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49.たぶん好きだから
しおりを挟む「結菜? 大丈夫? 藤間先輩と何か話があったんじゃ……?」
ショッピング帰りに、公園で偶然遭遇した藤間先輩や拓未くんに置いて行かれて、二人きりになるなり、大迫くんは遠慮がちに告げる。
本当は藤間先輩の話がもっと聞きたかったけど、仕方ないよね?
「うん。けっこう真面目な話してたんだけど……拓未くんが連れていっちゃったから仕方ないよね」
「なんかごめん」
「大迫くんのせいじゃないよ。拓未くんをなんとかしないと、今後も振り回される予感しかしないよ」
「……ごめん」
「だから、大迫くんは悪くないって」
「違うんだ。……拓未くんがあんな態度なのは、俺のせいだから」
「大迫くんの?」
「本当はわかってるんだ。結菜が俺のことを好きじゃないってこと」
「……え?」
「でも、一緒にいれば……いつか好きになってもらえるかもしれないと思ったけど……やっぱりこういうのはよくないよね」
「どういうこと?」
「結菜、ごめんね。今度こそ告白の返事……ちゃんと聞くから、本当のことを言ってほしいんだ」
「もしかして、大迫くん……私の返事をわざとかわしてたの?」
「……うん」
「どうしてそんなこと」
「……結菜には、俺のことを好きになってもらわないといけないんだ」
「は?」
「だけどやっぱり……人の心を無理やりどうこうできるとは思わないんだ。だって、結菜はずっと困った顔ばかりしてたし」
「……そうだね。ずっと困ってたよ。拓未くんに言いふらされて」
「……ごめん」
「大迫くんが悪い人じゃないってことはわかってるけど……いくら拓未くんの思い付きでも、こんなことしちゃダメだよ」
「拓未くんが考えたことって、なんでわかったの?」
「そりゃわかるよ。大迫くんらしくないし……それに、大迫くんがこんなこと、考えるわけないよね」
「結菜は、俺のことを勘違いしてる。俺はそんなに良いやつじゃないよ」
「そんなことないよ。大迫くんは良い人だよ。結局こうやって教えてくれてるわけだし。それよりさ、私が大迫くんのことを好きじゃないって誰が決めたの?」
「え? だって、結菜はずっと困った顔してたし」
「私も色々考えてみたんだよね。正直、大迫くんのことを好きかどうか……自分でもよくわからないんだ。でも、ここまで広まっちゃったわけだし、いっそのこと、このまま付き合ってみる?」
「え? いいの?」
「だってさ、もし全部嘘だったってことになったら、きっと大迫くんが悪者にされちゃうよ? 拓未くんは何言われても平気そうだけど……大迫くんが傷つくのは見たくないよ。これはもう好きってことなのかな? ……なんて」
「でも、好きでもない人と付き合うなんて……結菜はいいの?」
「だから言ってるじゃない、もしかしたら私も好きかもしれないって」
「かもしれない?」
「そう、『かもしれない』……だから、試しに付き合ってみようかな、なんて……調子がいいかな? あ、でも付き合ってみて、なんか違うと思ったら、振ってくれていいんだよ?」
「そんなこと! 俺が結菜を振るなんて、絶対ないよ」
「わかんないよ。だって私、今まで誰かと付き合ったことなんてないし。正直、付き合うってどういうことかもわからないから」
「それは俺も同じだよ。付き合うって何するんだろ?」
「だから、一緒に勉強していこうよ」
「本当にいいの? 後悔したりしない?」
「ここで大迫くんを悪者にするほうが後悔しそうだし、……いいよ。付き合うよ」
「結菜、ありがとう」
言って、大迫くんはふわりと私を抱きしめる。
その温もりに驚いた私は、思わず目を瞠るけど——突き放すようなことはしなかった。
……OKしたのは私だから、こんなことで驚いてちゃダメだよね。
「あ、ごめん。どうしてかわからないけど、結菜のことをすごく抱きしめたくなって」
「う、ううん。大丈夫。だって、付き合ってるんだもんね。私たち」
「そうだね。じゃ、帰ろっか」
「うん、帰ろう」
***
翌朝、大迫くんとのことを、登校して最初に報告した相手は、明美だった。
「え、結局つきあうの?」
「うん。せっかくだから、明美の言う通り、高校生活を楽しんでみるよ!」
「どうせ、大迫くんが悪者にされないためにとか思ってるんでしょ?」
「そ、そんなことないよ! 実は大迫くんのことはちょっと気になってたんだよね……たぶん」
「たぶん?」
「い、いいの! 今はたぶんでも」
「でも二人、お似合いだと思うよ。で、ファーストキスはしたの?」
「だからなんでそうなるの? 私、まだ大迫くんとつきあったばかりだよ?」
「でもファーストキスくらいするでしょ?」
明美の言葉に反応したのは、あとから私の机にやってきた大迫くんだった。
「え? 付き合ってすぐファーストキスするものなの?」
「大迫くん! 明美の話を真に受けないで」
「そうなの?」
「私たちはゆっくり勉強していこうね」
「うん。でもそんなに時間はないかもしれないけど」
「え?」
「ううん。なんでもない。ファーストキスも練習しないといけないね」
「お、大迫くん?」
「まずは長谷部にでも頼んでみるかな」
「……え」
本気で悩む大迫くんに、長谷部くんが大声で告げる。
「おれは練習台にはならないからな」
いつからそこにいたのだろう。
長谷部くんは大迫くんを睨みつけていた。
「じゃあ、誰と練習すればいいの?」
「大迫くん……結菜と練習しなよ」
明美は呆れたように言うけど、私は苦笑するしかなかった。
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