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1章 それはきっと必然の出会いで
8. 本来の運命
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拾われてから数日が経ち、シャーロットの体力はほぼ回復していたが、特に何をする訳でもなく日々を消費していた。
持ってきてもらった食事を食べるのに起きるくらいで、後は一日ベッドの上でぼんやりと過ごしていた。
シャーロットがノアの婚約者となった後も、豪奢な部屋に移ったり、専属の侍女が付いたりといったことはなかった。
魔導士は無駄を嫌う者が多い。貴人であっても、必要以上に贅沢な暮らしをする必要はないし、自分のことは自分でやるのが当たり前という文化のようだ。
とはいえ清潔で安全な部屋で、好きなだけ眠れるだけでシャーロットは幸福だった。
(今まで一生分の不幸を味わったし、ちょっとぐらい、だらけた生活を送って良い筈よね)
シャーロットはそう自分に言い聞かせていた。一度死にかけて、やや図太くなった自覚はある。
そもそも、本来かなり自分に甘い性格なのかもしれない。認めたくはないが。
「紙とインク、持ってきてあげたよ」
ノアがノックもせずに部屋に入って来て、シャーロットに見せつけるようにひらひらと紙の束を振った。
ノアはあれから何故かほぼ毎日やってきて、益体もない話をして帰っていく。
ストーリーでもそうだったが、一度懐に入れるとせっせと面倒を見る性質らしい。
指摘したら怒りそうだが。
「ありがとうございます。机の上に置いておいてください。じゃあ、早速日記をつけるので出て行ってもらえますか」
「ちょっと流石に冷たすぎるんじゃない? 憧れてたって言ってた癖に」
「憧れの人だからこそ隠しておきたいこともあるんですよ。乙女心の分からない人ですね」
なにかしら自分に利用価値を見出して傍に置いているのだろう、ということはなんとなく分かっていた。
利用価値がある内はどうせ追い出されることもないだろう。
シャーロットは大分強気だった。
ノアを追い出し、シャーロットは「ルミナリアの天秤」について、思い出したことを書き出し始めた。
ストーリーの開始は、ヒロインが十八の秋に、ルミネ教の神官と出会うところから始まる。
自分の年齢を正確に数えているわけではないので確かなことは分からないが、恐らく丁度今頃だろう。
この神官は魔力持ちにあまり偏見がなく、ストーリーの中で幾度となくヒロインの助けとなるのだが。
(ラヴィニアにこのあいだ処刑された神官様だわ……)
そして、ラヴィニア・プレディエーリは、所謂ライバルの悪役令嬢だった。
同じく聖女候補として大神殿で暮らしており、ヒロインに小さな嫌がらせを繰り返す。
特定の攻略対象のルートに入った後は、その攻略対象に恋をし、ヒロインと攻略対象が結ばれるのを邪魔する、という役回りだ。
とはいってもゲームのラヴィニアはそこまで悪逆非道という訳ではない。ラヴィニアにはラヴィニアの苦悩があり、聖女として認められなければならないというプレッシャーと戦っていた。
確か、ラヴィニアと仲良くなる友情ルートも存在していた。
とはいえ、勿論本物の聖女はシャーロットだ。
現在ラヴィニアが聖女として力を奮えているのは、奴隷紋を通じてシャーロットから聖力を奪っていたからだろう、とシャーロットは推測していた。
ラヴィニアは魔物に襲われた村に出向いて、負傷者を全員一度に癒したこともあった。
王家に連なる人間として多少聖力を持っていてもおかしくはないが、本来ここまで絶大なものでは無いはずだ。
明らかに本来のストーリーから逸脱している。
今思い返せば、言動から考えても、ラヴィニアにも前世の知識があると考えてまず間違いない。
それもおそらく、かなり昔から。
ノアが奴隷紋を消した以上、ラヴィニアの力は徐々に衰えていく筈だ。
しかし、それをラヴィニアが許容するとは思えない。なんとしてでもシャーロットを取り戻しにくるだろう。
