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4章 赤い月が昇る
52. 祭りの終わり
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怪訝な顔でその場にいる人間がシャーロットを見た。
同じくランドルフの作らせた装置のことを知っているエスメだけは蒼白な顔をして、そうして何も言わず駆け出した。
広場へ向かったのだろう。
日没には装置を作動させる、とランドルフは言っていた。
もうほぼ日が落ちている。
いつあの装置が作動してもおかしくない。
シャーロットは、何故か一人だけ涼しい顔をしているノアに視線を送った。
「ノア、中央の広場に……」
「わかった、行こう」
ノアは男性にしては細い腕でシャーロットを抱え、そのままふわりと飛び立った。
急激に上がる高度に少し怯えながら、ノアが少ない言葉で察してくれたことに少し喜びを覚える。
「なにかあれば、よろしくお願いします~!」
残っていたラウルとロベルトに向かって雑なお願いを叫ぶシャーロットを横抱きにしたまま、ノアは空を駆けた。
ノアとしては、アルストルの街がどうなろうと多少どうでも良かったが、シャーロットの願いは叶えてやりたかった。
広場に連れて行けというならば、それくらい叶える。
それは、自分を封印してほしいという願いをした贖罪でもあった。
◆◆◆
アルストルの街は、入り組んではいるがそこまで広くない。
建造物を無視して空を飛べば、目的地までそうかかることは無かった。
「あ、あそこ!」
シャーロットは指を指した。
広場の中心にそびえ立つ、大きな水晶玉を咥えた身の丈ほどの鳥の像。
以前魔力を込めているときはほんのり赤く輝いていたが、今では眩いばかりの光を放っていた。
そして、その像の前にランドルフが佇んでいる。
魔力が濃くなった気配は感じない。まだ作動させる前なのだ。
(良かった、まだ間に合う!)
シャーロットはノアの胸の中から飛び出した。
途端に重力を感じ、速度を上げながら地面へと落ちていく。
「あ、ちょっと!」
上からノアの慌てる声が聞こえ、その瞬間に重力がやわらぎ、地面へ向かう速度が遅くなった。
「ランドルフさん! 待ってください!」
シャーロットが呼びかけると、ランドルフは驚いた顔で上から降ってくるシャーロットを見上げた。
「――」
「なんですか?」
何か言っているらしいが、少し距離があってよく聞こえない。
幸いランドルフはシャーロットが地面に降りてくるのを待ってくれるようで、ふわりと地面に降り立つと、いつもどおりの穏やかな表情でランドルフはシャーロットを迎えた。
「驚いたな。シャーロットさんが来るなんて」
「あの、ランドルフさんに聞いてほしいことがあって――」
「この装置を作動させないで欲しい、ということですか?」
「あ――そうです! 街にある魔結晶、あんまり強い魔力を流すと危険らしくて――」
その瞬間、シャーロットの目の前に防御膜が現れ、キンと高い音を鳴らし魔法が弾かれた。
「え?」
状況が理解出来ないシャーロットが間の抜けた声を上げたと同時に、ランドルフの足元から大地が槍の形をして盛り上がり、ランドルフを突き刺す。
それをひらりと軽い身のこなしで避けたランドルフは、いつの間にか剣を抜いていた。
(今、ノアがランドルフさんを攻撃した?)
