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2章 応報
10. ティアナの再会
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次の日のことだった。
その日は朝から天気が怪しく、昼から雨が振り始め、夜には雷を伴った嵐となっていた。
ヴァーリはその日、何故かいつも以上にティアナに甘い態度で、片時もティアナの側を離れようとしない。
美しい長身のエルフが雛鳥のようについてくるのが可笑しくて、ティアナが声を上げて笑うと、ヴァーリはわざとらしくむくれた。
「笑わなくったっていいじゃないか。僕はティアナの側に居たいだけなのに」
「ふふ、ごめんなさい。でも、今日は一体どうしちゃったんですか? まさか、雷が怖かったりするのかしら?」
「そうだよ。子供みたいに怯えてるんだ。慰めてくれてもいいんだよ」
絶対に嘘だった。
ティアナは、ヴァーリが小屋近くまでやってきた大型の魔熊を派手な雷撃で葬るのを見たことがある。
ティアナがますます笑うと、ヴァーリもつられたのか微笑みを浮かべた。
そして、すぐ真顔になる。
「……不安なのは、本当。ティアナが去っていくのが怖いんだ」
「それは……」
それ以上、ティアナは何も言えなかった。
使命を忘れた訳でも、クラウスを忘れた訳でもなかったから。
ティアナはいずれ、ここを去る。
そうしたくなくても、去らねばならないのだ。
「……あの、晩ごはん作りますね」
それ以上考えたくなくて、ティアナは話題を変えた。
ヴァーリも、その話題を続けることはなかった。
いつもは狩りや釣りをして日々の糧を獲ているのだが、とても外に出れる状態ではない。
前日の残りで簡単に済ませようと、ティアナは少しの鳥と野草を塩で味付けて煮込むことにした。
ことことと鍋の中で踊る具材を見ながら、ティアナはぼんやり考える。
(もしも、魔王が無事倒せたら――その時は)
その時、突然小屋の扉が乱暴に開け放たれた。
「良いご身分だな、ティアナ。……全てを放り出した君のせいで外がどうなってるか知りもしないで」
ずかずかと小屋に足を踏み入れ、黒髪の男がティアナを睨みつける。
冷たい印象を与えるアイスブルーの瞳は、今は燃えるような怒りを映している。
「クラウス……」
「私が君を放置したからといって拗ねるなんて……。今ならまだ、許してやってもいい。ほら、行くぞ」
「あ……」
いつの間にか背後に立っていたヴァーリが、動けなくなっていたティアナを守るように前に出た。
「ヴァーリ……」
思わず安心し、縋るような声が漏れる。
それを聞いたクラウスは顔を歪めた。
「お前……」
「勝手にティアナを連れて行くのは許さない。……それで、クラウス。君は自分のどこが悪かったのか、わかっているのかな」
「私は何も間違っていない! 私はいつだってティアナのためを思って――」
身勝手なクラウスの叫びは、途中で不自然に止まった。
「がっ……」
そして、勢いよく口から血を吐く。
「え……? クラウス……?」
ティアナは驚愕し、後ずさる。
よく見ると、クラウスの胸から木の根の様なものが生えていた。
ヴァーリが何か魔法を使って、クラウスを攻撃したのか。
クラウスはそれ以上何も言う事なく、膝から崩れ落ちた。
その目は光が無く、一目で事切れていることがわかる。
――ヴァーリが殺したのだ。
ティアナは何も理解することが出来なかった。
「え? え? なんで……?」
クラウスを殺めたヴァーリは、いつもと変わらぬ口調で言う。
「やっぱり今回も駄目だったみたいだね。まだまだ道のりは長そうだ」
その日は朝から天気が怪しく、昼から雨が振り始め、夜には雷を伴った嵐となっていた。
ヴァーリはその日、何故かいつも以上にティアナに甘い態度で、片時もティアナの側を離れようとしない。
美しい長身のエルフが雛鳥のようについてくるのが可笑しくて、ティアナが声を上げて笑うと、ヴァーリはわざとらしくむくれた。
「笑わなくったっていいじゃないか。僕はティアナの側に居たいだけなのに」
「ふふ、ごめんなさい。でも、今日は一体どうしちゃったんですか? まさか、雷が怖かったりするのかしら?」
「そうだよ。子供みたいに怯えてるんだ。慰めてくれてもいいんだよ」
絶対に嘘だった。
ティアナは、ヴァーリが小屋近くまでやってきた大型の魔熊を派手な雷撃で葬るのを見たことがある。
ティアナがますます笑うと、ヴァーリもつられたのか微笑みを浮かべた。
そして、すぐ真顔になる。
「……不安なのは、本当。ティアナが去っていくのが怖いんだ」
「それは……」
それ以上、ティアナは何も言えなかった。
使命を忘れた訳でも、クラウスを忘れた訳でもなかったから。
ティアナはいずれ、ここを去る。
そうしたくなくても、去らねばならないのだ。
「……あの、晩ごはん作りますね」
それ以上考えたくなくて、ティアナは話題を変えた。
ヴァーリも、その話題を続けることはなかった。
いつもは狩りや釣りをして日々の糧を獲ているのだが、とても外に出れる状態ではない。
前日の残りで簡単に済ませようと、ティアナは少しの鳥と野草を塩で味付けて煮込むことにした。
ことことと鍋の中で踊る具材を見ながら、ティアナはぼんやり考える。
(もしも、魔王が無事倒せたら――その時は)
その時、突然小屋の扉が乱暴に開け放たれた。
「良いご身分だな、ティアナ。……全てを放り出した君のせいで外がどうなってるか知りもしないで」
ずかずかと小屋に足を踏み入れ、黒髪の男がティアナを睨みつける。
冷たい印象を与えるアイスブルーの瞳は、今は燃えるような怒りを映している。
「クラウス……」
「私が君を放置したからといって拗ねるなんて……。今ならまだ、許してやってもいい。ほら、行くぞ」
「あ……」
いつの間にか背後に立っていたヴァーリが、動けなくなっていたティアナを守るように前に出た。
「ヴァーリ……」
思わず安心し、縋るような声が漏れる。
それを聞いたクラウスは顔を歪めた。
「お前……」
「勝手にティアナを連れて行くのは許さない。……それで、クラウス。君は自分のどこが悪かったのか、わかっているのかな」
「私は何も間違っていない! 私はいつだってティアナのためを思って――」
身勝手なクラウスの叫びは、途中で不自然に止まった。
「がっ……」
そして、勢いよく口から血を吐く。
「え……? クラウス……?」
ティアナは驚愕し、後ずさる。
よく見ると、クラウスの胸から木の根の様なものが生えていた。
ヴァーリが何か魔法を使って、クラウスを攻撃したのか。
クラウスはそれ以上何も言う事なく、膝から崩れ落ちた。
その目は光が無く、一目で事切れていることがわかる。
――ヴァーリが殺したのだ。
ティアナは何も理解することが出来なかった。
「え? え? なんで……?」
クラウスを殺めたヴァーリは、いつもと変わらぬ口調で言う。
「やっぱり今回も駄目だったみたいだね。まだまだ道のりは長そうだ」
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