今頃、行方不明になったシャーロットを血眼で探している筈だ。
(……きっと、探し出されるのも時間の問題だわ)
そしてそれは実際、その通りだった。
持ってきてもらった食事を食べるのに起きるくらいで、後は一日ベッドの上でぼんやりと過ごしていた。
シャーロットがノアの婚約者となった後も、豪奢な部屋に移ったり、専属の侍女が付いたりといったことはなかった。
魔導士は無駄を嫌う者が多い。貴人であっても、必要以上に贅沢な暮らしをする必要はないし、自分のことは自分でやるのが当たり前という文化のようだ。
とはいえ清潔で安全な部屋で、好きなだけ眠れるだけでシャーロットは幸福だった。
(今まで一生分の不幸を味わったし、ちょっとぐらい、だらけた生活を送って良い筈よね)
シャーロットはそう自分に言い聞かせていた。一度死にかけて、やや図太くなった自覚はある。
そもそも、本来かなり自分に甘い性格なのかもしれない。認めたくはないが。
「紙とインク、持ってきてあげたよ」
ノアがノックもせずに部屋に入って来て、シャーロットに見せつけるようにひらひらと紙の束を振った。
ノアはあれから何故かほぼ毎日やってきて、益体もない話をして帰っていく。
ストーリーでもそうだったが、一度懐に入れるとせっせと面倒を見る性質らしい。
指摘したら怒りそうだが。
「ありがとうございます。机の上に置いておいてください。じゃあ、早速日記をつけるので出て行ってもらえますか」
「ちょっと流石に冷たすぎるんじゃない? 憧れてたって言ってた癖に」
「憧れの人だからこそ隠しておきたいこともあるんですよ。乙女心の分からない人ですね」
なにかしら自分に利用価値を見出して傍に置いているのだろう、ということはなんとなく分かっていた。
利用価値がある内はどうせ追い出されることもないだろう。
シャーロットは大分強気だった。
ノアを追い出し、シャーロットは「ルミナリアの天秤」について、思い出したことを書き出し始めた。
ストーリーの開始は、ヒロインが十八の秋に、ルミネ教の神官と出会うところから始まる。
自分の年齢を正確に数えているわけではないので確かなことは分からないが、恐らく丁度今頃だろう。
この神官は魔力持ちにあまり偏見がなく、ストーリーの中で幾度となくヒロインの助けとなるのだが。
(ラヴィニアにこのあいだ処刑された神官様だわ……)
そして、ラヴィニア・プレディエーリは、所謂ライバルの悪役令嬢だった。
同じく聖女候補として大神殿で暮らしており、ヒロインに小さな嫌がらせを繰り返す。
特定の攻略対象のルートに入った後は、その攻略対象に恋をし、ヒロインと攻略対象が結ばれるのを邪魔する、という役回りだ。
とはいってもゲームのラヴィニアはそこまで悪逆非道という訳ではない。ラヴィニアにはラヴィニアの苦悩があり、聖女として認められなければならないというプレッシャーと戦っていた。
確か、ラヴィニアと仲良くなる友情ルートも存在していた。
とはいえ、勿論本物の聖女はシャーロットだ。
現在ラヴィニアが聖女として力を奮えているのは、奴隷紋を通じてシャーロットから聖力を奪っていたからだろう、とシャーロットは推測していた。
ラヴィニアは魔物に襲われた村に出向いて、負傷者を全員一度に癒したこともあった。
王家に連なる人間として多少聖力を持っていてもおかしくはないが、本来ここまで絶大なものでは無いはずだ。
明らかに本来のストーリーから逸脱している。
今思い返せば、言動から考えても、ラヴィニアにも前世の知識があると考えてまず間違いない。
それもおそらく、かなり昔から。
ノアが奴隷紋を消した以上、ラヴィニアの力は徐々に衰えていく筈だ。
しかし、それをラヴィニアが許容するとは思えない。なんとしてでもシャーロットを取り戻しにくるだろう。
今頃、行方不明になったシャーロットを血眼で探している筈だ。
(……きっと、探し出されるのも時間の問題だわ)
そしてそれは実際、その通りだった。
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