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ずっとそばに
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クリスマスイブはチキンとケーキを食べて、サンタのプレゼントを待ちながら眠る。そんなことを当たり前だというクラスメイトが羨ましかった。
私には両親がいるけど、いつも仕事が忙しくてクリスマスには帰ってくることもなかった。それでも小学生まではおばあちゃんが健在だったから、一人になるようなこともなかったけど、そんなおばあちゃんも他界して、とうとう一人ぼっちになった。
いつもケーキの代わりにおはぎを作ってくれたおばあちゃんは、サンタはいないと言いながらも、ちゃんと毎年プレゼントを用意してくれた。同世代の子供が最新のオモチャを買ってもらう中、私は手編みのセーターやマフラーを貰った。それでもおばあちゃんの優しさが嬉しくて、サンタなんていなくても良いと思っていた。
けど、とうとう一人になってしまった。
中学二年生になった私は、サンタを信じているわけじゃないけど、ツリーの下に靴下を用意した。ツリーといっても、文化祭で余った模造紙に描いたツリーだった。こんなことをして、なんになるとも思わないけど、それでも、クリスマスの気分を味わおうと必死だった。
夜になり、両親が置いていったお金でチキンとケーキを買ってきた私は、テーブルに写真立てを置いた。写真立てにはおばあちゃんの笑顔があった。私はおばあちゃんに「おいしいね」と言いながらチキンを頬張る。
私にも友達がいないわけじゃないけど、クリスマスイブはみんな、家族と過ごす人ばかりで、SNSにすら反応がなかった。
「もっとおばあちゃんに優しくすれば良かったなぁ」
そんなことをふと漏らす。一緒にいた頃はおばあちゃんの優しさに気づかなくて、心無い言葉だって浴びせたりした。字を書くことが苦手なおばあちゃんが、「遺言書を書きたい」と言った時も、「頑張って」としか言わなかったし。結局、おばあちゃんを助けることはなかった。
こんな私のところにサンタが来るはずもないよね。
私はチキンを食べたあとに、ケーキをワンホール食べようとして失敗する。残念ながら私のお腹は一つしかないから、たくさんは食べられなかった。
それでもクリスマスの気分はじゅうぶん味わえたので、もう眠ることにする。風呂はキャンセルしよう。どうしようもなく物悲しい気持ちになった私は、明日から冬休みだからってお風呂にも入らずに部屋着のまま布団に入った。
幸せってなんだろう——そんなことを思って瞳を閉じると、おばあちゃんの夢を見た。
おばあちゃんは川の向こうにいて、幸せそうに手を振っていた。けど、私も手を振り返すと、おばあちゃんは背中を向けて消えてしまった。
目が覚めた時、一階のリビングには両親がいた。いつも忙しくてクリスマスでさえ帰ってこられない両親が、テーブルに座ってお茶を飲んでいるのを見て不思議に思っていると——私に気づいたお母さんが口を開いた。
「あら、明音。やっと起きたのね」
「どうしてお母さんがいるの?」
「どうしてって、お母さんがいちゃダメなの?」
「そういうわけじゃないけど……いつもクリスマスは仕事だったのに」
「……サンタさんがうちに来たからよ」
「サンタさん? なんの話?」
言って、お母さんは一通の手紙を見せてくれた。それは、とても汚い字で書かれた手紙だった。私が読めなくて困っていると、お父さんが説明してくれた。
「これはね、おばあちゃんが書いた手紙なんだ」
「おばあちゃんが?」
「そうだよ。クリスマスには必ず明音の傍にいてほしいって、書けない文字を一生懸命書いたんだ。最初は読めなくて放置していたんだけど、どうしても気になって、お母さんとなんとか解読したよ」
「……おばあちゃんが書きたいって言ってた遺言書はこれのことだったんだ……」
おばあちゃんの優しさを知った時、私は涙でぐちゃぐちゃになるまで泣いた。
正直言って、サンタが来るよりも嬉しかったかもしれない。
ううん、サンタはおばあちゃんなんだ。