ということは、その前、ランドルフがシャーロットに何か魔法を放ち、それをノアが防いだ、ということだろうか。
「シャル! 下がって!」
すぐ側に来ていたらしいノアが、シャーロットを庇うように前に出た。
「な、なんで、ランドルフさん……」
「……仮面、つけてくれなかったんですか。赤月祭で見失うといけないから、目印になるように渡したんですけどね。じゃあ、さっき向こうに引き渡したのは誰だったんでしょう……?」
シャーロットの問いかけには答えず、ランドルフは独り言のように呟いた。
そして、予備動作なく剣を振り、鳥像の加えた赤い玉を叩き割った。
――ゴウゴウと、街中の魔力の濃度が急激に上昇する。
そして、パリン、パリンとあちこちで何かが割れる音、聞こえる唸り声、悲鳴。
楽しい祭りは、最悪の形で終わろうとしていた。
同じくランドルフの作らせた装置のことを知っているエスメだけは蒼白な顔をして、そうして何も言わず駆け出した。
広場へ向かったのだろう。
日没には装置を作動させる、とランドルフは言っていた。
もうほぼ日が落ちている。
いつあの装置が作動してもおかしくない。
シャーロットは、何故か一人だけ涼しい顔をしているノアに視線を送った。
「ノア、中央の広場に……」
「わかった、行こう」
ノアは男性にしては細い腕でシャーロットを抱え、そのままふわりと飛び立った。
急激に上がる高度に少し怯えながら、ノアが少ない言葉で察してくれたことに少し喜びを覚える。
「なにかあれば、よろしくお願いします~!」
残っていたラウルとロベルトに向かって雑なお願いを叫ぶシャーロットを横抱きにしたまま、ノアは空を駆けた。
ノアとしては、アルストルの街がどうなろうと多少どうでも良かったが、シャーロットの願いは叶えてやりたかった。
広場に連れて行けというならば、それくらい叶える。
それは、自分を封印してほしいという願いをした贖罪でもあった。
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建造物を無視して空を飛べば、目的地までそうかかることは無かった。
「あ、あそこ!」
シャーロットは指を指した。
広場の中心にそびえ立つ、大きな水晶玉を咥えた身の丈ほどの鳥の像。
以前魔力を込めているときはほんのり赤く輝いていたが、今では眩いばかりの光を放っていた。
そして、その像の前にランドルフが佇んでいる。
魔力が濃くなった気配は感じない。まだ作動させる前なのだ。
(良かった、まだ間に合う!)
シャーロットはノアの胸の中から飛び出した。
途端に重力を感じ、速度を上げながら地面へと落ちていく。
「あ、ちょっと!」
上からノアの慌てる声が聞こえ、その瞬間に重力がやわらぎ、地面へ向かう速度が遅くなった。
「ランドルフさん! 待ってください!」
シャーロットが呼びかけると、ランドルフは驚いた顔で上から降ってくるシャーロットを見上げた。
「――」
「なんですか?」
何か言っているらしいが、少し距離があってよく聞こえない。
幸いランドルフはシャーロットが地面に降りてくるのを待ってくれるようで、ふわりと地面に降り立つと、いつもどおりの穏やかな表情でランドルフはシャーロットを迎えた。
「驚いたな。シャーロットさんが来るなんて」
「あの、ランドルフさんに聞いてほしいことがあって――」
「この装置を作動させないで欲しい、ということですか?」
「あ――そうです! 街にある魔結晶、あんまり強い魔力を流すと危険らしくて――」
その瞬間、シャーロットの目の前に防御膜が現れ、キンと高い音を鳴らし魔法が弾かれた。
「え?」
状況が理解出来ないシャーロットが間の抜けた声を上げたと同時に、ランドルフの足元から大地が槍の形をして盛り上がり、ランドルフを突き刺す。
それをひらりと軽い身のこなしで避けたランドルフは、いつの間にか剣を抜いていた。
(今、ノアがランドルフさんを攻撃した?)
ということは、その前、ランドルフがシャーロットに何か魔法を放ち、それをノアが防いだ、ということだろうか。
「シャル! 下がって!」
すぐ側に来ていたらしいノアが、シャーロットを庇うように前に出た。
「な、なんで、ランドルフさん……」
「……仮面、つけてくれなかったんですか。赤月祭で見失うといけないから、目印になるように渡したんですけどね。じゃあ、さっき向こうに引き渡したのは誰だったんでしょう……?」
シャーロットの問いかけには答えず、ランドルフは独り言のように呟いた。
そして、予備動作なく剣を振り、鳥像の加えた赤い玉を叩き割った。
――ゴウゴウと、街中の魔力の濃度が急激に上昇する。
そして、パリン、パリンとあちこちで何かが割れる音、聞こえる唸り声、悲鳴。
楽しい祭りは、最悪の形で終わろうとしていた。
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