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1章 それはきっと必然の出会いで
13. 月が綺麗ですね
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日が落ちかけた頃、シャーロットはカビの臭いのする工房の中で、膝を抱え一人いじけていた。
辺りには大量の金属の破片が散らかっている。
シャーロットが破壊し尽くした宝飾品の慣れの果てだった。
一つ目に失敗した時点で、なんとなく無理なのは察していた。
意地になって続けた結果がこれだ。ノアの言っていた「いらない宝飾品」は全て破片と化していた。
(どうせ私はまともに魔力を使えないヒロインもどきなんだわ。そもそも原作のシャーロットと性格全然違うし)
原作の「シャーロット」は、明るく素直で優しい、理想の女の子そのものだった。
努力家でひたむき。そういった姿勢に攻略対象たちは好感を抱き、恋に落ちていく。
誰もが好きにならざるを得ないような、魅力に溢れる素敵な女の子。
自分とは全然違う。
(ヒロインならいざとなったら逃げようとか思わないだろうし……)
原作の「シャーロット」が自分と同じ立場に置かれたならば、恐らく魔族たちの侵攻を事前に食い止めようとする筈だ。他人のために一生懸命になれる良い子。
ぐるぐると同じ思考をしながら原作の「シャーロット」を僻んでいたシャーロットだったが、ふとある疑問を抱いた。
(なんで魔族たちはルミナリアを攻めるのかしら。今は全くそんな素振りもないし、理由もなさそうだけど)
魔導塔の住民のうちどのくらいが魔族なのかはわからないが、皆それぞれ平和そうに見える。人間に敵意を抱いているということも無さそうだ。一体どういった経緯で侵攻を開始するのだろうか。
シャーロットは記憶を探ったが、思い出すことは出来なかった。
工房に誰かが入って来た気配で、シャーロットは面を上げた。
「満足した?」
呆れたような笑みを浮かべている、ノアだった。手には赤い宝石があしらわれた腕輪を持っている。
シャーロットはどんよりした表情で言い返した。
「いまちょっと落ち込んでるんで嫌味なら後にしてください……」
「まあ、見てて」
そういうと、ノアの指先から柔らかい赤い光が発せられ、くるくると腕輪に纏わりつく。
光が完全に腕輪を覆うと、スッと染み込むように吸収された。
ノアは同じように白、青、黄色……と様々な色の光を腕輪に吸収させていく。
幻想的で美しい光景に、シャーロットはしばし見惚れていた。
「これが魔力付与。魔力を対象に寄り添わせるのが重要なんだ。魔力の出力を絞ることすら出来ない君じゃちょっと難しいんじゃないかな」
一通り光を吸わせ終わると、ノアはシャーロットに向き合って言った。
そんなことはもうとっくにわかっていた。追い打ちをかけにきたのか、この男は。
シャーロットがむくれていると、くすくすと笑いながらシャーロットの腕に腕輪を嵌めた。
「え?」
「あげる。魔力制御の魔法をかけてある。本当は罪人とかに使うような術だけど。かなり緩くかけたから、多少は魔法を使えるよ」
ノアなりにシャーロットの悩みに向き合ってくれたらしい。
シャーロットが感じ入っていると、ノアは急に真顔になって続けた。
「絶対、魔法を使うときはこれを嵌めてて。君が何も考えず魔法を放つと、辺り一帯更地になりかねないから……」
シャーロットのためというよりは、周りに被害が及ばないようにするためのものという側面の方が強そうだ。
それでも、これはシャーロットが貰ったシャーロットだけのものだった。
贈り物を受け取るのは初めてだった。あの髪飾りは、結局受け取れなかったから。
シャーロットは笑みを零した。
「……ありがとう、ございます。大事にしますね」
ノアの目が大きく見開かれた。
シャーロットは気づいていなかったが、笑顔を見せるのはこれが初めてだった。
突然、ノアの全身が薄く輝いた。同時に工房の中の温度が僅かに上昇する。
これは、魔力暴走の兆候ではないのか。
そう思ったシャーロットが何か反応するより早く、
「じゃあ、僕は塔に帰るから」
と、言い残しノアは足早に去っていった。
(同じ塔に帰るのに変な人ね)
シャーロットはノアの後を追い、工房の外に出た。