誰よりも私の欲しいものを知っているサンタ。
私のおばあちゃんはきっと、どの家にくるサンタよりも、素晴らしいサンタだ。
私には両親がいるけど、いつも仕事が忙しくてクリスマスには帰ってくることもなかった。それでも小学生まではおばあちゃんが健在だったから、一人になるようなこともなかったけど、そんなおばあちゃんも他界して、とうとう一人ぼっちになった。
いつもケーキの代わりにおはぎを作ってくれたおばあちゃんは、サンタはいないと言いながらも、ちゃんと毎年プレゼントを用意してくれた。同世代の子供が最新のオモチャを買ってもらう中、私は手編みのセーターやマフラーを貰った。それでもおばあちゃんの優しさが嬉しくて、サンタなんていなくても良いと思っていた。
けど、とうとう一人になってしまった。
中学二年生になった私は、サンタを信じているわけじゃないけど、ツリーの下に靴下を用意した。ツリーといっても、文化祭で余った模造紙に描いたツリーだった。こんなことをして、なんになるとも思わないけど、それでも、クリスマスの気分を味わおうと必死だった。
夜になり、両親が置いていったお金でチキンとケーキを買ってきた私は、テーブルに写真立てを置いた。写真立てにはおばあちゃんの笑顔があった。私はおばあちゃんに「おいしいね」と言いながらチキンを頬張る。
私にも友達がいないわけじゃないけど、クリスマスイブはみんな、家族と過ごす人ばかりで、SNSにすら反応がなかった。
「もっとおばあちゃんに優しくすれば良かったなぁ」
そんなことをふと漏らす。一緒にいた頃はおばあちゃんの優しさに気づかなくて、心無い言葉だって浴びせたりした。字を書くことが苦手なおばあちゃんが、「遺言書を書きたい」と言った時も、「頑張って」としか言わなかったし。結局、おばあちゃんを助けることはなかった。
こんな私のところにサンタが来るはずもないよね。
私はチキンを食べたあとに、ケーキをワンホール食べようとして失敗する。残念ながら私のお腹は一つしかないから、たくさんは食べられなかった。
それでもクリスマスの気分はじゅうぶん味わえたので、もう眠ることにする。風呂はキャンセルしよう。どうしようもなく物悲しい気持ちになった私は、明日から冬休みだからってお風呂にも入らずに部屋着のまま布団に入った。
幸せってなんだろう——そんなことを思って瞳を閉じると、おばあちゃんの夢を見た。
おばあちゃんは川の向こうにいて、幸せそうに手を振っていた。けど、私も手を振り返すと、おばあちゃんは背中を向けて消えてしまった。
目が覚めた時、一階のリビングには両親がいた。いつも忙しくてクリスマスでさえ帰ってこられない両親が、テーブルに座ってお茶を飲んでいるのを見て不思議に思っていると——私に気づいたお母さんが口を開いた。
「あら、明音。やっと起きたのね」
「どうしてお母さんがいるの?」
「どうしてって、お母さんがいちゃダメなの?」
「そういうわけじゃないけど……いつもクリスマスは仕事だったのに」
「……サンタさんがうちに来たからよ」
「サンタさん? なんの話?」
言って、お母さんは一通の手紙を見せてくれた。それは、とても汚い字で書かれた手紙だった。私が読めなくて困っていると、お父さんが説明してくれた。
「これはね、おばあちゃんが書いた手紙なんだ」
「おばあちゃんが?」
「そうだよ。クリスマスには必ず明音の傍にいてほしいって、書けない文字を一生懸命書いたんだ。最初は読めなくて放置していたんだけど、どうしても気になって、お母さんとなんとか解読したよ」
「……おばあちゃんが書きたいって言ってた遺言書はこれのことだったんだ……」
おばあちゃんの優しさを知った時、私は涙でぐちゃぐちゃになるまで泣いた。
正直言って、サンタが来るよりも嬉しかったかもしれない。
ううん、サンタはおばあちゃんなんだ。
誰よりも私の欲しいものを知っているサンタ。
私のおばあちゃんはきっと、どの家にくるサンタよりも、素晴らしいサンタだ。
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