、夏海!!」
え…3か月?それって…。
私は、声も殺せずに泣き崩れた。父親が誰かなんて…私の中で答えは出ていたから…。あいつだ!!…山科秋羅だ!!

最悪だ…無理やり襲われた挙げ句…アイツとの子ができちゃうなんて…。



しばらくして…私は、涙が枯れたのか…泣き止んだ。
「夏海…相手は…分かってる?」
お母さんの声はいつもより低かった。
「…うん…。私をいじめてた人。」
「あんた…強姦…されたの?」
私は、また涙がこぼれていた。でも、そこから私は、今までのことを全部話した。

お母さんは私の頭や背中を撫でながら話を聞いていてくれた。

「厳しいことを聞くけど…お腹の子…どうするの?」
どうするか…それは泣いていたとき私の中で決まっていた。

「…産むよ…。」
「!!…あんた…。」
「そうしないと…、墜ろしたりなんかしたら、私の体がダメになるかもしれないんでしょ?だったら、自分の体のために…1年我慢する。」

「夏海…。」
それからお母さんとゆっくり話し合いをした。
産んだ子供は施設に預ける…産むからには月に1回顔を見せて、その日だけでも愛情を与えること…。お母さんから言われたのは、その二つだった。

施設に預ける間は、私とお母さんでお金を入れると決まった。

お母さんは私がお腹にいた頃に旦那さんを無くしてたから…あまり無理はさせたくなかったんだけど、
『あなたの子でしょ!!私の孫なのよ!!お腹の中だけでも甘やかしたいの!!』
と言ってくれた。


 
それから7ヶ月たったある日…。
妊婦検診に来ていたんだけど…。
「…破水してきていますね…。」
は?
「今すぐに子供を出さないと…母子ともに危険な状態です!!」
な、何ですと?

私はお母さんに連絡をいれて、陣痛促進剤を注射されて…大人しく病室のベッドに寝ていた。

「夏海!!大丈夫?」
「お母さん…私は大丈夫。まだ陣痛来ないから…。」
お母さんは真っ青な顔でおでこに汗をびっしょりかいていた。

私より…お母さんを寝かせた方がいいような気がするけど…。

お母さんが来てから少しして尋常じゃない腹痛が私を襲った。
陣痛だそうだ…。

「~~~!!!!!!!!!!」
私は奇声をあげながら、分娩室に向かった。

どうにか分娩室についた。
「片瀬さん!!頑張ってください!!」


「…!!」

「オギャア~~!!!!」
私のお腹の中からは私の奇声よりすさまじい声でなく、男の子だった。

良かった…。生きていてくれた…。どんなに嫌な相手との子供でも…6ヶ月もくっついていたからか…愛着が湧くみたい…。

病室に戻って暫くしたとき、医者に抱かれて赤ちゃんが戻ってきた。

私は、お礼を言わずにはいられなかった。
「ありがとうございます!!」

「良かったですね…お母さん。」
お母さん…か!!すごく嬉しい♪

「おめでたいのですが…一つ…お母さんの方に問題が…。」
「…何ですか?」

「実は、お母さんの子宮は破水で赤ちゃんと癒着したような状態だったんです…。赤ちゃんを無理やりとったことで、子宮内部が予想以上に破れてしまったんです。形はもとに戻ったとしても…妊娠が出来るか分かりません。すぐに流れてしまう可能性があるのです。」

「…え…。」

それは、私にとってあまりにショックな内容だった。
『子供は望めません』
そんな内容は聞きたくなかった…でも、私は心の奥で覚悟が決まっていたのか…辛いとは思わなかった。

「赤ちゃんは…どこも悪いところは無いんですよね?」
私の口ははっきりそう動いた。
「はい…。」

「なら、構いません…。」
「夏海!!そんな…」
お母さんは色々言おうとしたけど、私が赤ちゃんを大切そうに抱くのを見て、『そうね…。』と呟いた。

その子は、『片瀬希カタセノゾム』と名付けた。

施設に預けてから2年くらいはお母さんが働いてくれていたから私はバイトで繋ぐことができてた…。

プルル…♪
「…はい。」
『片瀬はるさんのご家族の方ですか?』
「…そうですが………。え。」

お母さんは私の誕生日の前日にケーキの材料を買いにいって、前方不注意の車に飛ばされて…亡くなった。

私は、泣いた。でも、お母さんがいないことだけで泣いたのではなかった…。
一人で、あの子を…希を育てないといけないと言う現実に押し潰されそうになっていた。

でも、それは1日…その日だけ!!と決めた。
お母さんは、知り合いの会社の社長さんに頼んでくれていたみたいですぐに職につけた。
それが…『山科工業』…文字通り、山科秋羅の父親の会社…今私が働いている所。

私は、山科にも宇治くんにも気づかれないように、コンタクトにして、目にキツいアイラインをいれて…目は二重になるように市販のテープを張った。

早くお金を稼いで、希と一緒に住めるようになりたい!!
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