ノアの姿はもう見えなかった。
いつの間にか日はすっかり落ちて、月の光が辺りを照らしていた。
綺麗な満月だった。
辺りには大量の金属の破片が散らかっている。
シャーロットが破壊し尽くした宝飾品の慣れの果てだった。
一つ目に失敗した時点で、なんとなく無理なのは察していた。
意地になって続けた結果がこれだ。ノアの言っていた「いらない宝飾品」は全て破片と化していた。
(どうせ私はまともに魔力を使えないヒロインもどきなんだわ。そもそも原作のシャーロットと性格全然違うし)
原作の「シャーロット」は、明るく素直で優しい、理想の女の子そのものだった。
努力家でひたむき。そういった姿勢に攻略対象たちは好感を抱き、恋に落ちていく。
誰もが好きにならざるを得ないような、魅力に溢れる素敵な女の子。
自分とは全然違う。
(ヒロインならいざとなったら逃げようとか思わないだろうし……)
原作の「シャーロット」が自分と同じ立場に置かれたならば、恐らく魔族たちの侵攻を事前に食い止めようとする筈だ。他人のために一生懸命になれる良い子。
ぐるぐると同じ思考をしながら原作の「シャーロット」を僻んでいたシャーロットだったが、ふとある疑問を抱いた。
(なんで魔族たちはルミナリアを攻めるのかしら。今は全くそんな素振りもないし、理由もなさそうだけど)
魔導塔の住民のうちどのくらいが魔族なのかはわからないが、皆それぞれ平和そうに見える。人間に敵意を抱いているということも無さそうだ。一体どういった経緯で侵攻を開始するのだろうか。
シャーロットは記憶を探ったが、思い出すことは出来なかった。
工房に誰かが入って来た気配で、シャーロットは面を上げた。
「満足した?」
呆れたような笑みを浮かべている、ノアだった。手には赤い宝石があしらわれた腕輪を持っている。
シャーロットはどんよりした表情で言い返した。
「いまちょっと落ち込んでるんで嫌味なら後にしてください……」
「まあ、見てて」
そういうと、ノアの指先から柔らかい赤い光が発せられ、くるくると腕輪に纏わりつく。
光が完全に腕輪を覆うと、スッと染み込むように吸収された。
ノアは同じように白、青、黄色……と様々な色の光を腕輪に吸収させていく。
幻想的で美しい光景に、シャーロットはしばし見惚れていた。
「これが魔力付与。魔力を対象に寄り添わせるのが重要なんだ。魔力の出力を絞ることすら出来ない君じゃちょっと難しいんじゃないかな」
一通り光を吸わせ終わると、ノアはシャーロットに向き合って言った。
そんなことはもうとっくにわかっていた。追い打ちをかけにきたのか、この男は。
シャーロットがむくれていると、くすくすと笑いながらシャーロットの腕に腕輪を嵌めた。
「え?」
「あげる。魔力制御の魔法をかけてある。本当は罪人とかに使うような術だけど。かなり緩くかけたから、多少は魔法を使えるよ」
ノアなりにシャーロットの悩みに向き合ってくれたらしい。
シャーロットが感じ入っていると、ノアは急に真顔になって続けた。
「絶対、魔法を使うときはこれを嵌めてて。君が何も考えず魔法を放つと、辺り一帯更地になりかねないから……」
シャーロットのためというよりは、周りに被害が及ばないようにするためのものという側面の方が強そうだ。
それでも、これはシャーロットが貰ったシャーロットだけのものだった。
贈り物を受け取るのは初めてだった。あの髪飾りは、結局受け取れなかったから。
シャーロットは笑みを零した。
「……ありがとう、ございます。大事にしますね」
ノアの目が大きく見開かれた。
シャーロットは気づいていなかったが、笑顔を見せるのはこれが初めてだった。
突然、ノアの全身が薄く輝いた。同時に工房の中の温度が僅かに上昇する。
これは、魔力暴走の兆候ではないのか。
そう思ったシャーロットが何か反応するより早く、
「じゃあ、僕は塔に帰るから」
と、言い残しノアは足早に去っていった。
(同じ塔に帰るのに変な人ね)
シャーロットはノアの後を追い、工房の外に出た。
ノアの姿はもう見えなかった。
いつの間にか日はすっかり落ちて、月の光が辺りを照らしていた。
綺麗な満月だった。
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